2012
04.01

栄養療法 Starter & Booster:第1回~栄養状態を評価してみよう

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 さて、栄養療法について何回かに分けてお話ししていこうと思います。1回目の今回は、目の前の患者さんがどういう栄養状態なのか??これを知るところから始めましょう。

 栄養状態の評価には、主観的包括的評価(SGA: subjective global assessment)と客観的栄養評価(ODA: objective data assessment)、そして高齢者の評価に適していると言われる簡易栄養状態評価表(MNA: mini nutrition assessment)やGNRI(geriatric nutritional risk index)などなどがあります。

 SGAは“主観的”というくらいですから、ちょろちょろっとお話を聞いて身体計測して何となく評価するもの。

・体重変化(いつからどのくらい変化?)
・食物摂取変化((いつからどのくらい変化?)
・消化器症状(嘔気・嘔吐・下痢)
・機能状態(ADLの確認)
・疾患と身体状況の評価(基礎疾患やバイタルなどなど)

 これらを確認して、身体所見。どんな所見かと言うと、上腕三頭筋の皮下脂肪の厚さ(TSF)を測ったり、上腕周囲の長さ(AC)を測ったり。これで脂肪や筋肉の消失具合を見ます。他には浮腫(踝部と仙骨部)や胸水・腹水の有無を評価。最終的にA-Dの4段階でSGAグレードを決めます。

 これはかなり主観的ですが、練習練習。身体所見は計測する人によってバラツキがあるので、同じ人が測って変化を見るのが勧められています。この中ではやっぱり体重は基本ですけど一番大事。常に変化を見ましょう。

 でも、SGAの問診項目って、普段やってることですよね。何気なく毎日の診療で行っていることに、栄養という視点を持ち込めば、SGAは出来たも同然。

 ODAには検査値が入ってきます。アルブミン、コリンエステラーゼ、コレステロール、rapid turnover protein(トランスフェリン、プレアルブミン、レチノール結合蛋白)、窒素バランス、総リンパ球数などなど。各項目について見てみます。

 血清アルブミン値は低ければ低栄養で基準値なら安全、というわけには行きません。低い例を出しましょう。アルブミンは肝臓で作られるので、肝臓がヘタっていれば値は低くなりますし、あとは尿や下痢などで出ていくことも。ネフローゼ症候群なんて蛋白尿がすごいですよね。腎臓のフィルター機能が落ちているので、アルブミンがどんどん尿に出て行ってしまいます。他には、甲状腺機能亢進症で代謝が活発になっている時や、感染症の勢いが強くて消費される時も値は低くなります。また、溢水になって血液が薄まっていたら見かけ上低くなりますね。基準値内でも安心出来ない例を挙げてみます。アルブミンは半減期が21日くらいなので、その期間内に低栄養になってもリアルタイムに反映されません。他にも、血液濃縮で見かけ上の値が高くなることもあります。脱水でヘロヘロの痩せたおじいちゃんのアルブミンが3.8で意外と保たれていた。へーっと思いながら輸液で補正して、翌日採血してみるとあらびっくり。。。というのは日常茶飯事です。

 他の検査値では、肝機能が正常であれば、タンパク代謝能としてコリンエステラーゼ、脂肪の合成能として総コレステロールが使えます。また急性衰弱の評価には、rapid turnover proteinとして半減期約7-10日のトランスフェリン、半減期約3-4日のプレアルブミン、半減期約12-16時間のレチノール結合蛋白(LBP)が使えます。ただ、これらのrapid turnover proteinはコストがかかることと、自分の勤めている病院では外注なので、結果が返ってくるまでやたら日にちがかかります。。。すぐ知りたい時になかなか。。。他には尿中の尿素窒素量を測定することで、窒素バランス(アミノ酸投与量(g/day)÷6.25-尿中尿素窒素(g/day)×1.25)が負であれば蛋白異化の亢進、正であれば蛋白同化が優位と言えます。あと面白いことに、リンパ球の数も栄養の指標になるんですよ。2000以下を軽度、800-1200を中等度、800未満を高度の栄養障害を示唆するものとなります。

 このように、検査値もちょっと見方を変えれば栄養の指標となってくれます。漫然と眺めずに、利用できるものは利用しましょう。

 ただし、ICUに入るような患者さんにおいては、サイトカインストームの中で様々な反応が起こります。そのためこれらの指標は栄養状態と相関しないようです。間接熱量計というものを使うのが良いのではないかと言われてはいますが、それもどうかなーという意見もあり。この状況の患者さんでは適切な評価が実に難しくなります。。。こういう超急性期については、機会を改めてまたお話しようかと思います。

 GNRIはアルブミン値と実測体重と理想体重を用いるだけで算出できるので簡便です。高齢者用ですが、透析患者さんにも有用性が高いのでは?と言われています。

 式は以下のように求められます。

GNRI=14.89×血清アルブミン値(g/dL)+41.7×(実測体重/理想体重)

 この式では、実測体重のほうが理想体重よりも大きければ、実測体重/理想体重=1とします。そして、理想体重はLorentz equationsの式で求めるか、BMI=22となる体重としています。

Lorentz equationsの式
男性:理想体重=身長-100-{(身長-150)/4}
女性:理想体重=身長-100-{(身長-150)/2.5}

 高齢者の場合、寝たきりで身長が測れない患者さんもいます。こういう時、GNRIでは膝高を用います。

男性:身長(cm)={2.02×膝高(cm)}-(0.04×年齢)+64.19
女性:身長(cm)={1.83×膝高(cm)}-(0.24×年齢)+84.88

 これは大きいポイントかと思います。

 このGNRI、原法でのカットオフはこのようになっています。

82>:重度栄養リスク
82-91:中等度栄養リスク
92-98:軽度栄養リスク
98<:リスクなし

 透析患者さん用には、日本では以下にカットオフが設定されています。

91≧:栄養障害リスクあり
92≦:リスクなし

 MNAはスクリーニングとしてShort Formが用いられています。参考に載せておきましょう。

mna nestle
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コメント
管理人用閲覧コメントを下さったかた(先生)、ありがとうございます。

臨床経験を多く積まれている先生に見ていただけるのは、恐縮ですがありがたくも感じております。
自分も現在精神科なので入院患者さんの栄養管理や輸液管理からは随分と離れております。
しかし、専門のみに偏らないようにと勉強を続けて行きたく思っています。
ありがとうございました。
m03a076ddot 2014.05.06 15:13 | 編集
精神科の医師が、栄養管理についてここまで詳しく、説明して戴いたことに感動しております。私しは、精神科単科病院に勤務する管理栄養士です。GNRIについて検索しておりました。精神科は、いまや、統合失調症の入院患者は少なく、高齢認知症患者の入院が多く、栄養状態の低下した患者も多いです。当院にも、先生のような医師が勤務していると心強いと思いました。わかりやすいご説明ありがとうございました。
dot 2014.11.03 08:53 | 編集
名無しでコメント下さったかた、ありがとうございます。

自分が勤めている病院も認知症スーパー救急が始まり、精神病院はどんどんと高齢者の入院が増えてきています。その中では栄養というのが重要になってくると思います。
栄養療法は大きなパラダイムシフトを来たしつつあり、従来のカロリー配分や投与カロリーも崩れてくる可能性がある分野です。
常識を疑い、積極的に新しい知識に触れてみることも重要になってきそうです。
m03a076ddot 2014.11.04 09:58 | 編集
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