2012
04.08

敗血症性ショックへの輸液

Fluid resuscitation in septic shock: A positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with increased mortality
Critical Care Medicine: February 2011 - Volume 39 - Issue 2 - pp 259-265

 敗血症性ショックに対する輸液量は、少なすぎてもダメですが、多すぎても患者さんにとって良くありません。EGDTで言われる“中心静脈圧(CVP)を8-12 mmHgにしろ”というのも、ちょっとどうなの?と最近は疑問符を投げかけられています。

 今回は、敗血症性ショックへの輸液はどのくらいが良いだろうか?という上記論文をちょろちょろっと紹介します。

 この論文の前にも、SOAP studyという試験があり、敗血症性ショックの患者さんでは水分出納がプラスになると死亡率が上昇したと結論付けられています(Sepsis in European intensive care units: Results of the SOAP study. Crit Care Med 2006; 34: 344–353)。更に、ALI(急性肺障害)の患者さんを対象とした論文では、水分出納がプラスになることで人工呼吸期間が延長し、死亡率が上昇する傾向にあるとされました(Comparison of two fluid-management strategies in acute lung injury. N Engl J Med 2006; 354:2564–2575)。現在、金科玉条のように謳われている2008年のSurviving Sepsis Guidelineでは、中心静脈圧が8-12mmHgに達するまで輸液をガンガン行い、心室充満不良/人工呼吸中の場合は目標値を12-15mmHgに上げなさい、としています。にもかかわらず、輸液の“減らし時”や“止め時”のタイミングについては、こうしろという明確なものは出されていません。

 著者らは、敗血症性ショックの患者さんへの輸液にはまだ分からない点があることを踏まえ、VASST(VAsopressin in Septic Shock Trial) Studyをretrospectiveに眺めました。細かい設定を抜いてざっくり言うと、以下を検討。

・治療開始から12時間そしてその後の4日間の水分出納がプラスなら、28日後死亡率が上昇するか?
・中心静脈圧がその期間で水分出納と関連しているか?

 中心静脈圧についてはSurviving Sepsis Guidelineに従い、推奨されている群(8-12mmHg)、8mmHg未満の群、12mmHgを超える群の三つに分類。推奨群が他の群より生存率が高いかどうかを解析した。また、水分出納量によって患者さんを四等分しています。Quartile1がもっともdry、2,3と続きQuartile 4がもっともwetという分類。

 水分出納量について見てみると。。。水分出納量が増大するほど死亡率が高くなりました(Figure 2)。

fig2.jpg

 中心静脈圧はどうでしょう(Figure 4)。治療開始12時間経過した時点では、中心静脈圧が8mmHg未満の群が最も生存率が高く、次に推奨群、最後に12mmHgを超える群となりました。第1日から第4日までの間では、中心静脈圧の差による生存率の有意差は認められませんでした。

fig4.jpg

 これらから、治療開始12時間経過した時点では、中心静脈圧と水分出納量の両方が死亡率と関連するということが判明しました。興味深いところは、治療開始12時間後では水分出納量プラスの度合いが少ないほど死亡率は低かったのですが、中心静脈圧が8mmHg未満の群では逆で、水分出納量が多いほど死亡率が低かったというところ。

 EGDTの目玉は、中心静脈圧が8-12mmHgとなるように輸液を行うこと。ですが、SOAP studyではそれとは異なる結果となっており、水分出納量がプラスなら死亡率が上昇してしまいました。今回のVASST studyでも同様の結果。この試験では、治療開始12時間後における水分出納量が約プラス3Lの時に、最も生存率が高いのではないかという結果になりました。そして、敗血症性ショックの発症から12時間以上経過すると、中心静脈圧は輸液反応性の予測に役立たず、水分出納量のマーカーにもならないとされました。

 水分出納量が多いほどand/or中心静脈圧が高いほど死亡率が高いということがこれまでもいくつかの試験で言われ、今回もそれを裏付けるものでした。輸液量が多すぎると肺がずぶ濡れになりますし、腎機能も悪化することが言われています(Fluid accumulation, survival and recovery of kidney function in critically ill patients with acute kidney injury. Kidney Int 2009; 76: 422–427)。

 この論文のlimitationとして著者らは、以下を述べています。

・試験そのものがretrospective
・輸液製剤の種類が分からない

 そして、前向きできちんと制限輸液と大量輸液を比較しましょう、と結んでいます。2012年中にはSurviving Sepsis Guidelineが改訂される予定です。ScvO2で評価というのはどうなの?とも言われており、CVPやこの辺りの数値設定がちょっと変わってくるかもしれませんね。
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