2012
02.22

救急外来で使用する検査項目~プロカルシトニンとCRP

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 細菌感染症や敗血症の診断マーカーとして最近よく使われているプロカルシトニン(PCT)。その実力を知った上で使うことが勧められます。日本ではCRPが頻用されていますが、これは数値に反映されるまで発症から6-8時間を最低でも要すると言われており、しかも上昇や下降のスピードがゆっくりなので、上がり始めを血液検査で捕えてしまうと「数値的には重症でない」という事態になり、下がり始めを捕えてしまうと「数値的にはまだ重症である」という事態をちょくちょく産みます。更に、CRPはNSAIDs、他にもステロイドなど免疫を抑える薬剤が上昇に大きく影響してしまうという欠点、そして肝臓で合成されるため肝臓がヘタっている劇症肝炎の患者さんでは上昇しづらいとう欠点もあります。対してPCTはCRPよりもリアルタイム性細菌感染への特異性が強いのが特徴。発症から上昇までも約3時間と早め。免疫抑制剤などにも影響されにくいのではとされています。

 値の大きさが重症度や細菌感染の有無を反映するかという点ですが、2004年のシステマティックレビューでは、PCTとCRPのどちらが細菌感染症を見分けるのに有用かという比較がなされています(1)。そこでは、細菌感染症と非感染症との鑑別において、PCTは感度88%、特異度81%であり、CRPは感度75%、特異度67%でした。また、細菌感染症とウイルス感染症との鑑別では、PCTが感度92%、特異度73%であるのに対し、CRPは感度86%、特異度70%となりました。この論文ではCRPよりも有用であろうとの結論がなされていますが、ちょっとPCTに肩入れしている様な数字に見えてしまいます。

 近頃はそれ程の威力はないだろうと言われており、2007年には救急外来に発熱を主訴に来院した患者を対象にPCTを測った論文が出ました(2)。0.2をカットオフにすると、細菌感染もしくは寄生虫感染に対する感度77% 、特異度59%という結果。救急の医師が「これは細菌感染か寄生虫感染じゃないか?」という疑いの目が何と感度85%、特異度57%となり、PCTが救急医の判断よりも優れているわけではないことが示されています。医者の直感って凄いもんです。ただ、PCTが5を上回る患者は重篤な経過を辿りやすいともされました。

 2010年のCritical Care Medicineの論文でも、救急外来の同様な患者を対象に細菌感染症を検索しています(3)。そこでは細菌感染を示唆するマーカーの中で最も強力なものはCRPと寒気だとしており、それにPCTを加えることでより正確な診断に近づくと結論しています。予後にかかわるものとしては、CRPよりPCTの方が優れているとされました。ちなみに、寒気に関しては3段階に分ける徳田安春先生の論文が非常に面白いですよ。

 また、菌血症のRule outを念頭にPCTのカットオフを0.5、0.2に設定した際、それぞれ感度56%と92%、特異度83%と43%となり、尤度比は0.5ではLR+3.3、LR-0.53、0.2ではLR+1.6、LR-0.19と計算され、0.2でようやく除外の有用性が中等度ほど(4)。よって、敗血症への十分な感度と特異度の両者を有しているマーカーは今のところまだ存在しないと考えるのが妥当なのでしょう(5)。マーカー1つで物事を決められることはありません。

 発症から十分な時間が経過しているのであれば、発見的な意義としてCRPとPCTの効力は同じ、との論文もあり、それを以下に2つ示します。2011年のBMJでは、小児の発熱において、重症感染症をrule inするためのカットオフ値は、PCT 2ng/mL(LR+3.6-13.7、LR-0.54-0.58)、CRP 8mg/dL(LR+8.4、LR-0.57)が勧められています。逆に重症感染症をrule outするには、PCTは0.5、CRPは2をカットオフにする必要があるとしています(6)。同じく2011年CHESTには、肺炎と喘息・COPDの急性増悪とを区別するためのROC曲線下面積(95% CI)は、PCT、CRPでそれぞれ0.93 (0.88-0.98) 、0.96 (0.93-1.00)と報告されました。CRP>4.8mg/dLでは感度91%(95% CI, 80%-97%)、特異度93% (95% CI, 86%-98%)で肺炎と喘息・COPDを区別できるとしています(7)。尤度比を計算してみると、LR+13, LR-0.1となりました。結構良い数字ですね。CRPも復権してきたのか?という感じがします。ただ、CRPは前述のように上昇まで時間がかかりますから、それをクリアしてのこの尤度比ということなのでしょう。そこが重要なポイントかなと自分は思います。実験医学的に例えると、CRPはPCR的で、PCTがreal-time PCR的と言っても良いかもしれませんね。

