2015
04.11

潤して咳を治す

 有名な漢方薬に、”麦門冬湯(ばくもんどうとう)”というのがあります。

 痰が出てこない、コンコンとするような空咳に用います。「咳に麦門冬湯」というような覚え方だとよろしくなく、痰がたくさん出るような咳にも使ってしまうかも。それだと逆に悪化しますよ(何故か改善するという不思議な事態もありますが)。同じ咳でも、いわゆる”湿性の咳”と”乾性の咳”とでは、出す漢方薬は全く異なります。

 この麦門冬湯、生薬を見てみましょう。


麦門冬、半夏、人参、粳米、大棗、甘草


 鎮咳作用は、半夏が担っています。去痰作用もしっかりと存在。しかしこの半夏、身体を乾かす作用がありまして(燥性)、空咳にこれだけだと非常によろしくない。

 そこで、残りの麦門冬、人参、粳米、大棗、甘草です。これらは全て身体を潤す作用があり(潤性)、半夏の乾かす作用を補って余りあるのでございます。気道を潤すことで、咳を止めようと言う意味合いもあります。ちなみに粳米っていうのは、うるち米の玄米のこと。

 結局、麦門冬湯という漢方薬は潤性でして、乾きを潤す方向にあるのです。お湯に溶かすとちょっとだけとろみがありまして、それが何とも潤す印象を与えます。

 だから、適応は空咳。特に少量の痰が喉に張り付いてイガイガしたり、風邪をひいた後にしつこく残ったりする空咳に適してます。高齢者は唾液が少なくなって口の中がパッサパサになりますが、そういう状態にも良いですよ(少量のお湯に溶いて口の中になじませるように服用)。

 少量の痰が喉に張り付いて、でも麦門冬湯だけだと一押し足りないという時は桔梗(排膿作用あり)を加える目的で”桔梗湯”を合わせます。また、この麦門冬湯は生薬を見ても分かるように、炎症に対する配慮がありません。空咳だけど熱があるとか気管支炎になってるとか、そんな状態には不向き。そういう時は石膏や知母(どちらも熱を冷ます作用あり)を加える目的で”白虎加人参湯”や”桔梗石膏”を合わせます。

 そして、麦門冬湯を用いる際に大事なのは、最初は3包/dayの投与にしないこと! 3包じゃなかなか効かず、特に最初の数日は6包/day以上のパルス療法が必要。自分は風邪が治っても1カ月くらいは空咳が全然退かないということがたびたびあります(感染後咳嗽/感冒後咳嗽)。そういう時にはこの麦門冬湯の出番。1日目は、朝昼晩に2包ずつ、そして寝る前に3包飲みます。そうすると2日目には咳が半減していることが多いです。数日経つとだいぶ楽。そうなったら咳が出始めた時に頓服的な扱いにして、寝る前は結構咳がしつこいので2-3包。そんな感じで調節します。

 麦門冬湯は3包/dayで最初から出すと、全くと言って良いほど効かないことが多いです。「何だ、全然効かないじゃないか」と思う先生も多いことでしょう。使い方にはコツがあるのでございました。

 ちなみに、痰がたくさん出る場合の漢方で代表的なのが二陳湯(にちんとう)というもの。麦門冬湯とは正反対で乾かして治療するというタイプ。半夏厚朴湯も同じ傾向で、痰の多い咳に効きます(半夏厚朴湯は二陳湯に厚朴と紫蘇葉が加わったものと言えます)。

ばくもん
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コメント
先生 おはようございます。
漢方薬 興味津々です。
せっかくの休日ですが夜中に何度も目が覚めてしまいました。年度初めで緊張しているのだなぁ私。かわいいところあるじゃん(笑)と思ったり,続くようなら以前の記事でご紹介されていた漢方薬を試してみようかしらと思ったり。

先ほどニュースで“お薬手帳の活用で医療費削減”とありました。先生が提唱なさっていた“お薬のもらいすぎ,処方されすぎの管理”にもつながると良いですね。
annedot 2015.04.12 06:37 | 編集
>anneさん

ありがとうございます。
漢方薬は機序が不明で診察も人によって解釈が異なることも多く、なかなか患者さんに合ったものが出てくるのは難しいかもしれません。
お薬手帳を上手く使うこともさることながら、薬剤師の先生がたからも積極的に医者に対して処方に疑問をぶつけて欲しいと思っています。お薬に関して、医者よりも薬剤師の先生の方が圧倒的な知識を持っているので、それを活かしてくれたら、と考えています。
これまでは安易に処方しすぎて、また患者さんもそれを当然と思っていた部分も多かったと思います。このままでは医療費が膨れ上がって立ちいかなくなるので、何らかの対処とそを受け入れる国民の態度が必要になってくるのでしょうね。
m03a076ddot 2015.04.15 10:33 | 編集
ふたたびコメント失礼いたします。。

わたしは去年の12月ごろから、ひどい寝汗に困っています。。
朝起きると毛布も布団もびっしょりで、夜中に寒くて目が覚めることも多いです。

主治医に相談したところ、26番の漢方がまず処方されたので
が、まったくといっていいほど効果がありませんでした。なので、いまは41番のホチュウエッキトウを飲んでいます。効果に多汗症とありますが、寝汗にはどれくらいの期間で効果が表れるのでしょうか・・・?まだ飲んで2日目ですが、今朝は足だけに寝汗をかいていました。

寝汗の原因にはなにがあるのでしょうか・・・。いままでこんなことはなかったので、大変戸惑っております。。なにか助言いただければさいわいです。
雛瀬 なな。dot 2015.04.16 08:30 | 編集
>雛瀬 なな。 さん

ありがとうございます。
寝汗は漢方的に解釈が様々あるので、それに合ったものを使うことになります。
身体に熱がこもっているのか、水が溜まっているのか、身体機能が低下しているのか、など。
もちろん、甲状腺機能亢進症などの身体疾患のないことが前提で漢方治療を行ないますが。
補中益気湯をしばらく服用してみて、飲み心地や身体の調子を見てみるといいかもしれませんね。
m03a076ddot 2015.04.18 11:10 | 編集
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dot 2015.12.19 22:00 | 編集
>りんごさん

ありがとうございます。
理論的には出てもおかしくはないかと思いますが、これまで報告は上がっていません。
実例がないので、可能性はとても低いかと思います(ゼロではないのでしょうけれども)。
医学で完全に否定するのは出来ないことであり、”らしさ”の高低くらいになってしまいます。
犯人ではないかもしれませんが、いちおうは半夏厚朴湯をストップしておくのが良く、その上で主治医の先生にもお話しください。
自分もよく使う漢方なので、患者さんから報告を受けるのは医者にとっても危険を察知するために大切なことだと思います。
m03a076ddot 2015.12.20 08:16 | 編集
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dot 2017.01.08 00:04 | 編集
管理人様閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

色々と混ぜると効果がぼやけるのは確かにあるかと思います。
麦門冬湯も全員に効くわけではないので、色々と変更しながら自分にあったものを見つけてもらうのが良いでしょう。
m03a076ddot 2017.01.10 11:30 | 編集
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dot 2017.01.10 21:50 | 編集
管理人様閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

何故か自分自身の症状に対してはあんまり効かなくて、特に頭痛はなんともならないですね…。
漢方は人によって合う種類、そして合う量が変わってきます。
空咳でも麦門冬湯3包で良い人もいればがっつり8包使ったり、麦門冬湯ではなくて滋陰降火湯を使わねばならなかったりしますし。
通いながら色々と変えてみるのも大事かもしれません。
m03a076ddot 2017.01.15 12:30 | 編集
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