2011
06.09

叩こう、聴こう

 少し前、後輩から「先生、大腿骨頸部骨折疑う時にはどんな診察したらいいですか?」と質問を受けました。

「auscultatory percussionが良いよ。アレ使えるから覚えといて」とお返事しましたが

「何ですか、ソレ?」

 意外と知られていないauscultatory percussion(聴打診)。McGee先生は、そんな化石みたいな診察技術はもういらないんじゃないのとおっしゃいますが、用途を絞った上なら、まだまだ現役で頑張れそうな、そんなワザであります。

 胸水貯留、慢性硬膜下血腫、大腿骨頸部骨折を疑った際には是非使いたい技術。

 胸水のauscultatory percussionに関しては、藤本先生の感染症レジデントマニュアルに記載があります。

 慢性硬膜下血腫用のauscultatory percussionは

額の真ん中に聴診器を当てて、額の左側と右側をそれぞれトントンと指で叩く

 もしくは

一方のこめかみに聴診器を当てて、額の一方からもう一方に向けてトントン叩いていく

 という方法で左右差を見ます。

 ですが、けっこう微妙。。。自分はトントン叩いてみて「ん?左右差ある、かな?どうかな?」という思いでCTに行ったら、教科書に載っても良いくらいの見事な慢性硬膜下血腫だった記憶があるのです。「こりゃ難しいな...」と唸ってしまいました。しかもこの疾患は両側性のこともあるので、その場合はこの手技の有用性は無くなるのでしょう。

 しかし、だからといって捨て打つものではありません。何と言っても有用性が高いのは大腿骨頸部骨折を疑った時なのです。診察で痛がっていて、折れてるかもしれんなぁと思う。レントゲンを撮ってみようと思っても、読影の自信がない。。。大丈夫そうに見えるけど...。というのは、ままあること。そんな時、auscultatory percussionをしてみましょう。

 方法は簡単。患者さんに仰向けに寝てもらって、恥骨結合の部分に聴診器を当てます。そして、左右の膝蓋骨をトントン。これだけ。折れている方は、音が鈍く感じられます。自分はベル部を当てるようにと教わりましたが、文献の画像では膜部になってますね。たぶん、どっちでも良いのでしょう(低い音を拾いたいからベル部の方が、、、とは思いますが)。



 感度や特異度については若干バラツキがあるようですが、ひいき目に見させてもらうと感度96%、特異度86%、陽性的中率98%、陰性的中率75%としています。尤度比に関しては、LR+6.73、LR-0.75と算出されています。auscultatory percussionを含めた診察、そしてレントゲンでも骨折らしくなかったら、その患者さんは骨折してないだろうと言われます。また、レントゲンで一見正常でもauscultatory percussionで所見が出たら、CT(可能ならMRI)に行っても良いのでは、と述べる先生も。

 自分は去年、救急外来でauscultatory percussionを大腿骨頸部骨折疑いの患者さん方に結構使ってみましたが、陽性の患者さんは、確かに皆さんレントゲンでパキッと折れている像が見えました。陰性の場合はレントゲンでは何も所見無しだった記憶があります。ただし、ひよっこの医者が行う診察と読影で、検証期間はたかだか1年にも満たないということはご理解ください。

 トントンとやって「お?」と思ったら、少なくともレントゲンはじっくりと、折れてるもんだと思って見る必要があると思います。診察で痛みもそんなに無く、かつトントンと叩いても左右差無し。かつレントゲンも正常なら「折れてないんだろうな」と考えて少し安心しても良いかもしれません。

 何にせよ、簡単にかつ短時間で行える技術であることは間違いありません。1つの参考指標にはなるのではないかな、と考えています。
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