2011
04.13

消化管エコー

 一昔前までは消化管や肺というのは、空気が邪魔してエコーなんか役に立たんと言われていました。ですが、、

 消化管は、炎症があるとガスが掃けるため、じゃあそれをエコーで見ようという流れが出来ました。

 肺は、空気が邪魔するものの、アーチファクトを上手く利用しようという逆転の発想で臨床応用が進んでいます。

 自分が救急外来で行っていた肺エコーを以前ご紹介しましたので、今回は消化管エコーを。字ばっかりで画像がないというのは、エコーの説明には致命的かもしれませんが。。。

◆ポイント◆
☆腸管のエコー像は「良く分からない」のが正常
☆何かしら構造物(low echoを含んでいる)が見えたら、それは異常
☆なので、low echoを探すことが大事
☆ガスが多くて見えにくい場合は、その部に病巣はない可能性が高い
☆コンベックスでスクリーニング、詳しく見たいところはリニアで
☆腸管が肥厚?拡張?次に腸間膜の変化を見る
 ①肥厚:そこに病巣あり。肥厚を見たら潰瘍性病変を探す
 ②拡張:胃腸自体の疾患or二次的なもの
☆腸間膜の変化
 ①肥厚し、high echoが目立つ
 ②静脈怒張、動静脈血栓
 ③腸間膜のねじれ、屈曲
 ④リンパ節腫大
☆層構造に注目
①第3層(粘膜下層)はhigh echo、第4層(固有筋層)はlow echo
 ②浮腫性肥厚の場合、第3層の肥厚が著明
☆便の性状に注目
 ①上行結腸の泥状便:下痢がなければ虫垂炎を疑う(症状ありきですよ)
 ②上行結腸の正常便:下腹部痛があり、腹膜炎症状があるのにその状態で回腸もほとんど正常なら腸疾患は否定的。
 ③大腸が拡張して固形の便とガスが充満:便秘状態。激しい痛みがあれば虚血性大腸炎の初期や穿孔切迫状態
 ④腸管壁が著明に肥厚し、その部分に便がない:限局性なら憩室炎や虫垂炎、比較的広い範囲なら○○性大腸炎(虚血性や偽膜性、細菌性など)

◆便の性状の見かた◆
☆水様便:消化管内は粒状のエコーが見られるが全体が低エコーを呈する液体像によって占められている
☆泥状便:消化管内はハウストラに沿って高エコーを呈する内容を観察するが、内容は全体が均一的に観察され、多重エコーを伴いながらやがて音響陰影が見られる
☆固形便:消化管内はハウストラに沿って極めて強いエコーを認めるが、この強いエコーは孤状を呈しその直下から明瞭な音響陰影を生じている

◆腸管径と腸管璧の目安◆
☆腸管径の正常上限(最外層となる漿膜から反対側の漿膜まで)
 小腸:22mm
 大腸:上行18mm/横行12mm/下行15mm/S状14mm/直腸15mm
☆腸管壁の正常上限(粘膜表面から漿膜まで)
 小腸:4mm
 大腸:4mm ただし直腸は6mmまで正常

◆十二指腸◆
☆描出は、胆嚢や膵頭部との境界を意識する
☆十二指腸球部・下行部・水平部は膵頭部を取り囲むように走行
☆膵頭部の縦断走査でその頭側に球部、尾側に水平部が位置する
☆膵頭部の横断走査ではその右側に下行部の横断面が描出され、右側前方に胆嚢が位置する
☆水平部は腹部大動脈と上腸間膜動脈との間を走行
☆十二指腸と膵臓の解剖学的関連はきちんと覚えておく

◆大腸◆
☆回盲部の検索。psoasの横断像とその内側に見られる腸骨動静脈を同定。回腸末端はその上を乗り越えるように走行して上行結腸に入る
☆回盲部の横断像では、大腸はpsoasの前方やや右側に位置することが多い
☆上行結腸は太くハウストラもしっかり。下行結腸は空腸と間違いやすく、上行結腸よりやや深くより側壁に接するように存在
☆プローブは、上行結腸は斜上外側から、下行結腸は斜下外側から当てる
☆下行結腸は上部と下部に分けて描出
☆上部は、左肋間走査で脾上極内側の脾湾曲部を同定し、尾側に移動。すると横行結腸と下行結腸が分かれる短軸像が描出される
☆さらに尾側へ行くと、下行結腸が脾門部近傍・左腎前方を通り、左psoas外側を走行するのを確認
☆また、左肋間~側腹部の縦断走査で脾と左腎の間を走行する下行結腸長軸像が描出できる
☆下行結腸下部とS状結腸は腹側からの走査。縦断横断どちらでも左psoasを指標に。その外側部を走行する結腸を探す

