2012
01.29

感染症診療 Starter & Booster:第9回~抗菌薬について知っておくこと-13

第9回目次→コチラ

13)狙うは1つ!メトロニダゾール
 非常に安価なメトロニダゾール(フラジール®)は、細胞内に入り還元されてDNAを障害します。Bioavailability良好で、組織移行性もばっちりです。日本には経口薬しかありません。Bioavailabilityが良いから静注製剤なくても良いんじゃない?と思うかもしれませんが、経口摂取不可能な患者さんもいますし腸の機能などの問題で静注の方が好ましい場合もやっぱりあります。

 狙う菌は嫌気性菌、特に横隔膜より下のBacteroides fragilis groupです(ActinomycesPropinibacteriumは嫌気性菌ですが、こいつらには効きません)。好気性菌には全く効かないので、基本的にはメトロニダゾール単剤ではなく他の抗菌薬と協同して使います。後はピロリの除菌や細菌性膣症の治療など。細菌以外では、耐性化が進んでいるもののGiardiaEntamoebaTrichomonasといった原虫に効果があります。これの覚え方としてはこれらの原虫の頭文字をとって、GET on the METROというのがありました。

 大事なものに、Clostridium difficileによる偽膜性腸炎の治療薬という立場があります。初発や軽症~中等症であれば、バンコマイシン内服よりもメトロニダゾールを優先すべきです。ただ、日本においてメトロニダゾールは抗原虫薬としての適応があるだけなので、嫌気性菌や偽膜性腸炎を叩く時は患者さんに妙な病名を付けなければいけません。ちなみに偽膜性腸炎、恐ろしい治療法にIMTという、腸内に他者の便を注入する治療法があります(Systematic Review of Intestinal Microbiota Transplantation (Fecal Bacteriotherapy) for Recurrent Clostridium difficile Infection: Clin Infect Dis. (2011) 53 (10): 994-1002.)。誰が考え出したか分からない摩訶不思議。これがまた9割くらいに効いてしまうので恐ろしい。。。何故か近親者の便の方が他人の便よりも効くそうです。しかし自分が患者さんの立場だったら、メトロニダゾールを選ばせて頂こうかと。。。他にはfidaxomicin(フィダクソマイシン or フィダキソマイシン)という、日本では認可待ちですが、偽膜性腸炎用の薬剤もあります。これはバンコマイシンと非劣性であることが示されており、有望な代替薬です(Fidaxomicin versus vancomycin for infection with Clostridium difficile in Europe, Canada, and the USA: a double-blind, non-inferiority, randomised controlled trial. The Lancet Infectious Diseases, Early Online Publication, 8 February 2012.)。

 他には、がん性悪臭を抑えるためにメトロニダゾール軟膏というものを作って塗布している病院もあります。緩和ケアでは大事な知識。

 副作用はあまり起きません。重篤なものには脳症などの中枢神経障害。末梢神経障害や白血球減少も挙げられます。薬剤相互作用もあり、ワーファリンもご多聞に洩れず注意。ジスルフィラム作用があるので、アルコールを摂取すると悪酔いします。妊娠初期、授乳婦への投与はダメです。
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