2012
01.19

感染症診療 Starter & Booster:第9回~抗菌薬について知っておくこと-6

第9回目次→コチラ

6)高すぎる、リネゾリド(+ダプトマイシン)
 リネゾリドはオキサゾリジノン系に属し、細胞内のリボソームを叩きます。静注と経口の2種類が販売されており、更に経口でもbioavailabilityが100%という優れモノ。腎機能による調節も不要で、更に各臓器への移行性もばっちりです。バンコマイシンも効かないVREに効果を発揮する大事な薬剤。

 MRSAにも効きますが、これによる菌血症や感染性心内膜炎は失敗例が報告されています。しかしそれに反対する結果となった論文が2009年に出されました。持続するMRSA菌血症に対するリネゾリド(ザイボックス®)とバンコマイシンの比較で、サルベージとしてリネゾリドに軍配が上がったというもの。小規模スタディなこともあり、まだ何ともですね。後は、移行性の良さにより、MRSA肺炎やMRSA骨髄炎にはバンコマイシンと同等かそれ以上の治療成績かもしれないと言われます。

 前者では「MRSA肺炎にはリネゾリド」的な雰囲気に各種ガイドラインでもなりつつありますが、マーケティングによるものもあるかもしれません。ZEPHyR試験という有名な試験があり、これはMRSA肺炎に対するリネゾリドのバンコマイシンに対する非劣性を示そうとザイボックス販売元のファイザーが巨額のお金を出して組んだ試験(Linezolid in Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Nosocomial Pneumonia: A Randomized, Controlled Study. CLIN INFECT DIS 2012)。治療成功はリネゾリドの方が優れていたということですが、60日間死亡率に差はナシ。WebでのAppendix Figure 2では、Kaplan-Meier曲線にそれほど最初から差があるようには見えず。これを見るとリネゾリドをどんどん使ってやろうとは思いません。本文にこの図を載せないのは何か理由があるのでしょうか。。。??勘ぐってしまいます。

リネゾリド

 この試験では一応はリネゾリドの方が良いですよということになり、ファイザーが攻めています。しかし、非劣性試験で優位性を示そうと言うのはお門違いですし、このFigure 2を見るとちょっと。。。

 試験に入るまでに投与されていた抗菌薬は、半数以上がバンコマイシン。もともとバンコマイシン入っていた患者さんを割り付けというのは不思議。

 しかも、ITT解析ではないというのも突っ込めます。ランダム化したは良いですが、その後に7割以上を除外してから解析してるんです。有意ではないんですが、バンコマイシン群ではもともと腎障害と菌血症が多くなっており、糖尿病やら心疾患やら人工呼吸患者などもちょろちょろ多くなっていて、最初からバンコマイシンにとってやや不利な条件になってます。

 全体としては胡散臭い試験、と言えます。

 それを実証するかのように、2010年のCritical Care Medicineに掲載された論文では、リネゾリドとグリコペプチド系のメタアナリシスが行われ、リネゾリドの優位性を示せませんでした(Linezolid versus vancomycin or teicoplanin for nosocomial pneumonia: A systematic review and meta-analysis: Crit Care Med 2010;38(9):1802-8)。同じく2011年のCHESTでも同じ様な報告となっており、何でもかんでもリネゾリドを推す気にはなれません(Linezolid vs Glycopeptide Antibiotics for the Treatment of Suspected Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Nosocomial Pneumonia: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Chest. 2011 May;139(5):1148-55. Epub 2010 Sep 23.)。バンコマイシンのトラフを上記のように15-20μg/mLという高値に設定することで、リネゾリド失敗例の治療に成功することもあります。MRSA骨髄炎に関しては治療が長丁場となるので、経口でO.K.なリネゾリドは向いているかもしれません。これから色々臨床試験はされるでしょうが、やたらめったら使う抗菌薬ではないことは確かです。副作用は消化器系症状が多く、使用が2週間を超えてくると血球減少や神経障害などが出てきます。

 残念ながらスペインではかなり使われ、リネゾリド耐性の黄色ブドウ球菌のアウトブレイクが起こってしまいました。。。まじか!(Sanchez Garcia M, la Torre De MA, Morales G, et al. Clinical outbreak of linezolid-resistant Staphylococcus aureus in an intensive care unit. JAMA 2010; 303:2260–2264.)
 
 しかし何よりも、めちゃくちゃ高価格というのが欠点(調べてみて下さい。びっくりしますよ)。バンコマイシンも高いですが、それをはるかに上回る高さ。ファイザーさんがプッシュする理由もここからうっすらと分かりますが、何とかなりませんかね。

 ちなみに、鳴り物入りで登場したお薬にリポペプチド系のダプトマイシン(キュビシン®)があります。これはMRSAやVREなどを含むすべてのGPCに有効な薬剤。とっても大事なお薬なので、すぐ使わずに切り札として温存しておくのが良いでしょう。世界ではもはや耐性菌の出現が報告されていますので。。。1日1回投与でO.K.なのが嬉しいですね。髄液移行性は悪いので髄膜炎は少々苦手。肺ではサーファクタントと競合し効果が落ちるので、肺炎には使用しないことをお勧めします。副作用は骨格筋障害によるCK上昇が主なもので、S. aureus菌血症において、ダプトマイシンのトラフが24.3mg/L以上でその予測因子ということが示唆されています(Daptomycin Exposure and the Probability of Elevations in the Creatine Phosphokinase Level: Data from a Randomized Trial of Patients with Bacteremia and Endocarditis: Clinical Infectious Diseases 2010;50:1568–1574)。
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