2009
03.08

パーキンソン病について

 今回は、みんな大好き神経内科。パーキンソン病全体と、一部の患者さんに見られるcamptocormiaについてです。学生時代にまとめたので古い部分もありますが。。。


☆発症の原因
 パーキンソン病は黒質変性を主病変とするが、嗅球、背側運動核、青斑核、縫線核、Meynert基底核、脚橋核、扁桃核、大脳皮質など広範な病変を有する症例が増え、多彩な非運動症状を来す症例が増加している。病因として、種々の環境因子の関与と遺伝的素因との絡まりが考えられており、遺伝的素因ではα-シヌクレインの遺伝子SNPが発症の危険因子になる。発症メカニズムとして、ミトコンドリア呼吸障害と酸化的障害が、蛋白のmisfolding・凝集、プロテアソ-ム機能障害などを来たし、アポトーシスや軸索輸送の障害で徐々に変性が進行すると考えられている。

☆病理など
 黒質緻密層、青斑核、迷走神経背側核で神経脱落が必ず見られる。黒質緻密層は神経伝達物質であるドパミンを産生する。青斑核は神経伝達物質ノルアドレナリンを産生しその線維は大脳皮質,小腦,脊髄などに広範に投射する。迷走神経背側核は自律神経である副交感神経の内臓を支配する線維や咽頭、喉頭の運動を行う線維を出している。

 また、それらに加えMeynert基底核に必ずといっていいほどLewy小体が出現している。他にも視床下部、縫線核、中脳中心灰白質、動眼神経核、網様体、自律神経の交感神経節細胞にも認められる頻度が高い。このLewy小体は大脳皮質にもしばしば見られ、徳に痴呆を伴ったParkinson病ではその頻度が高く、Lewy小体型痴呆とも言われている。Lewy小体の構成成分としては、ユビキチンとα-シヌクレインが有力であり、後者は特に注目されている。α-シヌクレインは、MSAなど他の変性疾患にも認められることから、それが病態機序の中心的役割を担っているのではないかとの考えが生まれ、synucleinopathies(Parkinson’s disease, dementia with Lewy bodies, MSA, neuronal brain iron accumulation type I, pure autonomic failure, REM sleep behavior disorder)という概念が提唱されている。α-シヌクレインは、発現増加によって普遍的に細胞毒性を示すわけではないが、黒質神経細胞はα-シヌクレインに対し脆弱性を持つことが示唆されている(α-シヌクレインはドパミン代謝を制御している可能性が高い)。

☆症状の進展
 初期:嗅覚異常、RBD(REM sleep behavior disorder)が以下に挙げる症状に先行して現れることがある。RBDが起こる原因としては不明な点が多いが、RBDを青斑核機能不全とREMの発現機構不全とが関連しているとする報告もあることから、synucleinopathiesでは青斑核の障害がRBDの原因となる可能性も考えられる。

 有名なものには、一側の上肢もしくは下肢に始まる静止時振戦(pill-rolling)や筋固縮(cog-wheel rigidity)があり、これらは逆N字型に進展する。他には無動(masklike face, 小字症、構音障害など)、akinesiaと、それに伴う歩行障害が初期に見られる主な症状である。

 進行期:認知症・精神症状(認知症が約20%, うつ症状が約40%に見られる)、姿勢反射障害(すくみ足、加速歩行など)、自律神経障害(便秘、起立性低血圧など)、dyskinesia、wearing off現象、on and off現象(dyskinesiaは抗パーキンソン病薬の服用に伴って起きる不随意運動の総称で、自分の意志に関わりなく身体が動いてしまう症状。wearing off現象とはL-Dopa の薬効持続時間が短縮し、効果が出て1-2時間しか持続しなくなり症状の日内変動が出現する。ドパミン系神経細胞の変性が進行し、ドパミンの保持能力が低下したために起こる。on and off現象は、薬剤の服用時間に関係がなく突然スイッチが切れたように症状が増悪したり、またスイッチが入ったように突然回復したりすること)、Camptocormia(歩行時または長時間起立時に悪化することがあり、臥位では完全に消失する胸腰椎の極度の前屈。初期に始まることもあるが、多くは進行期に現れる)などが見られてくる。

