2013
12.10

偉そうなことを言ったものの…

Category: ★研修医生活
 今日は研修医の救急勉強会。いつものように、研修医ではない自分もちゃっかりオブザーバーみたいな感じで参加。

 1つ目は、発熱と意識障害でした。診断への道筋は、まずは患者背景からしっかりと探ることが大事。


・年齢はいくつくらいか?
・どんなお薬を飲んでいるのか?
・どんな嗜好品があるのか?
・既往歴は何があるのか?


 こんなことが、目の前の患者さんの鑑別を考える上でとっても重要です。地味ですけど、ここを軽んじてはいけない。背景をしっかり捕まえることで、現病歴に入る前に鑑別の重み付けが出来てきますよ。

 今回は、高齢男性で、薬剤歴は不明、嗜好品は特に無く、既往歴には膵頭十二指腸切除術(膵がんの手術)がありました。

 さて、どう考えましょう。マニュアルなんかを眺めると鑑別がつらつらと書いてありますが、そういうのには重み付けがなされていません。このような患者背景があると、特定の疾患の確率がどんどん膨らみます。

 既往歴からやっぱり”胆管炎”ですね。そして、高齢者という点で”肺炎”と”尿路感染症”は当然出てきます。確率的にはこの辺りをスリートップとして探りつつ、他の見落としてはいけない疾患(髄膜炎などなど)やコモンな疾患も考えていきます。膵がんの患者さんですから、膵炎ももちろん重要な鑑別です。Cope先生の仰るように発熱もしますしね(半数くらい)。ただ、膵炎だと意識障害になる前に来院することが多いでしょうか。でも確率としては言うまでもなく外せません。レア系ですけど、大動脈解離なんてのも熱が出て意識障害になる疾患。大動脈解離で発熱というのは結びつきづらいかもしれませんが、SIRSになる疾患ですのでやっぱり外せません。しかも亜急性の経過を辿ることもありまして、発症から1週間後に分かったなんてのも。”不明熱です”と紹介された患者さんが、実は大動脈解離だったなんて話もあります。あと、今回は”発熱”って言っちゃいましたけど”高体温”ということなら、季節にもよりますが熱中症というのも鑑別に挙がります。

 結局その患者さんは胆管炎だったんですが、個人的には鑑別になる疾患としてコレを外してはいかん、と思ってます。高齢の男性、意識障害、発熱、、、ときたら?


レジオネラ肺炎


 でございますよ。これは肺炎にしては変な経過をとる疾患。過去の記事をちょっと出してみましょう。


日本では温泉や24時間風呂が発症の患者背景として多いです。市中肺炎での占める割合は数%ですが、50歳以上の男性が圧倒的に多く発症します(男性は女性の3-8倍の罹患率)。突然の高熱、全身倦怠感で発症することが特徴で、2-3日してから咳や痰が出るようになり、消化器症状の合併もあります。症状の進行は異様に速く、検査値では低Na血症やLDH・AST・ALTなどの上昇が見られることが多いとされます。レジオネラには血清型が複数あり、日本におけるレジオネラ肺炎の半数が1型によるものです。

尿中抗原はその1型を基本的に調べるもの。1型の診断率は95%以上の感度とされますが、それ以外の血清型では約78.6%、L. pneumophila以外の菌種では13.6%という惨憺たる結果。異なる血清型や、異なる菌種によるレジオネラ感染症を完全には否定することはできません。すべてのレジオネラを含めると感度特異度ともに肺炎球菌尿中抗原と大体同じ値。ただし、2009年のCHESTに掲載された論文では、対象とした論文の質がどれも低く、出版バイアスの可能性もあるとのことで、更なる検討が必要としています(Shimada T, et al. Systematic review and metaanalysis: urinary antigen tests for Legionellosis. Chest. 2009 Dec;136(6):1576-85.)。



 性差があるっていうのが興味深いところですね。肺炎の中でもコレを頭に入れておくと、病歴をとる時に注意できますでしょ。高齢男性の頭痛と発熱という主訴でレジオネラ肺炎にたどり着くなんていうことだって出来ます。呼吸器症状なしで肺炎とか何かもう何なんだって感じ。高齢者で「何か良く分からんなぁ」と思ったらレントゲンと尿検査と心電図はやっておいて損はない。

 さて、今回お題を出した研修医は血液ガスをとっておりました。

自分「血ガスとってるけど、解釈した?アルカローシスとかアシドーシスとか」
研修医「あ、いや…」

 これは実にもったいない。血液ガス、特に意識障害患者さんの血液ガスは情報の宝庫!です。患者さんに代わって医者に語りかけてくれるような。それをその研修医にとうとうと説いたんですが、なんとなんと



自分が読み方忘れてました



 精神科になってから実は読んだことがなかったという…。結局、方法すら忘れてしまった。。。カッコ悪いところを見せてしまいました。でも皆さんはとったら解釈しましょう、うん。

 また、意識障害では収縮期血圧(sBP)が重要になってきます(Ikeda M, et al. Using vital signs to diagnose impaired consciousness: cross sectional observational study. BMJ. 2002 Oct 12;325(7368):800.)。高ければ高いほど頭蓋内病変の可能性を示唆します。

・sBP:160-170~LR4.3
・sBP:170-180~LR6.1
・SBP:180以上~LR26

 そして、低ければ低いほど頭蓋内病変の可能性は低くなっていきます。

・sBP:110-120~LR0.5
・sBP:90-110~LR0.08
・sBP:90以下~LR0.03

 これだけでかなりのアタリが付いてしまうという恐ろしさ。低血糖は意外と高血圧を示すことがあるので、それはどんな場合でも真っ先にrule outする必要があります。なので、意識障害があれば血糖測って血圧測って、というのが迅速な対処の第一歩でしょうか。血圧が高ければ頭部CT優先ですし、低ければ静脈血でもいいので血ガスを。
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コメント
こんばんは、ベンゾの件ではお世話になりました。
今主治医と色々模索中です。

先生相変わらず凄く勉強されていますね!
他の精神科医の人達もこんなに身体疾患の勉強ってされているんでしょうか?
匿名dot 2013.12.11 22:17 | 編集
>匿名さん

ありがとうございます。
主治医の先生と模索をしている最中なんですね。様々にトライをしてみることがやはり大切だと思っています。
精神科以外の知識は研修医の頃のものを何とか運用している感じです。あの頃はずっと救急外来にいたので、自分のものの考え方もそっち方面にどうしても動いてしまっています。
知識がすたれていくのはやむを得ないんですが、何かもったいなくて少し勉強を続けてます。
でも、臨床研修制度が始まって以降の若手精神科医なら、身体の事の知識はまだまだ抜けてないと思いますよ。
m03a076ddot 2013.12.12 08:33 | 編集
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