2012
07.16

袋叩きの膠質液

 膠質液は、デンプンを成分とするHESが主に用いられています。日本ではHES70/0.5というのが使われていますが、アメリカでは670/0.75なんてのがあったり、ヨーロッパでは200/0.5や最近は130/0.4が使われていたりします。この○○/○○という表し方ですが、スラッシュの左側が分子量を表し、右側が置換度というものを表しています。HES70/0.5なら、分子量70で置換度が0.5ということになります。

 この分子量は、大きいほど毛細血管から漏れ出にくいため、循環血液量を長時間維持できます。分子量が小さいと血管外に逃げたり腎臓から排泄されたりということがあり、投与しても短時間で効果がなくなります。じゃあ大きければ良いんじゃないかと思うかもしれませんが、大きいと第VIII因子/vWF複合体を減少させてしまい凝固能に影響を与えますし、尿細管上皮細胞に空胞変性を生じさせ腎機能も悪化させてしまいます。

 置換度はグルコース糖単位あたりのヒドロキシエチル化の割合を示し、0~1で示されます。置換度が高いと、血中のα-アミラーゼによる分解が遅くなるとのこと。投与したそのままの状態が続くと考えましょう。置換度が低いとHESの分子は投与後すぐに分解されます。となると、腎で排泄されやすく、血管外に漏出しやすくなりますね。しかし、分解されたことで分子の数そのものは増加するため、膠質浸透圧は上がるようです。置換度は分解速度を考慮に入れたもので、分子量とは別の視点をもたらすことになります。ただ、置換度が高いと巨大分子が蓄積されて凝固能に影響を与えて出血しやすくなると言われています。

 他にもC2/C6比というのがあり、高いほどα-アミラーゼによる分解が遅く、粘度が高いとされます。高い程血管内にがっちり留まりやすいと考えます。

 日本で使われているHES70/0.5は、分子量が小さく置換度は低い部類。ということは、投与後すぐに分解されるため分子数は増加し、膠質浸透圧上昇。ですが、分子量が小さいのもあって作用は長時間持続しません。裏を返せば凝固機能や腎機能に与える影響は小さいでしょうね。

 最新のHESは、ヨーロッパで開発されたHES130/0.4というもの。投与すると60kDくらいの分子量に分解されますが、その後はあまり分解されずにこの値を保つそうです。そしてこの60kDはアルブミンと同じような分子量で生理的なもの。これを重症敗血症で用いるとどうなるか?という研究結果が2012年に出ました(Hydroxyethyl Starch 130/0.4 versus Ringer's Acetate in Severe Sepsis; N Engl J Med 2012.DOI: 10.1056/NEJMoa1204242)。そこでは、90日時点において死亡リスクが高く、晶質液よりも腎代替療法を要する結果になりました。残念ながら最新のHESをもってしても敗血症の輸液蘇生に良い結果となりませんでした。。。

 ただ、レクチャーシリーズでも少しお話しましたが、膠質液全部をダメだとして使わないというのはやりすぎ感があります。晶質液と膠質液をうまく使い分けて行く必要があるのでしょう。今回のNEJMの試験は重症敗血症という特殊病態への使用でしたし、しかもこれまでの輸液はどんな病態であれ多すぎたという反省が生まれています。EGDTですら多めではないかとの指摘もあり、少し抑えめが良いと言われます。そのためには膠質液を良いタイミングで併用することも選択肢の1つとして大事なんじゃないかしらと思っています。何でも晶質液1本で!HESはエビデンスないからダメ!と目くじらを立てず、ほどよいブレンドというのを今後は見ていくべき。この“ほどよい”というのがどこかという問題点もありますが。。。
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