2012
09.01

精神科に興味のある研修医向けのテキスト

Category: ★本のお話
 研修医が精神科をローテしてくる時、自分は「まぁ休養と思って下さい」とお伝えしています。そんなんで良いのかっ!?と思うかもしれませんが、何やってんだか良く分からない精神科に興味を持ってくれる様な奇特な方はそうそういないんじゃないかと。精神科を勉強するよりも内科や救急をしっかりみっちり勉強した方が患者さんのためになる様な気がしています。

 とは言え、知識が被らないこともありません。他科でも注意して欲しいのがベンゾジアゼピンの乱用(特に他科はデパス®出し過ぎ!)と、せん妄の対処、そして向精神薬の副作用でしょうか。この3点は精神科ローテ中に学んでおくことをお勧めします。

 まず、ベンゾをだらだら処方するのは慢性的な酔っぱらいを作るのと同じです。安易な処方は慎みましょう。使うとなったらあくまでも頓服として出して、依存と耐性についてお話しします。そして、必ず”去っていく薬剤である”ことを強調。

 そしてせん妄。落ち着かせようと思うまでは良いんですが、そこでベンゾ出したりアタP®(アタラックスPのこと)落としたりと、こちらからすると信じられない様なことをする先生もたまにいるので、そういうのは勉強してもらうと良いですね。

 向精神薬は当然のことながら副作用があります。他科の先生がこういった薬剤を使っている患者さんを診ることも最近は多くなってきたでしょうし、それらの持つ副作用には注意が必要。

 さてさて、「休養と思ってね」と言っても「精神科勉強したいんです!興味あるんですよ!」という変な(?)研修医もいるので、興味のある人用にちょろっとテキストの紹介をします。

 まずは精神科全般について。『標準精神医学』と言った厚めのガチガチな本はあんまり読まなくても良いんじゃないかな、、、と思ってしまいます。それよりも。。。

援助者必携 はじめての精神科 第2版援助者必携 はじめての精神科 第2版
(2011/12/09)
春日 武彦

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 この本は実践的。他にも中井久夫先生(精神科の超大御所)の書かれた『看護のための精神医学』といのがありますが、それよりも現実的で現場向きと言えるかもしれません。『看護のための精神医学』は中井先生の熱い哲学が詰まっています。個人的には中井先生の本の方が好きですが、まず現場でどうだというのを考えると春日先生の方が使いやすいかもしれません。2冊を見比べてみて、自分に合った方を読んでみましょう。

 次に、現代精神科にとって欠かせない薬剤について入門的な本を。代表的なのはこれですね。

精神科の薬がわかる本 第2版精神科の薬がわかる本 第2版
(2011/05/01)
姫井 昭男

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 どういう作用をしているのか、浅く分かります。精神科医がこの本で勉強していたら恥ずかしいの一言ですが、まだ成りたての先生や研修医には良書。ただ、精神科の薬剤はほとんどすべてが仮説のもとにつくられたもの。うつ病のモノアミン仮説だって”仮説”ですからね。。。薬剤を絶対視していては患者さんは良くなりません。

 後は、上でもお話しした副作用について。

予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」―Beyond Dopamine Antagonism予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」―Beyond Dopamine Antagonism
(2009/06)
長嶺 敬彦

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 この本もありますし、同著者の”The Third Disease”という本もあります。特に抗精神病薬の副作用はこの2冊のうちどちらかを勉強すると良く分かります。これは他科の先生や精神科を考えていない研修医が読んでも良い本ですよ。ただ、この本の著者である長嶺先生は精神科医ではなく、内科医的な目線から眺めています。副作用を知るにはとても良い本であることは強調しておきます。副作用については上で紹介した”精神科の薬がわかる本”にも書かれていますが、長嶺先生の本の方がしっかりと記載されています。身体副作用を軽視してはいけないということは、精神科医もしっかりと頭に入れねばなりません。

 後は、マニュアル本の紹介でちらっと出したこの本。

精神障害のある救急患者対応マニュアル-必須薬10と治療パターン40精神障害のある救急患者対応マニュアル-必須薬10と治療パターン40
(2007/09)
上條 吉人

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 この本は精神科医も救急に携わる医師も必携。精神科の患者さんが救急にやって来ても、救急の先生は「精神科だな」の一言で片付けることもあるので、それを払拭する良い本です。これは救急外来を日々こなしている研修医の先生にも読んでもらいたいですね。

 日々の診察では、やはりこの1冊かしら?

