2011
02.04

血液培養を取ろう!

 血液培養を取る機会は、特に救急外来で多いと思います。その際の基本的な注意点を以下に記しておきます。

☆血液培養採取の適応とタイミング
・菌血症を疑う症状がみられる(発熱・悪寒/戦慄・頻脈・頻呼吸など)
・原因不明の低体温や低血圧
・突然変調を来した高齢者もしくは小児
・免疫抑制患者での原因不明の呼吸不全・腎不全・肝障害
・昏迷などの意識の変調(特に高齢者)
・説明のつかない白血球増多や減少、代謝性アシドーシス
・抗菌薬の変更時
などです。どうしようかな?と思う/迷うことそのものが適応です。これは腰椎穿刺と同じですね。日々是血培!
蛇足ですが、原因の良く分からない意識障害の患者さんでは、血ガス検査(静脈血で代用可*)をしてみましょう。ひょっとしたら「呼吸性アルカローシス+AG開大性代謝性アシドーシス」になっているかも!このペアを見たらアスピリン大量服薬or敗血症をとにかく疑いましょう(特に敗血症)。そうしたら血液培養も取れるし、もっと本気で病巣検索に入る気になるし。ということで意識障害で困った時の血ガスは、何らかのヒントを与えてくれることがあります。

*静脈血の血ガス
 血ガスは必ずしも動脈血で行うものではありません。静脈血で行う血ガスの検査値ですが、、、

O2はアテになりません
CO2は「静脈血の値-6=動脈血の値」
HCO3-は「静脈血の値-1.5=動脈血の値」

 他はほぼ一緒。これを覚えておくと、わざわざ動脈から取らなくてもいいので楽ですよ!呼吸に急性期障害がありそうな患者さんで酸素化が知りたい時は動脈血が選択肢になりますが、他は静脈血とSpO2モニターで代用可です。

 では本題に。

☆採取するセット数と血液量
 1セットというのは、好気ボトル1本と嫌気ボトル1本の計2本を指します。

 そして、採取するセット数は、必ず最低でも2セット!つまりはボトル4本!検出される菌にもよりますが「1セットのみの血液培養に大きな診断的意義はない」と考えておきましょう。1セットのみでは、菌が検出された場合、皮膚常在菌のコンタミネーション(汚染、混入)か真の起因菌かの判定が難しくなってしまうのです。特にグラム陽性球菌なんかが生えた日にゃあ困りモノ。ですが、2セット採取して2セットとも同じ菌が出れば、よっぽど下手でなければ恐らくコンタミネーションではないだろうな、真の起因菌だろうなと考えられるのです。

 そして、各セットの採取血液量は20mLが目標!!!!2セット取るなら合計40mLが必要です。お手伝いしてくれる看護師さんが10mLのシリンジを出すことは良くあります。その時は自分からでもいいので20mLのシリンジを出しましょう!そんなに取るんですかと文句を言う人もいますし、上級医の中でも1セット10mLで良いと考えている人もいます。でも10mLと20mLとでは起因菌の検出力が格段に違うのです。2007年にきちんとCLSIのガイドラインが変わって1セット20mL取るようにとのお達しが出ていますしね。もし採取量が20mLに足りなければ、好気ボトルを優先させましょう。例えば15mL採取なら、嫌気5mLと好気10mLというように。

☆採取手順
 イソジンを使う場合「(採取部位をアルコール綿で消毒→)イソジンで2回消毒→清潔手袋はめる→採取」とします。手袋をはめる前にイソジンで採取部位を消毒するのは、イソジンが殺菌効果を発揮するまでに1分ほどかかるため。その間を利用して手袋をはめましょう。手袋は清潔手袋を。コンタミが50%減りますよ(と言っておきながら、自分は明らかに「取れる!」と判断できるほど良い血管であれば清潔手袋使いません。採取部位に触れなければ良いので)。

 培養ボトルの口は消毒しておきます(エビデンスは良く分からん)。看護師さんがしてくれますが、イソジンでなくともアルコール綿で十分。入れるのは嫌気ボトル→好気ボトルの順。嫌気ボトルに空気が入らないようにするためです。この時、穿刺に用いた針をそのまま使います。針を替えると針刺しのリスクが高まるので危険危険。

☆用いる消毒薬
 消毒は必ずイソジンでなければならないということではありません。自分は血管が良く見えて失敗しないだろうなと思える患者さんでは、アルコール綿でごしごしごしごし消毒して、ちゃちゃっと採取しています。

 各種消毒薬の利点欠点は以下の様(「臨床に直結する感染症のエビデンス」より)。
1. イソジン
 利点:持続性+、穿刺に手間取っても雑菌混入のリスク上昇しない
 欠点:即効性-、穿刺までの時間を十分取らなければならない
 推奨される臨床場面:穿刺まで十分時間をとれる、術者の習熟度問わない
2.アルコール
 利点:即効性+、すぐ穿刺可能、コスト安い
 欠点:持続性-、穿刺に手間取ると雑菌混入のリスク上昇
 推奨される臨床場面:穿刺時間かけられない緊迫した状況、術者がベテラン
3.クロルヘキシジン
 利点:即効性+/持続性+、すぐ穿刺可能、穿刺に手間取っても雑菌混入のリスク上昇しない
 欠点:コストが高い
 推奨される臨床場面:コストが許せばさまざまな場面で使用可能

