2013
03.12

アルジネードさん登場

Category: ★精神科生活
 わが精神科医局に、ネスレが出している”アルジネード®”がやってまいりました。向かって左から順に蜜柑味、青りんご味、木苺味、スポーツドリンク味です。

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 1本がこれくらいの大きさ。125mL入っています(1本200円くらい)。

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 九州大学では摂食障害の患者さんの入院治療でこれを使っている、とのこと。処方する医薬品ではなく食品扱いなので患者さん負担ですが。

 なんでこんなのを使うのか?という点ですが、答えは成分にありました。

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 何と、リンが630mgも入っています(スポーツドリンク味のみ225mg)。名目上は最もポイントとなるアルギニンの添加は良いか悪いかを別にしますが、亜鉛もしっかり入っていますね。

 入院治療を要する摂食障害の患者さんの中には、本当に痩せすぎるにいいだけ痩せている人がいます。BMIが10を切ってしまうような患者さんもおり、患者さんの背後に迫っている”死”というものを意識せざるを得ません。自分の勤めている病院では総合診療科が栄養を管理してくれており、大変有難い。

 痩せすぎた人に再び栄養を摂ってもらう再栄養療法の際に注意しなければならないのがrefeeding syndromeという病気。グルコースが入ることでインスリンの上昇とグルカゴンの減少が生じ、糖質・たんぱく質・脂質は全て分解される方向にシフトします。KやらMgやらPやらが細胞に取り込まれて低K・Mg・P血症に。普通に1500kcalなんてのを毎日あげていたら、死の危険性があるんです!これに注意しながら栄養はほんの少しずつ、というのが定石。危険だな、という時は毎日採血をしてこれらの値をモニタリング。低くなったら補充です。NP散とうのを使っていますが、日々の飲み物で何とかならないか?というのでこのアルジネードちゃんが登場(九州大学も使っているし)。日本にはこれまで処方箋として出せる低P血症の経口治療薬がなく、当院では院内約束処方のNP散でした。このNP散は1gあたりリンを206.46mg含みます。リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウムを薬剤師の先生方が調整して作ってくださっていました。そこでようやく、ホスリボン®というのが2013年2月に薬価収載されました。1包(0.48g)あたりリンを100mg含みます。4月か5月からは当院においてNP散がなくなってホスリボンに置き換わるようです。

 さてこのアルジネード、色はこんな感じ。

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 この度当院でも使ってみることになり、試飲をしてみたのであります。味は結構酸っぱいですね。。。特に木苺味の酸っぱさが際立っています。後は微量元素の影響か、ちょっと後味が金属っぽい。スポーツドリンク味は常温でもまぁ飲めますが、含まれるリンの量が少ない。蜜柑味、次点で青りんご味と言ったところでしょうか???全体としてさっぱりとした感じで、エンシュア®やラコール®とは正反対。

 ただしこれだけで栄養を賄おうとすると何かとアンバランスなので、エンシュアなんかをメインにして、これを1本付ける、という感じになるのでしょうか。

 しかし、摂食障害というのは精神科の中で最も不思議で最も治療抵抗性な疾患だな、と感じます。特に当院に紹介されてくる患者さんはかなりの重症が多いので、治るのかしら…と思ってしまいます。数ヶ月の入院でじわじわ安全に体重を上げていったん外来に移行してもまたすぐに下がって危険な状態に。彼女らは生命を懸けて何を訴えたいのでしょう。

 もちろん、体重さえ上げれば終了というわけではありません。認知行動療法や対人関係療法、分析的精神療法などによりこの世の生きづらさと折り合いをつけていけるようにするのですが、残念ながらBMIが低すぎるとそういった治療にすら乗っかりません。脳に栄養が行かないときつい、ということ。特に認知行動療法、対人関係療法はBMIが18.5以上ないと主だった効果は薄いと言われます。色んな技法が論文化されていますが、”そういう治療に乗っかれるくらい良い状態の患者さん”というのが前提になっています。認知行動療法が適用できてしっかりと終えることの出来る患者さんは、そもそもその時点で病理が浅いと言えるかもしれません。ただし、じゃあそれまでは粛々と無機的に栄養をやってるだけか、と言うとそうでもなく、特に分析的精神療法の技法を取り入れている治療者は、体重が低い時も関係性を作っていきます。それなしでただBMIを上げてハイ次は面接による治療、としたところで良い治療関係を築くのは難しいですよね。

 栄養を付けてもらいながらも根底にはしっかりと関係性を作っていこうと接触を試みるというのが基本姿勢。これはどんな面接技法においても大事なことだと思います。

 アルジネードを飲みながら、そんな感想。
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