2013
04.21

生薬から学ぶ漢方

Category: ★本のお話
 胡散臭いと言われ続けている漢方薬。自分は結構使う方でして、本当に劇的に効く患者さんもいることから、大したもんだなと思っています。

 ただ、浅い勉強は絶対にいかんですね。例えば、

インフルエンザに麻黄湯

 というのは最近よく「効きますよー」なんて言われています。でもそれだけ覚えて処方したら、痛い目に会うこと確実。インフルエンザで高熱が出て、汗のどんどん出ている患者さん。こういう人に麻黄湯は禁忌と言って良いでしょう。麻黄湯はガタガタ震えて寒気もして高熱もあって、でも汗が出ていない患者さん用です。麻黄と桂皮の力で汗を出して寒邪を吹っ飛ばすというために作られたもの。汗の出ている患者さんに飲ませたら余計に汗をかいて体力を持っていかれてヘロヘロになります。更に言うなら、飲んで汗が出たらそこで内服をストップさせるのがポイント。

 こういうことを知らないと、漢方薬は薬になりません。効果が出ないどころか害になりますね。特に麻黄なんてのはエフェドリンですから、怖いなぁと思う部分もあります。

 漢方薬は患者さん受けが良いですし、なぜか”安全”というイメージを持たれているのでほいほい出す医者もいますが、やっぱりきちんと勉強して正しいものを出す努力をしなければなりません。

関節痛に越婢加朮湯

 とだけ覚えていたら、おそらく大失敗するでしょう。いわゆる炎症なんかではなくて、変形性関節症で特に冷えると痛むような患者さんにこれ出したら有害無益。

 最低限の知識は知っておきたいところです。妙なクリニックでは「漢方薬は自然のもので副作用もなく安心して飲めますぅ」とかいうフザケタ言い方をしているところもあります。そういうのを堂々と言ってしまうのもどうなんでしょう。漢方薬の怖さを知って初めて使える、と考えています、自分は。「安全だから~」と言ってポンポン出すのはいかがなものか。

 あんまり攻撃するのも品がないのでやめておきますが、漢方薬は薬です。ということは毒にもなります。これを知って、きちんと勉強してから使いましょう。

 よーし、これから漢方使っちゃうよ、という先生は、最初は口訣的な使い方で良いと思います。

汗をかかなくて頚が凝っている様な初期の風邪には葛根湯

 とかそうですね。

不定愁訴に加味逍遥散

 というのも確かに。

ヒステリー球(喉や胸に何か引っかかったような感じ、詰まっている感じ)に半夏厚朴湯

 もまさにその通り。

 そんなキーワードから使ってみるのが分かりやすくて入門にはピッタリ。自分もそれから入りました。使いやすい本としては、新興医学出版社から出ている新見先生の

フローチャート漢方薬治療 (本当に明日から使える漢方薬シリーズ)フローチャート漢方薬治療 (本当に明日から使える漢方薬シリーズ)
(2011/04/24)
新見正則

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 が書名の通りフローチャート式で分かりやすいです。打率の高い順から攻めるという合理的な思考ですね。

 最初は典型的なところをしっかりとやって、効果を実感してみるのが大事。そして漢方を使って効いた患者さんがちらほら出てくると、人間、欲が出てきます。もっと効かせるにはどうしよう?次に何をすれば良いのか?換言すれば打率を上げるにはどうすれば?やっぱりきちんと考えて漢方を処方するには



生薬の勉強



 が欠かせないのではないでしょうか。この漢方薬にはこれこれの生薬が入っていて、この生薬はこういう作用があるからこういった状態に効く。そういうのを勉強すると、広がりが見えてきます。

 その勉強をしたうえでなら、良くやり玉に挙げられる”病名漢方”っていうのも悪くないと思います。「個々の症例を見て漢方を処方するので、漢方医学にエビデンスはなじまない」なんて言っていると、置いてけぼりをくらってしまうんじゃないかしら。漢方もしっかりとエビデンスの土俵に上がって「ほーら効果あるじゃないか」と示すことが、胡散臭さを払拭するためには大事。もちろんサブ解析も付けなきゃいけないでしょうが。『EBM漢方』なんて本もありますが、あの本のエビデンスはちょっと弱いですね。。。エビデンスと言って良いのかどうか。