精神科における予診・初診・初期治療精神科における予診・初診・初期治療
(2007/02)
笠原 嘉

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 スターターキットの様な存在です。著者の笠原嘉(よみし、と読みます)先生は名大病院精神科の元教授。先生の書かれた本は難しいことを易しく砕いてくれているので、非常にありがたいです。”心的水準”とか”意識野の解体”とか、専門用語で分からないことがあったら上の先生に聞いてみましょう(笠原先生はジャネやアンリ・エーの考え方を援用することが多いです)。最近の若手精神科医は精神病理学の専門用語、特にこういったフランス精神医学のものに不慣れな人も多いので、精神科1-2年次よりはもうちょっと上の先生に聞いた方が適切な答えが返ってきますし、質問される先生も嬉しくなるはず。

 これくらいが、精神科に興味のある研修医向けでしょうか。精神科独特な分野として精神病理学、精神分析がありますが、これに早々と手を出すのはやめておいた方が良いのではないかと思います。興味が昂じて精神科医になってから紐解くものにしておきましょう。深みにはまって抜け出せなくなるか、「精神科ってやっぱりおかしいわ」と思い直して去っていくか、それを危惧してしまいます。敢えて勧めるなら、成田善弘先生のこの本。

新訂増補 精神療法の第一歩新訂増補 精神療法の第一歩
(2007/09/05)
成田 善弘

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 成田先生の本は実に読みやすい。読者に近いというか、悩みながら治療を進めていく様子が実感出来ます。研修医のうちは、精神病理と精神分析についてはあんまり勉強しない方が良いです。自分としてはこの本を提示するのが限界でして、これ以上はやめておきましょう。間違っても木村敏先生とか松木邦裕先生とかを読んじゃいけません(フラグ?)。

 あ、滝川一廣先生の本はオススメです。一般向けの本があるので、それを読んでみてください。『「こころ」の本質とは何か』という新書です。

「こころ」の本質とは何か (ちくま新書)「こころ」の本質とは何か (ちくま新書)
(2004/07/06)
滝川一廣

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 精神症状の言葉というか用語についてやっぱり知りたいという勉強熱心な研修医にはこれを読んでもらいましょう。

精神症状の把握と理解 (精神医学の知と技)精神症状の把握と理解 (精神医学の知と技)
(2008/12/25)
原田 憲一

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 原田憲一先生は精神症候学の第一人者。これを読めば正しい精神科用語を理解できます。分からない部分があれば近くの精神科医を捕まえて聞いてもらえればと思います。ただ、研修期間中にこの本を読む必要性というのは”無”に等しいかと。。。

 「自分、認知行動療法に興味あるんスよ」とか言っちゃう、妙な知識を持った研修医にはこの本を黙って貸します。

ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1
(2011/02/01)
伊藤 絵美

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ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK2ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK2
(2011/02/01)
伊藤 絵美

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 伊藤絵美先生の書かれた、分かりやすいCBTの超入門本。看護師さんのセルフケア向けにアレンジしてますが、だからこそ読みやすい。日々の診療でガチンコのCBTはなかなか出来ないものですが、こういうスタンスを持って患者さんと接すると診療のウデも上がりそう。2分冊ですが、字も大きいし1日で読めます。

 これ以上色々聞いてくる研修医には「じゃあリュミエールでも読んどけよ」と一言優しく(?)声をかけてあげて立ち去ります。『専門医のための精神科臨床リュミエール』は全30巻から成る、精神医学を網羅したもの。各巻が1つのトピックになっているので、興味のあるところを買って読み進められます。言っておきますが、ここまでの必要はありませんよ。

 こんな感じでしょうか。あんまりはまりすぎずに表層をさらっていくのが精神科研修のポイントかもしれません。
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コメント
精神科のローテは終わったんですけど、薬剤が全然分からなかったです。挙げられていた本を読んでみます。
ありがとうございました。
研修医dot 2012.09.04 09:14 | 編集
>研修医さん 
コメントありがとうございます。精神科は他科からすると何をやっているのか謎な科だと思います。あまり勉強しすぎるのは研修医の先生にとってプラスになりにくいので、他科にも役に立つ部分を吸収するのが良いかと考えています。薬剤もざっくりと作用副作用を学んでいただくと役に立つかなと思いますので、ちょろちょろっと易しい本を読んでみるのは良いかもしれません。
m03a076ddot 2012.09.04 20:10 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

”あたらしい”の部分は当初から気になっていたのですが、まぁこれもしょうがないなぁ…と思うようにしています。
ご指摘謝謝でございます。
m03a076ddot 2014.10.21 08:45 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

やっぱり気になりますよね、もぞもぞしますよね。
自分も逆の立場なら「あ、めっちゃ気になる…」と思うはずでございます。
m03a076ddot 2014.10.23 06:42 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

個人的には、精神科志望であるならなおさら初期研修中は身体の勉強をした方が良いと思います。
精神科の考え方は独特なところもありますが、身体科の医学的思考は何に増しても重要です。
研修中にひょっとしたら精神科から他の科に志望が変わるかもしれませんし、仮に精神科医になっても思考形態はダブルスタンダードが良いのではと考えています。
m03a076ddot 2014.11.02 08:46 | 編集
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