2011
01.21

クランベリージュースの甘い幻想?

Cranberry Juice Fails to Prevent Recurrent Urinary Tract Infection: Results From a Randomized Placebo-Controlled Trial
Clinical Infectious Diseases 2011;52(1):23–30


 尿路感染症は外来や入院患者において最も多い細菌感染の1つです。

 特に膀胱炎は再発する傾向にあり、18-39歳の健康な女性では、最初の膀胱炎発症から6ヶ月間の再発リスクは24%と言われています。

 また、尿路感染症を発症させる細菌は、抗菌薬に耐性化してきているのが実情。

 アメリカンクランベリー(Vaccinium macrocarpon)は、古くから尿路感染症を予防すると言われてきています。多くの観察研究や小規模あるいはオープンラベルの臨床試験でもそれは示唆されているようです。また、In vitroではE. coliの尿路上皮への付着をクランベリーが防ぐ事が示されていまして、この作用は用量依存性であることも知られているのです。自分も1年次に対し得意げに「クランベリージュース膀胱炎に効くんだぜー」と教えてました。

 ですが、十分な検出力を持ったdouble-blind RCTが行われていないという理由から、この論文の著者らは今回のスタディを行うに至ったとのこと。目標は、定期的にクランベリージュースカクテルを飲むことでUTI再発率と症状の期間を減らすこという効果を示すことです。

☆Methods
 著者らの18-40歳の女性同僚で急性尿路感染症を訴えた319人を用いて、UTI再発のリスクに影響するかどうかを検証。参加者は2回目のUTIが起こるまでの間、もしくは6ヶ月間フォローアップされました。

 UTIは、症状(排尿時痛と頻尿、尿意切迫感、血尿、恥骨上の圧迫感から3つ以上)がありなおかつ尿培養で尿路感染と診断されたものと定義。

 治療群には27%のローカロリークランベリージュースカクテル8 oz(240mL)を1日2回、対照群にはplacebo juice8 oz(240mL)を1日2回、それぞれ使用。両者ともにアスコルビン酸(ビタミンC)が含まれていました。また、参加者にはスタディの期間中、クランベリーやブルーベリーを含む食物は控えてもらっています。

 プライマリエンドポイントはUTIの確定。コンプライアンスは自己申告に基づいています。

☆Results
 参加者の特徴はTable 1に示しました。



 スタディの期間、そして再発したUTIで最も多く検出されたのはE. coliでした(Table 2)。



 全体を通し、治療群は116人、対照群は114人が6ヶ月間のフォローアップを終了、もしくは再発ししました。

Figure1.



 期間中、54例の再発性UTIを認めました(培養で確認されたもの)。内訳は、31例が治療群、23例が対照群。再発率は全体で16.9%であり、著者らの予想した30%を下回っています。尿路症状と膣症状においても有意差はありませんでした。性交渉の頻度やUTIの既往で調整しても、クランベリージュースの有効性は確認できなかったとしています。Figure 3, 4参照。

Figure 3.
Kaplan Meier curves of survival to urinary tract infection recurrence by juice assignment. The cranberry group had a higher failure rate than placebo (20% vs 14%) but the difference was not statistically significant.



Figure 4.
Risk of a recurring urinary tract infection (UTI) by history of UTI and juice assignment. Participants (92/155) taking cranberry and taking placebo (87/164) reported a history of one or more UTI. Error bars show 95% confidence intervals.



☆Discussion
 残念ながら、健康な女性において1日2回8 ozのクランベリージュースを飲むことはUTI再発のリスクを減少することにつながりませんでした。以前に行われたスタディではUTI再発を有意に減少したとしていますが、それらのスタディは盲検ではない、または検出力が不足していた、と指摘しています。

 再発率は16.9%であり、多くが支持する30%という値の約半分。これは、クランベリージュースに含まれている有効成分がプラセボにも入っていた可能性があります。有効成分はproanthocyanidin(プロアントシアニジン)と思われていたが、そうではない可能性も否定できません。プラセボにもクランベリージュースにもアスコルビン酸が含まれており、UTIを防ぐことが示唆されています。しかし、比較試験ではアスコルビン酸の有効性は示されていません。別の可能性としては、今回のスタディの参加者全員がより水分補給され、それによって排尿回数が増え、細菌の増殖を防いだことや軽度の尿路症状を減らしたことへつながった事も考えられます。

 なので、1年次には今度から「クランベリージュースね。。。効くか効かんか分からなくなってきたわ」と歯切れの悪い回答をしなければならなくなりそうです。
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コメント
さりげなく応援メッセージが(o^∇^)o

あの、飲むんじゃなくて患部に塗布、とか、有効成分(はっきりしないのでしょうか?)を精製して点滴とか、そういう方法はないのでしょうか。
素人なので発想が全く見当違いかも知れませんが。
クランベリーが直接効くというより、どこかで代謝を助けて間接的に効くのでしょうか。血流で患部に届いた成分が直接大腸菌に抗菌作用?みたいなものを示すなら、クランベリーの塗り薬とか?
香も良くてオーガニックで人気出そう!なんて思ってしまいました。(笑)
あおdot 2011.01.22 19:50 | 編集
>あおさん 
本当におつかれさまでした☆
膀胱炎では、バイキンが尿路(尿の通り道)に張り付いて増殖します。クランベリーの有効成分は、その張り付いているバイキンをはがし、私たちがトイレに行って尿を出す時、一緒に流れ出て行くのを助ける作用があるらしいです。
医療者からすると、腎臓にまでバイキンが入れば大変ですが、膀胱に滞在している限りは楽勝な感染症。なので、楽勝なものに敢えて点滴は患者さんの負担が大きいかしらと思います(治療も数日続きますし)。抗菌薬にしろジュースにしろ「飲む」という軽い負担で済むのがポイントだと考えています。
塗り薬に関しては、安定して有効成分が血流に乗らず、十分な血中濃度を保てません。なら最も楽に飲んでしまえ!となってしまうのでしょうね。
いずれにせよ、クランベリージュースは西洋の「おばあちゃんの知恵袋」的なものでして、治療なら圧倒的に抗菌薬が勝ります。内服にせよ点滴にせよ(点滴は行いませんが)、やはり適切な抗菌薬をきちんと入れるのが柱だと思います。クランベリーは隠し味のような印象で良いのかもしれません。
それにしても、クランベリーのアロマとかなら結構いい香りしそうですね。
m03a076ddot 2011.01.23 05:26 | 編集
ありがとうございます☆

なるほど、です。そもそも、医療行為として治療に取り入れよう、というより、サプリメント的な感じなのですね。よく考えたら、患部にクランベリーなんて塗ったら余計感染しちゃいそうですよね。
物理的にはがれやすくなるなら、乳酸菌とか常在菌も同じように流れるのかな。なんだか面白いので調べてみたくなりますが、我慢します(^o^;)
あおdot 2011.01.23 22:09 | 編集
クランベリーを摂取すると、大腸菌(膀胱炎を起こす最もメジャーな菌です)の線毛に成分が働きかけて、くっつくのを阻害するみたいです。他には、尿を酸性に保って菌の増殖を防ぐ作用もあるみたい。
実は尿って本来は無菌なんです。正常な状態では、膀胱の中は菌がいないんですよ。
m03a076ddot 2011.01.24 02:39 | 編集
そうなんですか。なるほど、です。排出系も大小(?)で事情が全然違うんですね。面白いですね。
あおdot 2011.01.29 23:19 | 編集
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