 もちろん一例を大事にしないとか、症例報告をないがしろにしてるとか、そんなことはありません。漢方の症例報告は面白いですし、参考にしています。でも、それだけだとやっぱり他の医者からは”胡散臭い”と思われても仕方ありません。正当な発言権を得るためにも、大規模な二重盲検試験でエビデンスというのを示す必要があると思っています。

 さて、漢方薬の構成成分である生薬を勉強するには、この本がオススメです。

身につく漢方処方―基本30生薬と重要13処方身につく漢方処方―基本30生薬と重要13処方
(2013/04)
入江 祥史

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 2013年の4月に中外医学社から出た入江先生の本。最初っからこの本を読むと混沌とするかもしれないので、ある程度は口訣的に処方している医者がもうワンランクを願っている時に読むと良いかなと思います。

 この本はずーっと会話調で続くので、そこが中盤から疲れてくるものの、日本の中医学の第一人者である入江先生が分かりやすく解説してくれています。”13処方”と書いてはいますがそれらの派生処方も説明してくれているので、結局は100をゆうに超える処方が掲載されています。

 他に生薬の解説では、自分も常々参考にさせて頂いている山本巌先生の本が素晴らしい。メディカルユーコンから出ている

漢方治療44の鉄則―山本巌先生に学ぶ病態と薬物の対応漢方治療44の鉄則―山本巌先生に学ぶ病態と薬物の対応
(2006/06/17)
坂東 正造

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 が良いと思います。”○○の症状には、これこれの生薬を中心にして加減しなさい”という感じに書かれています。山本先生の教えは『山本巌の臨床漢方』という2分冊の厚い本(21000円!)に結集されていますが、それが自分の漢方処方の源になってくれています。

 ちなみに自分は精神科なので、使う漢方もそっち寄りのが多いです。当期芍薬散、桂枝茯苓丸、抑肝散加陳皮半夏、四逆散、桂枝加竜骨牡蛎湯、補中益気湯、半夏厚朴湯、香蘇散、竹筎温胆湯などなど。頻用する漢方はあんまり多種ではないと思いますが。そして、奇を衒ったような漢方薬はあんまり処方しません。基本に忠実。

 漢方だけでどうこうしようと考えだすと難しい面もあるでしょうが、困っている患者さんに何かしらの努力の具現化という意味でも、漢方は勉強しても損はないような気がします。
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コメント
先生、相談に乗って頂きたいことがあります。
私、お腹が弱くて困っています。
特に冷えに弱いらしく、冷房の効いた電車やバスに乗るととたんに
腹痛に襲われ、途中下車しトイレに駆け込みます。

ストッパやトメダインなどの急な下痢止めも試して見ましたが効きません。

下痢になりそうな状況で、前もって予防として飲んでおくといい漢方薬って
ありますか?ちなみに、痩せている30代の男性です。
OPPdot 2014.02.25 01:09 | 編集
>OPPさん

ありがとうございます。
冷えについては漢方が一定の効果を示すことの出来る分野だと思います。
人参など、身体の中を温めるような生薬を含んだものを使用するのが良いかもしれません。
ただ、漢方は実際に診察をしてまた通院を続けて初めて合った方剤が決まってくるものと思います。
改善したいというお気持ちをお持ちのようですので、漢方外来を開いている病院か漢方薬局さんでしっかりと相談をされてみてはいかがでしょうか。
良い漢方が見つかることを祈っております。
m03a076ddot 2014.02.25 16:11 | 編集
パニック障害の予期不安対策で柴胡加竜骨牡蛎湯を飲み始めて1週間程経ちましたがまだこれと言って効果を感じれておりません。個人差はあると思いますが、この漢方薬は服用後どれ位で効いてきますか?朝夕2包飲んでいます。
匿名dot 2014.03.29 00:51 | 編集
>匿名さん

