2013
02.18

研修医のための皮膚科・創傷処置・軽症外傷テキスト

 皮膚科関連のお困りごとは結構どの科でも遭遇し、自分のいる精神科でも「ん?」と思うようなことがあります。分からないものは無理せずコンサルトしますが、しっぱなしで考えないのも何だか進歩がないので、どんなものくらいの予測はしてみたい。

 研修医の時、地域医療で開業医さんのところで学ぶ期間がありました。そこは呼吸器内科だったんですが、患者さんは色んな問題を持ってきます。専門じゃないけどちょっとこの先生に相談してみようか、というのは患者さんがその医者を信頼している傍証になるかもしれませんね(色々行くのが面倒だという理由もありましょうが…)。多いのが”整形外科的なもの”と”皮膚科的なもの”の2つ。腰が痛いとか、足が痒いとか。非専門医・研修医としては、見逃してはいけない疾患(腰痛なら悪性腫瘍転移とか!!)を除外して、コモンなものを治療することがまずもって大事です。

 皮膚科は見た目でパッと診断がつくものもあり、それはsnap diagnosisというやつですね。行き過ぎると”思い込み”と称されますが、決まりきった形は入れておいて損はないでしょう。個人的に思い入れのある経験は、上述の開業医さんでの研修の時に、ジベルばら色粃糠疹を診断できたこと。比較的コモンな疾患なのですが、それまで遭遇した事がなくてですね。でも典型的なクリスマスツリー様で、もしやっ!?と思い出せたのが良かったです。”ジベル”とか”ばら色”とか、何となく情緒がある雰囲気で、覚えやすい名前でございます。

 診断するっていうのは大事なことです。患者さんにとって「分からない」というのは不安以外の何物でもありません。身体にばばばっと赤いのが出てきたらそりゃびっくりします。それに名前を付けてあげるというのは、混沌としたところから意味を切り出すという作業(言語の分節性なんて言われます)。「こういう疾患で、こういう経過を辿りますよ」と言う事には、やはり安心を与える意味が大きいものです。経過が良好ならそれでO.K.ですし、経過が良くない場合は、それ以降にも出てくる不安をしっかりと我々は受け止めてしかるべき。疾患名を告げるという事は、それだけで治療的なロードマップの一歩にもなりますし、我々のコンテイナー(患者さんをしっかりと受け止める役割)としての仕事が始まることをも意味します。

 話がずれてしまいましたが、皮膚科的なものは結構遭遇します。診断には様々な検査がありましょうが、非専門医としては”見た目で探していく”というのが王道。そして、治療できるものは治療していく。こらあかんわ、と思ったら引っ張らずにさっさとコンサルトする。そんなのが望まれるでしょうか。

 自分の外来で皮膚科の相談といえば、手荒れが多いですね。。。手荒れはワセリンをたっぷりと使います。それでも少し治りが悪いようなら亜鉛ですよね、やっぱり。病院で出す亜鉛製剤は、プロマック®という胃薬。1錠に亜鉛が17mg入っています。ちなみに、うつ病の増強にも亜鉛はたまに使われます。女性患者さんに詳しく聞くと手荒れは産後や生理前なんかに悪くなる事があるので、そういう時は漢方の加味逍遥散を数ヶ月間気長に内服してもらうと、気がついた頃には良くなっているかも。乾燥が強ければ四物湯を併せて使います。ただ、スッと良くなるものではないので、ワセリンやアルメタ®軟膏などの外用もしっかりと行います。

 お年寄りは皮膚が乾燥して粉を吹いてることが多々あります。それで痒いんですよね。皮脂欠乏性湿疹と言われています。それにもワセリン攻めです。湿潤に持って行くことが何よりも大事。それにプラスして当帰飲子をしっかりと飲んでもらう。痒みがすごく強かったら黄連解毒湯を少しだけ併用しましょう。

