2010
08.14

プロカルシトニンとエンドトキシン

 今回は感染症を疑う血清マーカーの2大巨頭、プロカルシトニンとエンドトキシン。まとめてみました。プロカルシトニンにエネルギーを注ぎすぎてエンドトキシンは何ともあっさりとしたまとめに。。。

 プロカルシトニンは前にも少しブログに出しましたが、今回はちょっとしっかりめにまとめました。



追記:プロカルシトニンと新規バイオマーカーの予後評価や、プロカルシトニンについて新しく研修医用にまとめた記事も作りました。医学一般のカテゴリからお入り下さい。




★プロカルシトニン、軽く嫉妬
 細菌感染の診断と抗菌薬治療のガイドとなるようなマーカーにはs-TREM-1やCRP, WBCなどがあるものの、様々なトライアルで支持されておらず、病勢より遅れて値が変化することや侵襲的なサンプル採取(s-TREM-1はBALFから採る)、ステロイドなどの抗炎症薬による修飾などにより使いづらい面がある。よって、特に全身性炎症の生じている患者では実践的ではなく診断の正確さにも欠ける。

 これら他のマーカーと異なり、プロカルシトニンは感染早期(発症約3時間後)から上昇し、治療により感染がコントロールされると速やかに低下する。産生はNSAIDsやステロイドにあまり影響されない。よって、敗血症診断において血液検査の中で最も有用と言われつつあり、細菌感染の重症度とも相関する。定量のプロカルシトニンの測定には時間がかかるが、半定量のPCT-Qであれば30分程度で判定でき、敗血症に対し抗菌薬治療を1時間以内で開始することが可能となる。PCT-Qによって”<0.5, 0.5-2.0, 2.0-10, 10<”の4段階を判定でき、救急外来で感染が疑われSIRSの基準を満たした患者と言うセッティングにおいて、カットオフを2.0µg/Lとすると細菌感染の感度90%台前半、特異度80%台後半となる。

 様々な研究があるが、カットオフや疾患重症度などで感度や特異度はまちまち。現在のところ、菌血症に至っていない細菌感染と非感染性炎症との鑑別において、カットオフ0.5で感度80%台後半、特異度80%前後となっている。ウイルス感染との鑑別では、感度90%台前半、特異度70%台前半である。CRPはカットオフ2.0mg/dLとすると前者で感度70%台、特異度60%台となり、後者で感度80%台後半、特異度70%前後である。プロカルシトニンは、細菌感染とウイルス感染の鑑別における特異度ではCRPとほぼ同等だが、それ以外の点では統計学的に有意な差が出ている。

 また、新規の抗菌薬が頭打ちである現在、抗菌薬の適正使用が求められている。診断のみならず、プロカルシトニン値を追うことで、それが可能となることが示唆されている。以下、最近行われたPRORATA studyより。

@PRORATA study@
 細菌感染が疑われ、ICU入院日数が3日を超えると予想される18歳以上の患者630名を対象に、プロカルシトニンガイド治療群(311人)と標準治療群(319人)との2群に無作為に割りつけた。

 28日、60日にエンドポイントを設定し死亡率を比較。プライマリエンドポイントは、28日、60日死亡率(非劣性解析)と28日目までの抗菌薬無し日数(優越性解析)。ITT解析で、非劣性限界を10%とした。

 プロカルシトニン群は事前設定カットオフ値にて、抗菌薬開始・中止を決める。対照群は現行ガイドラインに従い、抗菌薬投与。薬剤選択と最終決定は医師権限で行う。

 プロカルシトニンガイド治療群の死亡率は対照群と非劣性。また、抗菌薬非使用期間は14.3日対11.6日で、プロカルシトニンガイド治療群の方が有意に期間を減らすことができた。ICUの成人非外科的患者の細菌感染症について、プロカルシトニンガイド治療は大幅に抗菌薬への暴露を減らし、結果の増悪なしに多剤耐性菌出現を減少させる可能性が示唆される。

としている。

*事前設定カットオフ値(プロカルシトニン血中濃度による)
<0.25 µg/L:抗菌薬不使用強く推奨
≧0.25 and <0.5 µg/L:抗菌薬不使用推奨
≧0.5and <1µg/L:抗菌薬開始推奨
≧1 µg/L:抗菌薬開始強く推奨
(感染事象早期に測定している場合は、6-12時間後に再検すること。)
 その後、プロカルシトニン血中濃度を適宜再検し、抗菌薬の中止、継続あるいは薬剤の変更を決定する。

*再検時のカットオフ値
<0.25 µg/L:抗菌薬中止強く推奨
≧0.25 and <0.5 µg/L, or ピーク時よりも80%以上低下:抗菌薬中止推奨
≧0.5 µg/L andピーク時よりも80%未満低下:抗菌薬継続推奨
≧0.5 µg/L andピーク時よりも上昇:抗菌薬変更強く推奨

