2012
07.03

赤ちゃん、お大事に。

Category: ★精神科生活
 妊婦さんに投与できる薬剤、できない薬剤というのは頭を悩ませるところで、FDAはその基準(薬剤胎児危険度分類基準)を出しています。これは“A、B、C、D、X”の5段階。大雑把に言うと、AとBはとりあえず安全かもしれないという扱いで、Cは有益性が勝る時に使う、DとXはダメ、ということになります。

 さて、日本では何と公的な胎児危険度分類が存在しません。添付文書を参考にした山下の分類というのがあり、これが一応の目安にされており、授乳婦についても加味されています。この分類は“A、B、C、E、E、E+、F、-”にカテゴライズされており、Aが投与禁となっておりFDAとは異なるのでご注意を。これも大まかに言うと、AとBがダメで、Cが授乳禁、Eが有益性を考えて使用、Eは妊娠3ヶ月以内と妊娠後期においては特に有益性を考えて使用、E+は使うなら可能な限り単独で、Fが慎重投与、-が注意なしという感じ。一言付け足すなら、“注意なし=絶対安全”という訳ではありません。

 自分の備忘録的に向精神薬の安全性基準を以下にざざっと記しておきますが、ご利用になる際は必ず他のもので確認して下さい(責任は負いかねます)。今回、FDAでカテゴライズされていない薬剤には“?”と記しておきました。なお、全薬剤を記してはいません。

★抗精神病薬
~フェノチアジン系~
クロルプロマジン(コントミン®、ウィンタミン®):C
ペルフェナジン(PZC®、トリラホン®):C
レボメプロマジン(ヒルナミン®、レボトミン®):C
フルフェナジン(フルメジン®、フルデカシン®):C
プロペリシアジン(ニューレプチル®):?
 日本の山下分類では、フルデカシンが妊婦にはAで授乳婦にはCになっており、ニューレプチルが妊婦にはBと授乳婦には-となっています。フルデカシンとフルメジンとでは異なっていて、フルメジンは妊婦にB、授乳婦に-でした。これは筋注と経口とで差があったためでしょう。コントミン/ウィンタミンは日本では妊婦にも授乳婦にもB扱いです。

~ブチロフェノン系~
ハロペリドール(セレネース®、リントン®):C
ピモジド(オーラップ®):C
ブロムペリドール(インプロメン®):?
ピパンペロン(プロピタン®):?
チミペロン(トロペロン®):?
スピペロン(スピロピタン®):?
 FDAではセレネースがCでまだ使えるのですが、日本では残念ながら禁忌扱い。他はインプロメンもトロペロンも妊婦にA、授乳婦にCで、プロピタンとスピロピタンがどちらにもBです。日本において、ブチロフェノン系の中ではオーラップが最も縛りが緩く、妊婦にも授乳婦にも“治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与”という扱い。

~その他~
モサプラミン(クレミン®):?
クロカプラミン(クロフェクトン®):?
スルピリド(アビリット®、ドグマチール®、ミラドール®):?
スルトプリド(バルネチール®):?
ネモナプリド(エミレース®):?
ゾテピン(ロドピン®):?
リスペリドン(リスパダール®):C
パリペリドン(インヴェガ®):C
ペロスピロン(ルーラン®):?
クエチアピン(セロクエル®):C
オランザピン(ジプレキサ®):C
アリピプラゾール(エビリファイ®):C
ブロナンセリン(ロナセン®):?
クロザピン(クロザリル®):B
 ブチロフェノン系同様、結構アメリカで使われていない薬剤が多いですね。日本では、基本的にそれらを含めてこのグループの薬剤は妊婦にE、授乳婦にCとなっています。その中ではクレミンが妊婦にA、ロドピンが妊婦にB、クロフェクトンが妊婦にBにランクしておりほぼ禁忌扱い。クロフェクトンは授乳婦への投与について記載が無く-となります。ドグマチールは特に母乳移行が多いとされ、またクロザリルは母乳によって乳児に鎮静や無顆粒球症を来すことがあるようです。総じて、日本の添付文書ではオーラップ以外の定型抗精神病薬は非常に使いづらい状況になっています。

