2014
02.02

弛緩型の神経因性膀胱には…

Category: ★精神科生活
 入院してきた80歳代の女性。「お腹が張って苦しい」とのこと。以前にイレウスになったことがあったので、今回もそれかしら…?と思っていたら、看護師さんから「先生、尿閉じゃないですか? 前にも同じような患者さんがいて、総合病院に行ったら膀胱ぱんぱんでしたよ」と。

 なるほど。そうかもしれない。患者さんを診ないで医者が物事を言っちゃいけませんな…。ということでベッドサイドに行くと、確かにお臍よりも下がぽっこりと膨れています。Sapira先生の診断学の本にそういえばそんなのが…。

 ということで導尿をしてみましょう(エコーないんですよ、勤めてる病院)。すると、出るも出たり2L! こんなに膀胱って膨らむんですね…。おむつは少し濡れてたんですが、これは溢流性の尿失禁だったのか。

 その患者さん、尿意が全くないようで。神経経路の問題で、尿意を感じずかつ膀胱が収縮することなくずっと拡がって尿が溜まってしまうこの状態を、弛緩型の神経因性膀胱と言います。治療はなかなか厄介でして…。

 まずは薬剤性を疑って全部切ってみたんですが全くの空振り。これはホンマもんや! 弛緩型の神経因性膀胱の代表的な治療薬としては、ジスチグミン(ウブレチド®)やウラピジル(エブランチル®)などがあり、これらを使ってみましたが、全然…。困ってしまって、とある総合病院の泌尿器科の先生に紹介状を書きました。受診の結果、器質的な原因は見つからず、かつ残念ながら治療も無理だろうと。

 あれ…。看護師さんにはずっと導尿を毎日してもらっていて、何か泌尿器科受診で解決策があれば良いねーって話をしてたんですが、残念な結果(バルーン留置は細菌感染が怖いので行わないです)。

 ぬぬ、仕方ない。望み薄だが漢方を使ってみようか。自信ねぇなおい。

 弛緩型の神経因性膀胱は、膀胱の筋肉がたるんたるんになっているという点、そして神経反射が低下している点の2つがあります。ということで、筋肉の引き締めを狙う黄耆・升麻・柴胡、神経反射を改善する地黄・牡丹皮・山茱萸・山薬を使います。かつ、この患者さんは陽陰両虚っぽい。

 ということで、補中益気湯と八味地黄丸の合方! まずは1日2包ずつで開始。

 使ってみて、2週間。


全く変化なし


 あれ…。

 しかし翌週。


尿意復活!


 でもまだ出ない。

 更に2週間後。


出た!


 少しずつですが出ました! 導尿を挟みながらですが、確実に少しずつ出てきましたよ。

 それからは自分でトイレに行く頻度が増えて、改善改善。良かった。これ外したら次何使うかは全くノーアイディアだったので、助かりましたよ(せいぜい増量するくらい?)。しかしながら完全復活ではなく、2-3日に1度は導尿も必要でございました。

 その後は施設に行かれたので経過は分かりませんが、やはり排尿があった時は嬉しかったですね。でも最大の功労者はずっと長いこと毎日導尿をしてくれた看護師さん。お疲れさまでございます。

 今回使った補中益気湯と八味地黄丸の合方ですが、これは八味地黄丸の地黄が胃に障って飲みづらい、という患者さんにも有用です。補中益気湯が地黄の作用をマイルドにしてくれますので。単剤処方にこだわる先生もいらっしゃいますが、自分は生薬レベルで考えるタイプなので複数の方剤を同時に使うことに抵抗はありません。ただ、エキス製剤なら出来あいなので余計なものが加わるという欠点は存在します。例えば、エキス製剤の抑肝散に芍薬を加えたいけど、芍薬だけなんてのは不可能なので、桂枝加芍薬湯を合方せざるをえない、など。その余分なものには十分な配慮が必要でしょう。
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コメント
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dot 2014.02.08 10:11 | 編集
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dot 2014.02.08 10:19 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

CRPSはなかなか治療が難しく、皆さん苦労されてらっしゃいますね…。
葛根湯は温める方剤ですから、温めることで改善する痛みやしびれには良いと思います。ただし麻黄が入っているので長期に内服すると胃を痛めるかもしれません。よって、寒冷で悪化するような神経痛に使うものとしては、麻黄附子細辛湯に桂枝湯を合わせたものが効く可能性ありと思います。麻黄などの作用を桂枝湯に含まれる生姜や大棗で穏やかにするのがポイントでしょうか。ただし、長期的な治療を見据えると駆瘀血剤が必要と思います。自分は通導散や芎帰調血飲の加減(エキスでは当帰芍薬散と桂枝茯苓丸の合方)などをベースで流します。後は寒証や水滞などを見て方剤を選んでいます(疎経活血湯や桂枝加苓朮附湯が多いです)。
漢方以外ですと、サインバルタもそうですがトリプタノールやリリカ、トピナ、テグレトールなども使われます。
神経痛の本ですと、ちょっと難しいかもしれませんが『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン』や『神経障害性疼痛診療ガイドブック』などがあります。
他科の治療を調べる時は、自分はUpToDateという2次文献を使うことが多いです。後は非専門医のために分かりやすい本が出ていることもあるので、それを読むこともあるでしょうか。
m03a076ddot 2014.02.10 19:03 | 編集
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