2013
06.29

今あるものを大切に

Category: ★本のお話
大人の発達障害ってそういうことだったのか大人の発達障害ってそういうことだったのか
(2013/05/17)
宮岡 等、内山 登紀夫 他

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 大人の発達障害の診断は難しい。いい加減な精神科医だと”治らなければ発達障害”ともしかねません。それは困るのですが、明確で理解しやすい診断の手ほどきがないというのも実情。

 そんなこんなで、上述の本を読みました。

 大人の発達障害については世の中色んなことが言われて玉石混交の洪水状態ですが、この本では基本に立ち返って、診断の基本は”社会性とコミュニケーションとイマジネーションの障害(いわゆる三つ組)と感覚過敏”だとしています。例えば、同年代の友人と上手く付き合えているか、異性との付き合い(独りよがりではなくお互いに満足している?)など。”独我的ではなくて相手の立場に立てるかどうか”ということになりますね。他には、受け答え、口調、表情などにも私たちはいつも以上に注目する必要があります。

 様々な疾患との鑑別についても述べられています。幻聴も、コミュニケーションの障害と聴覚過敏、そして過去を思い出して聞こえているように錯覚するということで”幻聴”と受け取られてしまわれがち。また、本人の興味や関心と密接に関係している傾向にあると解説されています。妄想については、発達障害ではファンタジー的なものが多いようです。妄想の内容もしっかりと聞くことが必要。

 上っ面の症状そのものだけではどうしても無理があります。子供の頃から”三つ組の障害+感覚過敏”があったかどうか。発病前の適応はどうかというのがやはり重要になってきます。

 ただし、成人だと親御さんの記憶が曖昧だったり親御さんが既にいなかったり。幼稚園や保育園時代の担任のお手紙や小学校なら通信簿の担任の言葉などの物的証拠があれば有力ではあるんですが、それも見つからなかったり。。。生育歴や発達歴ばかりが強調されると、大人の発達障害の診断はなかなか手詰まりになってしまいます。

 そこで「なるほどなぁ」と思ったのは、宮岡先生の

発達障害をきちんと診断するコツは、発達障害以外の疾患の精神症状をきちんと聴取できることなのかもしれないですね

 という発言。逆転の発想的で唸ってしまいました。今の精神科医はDSM的なチェックリスト形式に慣れてしまって、症状そのものをしっかりと探るということはあんまりしないですね。そこをしっかりと攻めて、できるだけ患者さんの、西田幾多郎に倣って言うならば”純粋経験”に触れていきたいと言う気持ちを持って問うか。そして、これまで精神病理学が培ってきた症候学と照らし合わせる。統合失調症との鑑別なら、典型的な統合失調症の症状と”ちょっと違う”というのをつかむことが大切になってきます。

 自分は宮岡先生のその言葉を読んで、シュナイダー先生を思い出しました。

統合失調症っていう診断は、一級症状が揃って、かつ他の疾患が除外されて初めて”控えめに”つけなさい

 これですよね。シュナイダー先生のこの言葉は、症状の織り成す綾をしっかりと見ていくことの重要性をびしっと教えてくれます。”一級症状それすなわち統合失調症”では決してありません。

 他にも、この本ではうつ病や双極性障害との鑑別にも触れていて、そこもしっかりと症状を踏み込んで理解していく姿勢が必要だと繰り返し説かれています。ごもっともだなぁと納得。

 対談ですから読みやすくて、良い本だと思います。ちょっと頭がすっきりしてきますよ。
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