2012
01.19

感染症診療 Starter & Booster:第9回~抗菌薬について知っておくこと-4

第9回目次→コチラ

4)トラフを保て、バンコマイシンとテイコプラニン
 この2つはグリコペプチド系というもので、β-ラクタム系と同じく細胞壁に作用する薬剤ですが、血中濃度(特にトラフ)を測りながら使用するというのがβ-ラクタム系と異なります。この2剤は同じ様な作用をするので、主にバンコマイシンについてここでは述べます。

 これらはGPCとGPRを狙い撃ちし、GNRには一切効きません。MRSA用という認識で間違ってはいませんが、使用する状況としては、β-ラクタム系耐性のGPCによる感染症、β-ラクタム系アレルギー患者さんの重症感染症、重症もしくは再発性の偽膜性腸炎が挙げられます。バンコマイシンは内服では一切吸収されないため静注で使用しますが、偽膜性腸炎は腸管にいるClostridium difficileが原因。なのでバンコマイシンを使用する時は、この疾患に限り内服です。薬剤が全身に回らないので大きな副作用もありません。しかし、覚えておいてほしいのですが、偽膜性腸炎は基本的にはメトロニダゾールで治療します。治療成績はバンコマイシンの方が良いのは確かです。しかし、価格のことやVREというバンコマイシン耐性腸球菌出現の可能性を危惧して(VRE出現頻度を上げると言うエビデンスはないですが)、再発例や重症例を除いては出来るだけメトロニダゾールで勝負します。この偽膜性腸炎へのメトロニダゾール、日本では適応外使用なのが納得行きません…。

 大事なのは、血液培養からGPCが出た時。MRSAやfaeciumfaecalisかまだ分からない段階の腸球菌など、バンコマイシンが活躍しそうな菌が想定される状況の場合は、すぐに投与するということです。MRSAか分からないからきちんと生えてくるまで待とうという作戦なら、患者さんの状態が悪くなることも十分想定されます。疑ったらドン!と使いましょう。違ったら速やかに撤退するのも忘れてはいけません。

 不適切な投与としてよく見られるのが、皮膚科や外科で創面を拭ってそこからMRSAが出たからバンコマイシン使うという場面。これは明らかにバツな使い方です。「MRSA検出=感染」ではありません。単なる定着を拾って騒いでしまうのは、検査結果に振り回されていることになります。難しいのは、ICU患者さんの吸引痰の解釈。たまにMRSAが貪食されている像があり、それをもってMRSA肺炎と言ってしまいたくなります。しかし、吸引痰はなぜか分かりませんが、原因菌でないのに貪食されているのを見ることがあり、結構それがMRSAだったりします。MRSA肺炎の診断は、実はかなり難しい。。。患者さんの状態や、グラム染色の結果、血液培養の結果なども併せて判断せねばいけません。

 MRSA肺炎に対する抗菌薬治療については、リネゾリドの項目で述べますので参考にしてみて下さい。

 バンコマイシン治療で大事なのはトラフという血中濃度の最低値。4-5回目の投与の直前に測定です。2011年IDSAのバンコマイシン投与の項目では、トラフを15-20μg/mLに保てとされています(重症でない軟部感染ではもっと少なくて良いとも言っています)。これは以前に比べると多めです。投与量は、腎機能が正常な患者さんでは15-20mg/kg/回(Actual body weight)の投与が推奨されています。この時、1回の投与量が2gを超えないようにします。重症感染(敗血症、髄膜炎、肺炎、感染性心内膜炎)では25-30mg/kg(Actual body weight)のLoading doseも考慮される、とのこと。

 副作用で有名なのはred man syndromeですが、ゆっくり投与でその頻度は低くなります。また、覚えておくべきものは発熱。使用開始後なぜか2-3週間経ってから熱が出てくるというものです。その期間の発熱は、バンコの副作用かも??とチラッと思いましょう。

 テイコプラニン(タゴシッド®)に関しては、トラフ値が添付文書の10μg/mLではなかなか効果を発揮しづらく、初期投与量も添付文書よりは多めが必要と言われています。自分の属している病院の救急部教授の投与方法は、トラフ値は17-20μg/mLを目標に、投与初日は1回量を10 mg/kgとして8時間ごとに3回投与。投与開始24時間でトラフ値を評価します。投与2日目からは投与量を4-6 mg/kgに減量して、1日1回投与とします(腎機能正常の場合)。
トラックバックURL
http://m03a076d.blog.fc2.com/tb.php/1436-caedac98
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top