 ま、それはそうとして、非専門医や研修医にとって皮膚科はどう勉強しようか、というところ。テキストの紹介ですが、やはりこれが良いのではないかと思います。

内科で出会う 見ためで探す皮膚疾患アトラス内科で出会う 見ためで探す皮膚疾患アトラス
(2012/04/02)
出光 俊郎

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 きわめて実践的。その名の通り”見ため”で探します。小難しいことは抜きにして、現実的に”使える”テキストが重要ですよね。そういった意味でこの本は割り切り感が素晴らしい。この本を作られた先生は、本当によく非専門医のことを分かってらっしゃるんだなーと実感しました。

 ただ、皮膚科志望の研修医にとっては不足気味かもしれませんから、そういう人はしっかりした本で専門医を見据えて勉強するのが良いと思います。今回紹介したのはあくまでも皮膚科を生業としない医者というのを前提としています。

 他には、ヤケドや切り傷も非常に多いです。特に精神科ではEPSとして歩きがぎこちない患者さんも多く、病棟では結構な頻度で転倒が生じます。眉間を打って縫合を…というのもマレではありません。研修医の時に縫合は練習しておいて良かったなーと実感。そういった創傷や熱傷の処置のために参考となるテキストは、この2冊。

ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tipsドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tips
(2007/05)
夏井 睦

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ドクター夏井の熱傷治療裏マニュアル―すぐに役立つHints&Tipsドクター夏井の熱傷治療裏マニュアル―すぐに役立つHints&Tips
(2011/03/15)
夏井 睦

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 夏井睦先生の本。ちょっと過激な発言も多い先生ですが、豊富な臨床経験と確かな実績に裏打ちされたものと言えましょう。湿潤療法は研修医のうちに知っておきたい治療法です。

 救急外来での軽症外傷というのも1つのトピックでしょうか。軽んじずにきちんと対処したいところですね。そういう点では、ここらへんを紹介。

手・足・腰診療スキルアップ (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (4))手・足・腰診療スキルアップ (CBRレジデント・スキルアップシリーズ (4))
(2004/07/15)
仲田 和正

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ERの骨折ERの骨折
(2010/08/26)
太田凡

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救急・当直で必ず役立つ!骨折の画像診断―全身の骨折分類のシェーマと症例写真でわかる読影のポ救急・当直で必ず役立つ!骨折の画像診断―全身の骨折分類のシェーマと症例写真でわかる読影のポ
(2008/12/01)
不明

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 仲田先生の本は学生さんも是非。整形外科で重要な問診・診察が詰め込まれています。軽症外傷って骨折なのかそうでないのかっていうのがお悩みポイント。レントゲンじゃ分からない事も多いですが、撮るからには所見を理解しておきたいところ。全部CTというのも能がないですよね。骨折かどうか、とりあえず帰して良いか。そのためにこの3冊は役に立つ気がします。最近出た本に関しては目を通していないのでちょっと分からないです。。。

 外傷とかそんなのに関わらずマイナーな救急全般では、これに絶対的な信頼を寄せています。

マイナーエマージェンシーマイナーエマージェンシー
(2009/08)
Philip Buttaravoli

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 救急外来に1冊は置いておきたい。自分が研修していた名大病院の救急外来にもありまして、良く使わせてもらいました。これはまさにマイナーエマジェンシーズの大事典。心強いですよ。原著は2012年に改訂されて第3版になっていますが、和訳は2版のもの。第3版が和訳されるのはまだ先でしょうね。初版、2版、3版すべてにおいて、表紙が”虫が入ってイヤーって感じのおねーちゃん”です。何なんでしょう、このこだわり。

 ちなみにまた漢方ですが、うちみですとか捻挫ですとか、そういうのには治打撲一方という、まさにその名の通りというのがあります。ロキソニンと湿布と冷やして挙上だけではスッと退いていかない事も多いのですが、この治打撲一方を使うと不思議と治りがはやいです。結構どかんと量は多めに処方すると良いですね(下痢するくらい←ここ大事)。通導散も良いですが、治打撲一方の方が使いやすい。お勤めの病院に採用があれば患者さんにどんどん出してやって下さい。

 とまあ、テキスト紹介なのか漢方の使用法なのか判然としない記事になりましたが、主眼は前者。救急外来は目玉疾患ばかりではなく、大半はマイナーなもの。そこをどう短時間でかつ出来るだけ正確に切り抜けられるか。そのために今回紹介したテキストは役に立ってくれるような気がします。
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