ありがとうございます。
漢方薬は分単位で効くものもありますし、長期の服用が必要なものもあります。多くは数日から10日前後で何らかの変化はあるように感じます。
主治医の先生の診察の際に、飲み心地や実感などをお話ください。
m03a076ddot 2014.03.30 00:22 | 編集
はじめまして。漢方薬について教えて下さい。現在漢方薬のエキス剤を1日6袋飲んでいます。漢方薬も副作用があると聞かされていますが、肝臓への負担が普通の薬やアルコールより大きいということはありますか?
根拠はないんですが、肝臓にすごい悪いイメージ持ってしまっています。
通りすがりdot 2014.05.05 18:33 | 編集
>通りすがりさん

ありがとうございます。
もちろん漢方薬にも副作用はあります。肝臓や肺に負担をかけることが多いでしょうか。
特に肝臓だと半夏、柴胡、黄ごんなどがその頻度が高いとされます。
なので、血液検査で肝機能を見ていくことが良いのかもしれません。
ただし、画一的なものではなくその人の体質との相性が悪いと副作用が出ることが多いと思っています。
アルコールのほうがよっぽど悪いというのは言えます。
m03a076ddot 2014.05.06 15:07 | 編集
ヒステリー球に半夏厚朴湯のエキス剤(T社)を使う場合1回当たり何袋くらい
飲むと効果的でしょうか?
さくらこdot 2014.10.02 21:19 | 編集
>さくらこさん

ありがとうございます。
”ヒステリー球=半夏厚朴湯”と考えるかもしれませんが、違う漢方薬が適切なこともあります。
また、自分は添付文書よりも多めに使いますが、漢方薬にも副作用があるため、処方した先生にどのくらいが良いか聞いてみるのが一番だと思います。
m03a076ddot 2014.10.03 16:29 | 編集
ツムラの香蘇散は メンタルには効果なしと何かに書いてあったのですが そうなのですか?
確かに効能に初期の風邪とか書いてありました。。
メンタルにはコタローとかの方 ってことなのでしょうか(゜o゜;
あさがおdot 2014.11.30 07:56 | 編集
漢方薬について質問させて下さい。

逆流性食道炎のような症状に悩んでいます。
PPIは飲みたく無いので漢方薬を飲んでみようと思うのですが、
逆流性食道炎に効く漢方薬はあるのでしょうか?

A36dot 2014.11.30 13:15 | 編集
>あさがおさん

ありがとうございます。
漢方の添付文書はあまり当てにならないと思っています。
香蘇散は香附子や蘇葉など、滞った気を巡らせてくれる作用を持つ生薬が含まれています。
それはツムラさんのでもコタローさんのでも同じです。
m03a076ddot 2014.12.01 06:42 | 編集
>A36さん

ありがとうございます。
逆流性食道炎に効く漢方薬はありますが、それはしっかりと診察して考えてから処方されるものと思っています。専門の医者や漢方薬局で相談してみるのが良いと考えます。ただし、最初からピタッと合うことは少ないでしょう。何度か処方変更をしてフィットしたものを探していくとお考えください。
m03a076ddot 2014.12.01 06:47 | 編集
先生は時々香蘇散飲むと書いてありましたが 長く続けても大丈夫な漢方ですか?
この漢方も量多めにのむと良いのでしょうか。

あさがおdot 2014.12.03 14:49 | 編集
>あさがおさん

ありがとうございます。
香蘇散に限らず、何を目標にして飲むかということだと思います。長く続けるべきものか、それとも良くなったと思ったらやめても良いのか。
含まれる生薬は身体を乾燥させるタイプのものが多いため、例えば空咳がたくさん続いているのであれば服用しない方がむしろ良い場合もあるでしょう。
量についても適切な量というのが個人によって異なります。甘草が含まれているため、偽性アルドステロン症には注意が必要だと思います。
m03a076ddot 2014.12.05 07:25 | 編集
漢方薬の効能についてお聞きしてもよろしいでしょうか?
茯苓飲合半夏厚朴湯と四逆散は精神科的にはどのような
効果が期待できるのでしょうか?
またエキス剤を1日3袋づつ飲む場合、効果の有無はどれくらい
の期間で判断するのが一般的なのでしょうか?
伊予dot 2015.01.21 18:37 | 編集
>伊予さん

