2012
01.21

輸液 Starter & Booster:第4回~輸液をする時

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 輸液製剤について学びましたが、今度はどう言う時に輸液をするか?です。原則としては“食べることのできる患者さんに輸液はしない”ということ。当然と思うかもしれませんが、思いのほか病棟では漫然と輸液されている患者さんが多いのです。これは忘れないで下さい。食べられない患者さんに輸液はするものですよ。だから少し前に流行った”点滴バー”なんてのは言語道断。アレをやってる医者は何とも思わんのでしょうかね。結構お値段も張るし。

 さ、そして最初の方にもお話ししましたが、全ての液の出入りは血管内を経由する、ということです。体液の喪失はまず細胞外液、特に血管内から生じます。それによる張度の変化によって細胞内外へ水の移動がなされていきます。これをもう一度意識しておきましょう。以下は経口摂取の出来ない患者さんを対象として進めます。

 さて、輸液を自分たちが組む時に考えることは、患者さんの状態の経過です。これは大野先生の『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』を参照してみることにします。疾患の勢いが強い急性期、これはおおよそ治療開始から12時間ですが、その間は炎症と凝固がどんどん起こっていますから、内皮細胞表面層の損傷も酷いことになっています。このため血管透過性が最大になり、血管内の水分が細胞間質に逃げています。12-48時間でそれは頭打ちで、プラトー期と言われます。治療が奏功した場合はその後の48-72時間で血管壁のバリアが修復され始め、逃げていた水が血管内に戻って来ます。利尿期というやつですね。そして5-7日で従来の状態に戻ると言われます。ここまで来たら一安心。しかし、この経過は治療が効果を示している時。原疾患のコントロールが付いていなかったり、呼吸や循環に問題があったり、感染などの新しいイベントが生じているのであれば、利尿期には移行せずに炎症と凝固が続いてしまいます。



 輸液を開始する時や施行中の時は、常に上記のような患者さんの疾患の動きに着目です。それはやはり、以下に換言できるでしょう。

・血管内に水がどのくらいあるか?
・血管内と細胞間質の間での水移動はどうか?


 この2つを意識します。やはり最も気を付けたいのは患者さんの循環動態。それがどうなのかをこの2点から見ておくことが大事であり、特に以下で学ぶ“是正輸液”でこの考え方は大事になってきます。

 Naと織り交ぜてみると、少し前に「Na量は細胞外液に影響し、Na濃度は細胞内液に影響する」と言いました。これから言えるのは、Naの量や濃度の異常は細胞外液や内液の異常です。これの是正のために輸液は必要。ただNa量の増加に関しては、細胞外液量が増えているため輸液は逆効果になってしまうこともあります。

 他に輸液が必要な状況は、何らかの原因により体液喪失の多い患者さんで、これからの異常を防ぐために体液全体を維持したい時。後は栄養補給をしたい時など。こういう時に輸液をします。

 では使う輸液はどういうものか。まずは是正輸液(Na量異常やNa濃度を正すための輸液)の基本的な考え方ですが、これは先ほどの

・血管内に水がどのくらいあるか?
・血管内と細胞間質の間での水移動はどうか?

に基づきます。

 血管内に水が足りないなら、もちろん等張液が必要になります。生食や乳酸リンゲルなどの等張晶質液ですね。疾患の勢いが強く細胞間質に水が逃げて行っている状態、すなわち細胞外液として全体量は多いけれども血管内に少ない状態なら、血管内にがっしりとどまり、かつ水を間質からぐいっと引っ張ってくる様な20%アルブミン液が必要になることもあります。出血で血管内から水が無くなっているけれども間質には逃げていないと言う状態では、等張晶質液や場合によっては5%アルブミン液などを使用。

 細胞内液が足りないなら、そこに多く分布する輸液が必要。ということは5%ブドウ糖液などの低張液が適切ですね。ただし極度に細胞内液が足りない時は細胞外液も一緒に失われていることが殆どです。つまりは血管内からも水が外へ出て行っている状態。そういう時は生食などの等張液で対応することもあります。

 細胞内液に多い時、殆どは低Na血症ですが、その時はどうでしょう?外液が失われているようなら等張液を使用しますが、高度のものや症候性であれば3%食塩水などの高張液を用いてNa濃度を復旧させます。

 全体としては上記の様ですが、難しいのが足りない量を推し量ること。そのために有用な所見を参考に輸液を選ぶ必要があります。これはまた後ほどお話ししましょう。

 では、体液喪失に用いる維持輸液についてはどうかというと、血管内に水が十分あり、疾患のコントロールもついて安定した患者さんが対象になります。

 人間は黙っていても体液を喪失します。腎臓からは尿として、腸管からは便として、皮膚からは汗として、肺からは呼気として。結構出て行くものでして、尿量が1000mL/dayとすると普通にボーっとしていても1500-2000mL/dayくらいは全体として出て行ってしまいます。ということは、維持するための輸液、維持輸液もそのくらい必要。その輸液に何を使うかと言えば、判で押したように3号液が選択されています。代表例はソリタ3号液®ですが、これは母乳中の電解質を参考に作られたそうです。

 しかし、健常人の生理的な体液喪失については3号液で良いのですが、入院患者さんはやはり病人。例えば腎不全の患者さんだとKの排泄が上手くいかないので、Kを多めに含んでいる3号液は適切とは言えません。また、体液喪失もちょっと事情が異なってきています。1つはストレスがかかっていること、もう1つは下痢やドレナージなどによる喪失があります。この様な病的な体液喪失については盲目的に3号液を入れるのではなく、少し考えてみましょう。

 前者の「ストレスがかかっている」というのは、心理的なストレスもそうですし、外傷・炎症としてのストレスも含まれます。この様な患者さんではADHが分泌されており、このADHは尿の水成分を出さない作用がある(尿に含まれるNaが多くなる)ため、こういう時に3号液で立ち向かうと、あれよあれよという間に低Na血症になってしまいます。現実問題として、院内で生じる低Na血症は医原性のものが非常に多いんですよ。また、炎症が強い状態だと血管壁バリアが崩れてきますから、これに対して3号液というのもおかしな話。なので、最近は急性期患者さんや周術期の患者さんでは3号液ではなく生食などの等張液を使う方が適切だと言われています。

 後者の「下痢やドレナージによる喪失」では、その喪失体液の分をベースの輸液にプラスしてあげます。胃液であれば半等張、胃液以外の消化液は等張、汗は高度の低張と大まかにとらえておきましょう。フロセミド(ラシックス®)で利尿を掛けた尿は、NaとKを足して75とされ、別名1/2生食(half normal saline)と言われています。喪失体液は、それらの出た分の輸液メニューを別に組んであげてプラスすると良いわけですね。後は細かく調節です。血液検査と尿検査で電解質の動きを推測しながら、輸液を組み立てていきましょう。

スライド14

 実際は、目の前の患者さんは既に体液量が減少していて、かつこれからも体液が喪失していくと想像されるというパターンが多いと思います。こういう時は是正輸液で現在の減少分を補い、維持輸液でこれからの喪失を補充してあげます。是正輸液と維持輸液をそれぞれ考えて、併せて投与するというのが合理的ですね。循環動態や電解質が安定したら是正輸液は必要なくなりますし、経口摂取が可能になったら維持輸液もおさらばです。
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