2013
02.25

向精神薬による薬物依存者数の増加

 エチゾラム(デパス®)、ジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)、トリアゾラム(ハルシオン®)などに代表されるベンゾジアゼピン系は、安全性が高く効果発現も早いと言われており、安易に処方されすぎている薬剤です。

 このほど、国立精神・神経医療研究センターの調査により、薬物依存の原因として向精神薬が不名誉ながら大躍進し、有機溶剤を上回ってしまったそうです。1位は覚醒剤で、向精神薬は2位に。覚醒剤は53.8%で、向精神薬(恐らくベンゾジアゼピンでしょう)が17.7%、有機溶剤は8.3%だったとしています。

 ベンゾ系を出すのは精神科もそうですが、精神科以外の、それもクリニック(開業医さん)というのが結構多いんです。依存となってしまった患者さんは複数のクリニックを渡り歩いて何種類も何百錠も溜め込んでいることがあります。患者さん同士で「ここのクリニックは出してくれる」という情報網を持っていることも多いですね。。。たくさん処方してもらって、OD(overdose:過量服用)して救急車で運ばれる、というのはよく出会う不幸なパターンです。

 自分が勤務している病院に紹介されて来る患者さんもベンゾ依存になっている事が多く、まずそれを抜くことから始めます。中にはぼーっとしていたのがそれですっきり治ってしまうこともあり、まさに”医原性”ですね。ベンゾ漬けにするのは医者として糾弾されるべきだと思っています。”これ、1つの病院で出したのか!?”と思うくらいにベンゾ系が盛られていることもあり、そういう時はぎょっとしてしまいます。

 使ってはいけない、というワケではありません。緊張病のようになってしまった患者さんにはベンゾはほぼ必須と思っていますし、アルコールの離脱を図る時にもベンゾを使います。適切な量を適切な期間使うのが大事(そりゃそうだ)。

 あまたあるベンゾたちの中でも、特に依存しやすいのがデパスとハルシオン。これはいかんです。試しに飲んでみたことがありますが、デパスはすぐに効いて”ふわっ”とした感じになります。切れも早くて、ついもう1錠、もう1錠、となってしまいがち。精神科はあんまりデパス出さないですが、他科の開業医さんは好きですよね。自分はベンゾを極力出さないようにしていますが、患者さんが希望する時は、あくまでも一時的に処方すると伝え、依存を作ることを必ず言ってます。他の医者から引き継いだ患者さんの中にはベンゾが結構入っていることもあり、できるだけ服用回数を少なくするようにしています。イライラしたり不安になったり眠れなかったり、そういう問題には自分は漢方で対処することが多いですね。柴胡剤や竜骨・牡蛎の入ったものとか、酸棗仁の入ったものとか。でもなかなか切れない、という患者さんもいます、残念ながら。。。

 ベンゾの離脱をする時は、トラゾドン(レスリン®/デジレル®)による置換や長時間作用型ベンゾによる置換を行います。後者ではロフラゼプ(メイラックス®)を頻用しますね。結構うちの病院はそれ目的で入院してくる患者さんもいます。離脱の最中にイライラとかが出てくるようなら自分は漢方の抑肝散を頓用で出して凌いでもらいます。置換をしていても不眠になるなら、これも抑肝散や、または酸棗仁湯を6包/dayという多めを使います。これでほとんど眠れます、自分の経験上は。酸棗仁湯は、特に投与初期では多めに飲んでもらうのがポイント。3包/dayじゃあなかなか効きません。

 以前の記事にも書きましたが、ベンゾの処方件数において日本は世界の中でダントツの1位です。医者の意識の低さが表れており、これは実に恥ずかしいことだと思います。患者さん側もしっかりと知る必要があり、これは国や精神科がきちんとコマーシャルしなければならないでしょう。

ベンゾ処方

 他には、個人的に思うことですが、処方薬の電子的な管理なんかも良いと思います。お薬手帳をコンピュータ管理にして全国の病院や薬局でその患者さんの処方薬を見ることができるようにする。データベース化ってやつでして、カナダはかなり進んでいるみたいですね。国に管理されると情報統制とか何とか言い出す人がいますが、国ぐるみで、かつ国民もこれは納得して進めなければならない事態だと思います。そうじゃないといろんな病院でたくさんベンゾをもらう人が跡を絶ちません。一方が出さない様に頑張っても他のクリニックに行ってすぐに出してもらっちゃうという事態も良くあることです。もちろん正規ではないルートからの購入というのもありますが、まずはできるところから。ちなみに、ベンゾ依存のことだけではなく、結構お年寄りの患者さんなんかは色々と病院を受診していて(悪気なく、ですよ)ちょこちょことお薬をもらっていることがあるため、それを知らないとお薬てんこ盛りになって副作用でぐでんぐでんになっている、なんてこともあります。そういうのを防ぐためにも、一括で管理してどこでも見られるようにしておくのは良いことだと思います。

 精神科というのは、残念ながら世間の評判がよろしくありません。今回の依存の調査で更に悪くなったでしょう。精神科を糾弾するような本もあり、それも良く売れていますね。。。そういう本はかなり極端で、それを信じられると何とも、、、と思うところもありますが、火のないところに煙は立たないという格言のとおりだと思います。これまでの精神科医療というのを真摯に反省して、能動的に薬の危険性を伝えていくことは必ずしなければなりません。製薬会社に乗せられることなく、真面目に勉強して、国民の皆様や他科の医者にもベンゾ系の危険性を伝える。これまで怠ってきた分、濃厚に行わねばならないでしょう。今後の精神科の使命だと考えています。
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コメント
管理人用閲覧コメント下さったかた、ありがとうございます。
睡眠障害にも種類がありまして、しっかり診断をしたいのが”レム睡眠行動障害”というものかと思います。
まずは睡眠に詳しい医師に相談をしてみることが大事かもしれません。
それを前提とした上で、広く睡眠というところを漢方で考えると、以下のものが代表的かと思います。

