2012
02.01

感染症診療 Starter & Booster:第10回~耐性菌の怖さ

目次→コチラ

 主な抗菌薬を学んだので、今回はそれへの耐性について。

 昨今は細菌の抗菌薬への耐性化が進んでいます。何でもかんでも広域カバーの抗菌薬を出していたら、いずれまた妙な耐性菌が出てしまいます。広域抗菌薬は、多くの菌に効いてくれる一方、効いてしまうのです。ですから、原因菌をつかむ努力をして、分かったら速やかに狙い撃ちに持っていく。この姿勢が大事なのです。ここではこれまで説明を棚上げにしておいた耐性菌について、代表的なものについて少しだけ触れておきます。

☆BLNAR
 BLNARはβ-lactamase negative ampicillin resistanceというものでして、特に日本のH. influenzaeで問題になっています。これがあるとペニシリン系と第1,2世代セフェムが効きません。使用薬剤は第3世代セフェム、キノロン、カルバペネム(、アジスロマイシン)となります。市中でも常にこの耐性機構を考えねばなりません。

☆ESBL
 ESBLはExtended spectrum β-lactamaseで、主にE. coliKlebsiellaで問題になります。元々はペニシリナーゼであったものがまさにExtended spectrumしてしまい、有効であったセフェムが効かなくなってしまったものです。その威力は第3世代にまで及んでいます。他にはモノバクタムやピペラシリンも破壊してしまいます。第4世代については、それを分解するESBLも出てきたり、それを分解する他のβ-ラクタマーゼを持つことも多いです。カルバペネムはまず効きます。大事な点は、感受性検査で常に正確に表現されるわけではないということ。第3世代セフェム、モノバクタム、ピペラシリンのいずれかに耐性か中間の感受性を示すものは、これらすべてに対してESBLを産生すると考えて、耐性と判断します。ESBL産生株が多い地域や施設では、E. coliKlebsiellaでも重症感染であれば最初はカルバペネムを投与すべきと言われます。セファマイシン系は感受性と表示されていても臨床的には必ずしも有効でない場合が多く、キノロンも耐性化してしまっていることがあります。なかなかこちらの武器が乏しい印象ですね。β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンに関しては効くという人もいたり効かないという人もいたり。最近の論文では、ESBL産生大腸菌の血流感染に対しβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンも、カルバペネムに劣らず臨床的に効く可能性があるとの結果が出ましたが、Post Hoc解析なので全面的には信用しがたいところはありますね…(β-Lactam/β-Lactam Inhibitor Combinations for the Treatment of Bacteremia Due to Extended-Spectrum β-Lactamase–Producing Escherichia coli: A Post Hoc Analysis of Prospective Cohorts: Clinical Infectious Diseases 2012;54(2):167–74)。

☆AmpC
 そしてAmpCですが、ESBLと似ており、また両者の耐性を持つこともあります。日本ではまだ少ないのですが、この機構を持つのはEnterobacterが代表例。これが出てしまうとβ-ラクタム系で効くのは第4世代セフェムとカルバペネムのみという大変な状況。ESBLの様に感受性検査で常に正確に表現されるわけではないという問題点はありません。しかし、第3世代セフェムが有効だったEnterobacterなどにおいてその抗菌薬の使用が長期化すると耐性を獲得してしまうという懸念は存在します。AmpCが見つかったら、カルバペネムで攻めるのが無難だと思います。

☆MBL
 MBLはmetallo β-lactamaseでして、これが出たら大問題です。院内、特にICUにおいてP. aeruginosaE. cloacaeなどが持つことがあります。これにはカルバペネムが効かなくなってしまい、アミノグリコシドやキノロンも耐性を持つことが多くなります。有効な抗菌薬がコリスチンなど、非常に限られてしまう事態。

☆CA-MRSA
 CA-MRSAは何と市中獲得型のMRSAです。市中感染でもMRSAを考慮しなければいけないご時世になったんですね。ただ、このCA-MRSAは院内でお目にかけるMRSAよりも素直です。ST合剤やミノサイクリン、クリンダマイシンといった抗菌薬がぐっと効きやすいです。最初からこの菌を想定する必要はなく、地域によって、臨床状況によって、ということになります。

☆VRE
 VREはバンコマイシンが効かなくなった腸球菌。殆どのVREがE. faeciumです。これがまだ検出されていない病院もあるので、勤務している病院の状況でこれを考慮するかどうかが変わってきます。治療薬としてはキヌプリスチン・ダルホプリスチンやリネゾリドがメインとなります。

☆PRSP
 PRSPはペニシリン耐性のS. pneumoniae。ペニシリンに感受性のあるものはPSSP、中間のものはPISPと表現されます。2008年にPRSPのMIC(最少阻止濃度)が変更されています。表を見ていただきましょう(クリックすると少しだけ拡大)。



 以前は一括してPRSPはMIC≧2だったんですけど、今は髄膜炎ではなくてかつ静注のペニシリンであればMIC≧8でPRSPとされています。MICが4くらいなら、投与量を多くすれば十分ペニシリンやアミノペニシリンで闘えるということを覚えておきましょう。MICが8を超える様な本格的なPRSPはなかなかいません。また、PRSPは”ペニシリン”耐性ではありますが、他の抗菌薬にも耐性であることが非常に多いです。β-ラクタム系は言うに及ばず、マクロライド系といった細胞内に作用する抗菌薬も効きにくくなっています。髄膜炎など本当に重症で感受性が分からない時は、まずバンコマイシンの出番になります。

補足:MICは”最小阻止濃度”のこと。大事なことは、MICの数値を、複数種類の抗菌薬の効果の比較に用いることに意味はないということ。基本的にはMICを見なくても、感受性としてSとかRとか出てくれるので、そっちで大丈夫。
トラックバックURL
http://m03a076d.blog.fc2.com/tb.php/1453-84528151
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top