2013
06.13

NSAIDsを再分類??

 自分が研修医なりたての頃は、NSAIDsの一般認識として



COX-2阻害薬は心血管リスクを高める!



 というものがありました。古典的なNSAIDsはCOX-1もCOX-2も阻害しますが、COX-2阻害薬はCOX-2を選択的に阻害して胃腸障害を起きにくくした進化版として市場に出たのであります。ただ、自分が学生の時にアメリカでロフェコキシブの自主回収事件が起き(2004年)、COX-2阻害薬は心血管リスクを高めるんだね、新しいものは怖いね、という認識でした。COX-2阻害薬は”コキシブ系”と言われ、日本ではセレコキシブ(セレコックス®)が販売されています。ただ、最近は非選択的阻害の古典的なNSAIDs、すなわちジクロフェナク(ボルタレン®)やイブプロフェン(ブルフェン®)などもそれなりに心血管リスクがあるじゃないか!?とも言われているようです。2013年のLancetから。

Coxib and traditional NSAID Trialists' (CNT) Collaboration. Vascular and upper gastrointestinal effects of non-steroidal anti-inflammatory drugs: meta-analyses of individual participant data from randomised trials. Lancet. 2013 May 29. pii: S0140-6736(13)60900-9.

 重大な冠動脈イベントでは、COX-2阻害薬もジクロフェナクもイブプロフェンも増加。脳卒中なども含めた重大血管イベントでは、COX-2阻害薬とジクロフェナクが増加。イブプロフェンはぎりぎりセーフ(RR 1.44, 95%CI 0.89—2.33)。ナプロキセン(ナイキサン®)はどちらも増加させませんでした。

 消化管の有害事象は、COX-2阻害薬も古典的なNSAIDsも増加。ナプロキセンが断トツで、イブプロフェン、ジクロフェナクと続いて、最後にCOX-2阻害薬。



 ふーむ、これはどうしたものか。古典的なNSAIDsも意外と多いんですね、心血管イベント。でもその中でも薬剤によって異なる。考えてみると

COX-2阻害薬と古典的NSAIDsという分類

 これそのものがあまり通用しないんじゃないでしょうか!←大胆

 と思っていたらですね、重大なヒントになる論文が既に2007年に出ていました。

Antman EM, et al. Use of nonsteroidal antiinflammatory drugs: an update for clinicians: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 2007 Mar 27;115(12):1634-42.

 そこでは、COX-2阻害がこのような感じになると図で説明されています。

cox-2阻害
(クリックでちょっと拡大)

 血小板はCOX-1しか含みません。このCOX-1がアラキドン酸をTXA2という凝固や血管収縮の作用を持つエイコサノイドに変換します。このTXA2は血小板のCOXでつくられる主なもの。アスピリン®はここを攻めるので、抗血小板作用を持ちますね。しかし、COX-2を選択的に阻害すると、内皮細胞によるプロスタサイクリンの産生を相対的に減らしてしまいます。血小板の方は元気いっぱい。このアンバランスが心血管イベントのリスクをもたらすのではないか、ということ。

 こういったことと、上述の試験結果を考えると、以下の図が導かれます。

cox-1, -2
(クリックでちょっと拡大)

 COX-2阻害薬も古典的NSAIDsも一列に並べて、COX-1とCOX-2の阻害度合いで考えてみよう、というもの。こう考えると、非常に納得出来ますね。これこれ、これが言いたかったんです。

 COX-2阻害が強いと心血管リスク、COX-1阻害が強いと消化管リスク。ナプロキセンはほぼCOX-1阻害ですね。COX-1阻害薬と言っても良いくらい。ジクロフェナクはCOX-2も結構阻害しますね。COX-2阻害薬のセレコキシブと同じくらいでしょうか。

 以前、セレコキシブを売っている製薬会社(アステ○ス)の説明会で、ジクロフェナクを比較に出してMRさんが「NSAIDsよりも心血管リスクが高いなんてことはありません!胃腸障害も少なくて良いんですよ!」ということを言ってましたが、これはジクロフェナクの特性を理解した巧妙なセールスと言えましょう。要するに”ジクロフェナク=NSAIDs”という一般的なイメージが医者にはあります。しかしその実、ジクロフェナクはNSAIDsの中でも心血管リスクを起こしやすい部類。その起こしやすいものとセレコキシブを比較したに過ぎないんですよね。うまいもんだ。しかもジクロフェナクの使用用量がかなり多かったような気が…?なので、その説明会では「NSAIDs全般ではなくて、あくまでジクロフェナクとの比較ですよね」と意地悪く聞いたらMRさんは「はい…」と答えてました。

 ということで、今回はCOX-2阻害薬も含めたNSAIDsの再分類を紹介しました。スッキリ。



 オマケですが、ナプロキセンはちょっと不思議なNSAIDsでして、腫瘍熱(悪性腫瘍による発熱)の判定に”ナイキサン®テスト”として用いられることもあります。他のNSAIDsではあんまり下がらないような熱で、ナプロキセンを使ってスッと下がったら、それは腫瘍熱の確率が高い!というもの。けっこう昔にその有用性が指摘されています(Chang JC, et al. Utility of naproxen in the differential diagnosis of fever of undetermined origin in patients with cancer. Am J Med. 1984 Apr;76(4):597-603.)。その理由としては、他のNSAIDsと異なる分子生物学的な特徴があるからのようです(Motawi TM, et al. Evaluation of naproxen and cromolyn activities against cancer cells viability, proliferation, apoptosis, p53 and gene expression of survivin and caspase-3. J Enzyme Inhib Med Chem. 2013 Jan 31.)。
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