酸棗仁湯は、疲れていても眠れないという方に使うことが多いです。ただし、これは特に最初は結構多めを飲むことがポイントです。例えば1日に6包を夕食後と寝る前に分けて飲んでみる、なんていうのを1-2週間続けるのが大事。これをしないとなかなか効いた感じが出て来ません。医師の中には、最初は9包/day使用するという人もいます。
柴胡加竜骨牡蛎湯は不安が前景に立つ場合に使用することがあります。いわゆる”実証”の方に使うもので、悪夢には似たような名前ですが桂枝加竜骨牡蛎湯を使うことが多いでしょうか。
他に頻用するのは帰脾湯、イライラがあれば加味帰脾湯でしょうか。不安でくよくよ悩んでしまう、緊張の糸が切れてしまったような方に用います。
抑肝散や抑肝散加陳皮半夏も良いかと思います。緊張とイライラが見られたり怒りを貯めこんでいたりという生活をしていて、目が冴えて眠れないという方に。
個人的には、悪夢を見る患者さんや寝ている時に叫んでしまうという患者さんに桂枝加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝湯合甘麦大棗湯(柴胡桂枝湯と甘麦大棗湯とを併用)を使用してみて効果がありました。
漢方は、ものによっては3包/dayだと効きが弱いことがあります。酸棗仁湯や(加味)帰脾湯はその代表例でしょうか。その時は6包/dayくらいまでは増量してみることをオススメします。それでダメなら効かないと言えるかと。

他のいわゆる向精神薬ですと、クロナゼパム(商品名はリボトリール、ランドセン)が特にレム睡眠行動障害に効果があると言われます。使用量は0.5-2.0mgくらいでしょうか。精神科的にはトラゾドン(商品名はレスリン、デジレル)を12.5-100mgくらい使用することも多いです。メラトニン受容体に働くラメルテオン(商品名はロゼレム)を就寝前ではなくて寝る3-4時間くらい前に4-8mg使用することも、概日リズムを整える上で選択肢と思います。
広く睡眠ということで代表的な薬剤を挙げてみました。
睡眠というとベンゾジアゼピン系が良く処方されます。ゾルピデム(マイスリー)や他のベンゾジアゼピン系は、言ってみればお酒の様な働きを持ちます。こういった薬剤が逆に睡眠時の行動異常を助長させるという指摘もあります(クロナゼパムは上述の通り治療的ですが)。お酒は沢山飲むとぐっすり寝ますが、少し多めというくらいなら夢かうつつか分からないという状態になりますね。なので、マイスリーも多めに飲めば良いけれども錠数を少なくすると睡眠中にごそごそと、ということもあります。減らしたいけれども減らせないというジレンマになりますので、睡眠を上手く誘う薬剤を乗せた上でゆっくりと減らしてくのが大事です。

しかし、何よりも重要なのが、まず睡眠専門の医師に相談をしてみることでしょうか。
m03a076ddot 2013.03.11 20:52 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

睡眠専門の医師はGoogleで”睡眠 クリニック”などと入れて調べると結構出てきます。プラスしてお住まいの地域を入れて検索をかけるとさらに絞れると思います。もしくは、近くの大学病院に電話をして聞いてみたり、通っている病院の医師に尋ねたりすると教えてもらうこともできます。残念ながら(?)睡眠関連の医師は精神科医が多いかと思います。目星をつけたクリニックの医師紹介のページにどの科の医師かは書かれてあることがほとんどですので、そこで御調べになると良いかと思います。

漢方の副作用についてですが、発疹というのはままあります。また、常用量よりは倍量の方が副作用は出やすいと考えられています。服用する生薬の量が倍になりますので。効果が出てしばらくしたら量を落としてみることも大事かと思います。

薬剤が身体表現性障害を起こすかどうか、というご質問について。身体表現性障害は、身体化障害・転換性障害・疼痛性障害・心気症・身体醜形障害を指す疾患群を意味します。これらは、”他の精神障害や身体の疾患、薬剤による影響では説明できない”という前提に立っていますので、薬剤がそれの原因になるということは定義から外れるかと思います。
m03a076ddot 2013.03.16 08:59 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

診療、というのは難しいものだと思います。
渦中にいる時は少し離れて自分を見直すということが上手く働かないことがあります。
自分もその様なことがあり、あとになって「あの時ああしていれば…」という後悔をすることも。
そういう中で、患者さんができることの1つにセカンドオピニオンを求めるということがあるかと思います。
診ている医者からしても、先入観のないまっさらな眼で第三者に診てもらうというのは、新しい考えをもらうチャンスだと考えています。
中にはセカンドオピニオンと聞いていい顔をしない医者もいるでしょうし、患者さんも「セカンドオピニオンを切り出すと主治医との関係が悪くなるのではないか」と思うことが多いようです。
でも、患者さんの人生は患者さんのものです。不思議に思う点があれば聞いたり他の医者の意見を参考にしたりするのは悪いことではないと思います。
状態が回復し、より良い人生を送られることをお祈り致します。
m03a076ddot 2013.03.18 22:33 | 編集
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