 そして、別のRCTではCOPD急性増悪時の抗菌薬にプロカルシトニンを利用してその判断のガイドにしたときに、通常のガイドラインに基づく判断より、抗菌薬処方&抗菌薬総量が減り、アウトカムには影響を与えなかったとしている。

 しかし、プロカルシトニン"だけ"に頼るのは決して良いものではない。的確な問診と身体診察が出来ないうちにこのようなものを使うと、それに振り回されて終わってしまう。プロカルシトニンは感度特異度ともに100%ではないのだ。悪寒戦慄を伴っていかにもsickな状態の患者のプロカルシトニンが0.8だったからといって「この患者は敗血症ではない」とは決して言えないのである。


 c.f. 敗血症の進行に病態生理学的な役割を有していることが言われており、免疫学的中和療法は敗血症の治療に結びつく可能性もある。




Serum procalcitonin and C-reactive protein levels as markers of bacterial infection: a systematic review and meta-analysis.
Clin Infect Dis. 2004 Jul 15;39(2):206-17. Epub 2004 Jul 2.

Procalcitonin in bacterial infections--hype, hope, more or less?
Swiss Med Wkly. 2005 Aug 6;135(31-32):451-60.

Procalcitonin and other biomarkers to improve assessment and antibiotic stewardship in infections--hope for hype?
Swiss Med Wkly. 2009 Jun 13;139(23-24):318-26.

The usefulness of the semiquantitative procalcitonin test kit as a guideline for starting antibiotic administration
The American Journal of Emergency Medicine: Volume 27, Issue 7, September 2009, Pages 859-863

Antibiotic Treatment of Exacerbations of COPD. A Randomized, Controlled Trial Comparing Procalcitonin-Guidance With Standard Therapy
Chest. 2007;131:9-19.

Use of procalcitonin to reduce patients' exposure to antibiotics in intensive care units (PRORATA trial): a multicentre randomised controlled trial.
The Lancet; 375 ,463 - 474, 2010


★エンドトキシン、遠き真実
 グラム陰性菌の外膜成分であるエンドトキシン(LPS)は炎症メディエーター放出のきっかけとなる。これを測ることでグラム陰性菌の菌血症を判断できるのではないかとされている。

 エンドトキシン血症は敗血症、肝疾患、血管疾患、外傷、心臓肺バイパスなど、様々な状態で見られる。「エンドトキシンが検出される=グラム陰性菌菌血症がある」とは言えない状況。

 今の測定キットはlimulus amoebocyte lysate assay(LAL)である。しかし、多くのスタディが行われているにもかかわらず、エンドトキシン測定の意義は不透明なものとされている。重症度とも相関する/しないと意見が割れており、エンドトキシンの値で治療効果を追うことは今のところ現実的ではない。

 血漿タンパクがLALに干渉してしまうことがあり、また真菌感染がlimulusの凝固カスケードのきっかけとなってしまうため、このassayはやや非特異的とされる。さらに、Enterobacteriaceaeはnon-Enterobacteriaseaeに比して、エンドトキシン血症の発見される率が低いことが分かっており、菌種による検出率の違いも示唆されている。

 グラム陰性菌の菌血症に対する感度と特異度は報告によりばらつきはあるものの、1.0pg/mLをカットオフとすると、大体どちらも70%台とするものが多い。

 プロカルシトニンと同時に測ることは出来ないので、測るとしたらプロカルシトニンを。


c.f.エンドトキシン吸着療法
 2009年のJAMAにEUPHAS study(Early Use of Polymyxin B Hemoperfusion in Abdominal Septic Shock)が掲載された。エンドトキシン吸着療法に好意的な結果(↑MAP、↓昇圧剤使用、↑PaO2/FIO2比、↓SOFAスコア、↓28日間死亡率)であるが、患者数が64と少ないこと、double-blindではないこと、中間結果により早期に中止されたことなどなど、制限がかかっている。よって、今後EUPHAS2、EUPHRATESといったRCTが行われる予定となっている。




Measurement of endotoxin activity in critically ill patients using whole blood neutrophil dependent chemiluminescence.
Crit Care. 2002 Aug;6(4):342-8. Epub 2002 May 2.

Does gram-negative bacteraemia occur without endotoxaemia? A meta-analysis using hierarchical summary ROC curves
Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2010 Feb;29(2):207-15. Epub 2009 Nov 29.

Diagnosis of endotoxemia with gram-negative bacteremia is bacterial species dependent: a meta-analysis of clinical studies.
J Clin Microbiol. 2009 Dec;47(12):3826-31. Epub 2009 Sep 30.

Early use of polymyxin B hemoperfusion in abdominal septic shock: the EUPHAS randomized controlled trial.
JAMA. 2009 Jun 17;301(23):2445-52.
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