2012
03.25

感染症の本

Category: ★本のお話
 感染症診療はどの科に行っても必要になってきます。研修医でローテートするどの先々でもついて回るのが感染症。救急外来でも感染症。

 そして重要ポイントは、感染症の診方を知っているということは、感染症以外の発熱疾患の発見にもつながります。熱が出る疾患はたくさんあります。その中で感染症と非感染症とを見分けられる能力、これが大事。そのためにも感染症はしっかり勉強せねばならないのです。”風邪にフロモックス®”なんて処方を見ると「あぁ、残念な人だな…」と思ってしまいます。

 かつ、感染症の診療をしっかり行うには、きちんとした筋道、ロジックが必要になります。そして、そのロジックは鑑別一般にも還元可能。優れた感染症医は優れた内科医でもあるんです。

 最近は研修医向けでも感染症の優れた本が、良い意味で乱発されています。どれを読もうか迷ってしまいますが、どの本も総じて良質。その中で、自分が読んで良いなと思ったものを紹介したいと思います。たくさん挙げろと言われたらいくらでも挙げられますが、ある程度絞って。。。

 まずは、机の上にこれ。紹介するまでもないですが、『レジデントのための感染症診療マニュアル』です。”レジデントのための”と銘打ってはいますが、”医師のための”というレベル。通読するものではありませんが、困ったときには必ず紐解くもので、そして買ったら総論部分は早めに読んでおきましょう。青木先生は日本感染症診療の礎を築いてくれた方です。
 そして2015年3月23日には何と第3版が出ますよ! 深く考えずに第三世代セフェムとか経口カルバペネムとかを出すような医者に読んでほしいんですが、そういう人たちはこの本を開くようなことすらしないんでしょう…。残念。

レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版
(2015/03/23)
青木 眞

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 次は、大曲先生の『感染症診療のロジック』です。これはイチオシ!青木先生の総論部分をより詳細に説明してくれて、プラスして代表的な症候へのアプローチも付いています。このロジックは早めに頭に叩きこんでおきましょう。必読本!何度も何度も読むべし(薄いですし)。

感染症診療のロジック感染症診療のロジック
(2010/04/01)
大曲 貴夫

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 がちっと総論を学んだら、微生物の臨床的な知識を入れるために大野博司先生の『感染症入門レクチャーノーツ』をパラパラと。GPCルールやGNBルールなど、細菌がどういう振る舞いをするのかということを教えてくれます。細菌の性格を知っておくことは、各感染症原因菌のアタリを付けるために大事な知識です。これは学生さんにもオススメ。大学で学ぶ微生物学は重要ですが臨床に直結しているわけではないので、それと臨床との橋渡しとしての役目を担ってくれます。

感染症入門レクチャーノーツ感染症入門レクチャーノーツ
(2006/09)
大野 博司

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 次に抗菌薬についても学びましょう。『レクチャーノーツ』でもひと通り説明はされてますが、抗菌薬なら矢野晴美先生の『絶対わかる抗菌薬はじめの一歩』が研修医には分かりやすい。岩田健太郎先生の『抗菌薬の考え方・使い方』と見比べて自分にフィットした方を選んでみましょう。岩田先生の本は2012年3月末に改訂されて第3版となっています。自分は第2版までしか読んでいないので、第3版の評価はできません。。。矢野先生の本と岩田先生の本とでは細かい違いがあり、第2版までで言うと、例えば第4世代のキノロン(モキシフロキサシン)は嫌気性菌のカバーをしているんですが、矢野先生はそのまま「カバーしてますよ」と。岩田先生は「カバーしてるけど嫌気性菌をこれで叩きに行くのは少し自信がない」と書いてます(うろ覚えですが…)。第3版ではどういう記載になるのか分かりませんが、岩田先生はエビデンスの他に経験的な部分も取り入れて記載しています。あとは、矢野先生はけっこうアメリカ色が強い。岩田先生は日本の実情を加味している印象があります。

絶対わかる抗菌薬はじめの一歩―一目でわかる重要ポイントと演習問題で使い方の基本をマスター絶対わかる抗菌薬はじめの一歩―一目でわかる重要ポイントと演習問題で使い方の基本をマスター
(2010/03)
矢野 晴美

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抗菌薬の考え方、使い方Ver.3抗菌薬の考え方、使い方Ver.3
(2012/03/30)
岩田 健太郎、宮入 烈 他

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 矢野先生は他にも『感染症まるごとこの一冊』という本を出していて、抗菌薬以外にも細菌の知識や検体やワクチンのことなどに触れています。こっちでも良いですよ。

