2013
06.02

滝川一廣先生

Category: ★精神科生活
 本日は、滝川一廣(たきがわ かずひろ)先生のご紹介。何でイキナリ!?と思うかもしれませんが、精神科医になりたての若手にとって、先生の本は実に助けになってくれるのであります。精神科の特色として精神病理とか精神分析とかありますが、若手が気軽に読める代物では残念ながらありません。それなりに基礎知識を付けてからじゃないと厳しい。。。自分も苦労しました…。でも滝川先生の本は若手でも読める!しかも患者さんへの愛情あふれる!こんな先生になりたいもんです。

 さて、先生は木村敏先生と中井久夫先生をお師匠さんとして持ちます(このお2人は日本を代表する精神科医)。人間学的精神医学の色合いがあり、おヒゲがダンディ。児童青年期がご専門です。精神科の重鎮の本というのは、予備知識があってもなくても読んでいて難しいなぁと感じ、読み終わったら「何か頭が良くなった気がしたけどこの本の中身は良く分からんぞ」ということが往々にしてあります。しかし、この先生の著作は全てが理解しやすいです。難しいことを分かりやすく言ってくれるので、混沌とした精神医学の中で灯台になってくれるような存在。「他の先生も勿体をつけずにこれくらい分かりやすくしてくれれば良いのに…」と愚痴ってしまうくらいに読みやすい。また、精神科の診断という行為について慎重であり、常に診断される側に立ち、その人への人間としての理解を忘れない先生です。

 近年何かと話題になる発達障害ですが、滝川先生は発達障害の本質を精神発達の歩みの遅れであるとし、図のように提示してくれています。

精神発達

 精神発達とは、関係(社会性)の発達と認識(知的理解)の発達の2つの軸が支えあってなされるものであり、私たちはZの矢印方向に沿った楕円の部分(大体は平均辺りに分布するので)にいます。そして、関係発達が平均水準かその近くにありながら、認識発達が平均に大きく達さないグループを“精神遅滞”、認識発達も関係発達も平均に大きく届かないグループを“自閉症”、認識発達は平均もしくは平均以上にあるも、関係発達が平均に届かないグループを“アスペルガー症候群”、“自閉症”と“アスペルガー症候群”の間に位置するものが“高機能自閉症”となっています(DSM-5でアスペルガー無くなりましたが)。ここで滝川先生が強調しているのが、正常発達を含めてすべては精神発達のスペクトラムにあって、 互いにつながりあい、線が引けるもんじゃないということ。“発達障害”という“診断”は人工的で 任意なものであるため、その範囲だっていくらでも広げられちゃいます。過剰診断が問題視されていますが、その線引きは社会的なところでなされてしまいます。現代社会は対人関係の能力が求められ、いわゆる職人気質は不適応とみなされがち。そういう人たちが発達障害というラベルをペタッと貼られてしまうと言うのが現況です。

 よって「発達障害とは社会の関数で、 私たちの社会のありようとその社会を生きる私たちの姿を映し出す鏡」(松本雅彦編集.発達障害という記号. 批評社: 2008) と先生はおっしゃいます。自閉症スペクトラムというのは決して自閉症圏の中でのスペクトラムではなく、正常発達との間でのスペクトラムなんです。ただし、そうは言っても幅があるので、その人がどんな世界を生きているかと言うのを理解して、そして援助を考える必要があるでしょう。

 滝川先生の本を読むと、診断と言うのは単なる分類だということに気づかされます。誰のためにするのか、何のためにするのかをしっかりと考えて、目の前の患者さんには何が必要なのか、そのためにその患者さんの人間としての有りようを理解すべきだと思います。精神科の原点ですよね。

 著作は分かりやすいものばかり。初学者なら『子どものそだちとその臨床』や新書で一般向けである『「こころ」の本質とは何か』から始めてみて、『新しい思春期像と精神療法』などに進んでいくと良いのではないでしょうか。イチオシの先生です。

 若手の皆さんはぜひ読んでみてください。精神科にめちゃくちゃ興味ある研修医の先生もどうぞ。

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コメント
こんにちは(^w^)


滝川先生の本の紹介 ありがとうございます

これから 参考にさせていただきたいと思います


こんひゅすぱいdot 2013.06.03 13:36 | 編集
>こんひゅすぱいさん

ありがとうございます。
滝川先生は人情溢れ、優しい先生だなと思います。
一般向けの本から専門書まで、全て患者さんの立場からというのが貫かれていますよね。
自分もしっかりと学んでいきたいと思っております。
m03a076ddot 2013.06.04 08:51 | 編集
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