 CRPについてもう少し(8)。CRPは敗血症に対してはRule outに向きます。CRPが高くても敗血症とは言えませんが、ピクリとも動かないCRPは敗血症の可能性を低くします。また、一回のCRPの値で判断するよりもその流れで判断する方が良いとされます。上昇を続けるCRP値は感染症の進行や増悪を示唆します。毎日CRPを測定し、4.1mg/dL以上増加した場合、院内感染症の感度92.1%、特異度は71.4%とした報告もあります。さらに値そのものが8.7mg/dL以上だと感度特異度は高くなり、それぞれ92.1%と82.1%とされています。治療中のCRPの推移をみると、治療開始後48時間(もしくはそれ以上)のCRP値が低下していれば治療が成功していることの指標とできる、という報告が結構多いです。後は、PCTは感染の重症度を反映しますが、感染症の存在をみるにはCRPが良い、という報告もある。とにかくいろんなことが言われています。

 そのPCTについては、偽陽性も知っておきましょう。腫瘍、熱傷、手術、膵炎、熱中症、非細菌性の重症感染症などなど、いわゆるcritically ill patientでは上昇してしまいます(9)。2007年の論文では、そのcritically ill patient、特にICU患者も含めると、敗血症への感度71%、特異度71%という期待はずれなものとなってしまいました(10)。偽陽性を知って使いこなすことが求められます。

 今は、抗菌薬治療のガイドとしての研究がメインかもしれません。2009年JAMAなどで、主に下気道感染治療に対するガイドに用いられ、抗菌薬使用を大幅に減らすことが出来ました。大まかに以下の様に示されます(11)。

<0.1μg/l:細菌感染症の可能性がかなり低い
0.1-0.25μg/l:細菌感染症の可能性が低い
0.25-0.5μg/l:細菌感染症の可能性が高い
0.5μg/l<:細菌感染症の可能性がかなり高い

 敗血症やICU患者に対しても同様にガイドとしての役割を持たせて治療に使おうと言う研究も進んでいます(12)(13)。この2つの論文では、PCTをガイドにすることで抗菌薬の使用を減らせるだろう、ICU滞在期間が短くなるだろうとしています。

 総じて、現在はまだPCTを細菌感染の診断として生かすことが出来るかは難しいところ。一時期は大きな期待が寄せられていたPCTですが、この検査だけで全てを決めることは、決してしてはいけません。研究がより進み、保険点数の問題が解決されると、重篤さの指標として、また抗菌薬使用の指標として参考になるかもしれません。しかし、何より大事なのは毎日の問診と診察です。それがあって初めてPCTも生きてくる、そう考えましょう。CRPについても同じ。一回の値を信用せずに継続して見ていく。それも臨床所見と必ず併せなければならない、ということ。


☆参考文献
1) Serum Procalcitonin and C-Reactive Protein Levels as Markers of Bacterial Infection: A Systematic Review and Meta-analysis. Clin Infect Dis. (2004) 39 (2): 206-217.
2) Serum procalcitonin measurement as diagnostic and prognostic marker in febrile adult patients presenting to the emergency department. Crit Care 2007;11(3):R60
3) Additional value of procalcitonin for diagnosis of infection in patients with fever at the emergency department. Crit Care Med. 2010 Feb;38(2):457-63.
4) Usefulness of procalcitonin serum level for the diagnosis of bacteremia. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2001 Aug;20(8):524-7.
5) Sepsis biomarkers: a review. Crit Care. 2010; 14(1): R15.
6) Diagnostic value of laboratory tests in identifying serious infections in febrile children: systematic review. BMJ. 2011 Jun 8;342:d3082.
7) Procalcitonin and C-Reactive Protein in Hospitalized Adult Patients With Community-Acquired Pneumonia or Exacerbation of Asthma or COPD. CHEST 2011; 139(6):1410–1418.
8) Biomarkers in the critically ill patient: C-reactive protein. Crit Care Clin. 2011 Apr;27(2):241-51.
9) Procalcitonin assay in systemic inflammation, infection, and sepsis: clinical utility and limitations. Crit Care Med. 2008 Mar;36(3):941-52.
10) Accuracy of procalcitonin for sepsis diagnosis in critically ill patients: systematic review and meta-analysis. Lancet Infect Dis (2007) vol. 7 (3) pp. 210-7.
11) Effect of procalcitonin-based guidelines vs. standard guidelines on antibiotic use in lower respiratory tract infections: the ProHOSP randomized controlled trial. JAMA (2009) vol. 302 (10) pp. 1059-66.
12) Procalcitonin-guided antibiotics in severe sepsis. Crit Care. 2008;12(6):309. Epub 2008 Dec 4.
13) Procalcitonin to Guide Duration of Antimicrobial Therapy in Intensive Care Units: A Systematic Review. Clin Infect Dis. (2011) 53 (4): 379-387
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