2012
03.06

鵜呑みにしない

 双極性障害の維持としてはリチウムが長らく使われていましたが、最近はバルプロ酸の処方が増えています。また、単剤で再燃予防できない時は二剤併用とすることもありますが、エビデンスは乏しいです。

 そこで、2010年にBALANCE試験という、二剤併用と単剤とでは、双極性障害I型の再燃予防に違いが出るのかというスタディの結果がLancetに発表されました。

Lithium plus valproate combination therapy versus monotherapy for relapse prevention in bipolar I disorder (BALANCE): a randomised open-label trial
The Lancet, Volume 375, Issue 9712, Pages 385 - 395, 30 January 2010

 2年間のフォローアップ期間中での再発は以下のようになりました。

・併用群で54%
・リチウム単剤群で59%
・バルプロ酸単剤群で69%

 併用群およびリチウム単剤群においてバルプロ酸単剤群より再発率が低く、併用群と炭酸リチウム単剤群の間の再発率の有意差はない、とのこと。

 そーかそーか、やっぱりリチウムは偉大。と考えたくなりますが、この試験、注意が必要です。

・2年という期間
・双極性障害”I型”
・割り付け前に、4-8週間で忍容性を確認した後に本試験を開始

 2年という期間は、少し短め。もう少し長く見てほしいというところ。そして、この試験では患者さんが双極性障害の中でもI型に限られています。II型ではどうなのかは分かりません。

 最も大事なのは忍容性を確認した後に試験を始めたという点。リチウムに耐えられる患者さんしか試験に乗せていないということ。古い試験でかつ母集団が少ないのですが、リチウムとバルプロ酸の躁病相急性期治療の治療中断理由として、薬剤に耐えられないという患者さんはリチウムで11%、バルプロ酸で6%でした。

Efficacy of divalproex vs lithium and placebo in the treatment of mania. The Depakote Mania Study Group.
JAMA. 1994 Mar 23-30;271(12):918-24

 治療中断理由も、リチウムは深刻・重篤なものが多いとされています。

A 12-week, open, randomized trial comparing sodium valproate to lithium in patients with bipolar I disorder suffering from a manic episode.
Int Clin Psychopharmacol. 2008 Sep;23(5):254-62

 これらから考えるに、BALANCE試験は試験の入りのところで、リチウムに耐えられない患者さんを弾いていることが分かります。ここを差し引いて評価すべきでしょう。

 また、自殺については、リチウムとバルプロ酸とでは有意差がないとの結果が2011年に出ています。バルプロ酸にも自殺予防効果があることを示した画期的な論文。これが絶対ではないでしょうが…。

Treatment of suicide attempters with bipolar disorder: a randomized clinical trial comparing lithium and valproate in the prevention of suicidal behavior
Am J Psychiatry 168,10 p1050-6,2011

 ということで、BALANCE試験は試験の入り方に問題のある論文でした。わざわざ忍容性を確かめずに行った方が、より臨床の現場に近い結果になったかと思います。
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