★抗うつ薬
~三環系~
イミプラミン(トフラニール®):D
クロミプラミン(アナフラニール®):D
アミトリプチリン(トリプタノール®):D
ノルトリプチリン(ノリトレン®):D
ロフェプラミン(アンプリット®):?
アモキサピン(アモキサン®):C
ドスレピン(プロチアデン®):C
 三環系において、FDA的にはアモキサンとプロチアデン以外はほぼ禁忌と考えましょう。日本ではトフラニールとアナフラニールが妊婦にB、他が妊婦にEです。授乳婦には、ノリトレンとアンプリットが-でアモキサンがEとなっており、その他はほぼCです。

~四環系~
マプロチリン(ルジオミール®):B
ミアンセリン(テトラミド®):?
セチプチリン(テシプール®):?
 ルジオミールはFDAではBとされており許容範囲内的な雰囲気ですが、日本では妊婦に同じBでもこっちは投与禁希望のBです。テトラミドは妊婦にEで、どっちも授乳婦にCです。テシプールは日本では授乳婦にB,Cで妊婦にEです。

~非三環非四環系~
トラゾドン(レスリン®、デジレル®):C
 レスリンはCになっています。日本では妊婦にEという扱いで、授乳婦にはB,Cという判定。

~SSRI~
フルボキサミン(ルボックス®、デプロメール®):C
パロキセチン(パキシル®):D
サートラリン(ジェイゾロフト®):C
エスシタロプラム(レクサプロ®):C
 FDAではパキシルがDになっており、胎児には他のSSRIに比してよろしくないという扱い。ただそれに反駁するような内容の研究が出ており、見解は一致していません。日本ではルボックス/デプロメールがBで投与禁希望という扱い。後はEです。授乳婦には全てB,Cとなっています。中でもレクサプロは母乳への移行は多いと言われます。最近、妊娠後期にSSRIを投与すると胎児の肺高血圧リスクが高まるとの論文が発表されました(Selective serotonin reuptake inhibitors during pregnancy and risk of persistent pulmonary hypertension in the newborn: population based cohort study from the five Nordic countries; BMJ. 2012 Jan 12;344:d8012.)。抗うつ薬の使用は本当に何とも言えない状況かと思います。。。

~SNRI~
ミルナシプラン(トレドミン®):C
デュロキセチン(サインバルタ®):C
 日本ではどちらも妊婦にはE、授乳婦にB,Cです。

~NaSSA~
ミルタザピン(リフレックス、レメロン®):C
 日本では妊婦にE、授乳婦にB,Cです。

★気分安定薬
リチウム(リーマス®):D
バルプロ酸(デパケン®、セレニカ®):D
カルバマゼピン(テグレトール®):D
クロナゼパム(リボトリール®、ランドセン®):D
ラモトリギン(ラミクタール®):C
 リボトリールを気分安定薬に入れているのは個人的な趣味です。FDAでは妊婦に使用できるのはラミクタールのみと考えて良いと思います。ちなみに妊婦への使用に対してはオーストラリア分類というのもありまして、そこではラミクタールはBからDに格下げされてしまいました(絶対禁忌ではなく、必要に迫られ、注意して処方されることが有り得るというもの)。日本では、リチウムは妊婦に使用禁忌のA、授乳婦にはCとなっています。バルプロ酸も妊婦に原則Aで授乳婦にC、テグレトールは妊婦にE+で授乳婦にEです。リボトリールとラミクタールは妊婦にEで授乳婦にCに。

★精神刺激薬
メチルフェニデート(リタリン®、コンサータ®):C
アトモキセチン(ストラテラ®):C
 リタリン/コンサータは日本では妊婦にB、授乳婦にはCです。ストラテラは妊婦に対してEで、授乳婦にはCです。

