2012
04.27

リチウムの血中濃度測定について

Category: ★精神科生活
 2012年4月に、PMDAから「医薬品適正使用のお願い(炭酸リチウムによる重篤なリチウム中毒と血中濃度測定遵守について)」というお知らせが出ました(http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201204_4.pdf)。

 リチウムは血中濃度を測らねばいけないお薬で、治療域が狭いというのも事実。ですが、双極性障害に対する気分安定薬の最古参でありながら治療効果が最も期待できるものでもあります。色々な薬剤が双極性障害に使われていますが、やっぱり頼りになるのはリチウム。双極性障害の治療をする上では欠くことが出来ませんし、うつ病の増強でも大きな効果を示してくれます。

 このPMDAのお知らせでは「維持療法期でも月に1回は血中濃度を測りなさい」となっています。しかし、この頻度は”適正”使用とは言いがたいものがあります。ほぼ毎回採血することになりますし、社会復帰という観点からすると非現実的。このお知らせに日本の精神科も俊敏に反応し、日本うつ病学会・日本生物学的精神医学会・日本臨床精神神経薬理学会・日本神経精神薬理学会の4学会が手を取り合って意見書を提出する事態となりました。

 世界的に見て、リチウムは維持療法期において、3-6ヶ月に一度の血中濃度の測定で良好なマネジメントが出来ます。NICE、CANMAT、ISBD、APAの各ガイドラインもほぼこの期間です。

 相互作用を持つ薬剤を使用している時(NSAIDs、ACE阻害薬など)、脱水時、腎機能低下時、中毒らしき症状発現時にはもちろん注意深い血中濃度測定が必要となります。頻回の測定もここでは大事でしょう。

 私たちは、患者さんがお薬を飲みながらも社会復帰して日常生活・社会生活が送れるということを目標としています。維持療法期における月に1回の採血という画一的な通達はそれに反し、3-6ヶ月の採血より優れている根拠もありません。臨床医は柔軟性を以て、血中濃度測定の間隔を設定すべきと思います。もちろん、それにはリチウムそのものについて熟知しておくことは言うまでもありません。

 ということで、4学会は以下の推奨を示しました。


”投与初期または用量を増量した時には1週間に1回程度をめどに測定する。維持療法中は、年2-4回をめどに測定する。再発時、相互作用が疑われる薬剤の併用開始時、身体疾患合併時、服薬不遵守が疑われる時、副作用発現時、中毒が疑われるときなどに適宜測定する”


 今回の”月に1回の血中濃度測定”に尻込みしてリチウムの使用頻度が低くなるということは避けねばなりません。PMDAも再考すべきでしょう。ただし、それ以前に、投与する側も治療域が狭い薬剤であるということ、血中濃度が変化する状況というのを知っておかねばなりません。知らずに使うのは以ての外。患者さんのために私たちは存在するのであって、患者さんのために自分が使う薬剤、特に安全域の狭いものについて知っておくというのは当然のことです。
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