☆静脈血?動脈血?
 2セットとも静脈血が望ましいです。片方の腕にルートが入っているから、、、ということで1セットを鼡径から取ることもありますが、採取部位さえ異なれば同じ腕で取っても大丈夫。鼡径で取る際には、最初のアルコール消毒を執拗なまでに行いましょう!鼡径は汚染が著しいことをお忘れなく。

 Aガスと一緒に血液を採取する時に三方活栓をつけて行う方法がありますが、引いている内に、またロックを動かしている内に針が動いて上手く行かないことがあります。その時はトンボ針(翼状針)を使用して2人がかりで。通常はAガスキットの針を外して三方活栓を接続。そこに20mLや50mLのシリンジと外した針を付けます。トンボ針を使う時は、そのAガスキットの針の代わりにトンボ針を接続し、一人は刺して固定することに専念。もう一人は血液を引くことに専念。そうすると全く針がぶれずに血液をスムーズに取れます。

☆その後
 培養を出した後のことも知っておくと勉強になります。嫌気ボトルと好気ボトルのどちらが先に陽性になったか、提出後どれくらいの時間で陽性になったか、など。例えば好気ボトルのみ陽性になったグラム陰性桿菌、なんて来られたら、真っ先に緑膿菌を思い浮かべましょう。奴らは嫌気の環境が苦手なので。

☆特殊な状況:感染性心内膜炎を疑う時
 24時間以内に間隔を空けて、最低3セット。持続的にグラム陽性球菌が検出されれば、それは感染性心内膜炎を強く示唆します(カテ入ってれば別ですけど)。感染性心内膜炎は決して稀な疾患ではありません。「心雑音+発熱=心内膜炎」として考え、コモンな意識を持ちましょう。

 ちなみに経胸壁心エコー(TTE)の疣贅vegetation検出に対する感度は約70%とされているので、TTEで疣贅が見つからなかったからと言って、感染性心内膜炎は否定できません。疑った場合は、経食道心エコー(TEE)も必要となります。TEEの感度は、施行者にもよりますが90%以上とされています。疣贅は僧帽弁前尖に出来やすいいので、ごもっとも。問題なのが、TEEも空振りだった時。診断の洗いなおしをして本当に疑わしければ、やはり感染性心内膜炎として対処することとなっています。

 診察所見(Janeway lesions, Osler nods, Roth spots, splinter hemorrhage, conjunctival petechiaeなど)は恐ろしいまでに感度が低いので、診察で所見が無いからと言って否定してはいけません。その代わり特異度は異様に高いので、見つけたら指導医の所に嬉々として伝えに行きましょう(いつ出るか分からないので、毎日繰り返し診察すること)。Janeway, Osler, Rothは、どれがどれだか分からないという人がいます。どれが眼底に出るんだっけ?押すと痛いのはどれだっけ?という感じ。覚え方としては、RothとRetina(網膜)の頭文字が一緒なので、Rothが眼底。Oslerが押す(”オス”ラー)と痛い(Ouch!の頭文字もOですね)とこじつけ?します。これらの所見は疣贅が飛んでいった塞栓症状と捉えます。なので、腎に飛んでいくと血尿が出ますし、また脳に飛ぶと巣症状が出現します。

 血液検査ではRFが陽性になったり補体が低下したりすることがあります。関節痛も出ることがありますし、不明熱の原因としても良く出てきます。なので、何となく捉えるなら、感染性心内膜炎の症状や所見というのは「悪性腫瘍+膠原病」の雰囲気としておくと良いかもしれません。

 血液培養の話から妙に脱線しましたね。。。

☆特殊な状況:CRBSI(カテーテル関連血流感染症)を疑う時
 いわゆるカテ感染ですが、これを考えた時、1セットはカテから、もう1セットは末梢から取ります。そしてカテを抜いた場合は、そのカテ先も培養に提出(カテ先培養の感度は低いです)。

 カテから取った血液培養が陽性判定となる時間が、末梢から取った血液培養が陽性判定となる時間よりも2時間以上早ければ、非常にカテ感染らしくなります(検出菌はもちろん同じという前提で)。

 ちなみに、カテ刺入部の発赤なんてのは出ない方が多いので、発赤がないことはカテ感染の否定材料には全く使えません。ご注意を。そもそもカテ感染は、いったんカテーテルを刺入した後は、皮膚側からの細菌侵入が稀とされています。細菌の侵入ルートは「ルートの継ぎ目」です。すなわち三方活栓の使用時や点滴差し替え時、側管からの薬液注入時。これらの操作をする際は、無菌操作と厳密な消毒が必要となります。

 治療は「カテ抜去+抗菌薬治療」の合わせ技が基本。どうしてもカテを抜きたくない時は、菌によっては抗菌薬ロック療法なんてのが使えますが、ICTや感染症に詳しい医師などに相談しましょう。

 これまでの話は中心静脈カテーテル(CVカテ)においてのものですが、末梢カテ感染(PV-CRBSI)というのも存在しますので、注意が必要です。そして末梢カテ感染では、刺入部より中枢側に膿瘍などを形成することもあるので、硬結所見が無いかもチェックが必要。

☆付録:子供の血液培養
 ルーチンでの嫌気ボトルは必要ありません。採取量としては、最低1mLの血液は必要とされています。

体重1kg以下:2mLを1セット(計2mL)
1.1-2kg:2mLを2セット(計4mL)
2.1-12.7kg:3mLを2セット(計6mL)
12.8-40kg:10mLを2セット(計20mL)
それ以上:成人と同様。

 暗記する必要はなく、どこかにメモしておくか救急外来に貼ってしまいましょう。
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