2013
07.09

救急外来のめまい

Category: ★研修医生活
 今朝は研修医の勉強会でした。自分も昔の知識をフル活用してコメント役として出ているんですが、お題のうち1つは”めまい”でございまして、救急的にはやはり小脳梗塞に代表される中枢性めまいが戦々恐々としてしまいますね。

 全めまいの50%を占めるという末梢性の代名詞”BPPV(良性発作性頭位めまい症)”は、耳石がペリっと剥がれてしまうのが原因。病歴をとると”BPPVらしさ”が浮き上がってきます。

Pt.「めまいが…」

Dr.「ぐるぐるめまい?雲の上を歩いてるようなふわふわめまい?それとも立ちくらみみたいに目の前真っ暗?」

Pt.「ぐるぐるです」

Dr.「いつから?」

Pt.「朝からです」

Dr.「朝起きてすぐ?」

Pt.「はい」

Dr.「朝起きて何かしようと思ったのかしら。ちょっと思い出してみて下さい」

Pt.「朝起きて、目覚ましを止めようと思ったらです」

Dr.「目覚ましを止めようとしたのね。目覚ましっていつもどこに置いてるの?」

Pt.「手で届くとこなんで…。左手ですね」

Dr.「じゃあ、朝起きて目覚ましを止めようとして左を向いた時なわけね」

Pt.「あ、そうです。その時に」

Dr.「左、ね。後はどうかしら。聞こえづらいとか耳鳴りとか、頭の痛みは?」

Pt.「あ、そういったのはないです」

Dr.「めまいはどう?ずっとぐるぐる?」

Pt.「はい。ずっと気持ち悪くて…」

Dr.「今この時点ではぐるぐるしてないみたいね」

Pt.「あ、ぐるぐるは休んでればすぐ治まるんですけど、また動くと…」

Dr.「あぁ、なるほどなるほど」

 こんなのが典型的なBPPVですよね。頭を動かした時にぐるぐるっとなる。良く聞くと、どこを向いたかまで患者さんは教えてくれます。耳症状がないことを確認し、まためまいの持続時間をチェック。BPPVならほとんど1分以内。注意したいのは、患者さんは気持ち悪いため、めまいの持続も「ずっとです」と言う時があるという点。それにつられて「あれ、めまいがずっと続くのか。BPPVじゃないんじゃない?」と思うのは早計でございます。詳しくめまいそのものを問診。動かずにいると耳石も静かなので、めまい自身はセーフ。だから患者さんはじっと1つの姿勢をとっていますね。後は、慣れってものがありまして、何度も頭を動かしてるとめまいも少し軽くなってきます。でもちょっと拷問的…。この慣れは後述のDix-Hallpike testを2回した時なんかに見られます。眼振を見るのはちょっと慣れるまでは難しい。

 診察はそのDix-Hallpike testですが、感度は60-90%、特異度90-95%とされます。ちょっと感度にバラつきあり。陽性ならそのままEpley法に持って行って治します。自分は、Epley法は1人の患者さんに2回やって2回目で上手くいくというのが多かったですね…。ポイントは、1つのポジションで1分半~2分くらいは待つ!ということでしょうか。頭を動かして耳石を元の位置に戻すので、1回動かしたら耳石が落ち着くまで待ちましょう。その時間が1分半くらい。その後にまた動かす。少なくとも5分以上の時間をかけるぞ!という思いでやってあげると良いですよ。治る時は「あ、楽になりました」と言ってくれます。

 Dix-HallpikeもEpleyもいい加減に覚えていると効果がないので、しっかりと勉強。身体を倒す時にちゃんと頚を後屈させるのが大事なんですが、それを忘れてただベッドに横にしてるだけだとダメでございます。

 末梢性めまいの治療薬ではメイロン®が日本ローカルに行われています。プラセボ効果だ!と言われて久しいですが、まぁ効くんならそんな効果でも良いんじゃないだろうか。でもやるんなら点滴じゃなくて静注です。40mLくらいを使います。アルカローシスになるので口の周りがしびれる、という患者さんもいます。個人的には、高浸透圧のメイロンを血管内に入れたことで、血管内に水を引っ張る力が強くなりリンパ水腫のむくみを緩和するのでは?と空想。アシドーシスアルカローシスは関係あるのかないのか。

 他にはアデホス®を点滴する医者もいますが、アデホスって半減期めちゃめちゃ短いんですよね。10秒くらいだったでしょうか。だからそんなの点滴してもね…。ただしこれを「えいっ」て静注すると心臓に効いちゃいますんで、めまいの時にしちゃいけません。そうでなくとも心臓が少しの間止まるし。

 自分は、めまいには五苓散を2包まず頓用してもらいますが、救急外来でそんなことすると他の医者とか看護師さんから「漢方なんて飲ませて何やってんの…?」という目で見られかねません。なので、頻用していたのは「プリンペラン®1AとアタP®1Aを100ml/hrで流す」でした。これ結構良いんじゃないかと。ちょっと寝かせておく意味も込めて。

 ”コワイめまい”については、林寛之先生の『Step Beyond Resident』の6巻に詳しく書かれてあるので、研修医の皆さんは是非そこを読んでみて下さい。

ステップ ビヨンド レジデント 6 救急で必ず出合う疾患編 Part 3ステップ ビヨンド レジデント 6 救急で必ず出合う疾患編 Part 3
(2010/10/11)
林 寛之

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 自分としては、最終的には


歩いて帰れないめまいは無理に帰さない


 だと思っています。車椅子に乗せて例えば家族の車まで連れて行って帰すというのは、しない方が良いです。そういうめまいは中枢性の可能性が高い。指鼻試験とか膝踵試験とか回内回外なんてのは小脳上部を見るもので、小脳下部を見るならやっぱり”立ってきちんと歩けるか”です。そこを忘れずに。

 ちなみにMRIは一般的な脳梗塞でも感度が90%ちょいなので、小脳に特化するともっと下がります。だから、MRIで空振りでも安心はしちゃいけない。研修医最大の武器である”コンサルト”を積極的に用いましょう。
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