2012
06.19

旧世代抗うつ薬のまとめ

Category: ★精神科生活
 以下は旧世代抗うつ薬の覚え書きの様なものです。このグループの薬剤は第一選択として使う頻度がどうしても低いため、なかなか覚えられず。。。なので、作りました。あくまでも自分用でして、他の先生方にお勧めできるような内容ではございません。また、科学的な根拠に全て基づいているということは決してありません。

 旧世代、特に三環系は精神病院においてまだまだ抗うつ薬としての存在感が強いと思われます。SSRI以降の新世代は重大な副作用こそ旧世代より軽いのですが、やはり重度のうつ病患者さんへの効果という点では旧世代に劣るでしょうか。セロトニンやノルアドレナリンの再取り込み作用阻害以上のものを感じさせる、奥行きのある薬剤が旧世代。特筆すべきは抗炎症作用で、うつ病のメカニズムの1つとして慢性炎症が言われており、治療抵抗性の患者さんほどその炎症の関与が大きいのではないか、なんて言われてます。三環系はそこにも効いてくれるので、治療効果が高いんじゃないかなと思っています。自分の三環系・四環系の使用経験はもちろんSSRIなどの新世代に比べればかなり少ないですが、アンプリット、ルジオミール、テシプールなんかはその中でも使うことが多い気がします。

三環系:アモキサピン(アモキサン®)、ロフェプラミン(アンプリット®)、クロミプラミン(アナフラニール®)、イミプラミン(トフラニール®)、アミトリプチリン(トリプタノール®)、ノルトリプチリン(ノリトレン®)など

 アモキサンはセロトニンよりもノルアドレナリンの再取り込み阻害の方が強いです。いわゆるアップ系でして、浮上させる力は強いですが同時に躁転も起こしやすいとされます。効果の速さと切れ味は鋭く、また体感異常を伴ったり妄想を伴ったりする様な患者さんに使用できます。使うとしたら最大で200mgくらいまで。これを300mgまで使うとちょっと身体が持たない気がします。また、代謝物はD2受容体の阻害作用を持つため高用量で錐体外路症状が出ることも。けいれんの副作用あり。

 アンプリットはおとなしいタイプ。再取り込み阻害はノルアドレナリンのみですが、代謝物のデシプラミンがセロトニンに作用します。三環系の中では安全な方で、高齢者にも処方しやすいと言われます。後述のルジオミールの眠気と抗うつ効果を軽くして服用しやすくした感じと形容されます。効果はやや弱めで150mgまで使用することも。

 アナフラニールは不安の強いうつや慢性疲労に効果的であんまり眠くなりません。セロトニンの再取り込み阻害作用がより強く、効果発現は早め。けいれんの副作用ありです。静注用の製剤もあり、錠剤とは別物というくらいのすばらしい効果を示し、点滴初日に自覚症状が改善する人も多く見られます。疼痛にも有効とされます。点滴は施行前に心電図でQT延長なきことを必ず確認しておきましょう。静注製剤は、初回は1/3-1/2Aくらいの量を1時間半から2時間以上で点滴するのが無難。嘔気や違和感が強ければ途中で中止しても良く、その場合は次からは1/4Aくらいに。最初に1/2Aを用いても効果がなく、数日続けても効果も副作用もなければ少し量を増やして1-2Aで継続(出来れば2A)。点滴を開始した時から内服も始めますが、別にアナフラニール錠剤にしなくても良いようです。

 トフラニールはノルアドレナリン再取り込み阻害の方が強いです(代謝産物のデシプラミンの作用もあって)。エビデンスとしてはほとんど無いのですが、疼痛に使われることもあります。眠さが比較的少なくて、ナルコレプシーや周期性傾眠症など、眠くなるような疾患に使えるとされます。

 トリプタノールは最強!ノルアドレナリンよりセロトニンの再取り込み阻害の方がやや強いです。自律神経系の副作用は出やすく、またH1受容体阻害のため太りやすいのが欠点。α1阻害もあるので鎮静的に働きます。投与量は150mgまで行くこともしばしば。抗うつ薬の中で、疼痛に対しても最も信頼性の高い薬剤です。

 ノリトレンはトリプタノールの代謝物。アップ系で馬力が出ます。セロトニンよりノルアドレナリンの再取り込みを阻害。焦燥感を起こすことが少なく、副作用が他の三環系よりも少なめで高齢者にも使える様です。治療域の範囲が狭く、処方量の設定が難しいのがちょっと難点。疼痛に関しては、トリプタノールの代謝物なので効いても良いはず。


