2013
10.08

モノトーンは良くない

Category: ★研修医生活
 1年次研修医の救急勉強会に出てきました。

 身体診察の項目をほぼルーチン化してそれ以外の診察項目をあんまりしないって研修医がいますが、毎回思うんですけどそれは考えて行うことになっておりません。

 主訴や年齢や既往歴などなどの要素があって、そして病歴。これらによっていくつか鑑別診断が湧いてきますから、それに応じた身体診察をすべき(検査もそうですけど)。そこがまだ何ともかんともな研修医がおりますね。

 「あーこういうもんなんだ」と一回分かると後は楽ですが、何度言っても通じないことがあります。

 極端な場合だと、喉が痛くて唾を飲み込むと更に痛くなるというような患者さんに対しても腹部所見や四肢の所見なんかを診る。

自分「何でお腹とか脚とか診たの?」
研修医「ルーチンでやってるんで」
自分「あ、そう…」

 時間に余裕があれば診て悪いことはないですけどね。。。

自分「じゃあ開口制限は?」
研修医「あ、診てません…」
自分「は?(怒)」

 ルーチン以外のこともしましょう。。。それが考える事。

 「みんな弱いなー」と思うのが”強弱をつける”ことだと実感してます。診察が作業になっちゃいかんのですよ。病像の輪郭をハッキリさせるために、意識して行うことが必要です。ぼーっと診察してたら絶対に所見を逃します。”診察はルーチンになった時点で見逃しが増える”と思いましょう。ルーチン以外の特徴的な診察もそうですが、変な話、「所見がある!」と思って診察しないとなかなかキャッチできません。

 心不全の患者さん。

自分「III音は?」
研修医「あ、聴いてません…」
自分「頸静脈怒張はあった?」
研修医「あ、診てません」
自分「…」

 患者さんには失礼ですが、せっかく勉強させてもらえる良い機会なので、ルーチン診察だけじゃなくて重要な診察項目をしっかりと診るクセを付けないと。

 野球でも同じことでしょう。このバッターはスライダーに弱いとか、内角高めの速球は必ずバットが出るとか、そうやって投げる。全てのバッターに対して同じ様な組み立てはしませんよね。バッターに合わせてこっちも変える。

 とある症状から鑑別疾患がA,B,Cと出てくるとします。Aにはαという診察所見があり、Bにはβという診察所見があり、Cにはγという診察所見があることが典型的。更にAにはイという診察所見がなく、Bにはロという診察所見がなく、Cにはハという診察所見がないことが典型的。であるならば、ルーチンの診察も大事かもしれませんが、α,β,γとイ,ロ,ハという診察項目も加える必要があります。こうやって各鑑別疾患での違いを明確にしていかないと(陽性尤度比や陰性尤度比もしっかり覚えましょう)。

 後は診察の方法ですよね。Jolt accentuationのお話を以前しましたが、他の診察も同様。”どんなセッティングでどんな方法で行うか”を知っていないと、診察したことになりませんよ。

 さっきのIII音のお話。

自分「じゃあ、III音ってどうやって聴くか分かる?」
研修医「いや、ちょっと…」
自分「…(もう10月だよ!てかOSCEでやったでしょ!)」

 III音は、心尖部に聴診器を当てますが、膜型ではなくベル型。しかも、そっと軽く当てるように。ベル型を「よいしょ!」と強く当てると、それは膜型になってしまいます。更に、III音はぼーっと聴いていたら聴き逃がすくらいの音なので、「ある!」と思って聴くことが大事。何ていうか、鼓膜に触れてくる感じ?

 鑑別の考え方の基本の枠組みをまずは勉強しないといけません。地味ですけど、やっぱりそれをベースとして理解しておかないとダメでございます。

 1つ、古いですが示唆に富む文献を紹介。

Stiell IG, et al. Variation in ED use of computed tomography for patients with minor head injury. Ann Emerg Med. 1997 Jul;30(1):14-22.

 検査のお話ですが、軽症の頭部外傷患者さんたちに対して、たくさん頭部CTを(ルーチンの様に)撮る病院と狙いを定めて怪しいと思った患者さんに対してのみCTを撮る病院とを比較したもの。なんと、CTのオーダーが最も少ない病院では見逃し例が全くなかったんです!更に、CTをたくさん撮る病院では見逃しが多かったことも記載されています。

 これは、ルーチン化の弊害が如実に現れていると思います。しっかりと強弱をつけて「所見がある!」と気合を入れて読影することで、異常を発見する力が出てきますね。「はい来たー、はい撮ったー、はい読んだー、はい異常なーしご帰宅!」だと、やはり所見を見落としてしまう。診察も同じことでございましょう。

 考える診察、強弱をつけた診察というものがとても大事。そんなお話でした。
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