★抗不安薬・睡眠薬
~ベンゾジアゼピン系~
 ベンゾはジアゼパム(セルシン®、ホリゾン®)やロラゼパム(ワイパックス®)など数多ありますが、基本的に妊婦には使わないという方針です。FDAではほとんどがDにランクされており、その中でも特にエスタゾラム(ユーロジン®)とフルラゼパム(ベノジール®、ダルメート®)とトリアゾラム(ハルシオン®)とクアゼパム(ドラール®)がXに分類されています。いわゆるZ系であるゾピクロン(アモバン®)とその光学異性体であるエスゾピクロン(ルネスタ®)とゾルピデム(マイスリー®)がCに入っているので、使わなければいけない状況であればこれらが選択されます。ただし、最近の臨床試験ではベンゾジアゼピン系の催奇形性は否定されつつある状況で、これをFDAが将来的にどう採るのかは注目すべき状況と思います。ただ妊娠末期は胎児に影響(floppy infantや離脱症状)がほぼ確実にあります。日本の山下分類ではほとんどが妊婦に対してEかEであり、授乳婦にはB,Cという扱いです。

~バルビツレート系~
アモバルビタール(イソミタール®):D
ペントバルビタール(ラボナ®):D
 バルビツレートは全部Dにランク。山下分類ではイソミタールが妊婦にF(慎重投与)で、授乳婦には-となっており、ラボナが妊婦にE(分娩前の連用がB)、授乳婦にはB,Cです。

~その他~
ヒドロキシジン(アタラックスP®):C
タンドスピロン(セディール®):?
ブロムワレリル尿素(ブロバリン®):D
ラメルテオン(ロゼレム®):C
 アタPはFDAではCなのですが、日本では残念ながら妊婦にも授乳婦にも使用禁忌でAにランクされています。セディールは日本と中国でしか販売されていないのでFDAの情報はありませんが、山下分類では妊婦にE、授乳婦にB,Cです。ブロバリンは日本で妊婦にB、授乳婦には-となっており、ロゼレムは妊婦にE、授乳婦にB,Cです。

★抗コリン薬
ビペリデン(アキネトン®):C
トリヘキシフェニジル(アーテン®):C
プロメタジン(ピレチア®、ヒベルナ®):C
 これらは山下分類で妊婦にB、授乳婦にはBやB,Cとなっています。ピレチア/ヒベルナだけ授乳婦に-の記載でして、添付文書に授乳婦への注意書きが存在しません。

★抗てんかん薬
フェニトイン(アレビアチン®、ヒダントール®):D
フェノバルビタール(フェノバール®):D
プリミドン(プリミドン®):D
トリメタジオン(ミノアレ®):D
エトスクシミド(ザロンチン®):C
ゾニサミド(エクセグラン®):C
クロバザム(マイスタン®):C
ガバペンチン(ガバペン®):C
プレガバリン(リリカ®):C
トピラマート(トピナ®):C
レベチラセタム(イーケプラ®):C
 日本ではミノアレのみ妊婦に使用禁忌のAで、あとはEやE+となっています。授乳婦に対してはアレビアチン、プリミドン、ミノアレが-で注意なし(繰り返しですが、絶対安全というわけではありません)となっており、それ以外はB,CやCとなっています。

★漢方薬
 FDAによるカテゴリーは当然のことながら存在しません。牡丹皮は早流産の危険性があり、これには加味帰脾湯や加味逍遥散などが含まれます。半夏や厚朴も同じく早流産のリスクに(この2つは何とも言えませんが…)。また大黄も早流産の危険性と、更に母乳への移行により乳児に下痢を起こすことがあります。その他にも桃仁や紅花、牛膝、芒硝、牽牛子も同様に早流産の可能性は必ずしもゼロとは言えません。麻黄や附子も胎児の循環に影響すると言われます。なので少なくともこれらを含む漢方薬は、時期によっては避けた方が良いと思います(厳密にいつだ、とはなかなか…)。人参や黄耆、芍薬は安全に使用出来るのではないかとされています。
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コメント
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

男性が服用した場合のことについては、こちらのHPにわかりやすく書かれていました。
ご参考にしてみてください(http://www.okusuri110.com/kinki/ninpukin/ninpukin_02-06.html)。
m03a076ddot 2014.07.29 15:42 | 編集
ありがとうございました。見てみます。
日本男児dot 2014.07.29 19:16 | 編集
>日本男児さん

ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
m03a076ddot 2014.07.31 07:30 | 編集
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