四環系:ミアンセリン(テトラミド®)、マプロチリン(ルジオミール®)、テシプール(セチプチリン®)など

 テトラミドはモノアミンの再取り込み阻害作用がありません。シナプス前α2受容体遮断でノルアドレナリンの作用を強めます。抗コリン作用は少ないので使いやすい。60mgまでの処方となっていますが、この量では力不足で結局効く感じがしないまま終了してしまうことも。鎮静は結構強くて異様に眠くなります。神田橋條治先生は、双極性障害のうつ状態にテトラミドやフルボキサミンを使用するようです。

 テシプールもモノアミンの再取り込み阻害作用がなく、シナプス前α2受容体遮断でノルアドレナリンの作用を強めます。抗コリン作用は四環系の中でも少ない。テトラミドよりも抗うつ作用はやや強く、鎮静はやや弱いとされます。高齢者にはまだまだ使える薬剤。

 ルジオミールは、再取り込み阻害作用としてノルアドレナリン系のみに作用するという特徴を持ちます。セロトニン系の賦活で焦燥感や希死念慮が増強してしまう患者に向きます。消化器系副作用と傾眠、その他に“けいれん”の副作用を持ちます。穏やかな効き味で鎮静的。疼痛や異常感覚にもかなり有効です。四環系の中では抗うつ作用をはっきりと持つ珍しいタイプ。遷延性のうつにも“低め安定”をつくる感じで適しており、寂しくてナースコールを押すような高齢者にも向くなどとも言われます。


非三環非四環系:トラゾドン(レスリン®)

 抗うつ薬としては超が付くほど非力。眠りの質を改善し、深い睡眠を増やしてくれます(SSRIは深い睡眠を減らしてしまう)。睡眠薬やベンゾジアゼピン離脱の際の置換として使用することの方が圧倒的に多いです。焦燥感の強い患者には向くことは向きますが、これのみで立ち向かうのは不可能でしょう。



 こんな感じにまとめました。日本にはドパミンを賦活するタイプの薬剤が非常に少なく、そこがうつ病治療を少し難しくしているかもしれません。海外で使用されることのあるMAO阻害薬はセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン全てを賦活する薬剤として有名ですね。また、特に三環系は精神科医の腕の見せ所的なところがありますが、薬剤相互作用が随分と多いこと、そして抗コリン作用による認知機能低下の恐れがあること、心血管リスクとなること、などから十分な注意が必要であります。
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コメント
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

抗うつ薬はベンゾと作用機序が全く異なるもので、不安障害にも効果を示します。
ベンゾは即効性がありますが抗うつ薬にはそれがなく、継続的な服用で1-2週間ほどで効果が出てきます。
改善の効果もベンゾより高いことが示されています。
昔の抗うつ薬は安全性にやや疑問符がつきましたが、現在のものは改良されています。ただ吐き気や便秘などの副作用が出るため、自分は通常の開始用量の半分から始めています(こうすると副作用が非常に軽いor出ない)。
不安障害でお薬を使わなければならないと言う状況であれば、自分は漢方薬か抗うつ薬を使います。ベンゾはあまり使いません。
m03a076ddot 2014.04.28 08:29 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

抗うつ薬とベンゾとでは作用機序が全く異なります。
何を以て同等と言うのかが難しいですが、治るということを考えるとベンゾよりも抗うつ薬に軍配が上がります。
m03a076ddot 2014.05.02 18:20 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

抗うつ薬に関しても根治だとは思っておりません。
あくまでも対症療法の延長であり、治りやすくするというのが適切かもしれません。
治るのは、主治医の先生と患者さんとの良好な関係と、それがもたらす質の高い養生によるところが大きいと思います。
m03a076ddot 2014.05.06 15:02 | 編集
抗鬱薬、抗不安薬は脳に作用すると思いますが、長期的に服用し続けると
脳の機能が変わってしまうとか萎縮してしまうなど、脳への永続的な影響
はありますか?
伝助dot 2014.07.18 13:44 | 編集
>伝助さん

ありがとうございます。
服薬によって脳機能などが変化するかという点ですが、例えば抑うつ状態の脳から健康状態への回復を促すことも変化ですから、機能が変わると言えば変わります。萎縮については、確かに抗精神病薬によって萎縮するのではないかという報告があります。しかし、精神疾患そのものの経過でも萎縮は生じます。薬剤治療によってその病勢を抑えることで、萎縮を最小限にとどめることが出来るかもしれないという言い方もできるでしょうか。
どのようであれ、必要最小限の薬剤で治療するというスタンスが重要であると思います。
m03a076ddot 2014.07.18 22:58 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

レクサプロを使いたいけれども副作用が気になるのであれば、やはり投与量を少なくしてみるべきでしょう。
私はいつも添付文書の半量(5mg)から開始をしています。
QT延長がとても気になるのであれば、心電図検査をしておくのが好ましいでしょう。
また、患者さんによって不安のタイプも異なるので、最初に絶対レクサプロ、次は絶対コレ、というような決まりはないかと思います。
m03a076ddot 2016.05.07 12:20 | 編集
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