ありがとうございます。
漢方薬は出す医者や薬剤師さんによっては離れ業(?)的な使い方をすることがあります。
良くも悪くもなかなか一概に言えない部分があり、処方されたものであればまずは出されたかたに聞いてみることが良いかと思います。
エキス剤であれば、多くは10-14日ほどで判定をしています。即効のものもあるため、これより早期に改善することも多いです。
m03a076ddot 2015.01.24 08:05 | 編集
もなか先生、梔子豉湯、三黄瀉心湯という漢方を使われたことありますか?
この漢方薬は精神科領域ではどのような使い方をすることが多いですか?
教えて頂けると嬉しいです。お願いします。
オリンピアdot 2015.06.11 11:57 | 編集
>オリンピアさん

ありがとうございます。梔子豉湯は医者が処方するエキス製剤に扱いがないので使ったことがありません。
三黄瀉心湯は黄連、黄芩、大黄というシンプルな処方ですね。熱を冷まして便を出す作用があるので、便秘気味で熱証の患者さんに使用します。
よって精神科領域では、典型的にはイライラで顔が真赤になる人の興奮や不眠というのが狙い目になります(もちろん全員に効くわけではありません)。
ただ、女性は黄芩で肝機能障害を起こしやすいこともあり、採血で確認をしておくことが大事でしょう。
m03a076ddot 2015.06.13 14:57 | 編集
お返事遅くなりすみません。
ご回答ありがとうございます。
重ね重ね申し訳ありませんが、四逆散と香蘇散の合法と
四逆散と茯苓飲合半夏厚朴湯の合法はどういう時に使われる
場合が多いですか?教えて頂けると嬉しいです。お願い致します。
オリンピアdot 2015.06.22 00:01 | 編集
>オリンピアさん

ありがとうございます。
ものすごく簡単に言うと、香蘇散は抑うつを晴らして、四逆散はストレスや緊張をほぐします。
茯苓飲合半夏厚朴湯は喉から胃にかけての詰まった感じや逆流を解除して、軽い抗うつ作用もあります。
ただし、四逆散や茯苓飲合半夏厚朴湯は身体を乾燥させることがありますし、いわゆる気虚があるとその虚がさらに強まることもあります。
使いかたを間違えると悪さをするので、注意が必要でしょう。
病名だけで漢方を使うのはあまり良くないと思います。
m03a076ddot 2015.06.22 21:14 | 編集
こんにちは。漢方薬について質問させて下さい。
精神科の先生の出す加味帰脾湯はどのような効果を期待して出されるものでしょうか?

また漢方薬のメーカーは数社あるようですが、エキス剤という点ではどの会社も大差はないと考えていものでしょうか?
県高dot 2015.08.19 12:35 | 編集
>県高さん

ありがとうございます。
加味帰脾湯は”思い悩み”に出すことが多いです。そこにイライラ、不眠が派生してくる印象でしょうか。貧血にも出すことがあります。
ただ、漢方は出す医者や薬剤師さんによって全く想像の付かない出し方をすることもあり、もし自分で買ったものでなく処方されたものであれば、必ず医者や薬剤師さんに聞いてください。
また、エキス剤でもメーカーでちょっと異なるので、こだわる医者はこだわります。例えば五苓散はツムラさんのものを使わない、など。色々あるのでした。
m03a076ddot 2015.08.21 09:47 | 編集
あけましておめでとうございます。
突然で申し訳ありませんが質問させて下さい。
今、自分なりに漢方薬の勉強をしているのですが特定の恐怖症は
不安を抑える漢方をメインに考えるのがセオリーでしょうか?
いろんな書籍を読んでいても恐怖にはコレ!といった表現がなかったもので。
どうぞよろしくお願いします。
金剛dot 2017.01.05 22:17 | 編集
>金剛さん

ありがとうございます。
漢方は基本的にサブとしての役割と考えておくと良いかと思います。
超軽症ならまず使ってみても良いかもしれませんが、そうでないなら付加的な立場だと思います。
m03a076ddot 2017.01.10 11:28 | 編集
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