2012
03.20

総論、各論、マニュアル本。

Category: ★本のお話
 研修医の使う本には大まかに以下の様に分けられます。

・総論~いわゆる診断学や、各科の基礎的な解剖生理学的事項。
・各論~各種疾患/病態の診断・治療的知識。これで鑑別疾患の違いを細かく意識できます。
・マニュアル~とりあえず実践でどう動くか。表層をさらっていく感じ。

 研修医が研修医としてきちんと働くには、この3つのバランスが必要です。

 総論は大事。自分が最も重視しているところです。これがあるから各論とマニュアルも生きてくる、がっしりとした土台と思ってもらえると良いかと思います。でも、これだけ学んでも、それぞれの疾患についてどう診断と治療をしたら良いのか分かりません。

 各論があって初めて、自分の向き合っている病態や疾患への対処法がカスタマイズされます。しかし、総論がないと1本の共通するスジみたいなものが見えてこないので、知識がバラバラになりがち。

 マニュアルは大変便利で、臨床では最も使うかと思います。マニュアルを否定する医者はものすごく頭が良いんでしょうけど、それを他の人に求めるのは酷かも知れません。ただし、マニュアルはスポット的な知識。ちょっと捻られると対応できない部分もあります。前提として総論と各論の知識が必要になるんでしょうね。

 イメージとしては、総論が土台としてしっかり。次に各論で該当する病態や疾患について枠組みを作っていきます。最後にマニュアルを置いて臨床の閾値に到達。土台をしっかり作らずにグズグズな地盤の上に各論とマニュアルを組み立てても、ちょっと揺れたらパタッと倒れてしまいます。

無題

 なので、勉強する時もそれぞれをバランス良く配合しましょう。

 総論としての診断学の本は少なめで、読んだからといってすぐ実力アップにならないので敬遠されがち。でも大事ですよ。

 ”誰も教えてくれなかった診断学”が研修医に親切な作りで読みやすいです。難しめですが読んで納得なのは”Learning Clinical Reasoning”でしょうか(岩田先生訳で”クリニカル・リーズニング・ラーニング”として出ましたが、訳でも難しいです)。

誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか
(2008/04/01)
野口 善令、福原 俊一 他

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Learning Clinical ReasoningLearning Clinical Reasoning
(2009/09/11)
Jerome P. Kassirer、John B. Wong 他

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 問診技術としてはTierney先生監修の”The Patient History(訳:聞く技術)”、診察含めるならMcGee先生の”Evidence Based Physical Diagnosis(訳:マクギーの身体診断学)”やJAMAの”Rational Clinical Examination(訳:JAMA版 論理的診察の技術)”など。尤度比含めて診断への道筋を練習するなら”考える技術(原著:Symptom To Diagnosis)”が会心の出来。

The Patient History: Evidence-Based Approach (Lange Medical Books)The Patient History: Evidence-Based Approach (Lange Medical Books)
(2004/12/16)
Lawrence Tierney、Mark Henderson 他

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Evidence-Based Physical Diagnosis: Expert Consult - Online and Print, 3eEvidence-Based Physical Diagnosis: Expert Consult - Online and Print, 3e
(2012/04/02)
Steven McGee

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The Rational Clinical Examination: Evidence-Based Clinical Diagnosis (Jama & Archives Journals)The Rational Clinical Examination: Evidence-Based Clinical Diagnosis (Jama & Archives Journals)
(2008/08/25)
David Simel、Drummond Rennie 他

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考える技術 臨床的思考を分析する 第2版考える技術 臨床的思考を分析する 第2版
(2011/06/23)
Scott D. C. Stern、Adam S. Cifu 他

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 ”The Patient History”は原著の方が良いかなと思います。”考える技術”に関しては、原著よりも訳の方が丁寧でお勧め。あと”Evidence Based Physical Diagnosis”は原著の第3版が2012年4月に出るので、それを待って買うのが良いでしょう(英語難しくないので大丈夫です)。

 診断学はこれくらいで勉強して、自分なりに解釈して頭に根付かせましょう。各科の総論というのは、多くはどのテキストにも最初の方に書かれてある事項。腎臓内科であれば、糸球体や尿細管や電解質バランスなどなどなど、疾患を知る上で重要な一般解剖生理学的知識。病態別になる前の部分ですね。

 各論とマニュアルの例を腎臓内科で出してみましょう。CKDならちょっと古いですがこの本が硬派で論理的。

保存期腎不全の診かた -慢性腎臓病(CKD)のマネジメント保存期腎不全の診かた -慢性腎臓病(CKD)のマネジメント
(2006/06)
柴垣 有吾

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 電解質だと、和書の中で最も優れているのは”より理解を深める!体液電解質異常と輸液”(入門用ではないですが)。分かりやすくて臨床を意識しているのは”酸塩基平衡、水・電解質が好きになる”です。

より理解を深める!体液電解質異常と輸液 3版より理解を深める!体液電解質異常と輸液 3版
(2007/04)
柴垣 有吾

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酸塩基平衡、水・電解質が好きになる―簡単なルールと演習問題で輸液をマスター酸塩基平衡、水・電解質が好きになる―簡単なルールと演習問題で輸液をマスター
(2007/03)
今井 裕一

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 こういうので勉強して、マニュアルを持ちましょう。
腎臓内科レジデントマニュアル 改訂第6版腎臓内科レジデントマニュアル 改訂第6版
(2012/06/01)
今井 圓裕

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レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版
(2012/01/13)
深川 雅史

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 こんな感じ。総論・各論・マニュアルを積み重ねて勉強するというのが必要だと思います。特に将来専門とする科の研修であれば、マニュアルだけだと物寂しい。

 総論は一度勉強して、少し寝かせるのがポイント。各論やマニュアルで日々の診療を行って、ふとした時にもう一回読み直すと「あ、なるほどな」と新たな理解が生まれます。総論は全科共通の知識。各論とマニュアルに比べて軽視されがちで、もう研修をある程度済ませた先生は「いまさらなー」と思うかも知れませんが、総論の読み直し・学び直しは臨床能力の根幹を作ってくれるものと思います。是非勉強してみてください。
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