2014
03.08

そんなに効くのか?

 ラメルテオン(ロゼレム®)はメラトニンアゴニストという部類の睡眠薬で、睡眠リズムが崩れてしまった患者さんに処方することがあります。いわゆる睡眠相後退症候群て名前のついたものですね。この場合は就寝前に飲んでもらわず、寝る2-3時間前に服用してもらうことが多いでしょうか。普通のいわゆるザ・不眠症みたいなタイプにはなかなか効きが悪いなぁと思っており、自分が飲んでもピンピンしてました。ただ、効く人には効くみたいで、持ち越しが生じてしまった患者さんも実はいます。そんなことがあり、自分は1錠(8mg)ではなく0.5錠(4mg)から処方することが多いです。

 あんまり効いた感じが無いもんですから普段は「こいつ仕事してんのかなぁ…」と訝しがっている自分も、スパッと効いた時は


アンタ仕事してたんだねぇ…


 としみじみラメルテオンを眺めます。依存性もなく、大きな副作用もあんまりなく、安全性は高いというのが評価できますね(頭痛やめまいは副作用の中でも多めでしょうか)。

 さてそんなちょっと性格の分からないラメルテオンですが、何と高齢者のせん妄”予防”に著しい効果を示したという論文が出ました。

Hatta K, et al. Preventive Effects of Ramelteon on Delirium: A Randomized Placebo-Controlled Trial. JAMA Psychiatry. 2014 Feb 19.

 せん妄の”治療”に有用だと言う報告はいくつかありまして、確かに軽度のせん妄には悪くない選択肢だと思っています。ただコンサルトを受けるようなせん妄をラメルテオンで何とかしようとはちょっと思わない感じ。

 そしてそのせん妄の予防というのはなかなかうまくいかないのが事実。原疾患のコントロールやせん妄誘発薬剤のチェック、環境因子の改善など以下のことを頑張ってみます。


☆せん妄予防のためのポイント
低酸素:適切な酸素投与。
感染:早期治療、いらないルート類は外す。
認知機能低下:部屋の明るさ、具体的な事柄(日時や場所など)を入れる、家族の面会、好きな音楽をかける。
脱水:適切な血管内容量を保つ。多すぎても少なすぎてもダメ。
便秘:しっかり出してやる。多少下すくらいでもO.K.
不動化:早期の離床を促す。
疼痛:適切なマネジメント。非言語的な部分での評価が重要。
感覚障害:眼鏡、補聴器など。
睡眠障害:物音を必要最低限に、睡眠中の処置は避ける。ベンゾや抗ヒスタミン薬以外での睡眠。
多剤併用:意外な相互作用あり。シンプルに。
低栄養:適切な栄養療法を。



 とはいえ、「せん妄になる患者さんは何をどうしてもなる」みたいな印象が漂ってしまいまして…。とはいえせん妄というのは後の生命予後や認知機能にダメージをもたらすことが分かっているので、やっぱり予防できたらしたい。

 ICUで予め少量のハロペリドールを流しておくと予防につながったという研究もありますが(Wang W, et al. Haloperidol prophylaxis decreases delirium incidence in elderly patients after noncardiac surgery: a randomized controlled trial. Crit Care Med. 2012 Mar;40(3):731-9.)、心機能の低下した患者さんにハロペリドールを流しておくというのもちょっと気が引ける。ハロペリドールの静注はQT延長を起こし、Torsades de pointesの危険性が高まります。

 そんな中で、今回のラメルテオン。副作用の少なさから、予防に効果的であるのならやっぱり期待してしまいます。論文では、65-89歳の患者さんに服用してもらってます。n=67と少なめなのはご愛嬌。また、やってみると分かるんですが、せん妄の評価ってそのものが結構難しいんです。だから今回の試験が完全なblindではないというのもやや突っ込まれるところでしょうか。

 で、そんなことはさておいて、論文中のKaplan-Meier曲線を見てみましょうか。

ロゼレムせん妄
(クリックで拡大)

 凄いなおい…。

 こんなに効いちゃうんですか??? 劇的としか言いようがなく、これだけの綺麗に出ちゃうとかえって勘ぐってしまう様な…。でも製薬会社のfunding(資金提供)はないんですね。このラメルテオンを作って売ってるのは悪名高いタケダさんだから、資金提供があったら一気に疑いが強くなってもおかしくなかったですが。これで完全にblind化されていたらホントに「おぉ~」って思ってました。

 せん妄予防に有用な薬剤がなかなか乏しい現在、ちょっと期待してしまう様な内容。考慮してみても良いかもしれませんよね。ただし、ラメルテオンはCYP1A2で代謝されるので、これを阻害するフルボキサミンは併用禁忌になってます。他にはケトコナゾール、マクロライド系、フルコナゾールといった薬剤もCYPの関係で併用注意になってますので、感染症の治療をされる際は配慮を。
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コメント
ラメルテオンも肝斑や自己免疫疾患に影響はでますか?
dot 2014.03.08 12:16 | 編集
名無しでコメントを下さったかた、ありがとうございます。

薬理学的には、ラメルテオンはそれらに影響はないかと思います。ただお薬の飲み合わせなどもあるため、もし服用希望があるのでしたら主治医の先生に一応確認はしてみて下さい。
m03a076ddot 2014.03.08 18:13 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2014.03.09 15:35 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

サプリメントは色んな混ぜ物があって粗悪な品も多いので、もともとの疾患に影響を与えることがあるのかもしれません。
神経障害性疼痛は、まずはお持ちの本を読みこんでいただくのが良いかと思います。医学書は結構高価で、また神経障害性疼痛もメカニズムがやっと分かってきた分野なので本による違いはあまりないかもしれません(トンデモ本を除いて)。
日本大学がCRPSに詳しいかどうかはちょっと分かりません。ただ、漢方外来もペインもあるので、治療そのものは可能だと思いますが。
m03a076ddot 2014.03.10 08:19 | 編集
96歳の認知症の母に、1カ月ラメルテオン8mgを飲んでもらいましたが、確かに効果はありました。
せん妄のような症状がまったく出なくなりました。
ただし、嚥下障害が悪化してしまい、中止せざるを得ませんでした。非常に残念でした。
抗精神病薬を頓用で使うよりもはるかに効果がありました。
浮釣木dot 2016.03.19 10:48 | 編集
>浮釣木さん

ありがとうございます。
ラメルテオンは人によっては持ち越すこともあるので、嚥下障害が強く出てしまったのかもしれませんね。
そういう時は、例えば4mgや2mgなどのごく少量でも効果があったのかもしれません。
浮釣木さんの場合は副作用が出てしまったようですが、基本的には抗精神病薬よりも安全ではあるので、このように効果がしっかり出ることがあるというご報告をくださってありがたく思います。
m03a076ddot 2016.03.23 00:13 | 編集
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