2011
12.07

診断推論 Starter & Booster:第4回~系統アプローチから見るミスの原理

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 前回は、鑑別疾患を思い浮かべる際の教科書的なアプローチ法を学びました。こうして想定した鑑別疾患内で、私たちは色々あーでもないこーでもないと考えます。ということは、裏を返すと「思い浮かばない疾患は診断できない」という重大な事実に突き当たることに…。下腹部痛の鑑別からすっぽり精巣捻転が抜け落ちてたら、けいれんの鑑別から心室細動などの重篤な不整脈や低血糖を外していたら、、、それを疑いすらしません。ということは、到底その診断に辿りつけないのです。もちろん鑑別に挙げた以降でもミスはしますが、思い浮かばないと土俵にも上がれないのです。ちょっとこれは寂しいし厳しい。

 では、なぜ思い浮かばないのでしょう?もう一度これまでの鑑別の想定手順を振り返ってみることにします。



 思い浮かばないというミスをする。その最初の一手を見ようと矢印を逆に追っていくと

①:主訴→鑑別臓器
②:主訴→VINDICATE!!!+P

この2点に突き当たるかと思います。と言うことは、すなわち

①:主訴から見えづらい臓器がある
②:臓器別ではない鑑別疾患がある

と言いかえられます。それが「思い浮かばない」というミスの原因なんですね。例を見てみましょう。

 ①で挙げてみます。下腹部痛と言われるとどうしても思考が下腹部の臓器に閉じがちですが、男性生殖器疾患や腎盂腎炎、尿路結石も忘れてはいけませんし、鼠径・大腿・閉鎖孔の各種ヘルニアも外せない大事な疾患。また、先の例で挙げた腰痛では何と感染性心内膜炎が鑑別に挙がります。関連痛も怖く、肩の痛みという訴えだと視点が肩周辺にしか行きませんが、心臓や横隔膜周辺臓器にも着目です。また、嘔吐と言う主訴でも鑑別に心筋梗塞があるんです。これはBezold-Jarisch reflexと言って、心筋梗塞、特に下壁梗塞では迷走神経が刺激されることによって嘔吐や徐脈が生じると言われます。

 ②ですと、例えば腹痛ではDKAや副腎不全が鑑別に挙がってくるのです。意識障害では低血糖やアルコール、電解質異常なども思い浮かびますね。下腿浮腫で脚気なんていうのもあります。これは覚えようとしても、ついポッと抜けてしまいがち。意識して頭に焼き付けておきましょう。

 こういった落とし穴は要注意。①と②で想定しづらい「見逃してはいけない疾患」を重点的に覚えることが、ミスを少なくするポイントであります。

 そして、ミスの種類は主要なものに4つあります。前に述べた「主訴の思い違い」とここで出てきた「想起されない」ことの他に、「鑑別に挙げた以降の間違い」と「言葉の取り違え」というものもあります。「主訴の思い違い」は、スタート位置からして違うという状態。適切な主訴を設定しないと、それ以降グダグダになってしまいます。この前お話ししたヤツです。「想起されない」というのは今回のですね。3番目と4番目は、また後でお話しすることにしましょう。
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