 また、矢野邦夫先生の書かれた『ねころんで読める抗菌薬』『もっとねころんで読める抗菌薬』という本が2014-2015年にかけて出まして、現時点では抗菌薬の入門としてこの2冊がとても優れていると思います。

 総論と各論を以上で学んだら、あとはマニュアル。『サンフォード』は持っておくとして、他に必要なのが大曲先生編集の『がん患者の感染症診療マニュアル』です。”がん患者の”と枕詞が付いていますが、一般感染症にも応用可能。そして、患者背景についてはマニュアル以上のものがあるので、これは持っていて損はないと思います(2012年10月に第2版が出ましたね)。

がん患者の感染症診療マニュアルがん患者の感染症診療マニュアル
(2012/10)
倉井華子、冲中敬二 他

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 この他にマニュアル本としてはちょろっと前に紹介した亀田総合病院の『総合診療・感染症科マニュアル(亀マニュ)』や藤本先生の『感染症レジデントマニュアル』も良いでしょう。大曲先生がWeb上で公開していた”手引き”が『新訂版 感染症診療の手引き』として出版されましたし、マニュアル系は充実してきましたね。

 外来を行うのであれば、岩田先生の”『感染症外来の帰還』や大曲先生編集の『見逃したら怖い外来で診る感染症』は読んでおいて損なし。救急外来の感染症診療に強くなれます。ただ、後者では膀胱炎にアモキシシリン投与となっていますが、これは個人的にですがオススメをしません(耐性が多すぎて…)。かと言ってキノロンは使いたくないですしね。ST合剤かホスホマイシンを自分は使っています(これが良いかは別問題ですが…)。

感染症外来の帰還感染症外来の帰還
(2010/04/01)
岩田 健太郎、豊浦 麻記子 他

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見逃したら怖い外来で診る感染症見逃したら怖い外来で診る感染症
(2010/04)
大曲 貴夫

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 まずはこんなところでしょうか。グラム染色を重視した症例集としては『感染症ケースファイル』が面白い。喜舎場先生が監修しています。

感染症ケースファイル―ここまで活かせるグラム染色・血液培養感染症ケースファイル―ここまで活かせるグラム染色・血液培養
(2011/04/01)
谷口 智宏

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 アトラス的なものとしては『ひと目でわかる微生物検査アトラス』と『Direct smear Atlas』と『感染症診断に役立つグラム染色』が良いと思います。

第2版 感染症診断に役立つグラム染色―実践永田邦昭のグラム染色カラーアトラス第2版 感染症診断に役立つグラム染色―実践永田邦昭のグラム染色カラーアトラス
(2014/10/22)
永田邦昭

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 学生さんは大野先生の『レクチャーノーツ』以外にも、『感染症診療スタンダードマニュアル』や『抗菌薬マスター戦略-非問題解決型アプローチ-』で勉強するのもアリです。両者とも訳本で、前者は”マニュアル”と訳されていますが、全くそういうことはありません。英語は難しくないので、原著(Infectious Diseases: A Clinical Short Course)で学んでも良いですよ。自分は国試が終わってから研修に入るまでの間で原著を読みました。後者は訳者である岩田先生の注釈が適度に付いているので、訳の方が良いかなと思います。いずれにしても、国試受かることが最優先というのは言うまでもないですが、ちょっとした臨床勉強にオススメですし、国試と研修開始との空白期間に2冊勉強してしまうのもGoodです。

 結局いつものように紹介する本が多くなってしまいましたが、実際に手にとって自分にあったものを買って勉強しましょう。総論と各論とマニュアル本。そのすべてが大事です。そしてしつこいですが、感染症診療は全ての科で必要。すべての医者が非専門医のスタンダードレベルを求められると考えても良いでしょう。血培取らないとか取っても1セットだけとか、はたまたカルバペネム(しかも投与量と投与回数が少ない)で果てしなくゴリ押しするとか。。。そういうことをしないためにも、研修医の時からしっかりと土台を学ぶ必要があります。感染症をロジックに則ってうんうん唸って考えていると、内科診療そのものの考え方もレベルアップしますから、いいことずくめです。ただ、勉強すればするほど抗菌薬どれ使おうか、、、と悩みが深くなりますが。。。「勉強したはずなのに分からなくなる」というのは感染症の勉強において正しい経過です。これを我慢して勉強を続ければ状態も改善してきますよ。



追記:矢野邦夫先生と矢野晴美先生について、記事の中に間違いがあり修正いたしました。ご指摘くださったかた、ありがとうございます(2015年3月26日)。
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コメント
管理人閲覧用コメントを下さったかた、ありがとうございます。

致命的な勘違いをしておりました。早急に修正いたします。
ご連絡してくださり、感謝いたします。
m03a076ddot 2015.03.26 12:14 | 編集
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