☆camptocormiaについて
・定義:歩行時または長時間起立時に悪化することがあり、臥位では完全に消失する胸腰椎の極度の前屈。
・臥位になる、両手を壁につける、片足を椅子に乗せる、といったことで腰が伸びてしまうことから、椎骨や椎間板(つまり脊柱そのもの)に問題は無いと考えられる。
・onやoffで腰曲がりの度合いが変化する例があるため、純粋に腰の問題というよりは中枢が関与している可能性が高い。DBSが一部の症例で有効であったこともこれを支持している 1)。
・身体的及び感情的ストレスを受けた場合も悪化する症例が存在することからも、中枢の関与が疑われる。
・レボドパ関連の運動症状に日内変動が見られる患者では、offでのジストニア症状が腰曲がりとなっていることも考えられる 2)。
・腹直筋へのボツリヌス毒素注射で改善する例もあることから、腹直筋の異常収縮が関与している症例も存在することが考えられる。腹直筋や脊柱起立筋といった、脊柱を屈曲や伸展させる筋にミオパシー性変化を認めた報告もあるが、それは原因としてではなくむしろ非特異的な付帯徴候や、関与する筋が異常に屈曲したり伸展したりする「wear and tear」の結果とする考えもある 3)。
・姿勢を維持するCNS機序は明らかではないが、その中の直立姿勢を維持する部位に異常が発生し(尾状核や淡蒼球など)、姿勢保持障害が生じている可能性がある 3)。特に淡蒼球に関しては、両側淡蒼球を破壊したサルでは前屈姿勢が顕著で、pallidal postureと呼ばれる姿勢をとることが分かっている。
・極度の前屈姿勢にもかかわらず、camptocormiaはほとんどの患者で痛みを伴っていない。姿勢保持障害から、中枢が前屈状態を標準(一般での直立)と誤認してしまうからであろうか。
・PSP(進行性核上性麻痺)ではantisaccade paradigm(向かい合った相手が指を左右どちらかに動かしたら、それと逆の方向を見る)に障害をきたすということが報告されているが、camptocormiaを伴うパーキンソン病患者にも高頻度に認められるという点から、基底核と脳幹の両者で非ドパミン作動性神経の機能不全が生じている可能性もある 4)。L-Dopa不応例は、この変化が強く出ているのかもしれない。

 様々な切り口から考えられているが、全患者のcamptocormiaを一元的に説明できる機序は考えづらく、これは症候群的な要素を孕んでいると思われる。

☆オマケ~よく使われる薬剤の作用機序と副作用~
 総論として、基本的にパーキンソン病ではドパミン減少と、それによるコリンの相対的上昇がみられる。よって、治療戦略としては「ドパミンを増やす」か「コリンを下げる」というのが柱となる。

アーテン~トリヘキシフェニジル
 抗コリン作用で、中枢のドパミン・コリンのバランスを整える。振戦、筋強剛、無動などの神経症状に対し改善が認められている。
 副作用:悪性症候群、幻覚・錯乱・せん妄、緑内障、口渇、眼調節障害、見当識障害、神経過敏、運動失調、めまい、悪心・嘔吐、排尿困難、心悸亢進、発疹など
 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、重症筋無力症の患者(抗コリン作用で症状増悪)、緑内障の患者

マドパー(ECドパール)~レボドパ・ベンセラジド
 レボドパはBBBを通過して脳内に入り、ドパ脱炭酸酵素により脱炭酸されてドパミンとなる。ベンセラジドは脳外においてドパ脱炭酸酵素の作用を阻害する。よってレボドパとベンセラジドを付加することで、血中のカテコラミンは減少しレボドパ濃度が上昇する。脳内へのレボドパ移行量が高まり、脳内ドパミン量は増大する。
 副作用:悪性症候群、幻覚・抑うつ、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、血球減少、突発性睡眠、不随意運動、発疹、肝酵素上昇、尿や汗の黒色着色など
 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、閉塞隅角緑内障の患者(眼圧上昇による)、MAOI投与中の患者(カテコラミン代謝が阻害され濃度上昇。レボドパは一部カテコラミンに代謝されるため、併用によりカテコラミン蓄積で血圧上昇)

シンメトレル~アマンタジン
 ドパミンの放出促進作用・再取り込み抑制作用・合成促進作用が認められている。
 副作用:悪性症候群、Stevens-Johnson syndrome・TEN、角膜炎、心不全、意識障害、肝機能障害、腎障害、消化器症状、精神症状、起立性低血圧、網状皮斑など
 禁忌:透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者(蓄積により意識障害、精神症状、痙攣、ミオクローヌスなど)、妊婦または妊娠している可能性のある女性・授乳婦、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

エフピー~塩酸セレギリン
 MAO-B選択的阻害効果、MTPTによる神経変性の抑制作用。
 副作用:せん妄・幻覚・錯乱、狭心症、悪性症候群、低血糖、胃潰瘍、不随意運動、消化器症状、発疹、起立性低血圧など
 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、塩酸ぺチジンを投与中の患者、MAOI投与中の患者(高度の起立性低血圧)、統合失調症またはその既往歴のある患者(精神症状の悪化)、覚せい剤、コカインなどの中枢興奮薬の依存またはその既往歴のある患者、三環系抗うつ薬を投与中あるいは中止後14日間の患者、SSRIやSNRI投与中の患者

