2012
01.25

感染症診療 Starter & Booster:第9回~抗菌薬について知っておくこと-9

第9回目次→コチラ

9)狙いがボケてる?マクロライド系
 細胞内のリボソームに作用し、開発の順にエリスロマイシン(エリスロシン)、クラリスロマイシン(クラリス)、アジスロマイシン(ジスロマック)があります。2011年9月にアジスロマイシンの静注製剤が日本でもやっと使えるようになったので(アメリカの14年遅れ!)、それまで静注製剤があることで立場を何とか保っていたエリスロマイシンの存在意義が薄くなった気がします。

 このマクロライド系、元々はGPCと細胞内寄生菌を対象としていましたが、開発によってGNRやピロリ菌、MACにも広がっていきました。P. aeruginosaと嫌気性菌には効きません。この2つに効かないってことは、逆に結構使いやすいんじゃない?と思ってくれるとありがたいのですが、現在はなかなかそう甘くなく…。何を狙っているのかあまりはっきりしない抗菌薬で、安全だからという理由で何となく出されている、そんなマクロライド。そして、残念ながら色んな菌が耐性化してきてしまってるんです。しかも1つのマクロライドに耐性を獲得したら、他のマクロライドも効かなくなります。

 耐性を獲得しつつある菌は、S. pyogenes(GAS)を筆頭にして、S. pneumoniae、腸球菌、MSSAといったGPCです。これらの菌が関与するような感染症には、自分は怖くて出せません。特に日本のGASは半分以上が耐性とも言われ、咽頭炎にホイホイと使用すべき抗菌薬ではないようです。S. pneumoniaeも日本ではそれくらいの耐性率とも言われています。この耐性には気をつけましょう。

 じゃあどういう時に使うのか、というところ。クラリスロマイシンとアジスロマイシンでは共通するところも多いのですが、少し強さが異なってきます。

・エリスロマイシンのGPCへの作用を強化:クラリスロマイシン
・GNRや細胞内寄生菌への効力up:アジスロマイシン

 まずはこんな位置づけと漠然と考えておいて具体例を見てみます。ちなみに髄液と関節への移行性が悪いので、それらの感染には使えません。

 市中肺炎や副鼻腔炎などは適応となり得るのですが、原因菌トップであるS. pneumoniaeの耐性化が著しく、マクロライド単剤での初期治療は何とも。使うなら、COPD急性増悪などH. influenzaeMoraxellaのカバーが必要そうな時。またLegionella疑いならアジスロマイシンでして、レボフロキサシンと同等の効果。MycoplasmaChlamydophila pneumoniaeによる非定形肺炎であれば、クラリスロマイシンの方が強くなっています。

 そして他には細菌性腸炎。これは外来のGNRが原因菌であるため、GNRをカバーできるアジスロマイシンです。ただ、Salmonellaには効かないことが多く、Campylobacterも耐性を獲得しつつある状況。ただCampylobacter腸炎は抗菌薬なしでも治るので、最初から使わなくても良いかもしれません。自分も2010年にCampylobacter腸炎になりましたが、何とかOS-1という経口補水液で粘って治しました。ヘロヘロになりましたけど。。。EHECなど外来のE. coliはキノロン耐性が進んでいるため、アジスロマイシンは良い代替薬となります。

 STDも良い適応です。尿道炎や子宮頚管炎に対してアジスロマイシンを選択します。N. gonorrhoeaeも同時に感染していることがあるため、セフトリアキソンなどとの併せ技を行うことが推奨されています。N. gonorrhoeaeにもアジスロマイシンの2g製剤(ジスロマックSR成人用ドライシロップ2g)が適応となりましたが、より活性の強い抗菌薬を選んだ方が今のところ安全。PIDになると嫌気性菌が絡んで来るので、嫌気性菌にも効果のある抗菌薬が必要となります。

 他にはピロリ菌、百日咳、ネコひっかき病などには同等の効果。ピロリにはクラリスロマイシンとアモキシシリンとランソプラゾールの配合剤(ランサップ)があるので、それで治療してもいいかもしれません。ただし、ピロリもマクロライドへの耐性獲得中で、今は20%以上が耐性を持っているのではとも言われます。MACに対してはクラリスロマイシンの方がやや強いようですが、薬剤相互作用やコンプライアンスなども考えて、アジスロマイシンとクラリスロマイシンのいずれかを選んだ方が良いでしょう。

 アジスロマイシンの静注薬は経口薬とは比べ物にならないほどの強さを持ち、マクロライド高度耐性の肺炎球菌にも効果を示すことが知られています(Efficacy of azithromycin in the treatment of community-acquired pneumonia, including patients with macrolide-resistant Streptococcus pneumoniae infection. Intern Med. 2009;48(7):527-35. Epub 2009 Apr 1.)。嫌気性菌もカバーしてしまうので、もはや別個の抗菌薬??かなりの広域、と考えるべきでしょう。アジスロマイシンのSR製剤は経口薬と静注薬の中間的イメージ。嫌気性菌には効力を持ちませんが、マクロライド耐性の肺炎球菌に効くこともあります。

 副作用はアジスロマイシンが最も軽く、エリスロマイシンが最も多いです。胃腸症状がメイン。そしてマクロライド系、特にエリスロマイシンとクラリスロマイシンは薬剤相互作用が問題となることもあり、使用薬剤は確認が必要。QT延長となることもあるので気をつけましょう。またマクロライド系、特にアジスロマイシンは妊婦にも使いやすい抗菌薬として有名です。食事による影響も言われていて、クラリスロマイシンは食事により吸収が良くなり、後の2剤は吸収が落ちると言われます。でも本によって少し記載が変わってますね。。。

 補足:アジスロマイシンが心血管死リスクが上昇するという論文がNEJMに掲載されていました。100万回投与すると、約47人の心疾患死亡増となるようです。多いとするか少ないとするか。。。特に心疾患ハイリスクでは更に増加するとのことで、ちょっとここは頭に入れておいても良いかもしれませんね(Azithromycin and the Risk of Cardiovascular Death; N Engl J Med 2012; 366:1881-1890)

 ↑また補足:2013年3月に、FDAがアジスロマイシンによるQT延長について警告を出しました。既往歴や家族歴の確認、そして心電図検査は投与前にしておいた方がより安全かもしれません。

 マクロライドは抗菌作用の他に抗炎症作用も知られています。DPBに対する治療は有名ですね。他にもCOPDの急性増悪を抑えてくれる可能性も指摘されています(Azithromycin for Prevention of Exacerbations of COPD. N Engl J Med 2011;365:689-98.)。更にSIRSにおいて、貪食能が高まったAlert cell(炎症を感知する細胞)に取り込まれて効果を発揮するかも?と言われており、SIRS患者さんにおいて治療上のBreakthroughをもたらしてくれるかもしれません。
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