◆潰瘍性病変◆
☆びらん:腸管が麻痺性に拡張し、粘膜面が不整でそこにhigh echo点付着
☆急性潰瘍:限局性浮腫性肥厚の中に強いhigh echoを伴う陥凹、また腸管の中心high echo上に不整形の斑状のhigh echo
☆慢性炎症に伴う潰瘍:層構造を失った壁肥厚内にhigh echo ただし潰瘍性大腸炎では基本層構造は保たれ、腸管の直線化が特徴
☆巨大な潰瘍:幅広い不整なhigh echo(血管性病変に多い)
☆腫瘍性潰瘍:境界明瞭でlow echoの強い壁肥厚内にhigh echoの陥凹

◆腸閉塞◆
☆エコー初心者がもっとも取っ付き易い
☆拡張した腸管、Keyboard sign、to & fro signの有無、腹水の有無を確認
☆to & fro signは腸管内容物が行ったり来たり、流れる様を見る。これはリアルタイムというエコーの長所を最大限に生かした所見
☆to & fro signがないこと、腹水があること、腸管壁の肥厚は絞扼性イレウスを強く示唆
☆腹部単純レントゲンでは、いわゆるgasless abdomenのイレウスを知っておかないと見逃すことがある。エコーでは明確に描出できる

◆虫垂炎◆
☆まず回盲部にプローブを当ててpsoasの断面を描出
☆間接サインから疑い、次に直接サインを探しにかかる
☆間接サインの中で重要なのは、上行結腸の便が軟便となること、回盲部付近のリンパ節の腫大
☆回盲部にガスが多く、見にくい場合には虫垂炎の可能性は低い(初期除く)
☆虫垂は、psoasの前方に最も多い。そこになければ、腸骨動静脈三角を探す。次に盲腸背側や外側に目を向ける
☆発症半日以後になると、周囲のlow echoが明らかになってくる

◆腸管壊死◆
☆腸管の粘膜面に付着するやや大きなhigh echo点は凝血と壊死物質によるもので、腸管壊死の1つのサイン
☆動脈閉塞か静脈閉塞かでエコー像が異なるが、初期にはどちらも腸管壁は軽い浮腫性肥厚を示し、粘膜面から小さい点状high echoが粉雪のように舞い上がるのが見られることも
☆動脈閉塞ではその後腸管壁は菲薄化し粘膜面に大きなhigh echo点が付着し腸間膜も菲薄化
☆静脈閉塞ではその後腸管壁は著明に肥厚し腸間膜も肥厚。しかしhigh echo点の付着は少ない。層構造の破壊が決め手
☆他、どちらの閉塞でも腹水が中等度以上出現(血性腹水)。動脈閉塞なら、多くが腸間膜動脈の起始部に血栓が見られるので検索を

◆穿孔◆
☆直接サインは、肥厚した消化管の壁とそれを貫通するhigh echo線
☆間接サイン
 ①free air(肝表面、肝下面、大網内)
 ②fluid collection(混濁した液体)
 ③穿孔部周囲の脂肪組織(大網など)の肥厚
 ④穿孔部周囲の腸管癖の肥厚とその付近の麻痺性拡張
☆free airの探し方
 ①大量の時:肝の描出が困難になる。体位変換で肝が描出できればairと確認
 ②軽度~中等度の時:肝の表面にhigh echoが見られ、その部以外では肝表面は描出。肝の辺縁に近いairは腸管内ガスのことが多いので注意
 ③ごく微量の時:穿孔部を被包した大網内や肝下面にだけ小さな点状high echoとして描出
☆下部消化管(大腸)の穿孔も同様に。ただし、大腸疾患で腹水を見たら穿孔を強く疑うこと

◆虚血性大腸炎◆
☆便がつかえた時に起きる
☆横行結腸や下行結腸が好発部位
☆多くは便秘→激しい下腹部痛→排便→下痢→血便
☆便が出ていない時の超音波検査では壁肥厚が出現していないことあり
☆下痢となって痛みが薄らいだ頃から壁肥厚が出てくる
☆繰り返しだが、大腸疾患で腹水出たら要注意!
☆超音波像は、病変部の著明な肥厚・比較的なだらかな潰瘍面をかたどるようにhigh echo点がみられる、というのが特徴
☆壁の内部エコーが多彩。壁の層構造が消失するとより重症。内部エコーの所々にlow echoの強いところが散在している像は、壁内の血腫を示す



 文字だけだとイメージが掴めないので、ぜひ消化管エコーの本を読んでみて下さい。そしてどんどん消化管エコーを実践しましょう!