カバサール~カベルゴリン(麦角系アルカロイド)
 持続的なD2受容体刺激作用を有する。
 副作用:幻覚・妄想・せん妄、悪性症候群、間質性肺炎、胸膜炎・胸水・胸膜線維症・肺線維症・心嚢液貯留、心臓弁膜症、後腹膜線維症、突発的睡眠、肝機能障害、狭心症、消化器症状、血球減少、起立性低血圧、CK上昇など
 禁忌:麦角製剤に対し過敏症の既往歴のある患者、心エコー検査により心臓弁尖肥厚・心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄などの心臓弁膜の病変が確認された患者及びその既往のある患者、妊娠高血圧症候群の患者、産褥期高血圧の患者

ペルマックス~ペルゴリド(麦角系アルカロイド)
 線条体におけるシナプス後ドパミン受容体を直接刺激する。
 副作用:悪性症候群、間質性肺炎、胸膜炎・胸水・胸膜線維症・肺線維症、心臓弁膜症、後腹膜線維症、突発的睡眠、幻覚・妄想・せん妄、腸閉塞、意識障害、肝機能障害、発疹、ジスキネジア、レイノー現象、腎機能障害、誤嚥性肺炎、発熱、CK上昇など
 禁忌:麦角製剤に対し過敏症の既往歴のある患者、心エコー検査により心臓弁尖肥厚・心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄などの心臓弁膜の病変が確認された患者及びその既往のある患者

ビ・シフロール~プラミペキソール(非麦角系アルカロイド)
 MPTP誘発症状改善作用、D2受容体に対する親和性
 副作用:突発的睡眠、幻覚・妄想・せん妄、悪性症候群、CK上昇、ジスキネジア、めまい、口内乾燥、食欲不振、消化器症状など
 禁忌:妊婦または妊娠している可能性のある女性、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
*麦角系アルカロイドによる治療で弁膜症を発症することがあるため、非麦角製剤の治療効果が不十分又は忍容性に問題があると考えられる患者のみに投与するべきである。従って、麦角系アルカロイド投与中は十分な観察(身体所見、X線、心エコー、CT 等)を適宜行うことが望ましい。

コムタン~エンタカポン
 末梢COMT阻害薬であり、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・塩酸ベンセラジドと併用される。レボドパから3-OMDの代謝経路を阻害することでレボドパの生物学的利用率を増大させ、血中レボドパの脳内移行を効率化する。
 副作用:悪性症候群、横紋筋融解症、突発的睡眠、幻覚・錯乱、肝機能障害、皮疹、失神、回転性めまい、ジスキネジア、消化器症状、貧血、着色尿(赤褐色)など
 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者、悪性症候群・横紋筋融解症またはこれらの既往歴のある患者

 最近注目されている副作用~Dopamine dysregulation syndrome:パーキンソン病の過剰なドパミン置換療法は、報酬系の機能不全をきたすことがあり、Dopamine dysregulation syndromeといわれている。これはL-dopaへの中毒、そして衝動調節系に関連した行動障害として考えられており、具体的なものには性欲亢進、病的賭博、目的もなく長い距離を歩く、食欲の変化、社会的孤立、衝動買いなどの情動障害が挙げられる。若年発症の男性患者に多いことも特徴である。


☆参考文献
1) Fukaya C, Otaka T, Obuchi T, Kano T, Nagaoka T, Kobayashi K, Oshima H, Yamamoto T, Katayama Y. Pallidal high-frequency deep brain stimulation for camptocormia: an experience of three cases. Acta Neurochir Suppl. 2006;99:25-8.
2) Ho B, Prakash R, Morgan JC, Sethi KD. A case of levodopa-responsive camptocormia associated with advanced Parkinson's disease. Nat Clin Pract Neurol. 2007 Sep;3(9):526-30.
3) 山本光利 パーキンソン病-臨床の諸問題 2006 Mar:111-116
4) Bloch F, Houeto JL, Tezenas du Montcel S, Bonneville F, Etchepare F, Welter ML, Rivaud-Pechoux S, Hahn-Barma V, Maisonobe T, Behar C, Lazennec JY, Kurys E, Arnulf I, Bonnet AM, Agid Y. Parkinson's disease with camptocormia. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2006 Nov;77(11):1223-8. Epub 2006 Jun 5.
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