2012
11.18

肺エコーについてもう一度

 研修医の時、自分は救急外来で胸部の「肺エコー」に凝っていました。もう研修医の間でもIVC径をエコーで眺めるのは常識と言っても過言ではないくらいで、その先をと考えて当時色々と文献を調べてトライをしておりました。肺エコーなんてあんまり聞きなれないでしょうし、後輩の研修医に教えても誰一人として実践してくれなかった悲しい思い出がありますが、決して怪しい技術ではありません。最近は救急の本にもこの技術のことが載り始めてますしね。

 以前、ブログで肺にエコーのプローブを当てて超音波像を見てみようというお話をしましたが、今回はちょっとそれのブラッシュアップ版として記事にしました。

 まず、使うプローブはコンベックスとリニアの2種類。”救急”と割り切れば、探すのは肺水腫と気胸の2つくらいでしょうか。闇雲にプローブを当てずにしっかりと絞って使うべき患者さんに使うと、意外に簡単で胸部Xpより優れています。肺炎も肺エコーで見つけることが出来る様ですが、自分は試みたことがないんですよね。。。プローブは鎖骨中線第3-4肋間に「長軸」で当てて、左右最低でも2ヶ所見ます。

 この肺エコーを行う際に重要なのは、呼吸苦や胸痛、ショックなどの患者さんに限定して用いること。言い換えれば、病歴の段階で肺水腫と気胸が鑑別に挙がる状態でこのエコーをする、となります。ちなみに喘息やCOPDの肺エコー像は正常と同じであるといわれているため、心不全との鑑別に肺エコーは使えますね。意識障害でも見て良いですが、肺水腫に関しては神経原性肺水腫というものがあり、これは急激な脳血管障害(特にくも膜下出血)が原因。カテコラミンが大量放出するため?と言われています。よって意識障害患者で胸部Xpやエコーで肺水腫を見つけても心不全と早合点せずに、血圧が高いことや倒れる前に頭痛を訴えていた、頭を抱えながら倒れたなどのエピソードがあれば頭部CTという検査が必要になるかもしれないことは頭に入れておきましょう。12誘導心電図もそうですね。くも膜下出血ではcerebral Tというのが出るので、それを心筋梗塞と早合点しないことが重要です。ST-T変化は心疾患以外でも見られることは知っておきましょう。

 さて、救急外来の肺エコーで探すサインとしては、sliding lung sign、seashore sign、B-lineの3つ。前2者は気胸を疑う際に、後者は肺水腫を疑う際に。

 肺エコーのlineには、A、B、Z、そして胸膜を反映するpleural lineがあります。A-lineはpleural lineに平行に、そして段階的に出て、正常像でも出現します。B-lineは画面一番下まで元気よく出るレーザービーム状のラインですが、後述します。Z-lineはB-lineに似ますが、画面途中で減衰してしまうライン。Z-lineは気胸でも見られますが正常でも良く出るので、研修医のうちは有用と判断しない方が良いかもしれません。

 正常の肺エコー像シェーマはこのような感じ。肋骨があるため、その下は影が尾を引きます。胸膜はしっかりと白く厚めに見えて、A-lineがぴょろぴょろと。

normal.jpg

 では、気胸から見ていきます。有名なsignはsliding lung signとseashore signの2つ。病歴から気胸が鑑別に挙がり、かつこの2つが見られないことが、気胸という診断を支持します。他には壁側胸膜と臓側胸膜が離れている部分とくっついている部分との境目をエコーで捉えた時に見られるlung pointという所見もあります。このlung pointが見つかれば一発診断。

 sliding lung signを見る時はリニアのプローブを用いるのが理想的です。このsignは呼吸時に生じる臓側胸膜と壁側胸膜とのズレを見ていて、それがhigh echoのラインとして確認できます。ズレがあると、このラインがうにうに動いている様に見えます。気胸になるとそれらの間に空気が入り込んで胸膜同士が接さなくなるため、slidingが無くなります。単純明快な現象ですね。このslidingがなくなるものには気胸以外にも無呼吸、無気肺、慢性肺気腫、ARDS、炎症性の癒着などが挙げられます。この鑑別はしっかり記憶。

 seashore signはMモードで確認。少し深めに呼吸してもらうと良く分かりますよ。正常肺でseashore sign+です。肺実質が呼吸で動いてるので、その部分が砂浜のようなエコーになってくれるのです。気胸を起こしていると動かないためまっすぐ横のラインになっているアーチファクトが深くまで続いて、バーコードみたいな感じになります。肺実質部分と気胸部分の境目にエコーが当たればlung pointが確認できます。それぞれを図で。

m mode normal
m mode pneumo
lung point

 次に肺水腫。B lineが数多く出ていることを確認します。プローブはコンベックスを使用。B lineは正常でも1-2本出るので、見えたからと言ってすぐ異常というわけではありません。病的なB line(B+ line)は、3本以上であり、かつ、B line同士の幅が7mm以内のものというのが一定のコンセンサスを得ている模様です。最低でも左右の肺で確認します。元々間質性肺疾患を持っている患者さんでは、肺水腫が無くともB lineが多く出ることに注意。肺炎でも同様のことが言えます。

 典型的なB+lineを示しましょう。

b-line.jpg

 呼吸苦の患者さんでこんなのが見えたら心不全の可能性が高いという予測が立ちます。もちろん、前に言ったように意識障害や頭痛も伴っている状態では、神経原性肺水腫も考慮しなければいけませんが。

 肺エコーはこのような感じです。肺に限らず、しっかりと鑑別を絞って検査前確率を意識すると、エコーでの確認項目は少ないんですよ。しかも、YouTubeに動画がたくさん挙げられています!ぜひ見てみてください。やっぱり実際の画像を見るのが一番ですよ。
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- dot dot 2012.11.21 04:04
コメント
管理人用閲覧コメントを下さったかた、はじめまして。コメントありがとうございます。

何を調べたいのか?という設定にもよりますが、肺エコーは非常に役に立つ検査だと思います。
自分は救急外来での疾患ばかり診ていたので肺エコーも対象をかなり絞っていました。
想定する疾患の事前確率が高かったため、細かく肺を見る必要性はやや乏しかったと思っています。
そうではなく、B-line含めて所見をスクリーニングとして見る際は、左右4か所ずつ見ると言うのが一定のコンセンサスを得ています。
胸骨傍、前腋窩線、後腋窩線、そして大まかな上下を区切って計4つのエリアができます。

・upper anterior
・lower anterior
・upper lateral
・basal lateral

そこを見ると良いのではないでしょうか。Medscapeのこのページ(http://www.medscape.com/viewarticle/773421_2)にあるFigure 1を見てもらえると「あぁその辺りね」とお分かりいただけるかと。
肺エコーは、慣れると肺炎もしっかり分かるようです(感度95%なんていう論文もあります)。自分はそこまで上達しませんでしたが…。
CTが行き届いている日本ではまだ肺エコーが普及していないのですが、少なくとも単純レントゲンよりは強い威力を発揮してくれると思っています。
ぜひぜひトライしてみてください。
m03a076ddot 2013.09.04 13:52 | 編集
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