2012
08.14

やはりそうであったか

 キノロンは頻用されている抗菌薬です。特にレボフロキサシン(クラビット®)はスペクトラムが広く、1日1回投与でO.K.という使い勝手の良さから、頻用というよりは”乱用”という言葉がぴったりです。最近はガレノキサシン(ジェニナック®)やシタフロキサシン(グレースビット®)という経口キノロンなんかもどんどん出てきて、MRさんに洗脳された医者が軽く出してしまってますね。

 MRさんが悪いというつもりはありません。彼らも仕事でしょうし、お家には奥さんとお腹をすかせた子どもがいることでしょう。。。大事なのは、そういう製薬メーカーの発する情報に騙されずに勉強する医者の真面目さです。MRさんの操り人形みたいになってはいけません。きちんと医療行為をするという重みを持って、我々医者は勉強せなあかんと思います。

 さてこのキノロン。少し前に入院してきた患者さんの持参薬チェックではクラリス®(これはマクロライドですが)とクラビットがじゃらじゃら出てきて、患者さん曰く「風邪になったら出してもらうんですよ。抗生物質はすぐ飲まないと」とのこと。。。

 救急外来をやっていた時も、執拗に抗菌薬をほしがる患者さんがかなりいました。何度言ってもあきらめないその心は大事かもしれませんが「ウイルスって言い切れるんですか!?もし先生の言う様な細菌だったらどうしてくれるんですか!!」とスゴんでくる患者さんも。。。ほとほと参ったものです。それでも頑として処方しなかったので、患者さん受けの悪い医者だったでしょうね、自分は…。

 出す医者も出す医者ですが、患者さんも正しい知識を持ってほしいものです。国がテレビや新聞で広告してくれるとありがたい。ドイツではそれが奏功したようですし。

 それはそうと、クラビットに代表されるキノロンは、1つの特性を持ちます。


結核に効いてしまう


 これです、これ。

実は結核、という患者さんにルールアウトすることなくぴょろっとキノロンを出してしまうと、中途半端に結核を治療してしまい、後で痛すぎるしっぺ返しを喰らうんだよ

 そういう風に教わったものです。結核って異例なほど長期間の治療が必要な病気です。肺炎と誤診してキノロンを1週間とか2週間とかの期間使用してしまうと大変。それをしっかりと裏付ける論文が最近出ました。

Fluoroquinolone exposure prior to tuberculosis diagnosis is associated with an increased risk of death; The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 16, Number 9, 1 September 2012 , pp. 1162-1167(6)

 そこでは、結核死亡リスクとして結核診断前のキノロン投与(OR 1.82, 95%CI 1.05-3.15)が挙げられていました。死亡率にまで影響してしまうとは、恐るべしキノロン。

 結核診断前にキノロンを投与された患者さんはより培養や塗抹が陰性になりやすく、結核の診断をマスクしてしまいます。更には、症状も軽くなってしまうので医者も「クラビット当たったんやなー。これで押したら治るで」と考えてしまう。そうすると正しい診断と治療が遅れるし耐性化もするし、しかも結核は周りの人に感染します。こういうのを考えると、おいそれと出しちゃいけないことは明らかですね。ですが、こういう声が聞こえてきそうです。


でも結核の診断って難しいじゃないか。CTでも分からないって言うし。。。


 ごもっともです。だからこそ、肺炎(疑い)に”出さない”という選択をしてほしいんです。何でもかんでもキノロンという、思考過程を一切踏まない処方は厳罰に処すべきと思っています。

 縛りがあることで、さてどうしようかなと人は考えます。キノロンを封じられたらそれ以外の抗菌薬をしっかり勉強することになり、処方するにも頭を悩ませますね。それが正解なんです。

 医者は勉強してナンボですから、安易にぽいぽいっと出すのは御法度と考えましょう。我々は”Do No Harm”が精神です。キノロン出して患者さんを悪化させる、周囲にも多大な影響を与えてしまうというのは決してしてはいけないこと。
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コメント
お医者さんは日々勉強なんですね。

ホントに大変なんですね。


私には、介護した両親がいまして、せんもうがものすごく強く。嫌な経験ばかりしました。


両親ともせんもうが強いって、どうなってんだよ~的に必死に調べてしまい、ここにたどり着き、ショックを受けました。


でも、近所で名医と言われている、先生が、デパスすんなり沢山出してくださる先生でした。


私は少し違うなぁと思ったので、今は行っていませんが、やっぱり、信頼出来るお医者さんに出会えるのは、奇跡みたいなものですね。
たばさdot 2012.09.09 20:48 | 編集
>たばささん 
コメントありがとうございます。
ご両親がせん妄であったとのこと、随分と苦労されたと推察します。
デパスに代表されるベンゾジアゼピン製剤は使い勝手が非常によいので良く使われますが、やはり依存/耐性とせん妄の誘発/増悪について医者側が注意すべき点と思います。
また、ご指摘の通り、医者との信頼性に悩みを持つという患者さんも多く、その時はセカンドオピニオンというのも1つの方法と考えています(切り出しづらいかもしれませんが)。自分も診ている患者さんからその様な話が挙がると、是非是非とお願いしています。自分の意見だけではなく他の医者の新鮮な目線はありがたく思いますし、時には治療が煮詰まってくるといったんこちら側からセカンドオピニオンを勧めてみることもあります。
いずれにせよ、患者さんと医者との間で風通しを良くすることが大事かなと思いました。
m03a076ddot 2012.09.11 19:26 | 編集
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