2012
02.02

感染症診療 Starter & Booster:第11回~抗真菌薬について軽く

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 せっかくなので、抗真菌薬(ここでは全身投与用のものを指します)についても触れておきましょう。大きく分けると4種類。アゾール系、キャンディン系、ポリエンマクロライド系、ピリミジン誘導体です。例を挙げると

1)アゾール系
フルコナゾール(ジフルカン®)、イトラコナゾール(イトリゾール®)、ボリコナゾール(ブイフェンド®)など。同じアゾールと言えども、それぞれスペクトラムが異なるのが注意点。

2)キャンディン系
ミカファンギン(ファンガード®)、カスポファンギン(カンサイダス®)

3)ポリエンマクロライド系
アムホテリシンBデオキシコール酸塩(ファンギゾン®)、アムホテリシンBリポソーム製剤(アムビゾーム®)の2つ。後者の方がより安全性高い。

4)ピリミジン誘導体
フルシトシン(アンコチル®)

となります。抗真菌薬は他剤との相互作用の多いものがかなりあるので、常にそれを気にしながら用いましょう。

 そして真菌も少し分類しましょう。酵母と糸状真菌の2種類に分割。酵母にはCryptococcusCandidaTrichosporonなど。糸状真菌にはAspergillusFusariumZygomycetesPseudallescheriaなどがあります。Histoplasmaを代表とする日本ではレアな二形性真菌は、今回省きました。Candidaはその中でも色々種類があり、抗真菌薬の感受性が異なります。

 それを踏まえた上で、主な抗真菌薬のスペクトラムを青木先生の本から抜粋します(クリックで拡大)。



 こう見ると、アゾール系のスペクトラムとCandidaの種類を押さえるのが少し大変という感じ。抗真菌薬の詳細は他書にお任せするとして、ここでは本当に軽く眺めてみましょう。Candidaの種類への作用は、後でまとめて示します。

1)アゾール系
 真菌細胞膜の原料となるエルゴステロールの合成を阻害します。フルコナゾール(ジフルカン®)、イトラコナゾール(イトリゾール®)、ボリコナゾール(ブイフェンド®)などがあります。

 イトラコナゾールはやや影の薄い存在。堂々と第一選択として用いることは少なく、口腔カンジダ症や食道カンジダ症といった軽度の真菌症か、他の抗真菌薬で思わしい効果を上げられなかった時に使用するという位置づけです。

 フルコナゾールは、あまり重症でない侵襲性カンジダ症やカンジダ血症に用います。水溶性が高く、髄液、硝子体、尿路、組織液、唾液に移行しやすいと言われています。よって、それを意識した病態への治療に用いることになります。本薬剤は抗真菌薬の中では珍しく、腎排泄になっています(あとはフルシトシン)。Candidaでは、C. kruseiC. glabrataが耐性を良く示します。

 ボリコナゾールは、フルコナゾールよりも脂肪親和性が強くなっており、アゾール系では最も広いスペクトラムを持ちます。この売りは何と言ってもAspergillusに効くという点。更にアムホテリシンBの効かないAspergillus terreusFusarium spp.、Pserdallescheria boydiiにも効果があります。このFusarium spp.に効く抗真菌薬はあまりないので、重要。ただし、Zygomycetes(接合菌)には効きません。よって、推奨される病態は、まず侵襲性アスペルギルス症。これを覚えましょう。第一選択として使用されます。

2)キャンディン系
 日本にあるのはミカファンギンのみでしたが、2012年にカスポファンギンも承認されました。真菌細胞壁のβ(1,3)-D-グルカンの合成を阻害します。基本的にはCandidaAspergillusのための抗真菌薬。Candidaに関しては、アゾール耐性のものにも効くことが多いので、その際に出番となることが多いです(C. parapsilosisには効きにくい)。ただし眼内への移行性は悪いので、Candida眼内炎の際は使用しない方が良いです。またAspergillusではアムホテリシンBの効かないAspergillus terreusにもバシッと効いてくれます。ただ、ボリコナゾールが出てからはAspergillusに対してミカファンギンを第一選択として使う状況は少なくなった感があります(第二選択としての位置づけ)。意外かもしれませんが、他の抗真菌薬が効くCryptococcusには無効です。

3)ポリエンマクロライド系
 アムホテリシンBデオキシコール酸塩とアムホテリシンBリポソーム製剤の2つが日本にあります。後者の方が副作用、特に腎障害が軽くなっています。ただし尿路への移行性は前者よりも劣ると言われています。アムホテリシンBは真菌細胞膜のエルゴステロールに直接干渉して抗真菌作用を発揮。古い薬ですが、まだまだ高い信頼を得ています。

 アムホテリシンBはスペクトラムがかなり広いため、カバーしない真菌を挙げます。CandidaではC. lusitaniaeが代表例。後はPseudallescheria boydiiFusarium spp.、Trichosporon beigelliAspergillus terreusA. flavusなど。

 使われる状況は非常に多く、特にZygomycetesに効くのは原則的にアムホテリシンBのみと考えて良いです。ただしアゾール耐性カンジダ症に対してはミカファンギンやカスポファンギンも使用されることも多くなっています。副作用としては発熱や悪寒というものがあり、これにより治療をミスリードしてしまうことも。きちんと臓器特異的な指標を追って、発熱に揺さぶられることのないようにしましょう。

4)フルシトシン
 細胞内に取り込まれ、そこで何と抗癌剤として使用される5-FUに変換され、作用を発揮します。移行性は良く、大体どこにでも広がります。また、フルコナゾールと同じく腎排泄という特徴があります。耐性が出やすいので、他の抗真菌薬との併用で用います。

 基本的にフルシトシンはCandidaCryptococcusに使用する薬剤。ただし、C. kruseiは自然耐性。臨床での出番はクリプトコッカス髄膜炎に対するアムホテリシンBとの併用です。重症のカンジダ症にも併用で用いて良いとするデータもあります。副作用で骨髄抑制があるのは覚えておきましょう。
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