2010
12.16

プロカルシトニンよさらば?新規バイオマーカー花盛り

Cardiovascular and Inflammatory Biomarkers to Predict Short- and Long-Term Survival in Community-acquired Pneumonia
Results from the German Competence Network, CAPNETZ
Am J Respir Crit Care Med Vol 182. pp 1426–1434, 2010

 心不全の評価で有名になりつつあるMidregional proadrenomedulin(中央領域プロアドレノメデュリン:MR-proADM)を筆頭に、新規バイオマーカーが相次いで感染症の世界に参入しています。これらのマーカーで最も有効なのは何なのか?一つの回答となるスタディが市中肺炎(CAP)で行われました。

 このスタディの目的は、短期あるいは長期的なCAPの死亡率を予測するかどうか、となっています。

☆Methods
 728人のCAP患者 (59.0±18.2 歳) を登録。調べたマーカーは以下。
・midregional proadrenomedullin (MR-proADM)
・midregional proatrial natriuretic peptide (MR-proANP)
・proarginin-vasopressin (copeptin)
・proendothelin-1 (CT-proET-1)
・procalcitonin (PCT)
・C-reactive protein(CRP)
・white blood cell(WBC)count
 入院の適応はCRB-65によって決め、180日間のフォローアップを行いました。短期死亡率は最初の28日間におけるあらゆる原因による死亡、長期死亡率は29日目-180日目におけるあらゆる原因による死亡としてます。

☆Results
 短期死亡率は2.5%、長期死亡率は5.1%でした。

 入院時、CRB-65による重症度と各種マーカーは相関していました。28日以内、180日以内に死亡した患者ではCRB-65はより高いスコアであり、同様のことが新規バイオマーカーにも言えました。しかし、CRPとWBCは有意ではなかったとしています(P>0.05)。

Table 2



 28日間と180日間の生存において単変量Cox回帰モデルを用いると、各種マーカーのうちMR-proADMが抜きん出て良い指標でした。更に、MR-proADMとCRB-65を組み合わせるとより有用であったとしています。 

Table 3 



Figure 2



 共存症、CRB-65、MR-proADMを含んだ多変量モデルにおいて、長期生存を予測する上でMR-proADMは強力で独立したマーカーでした。

Table 4



 MR-proADMの値は0.959pmol/Lを超えると明らかにリスクが上昇しました。この値では、28日での死亡率を予測するための感度77.8%、特異度76.3%でした。生存可能性は、高リスク(>0.959pmol/L)では92.3%、低リスク(≦0.959pmol/L)では99.3%でした。

 180日では感度70.3%、特異度77.4%でした。同じく生存可能性は高リスクでは85.7%、低リスクでは98.0%でした。

☆Discussion
 新規マーカーのうちMR-proADMが最も優れたマーカー。そして、CRB-65にMR-proADMを組み合わせると28日、180日におけるアウトカムの予測値を強力に改善します。

 以前にもMR-proADMを用いたCAPのスタディは行われていますが、今回のスタディは180日間という長期死亡率をも評価しています。この点において、MR-proADMは最良のパフォーマンスを示しています。このマーカーに他のマーカーを組み合わせても有効ではありませんが、CRB-65を組み合わせることで予測の正確性が上昇するとしています。

 PCTは細菌感染の診断的マーカーであり抗菌薬治療のガイドに用いられます。しかし、長期死亡率を予測するものではありません。対して新規バイオマーカーは心不全でも上昇することが知られており、CAPによって心血管疾患や腎疾患が増悪した場合にもそれは当てはまります。更にADMには様々な作用があり、抗炎症作用や抗菌作用も有しています。こういったことが、今回の結果につながったかもしれません。

★ADMと敗血症
Mid-regional pro-adrenomedullin as a prognostic marker in sepsis: an observational study.
Christ-Crain M,et al. Crit Care. 2005;9(6):R816-24. Epub 2005 Nov 15.

Circulating precursor levels of endothelin-1 and adrenomedullin, two endothelium-derived, counteracting substances, in sepsis.
Schuetz P, et al. Endothelium. 2007 Nov-Dec;14(6):345-51.

 ADMは52のアミノ酸からなるペプチドで、CALC gene familyに属します。免疫調節、代謝作用、血管拡張作用、殺菌作用を有します。ADMそのものは血中から速やかに除去され、また結合蛋白によりマスクされてしまうため測定は非常に困難。よって、より安定したMR-proADMを測定します。敗血症では広く発現し大量に合成されます。エンドトキシンやproinflammatory cytokinesが多くの組織でADM遺伝子の発現をupregulateしています。敗血症では腎でのクリアランスが減少することも、血中濃度が上昇する一因とも言われています。

 APACHE II scoreと組み合わせることで予後の予測がより正確になる可能性があるとされています。

★個人的意見
 プロカルシトニンは細菌感染か否かの判定と、値を経時的に追うことで抗菌薬治療のガイドとしての役割に使う様になるのかしらと思ってます。

 重症度や予後については、MR-proADMがいちばんだと思います。このマーカーと臨床所見を組み合わせて治療介入をより強めるべきかとか、経時的に追跡するとどうなるのかとかは、まだ分かりません。

 CRPは使いようによっては有用という感じ。やWBCはアテにならないというのは、今回のスタディで改めて分かりました。

 でもこれらのマーカーの利用は、正しい問診と診察がベースにあってこそだというのは論ずるまでもありません。高価な検査であるMR-proADMが臨床情報とバイタルからなるCRB-65と同程度の有用性というところからも、それは伺えるでしょう。
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