 もし消化管エコーをしたことがなくて、救急外来でイレウスの患者さんがいたら、プローブを当ててみて下さい。威力が分かるはずです。肺エコーの時にも述べましたが、まずは病態が分かっている患者さんから学びましょう。自分も最初はイレウス、胃潰瘍、十二指腸潰瘍穿孔のそれぞれkeyboard sign、high echoを伴う陥凹、肝表面free airというエコー像を確定診断のついている患者さんから学びました。

 消化管エコーの本は「消化管エコーの診かた・考え方」「新超音波検査消化管」の2冊を使いました。教えてくれる上級医がいなかったので辛いところでしたが。


消化管エコーの診かた・考えかた消化管エコーの診かた・考えかた
(2004/04)
湯浅 肇、井出 満 他

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新超音波検査消化管新超音波検査消化管
(2006/05)
関根 智紀

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コメント
エコーも発達したものですね.私はほとんど使えません.
使えるのは心デメンジョンを測定するときに使用するときくらい
のものです.神経内科ではほとんど使用しませんので,
いまだエコー音痴です.
iwasedot 2011.04.18 23:05 | 編集
>iwase先生
昔と比べて今はエコー機器の精度も上昇したと聞きました。画像検索では唯一リアルタイム性を発揮できるので、そこに惹かれていました。が、精神科となった今ではプローブを触ることすらなくなってしまいました。
m03a076ddot 2011.04.19 18:57 | 編集
以前、なげっぱなしのマージャンじゃないの所で、メイラックスの減薬について質問させていただいたものです。実は、今年の2月から胸や食道の痛みなどで近所の消化器内科に行き、問診で、ガスモチン5mg×3とネキシウム20gを処方してもらいました。で、私はパニック障害と嘔吐恐怖があり、胃カメラがとても怖かったのですが、「食道がんだったらどうするの?」と言われドリルカム5mg打ってもらい、鼻からチャレンジしましたが、喉が見えたくらいで嘔吐反射に耐えきれず、3回もチャレンジしましたが、出来ませんでした。全くセデーションが効きませんでした。そして、他の病院でベンゾ系では無い麻酔をうってもらってチャレンジしましたが、頭がくらくらして余計気分が悪くなっただけで、又鼻を少し通過した位でえずきが凄く出来ませんでした。でも、逆流性食道炎も正しく知りたいし、もし食道がんだったらと思うと本当に不安です。飲み込むことのない超音波でしたら、多少は食道の様子がわかるのでしょうか?それかMRやCT、PETなどなら少しは解るのでしょうか?質問ばかりで本当にすいません。又、東京、埼玉あたりで詳しい先生を御存じでしたら、幸いです。長文失礼いたしました。
りんごdot 2017.05.31 23:21 | 編集
>りんごさん

ありがとうございます。
確かにCTでも食道がんが分かることもありますが、くまなく見るのであればやはり胃カメラになるのかなと思います。
カプセル内視鏡は今のところ腸を調べるためのものとなっています。
体重や病院のキャパシティにもよりますが、ドルミカムの投与量を変えたり麻酔の深さを変えたりなどになるでしょうか。
申し訳ありませんが、そういう検査に強い病院は見識なく知りません…。
m03a076ddot 2017.06.06 11:46 | 編集
先生、お忙しい中お返事ありがとうございました。
ドリルカム5mg打って効かなかった。と言うと、だいたいうちでは、難しいと言われてしまいます。
CTを先生にとりあえず提案してみます。そして又、ドルりカムの投与量を変えてくれるところを探します。
お忙しい中、どうもありがとうございました。
りんごdot 2017.06.06 20:55 | 編集
>りんごさん

ありがとうございます。
複数の手段を考えていくことが大事なのだと思います。
うまくいくと良いですね。
m03a076ddot 2017.06.10 10:41 | 編集
先生、お忙しいところいつもご丁寧にありがとうございます。
薬を飲むようになってから、食道の方の症状は落ち着いていたのですが、ここ最近、気持ちの悪さ、胃痛、があってから、食道のキリキリと熱い感じかあり、嘔吐恐怖が強まり、パニック発作を今朝も2回も起こしてしまい、今は、食欲もないし、食べても下してしまいます。不安が不安を呼んで悪いスパイラルにはまってるのかもしれません。
今は、あまり行動的に、いろいろ出来る状態じゃないので、取りあえず、近所でCTだけでもできたら、と思いますが、悩まし所です。

本当にありがとうございます。
りんごdot 2017.06.15 14:49 | 編集
>りんごさん

ありがとうございます。
まずは自分のできるところからひとつずつこなしていくことが大事かもしれません。
あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ、と考えると頭の中が負のループでいっぱいになりますので。
m03a076ddot 2017.06.19 21:50 | 編集
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