2009
03.05

英語での勉強は学生にとってプラス?

Category: ★本のお話
 以前、コメントで「英語で勉強するのってどうよ?」という質問を頂いたので、自分なりの考えですがちょっとまとめてみました。



 医学部は他学部と異なり、指定教科書なるものが殆ど存在しません。中にはご自分で書かれた本を指定にする先生もいらっしゃることにはいらっしゃいますが、それは例外。

 そんなこんなで、学生は本屋にくり出して教科書を探す、ということに。とは言っても、先輩の助言などから大体買うものは皆同じになる傾向があります。新潟大では基礎医学なら「組織学は”入門組織学”だ!生化学は”シンプル生化学”だ!」臨床医学なら「とりあえず”ステップ”買っとけ!マイナーは”100%”でも良いぞ!100%すら面倒なら”レビューブック マイナー”で凌げ!」といった感じ。

 でも、ほんの少し洋書を使うのも面白いです。英語というだけで5mほど後ずさりする人もいますが、どうせ臨床の場に出たら読む論文は多くが英語なんだし、そういう世界を覗いてみるのも良いかも知れません。学生の中には、臨床留学のためのUSMLE受験を考えて洋書を読んでおくという人もいますね。自分はその気ナシですが。

 しかし、読むには洋書の利点と欠点を理解しておく必要もあります。利点は…

☆利点
1. 安い
2. アップデートが早い
3. 普通の記述なのに内容が深いような気がしてならなくなる(これは利点か?)
4. 医学英語の勉強になる
5. 英語の方が理解しやすい時もたまにある

 1.に関しては、医学書の和書の中には、洋書を訳したものが当然ながらあります。当然、訳すという作業が入る分、原書よりも高くなる傾向に。最大で2倍強になることも。

 2.では、洋書の方がこまめに改訂を行うという理由が挙げられます。ですが、最近はネットの威力がすさまじく、2次文献である”UpToDate”を筆頭に、あっという間に最新情報が手に入る時代。しかも学生という身分では、最新情報よりも基礎となる情報を重視すべきでしょうから、そんなに利点とは言えないのかもしれません。でも、分野にも依りますが、20年以上も改訂されてない本はあんまり使う気になれません…。

 次に3.ですが、これは「英語で書かれるとなんか説得力が…」という、どーしょもない理由。でも表現の上手さは確かにあり、とある眼科の本で球後視神経炎のことを
“The patient sees nothing, and the doctor sees nothing”
と脱帽するようなセンスでまとめていました(患者さんは視神経に炎症が起こって眼が見えない。医者は眼底検査をしても何も異常所見が見えない。このことを指しています)。

 4.ですが、これはそのまんま。最初は知らないことばかりで時間がかかりますが、覚えていくうちに読めるようになるのはどの世界も同じですね。

 さて5.です。これは和訳では往々にしてあることでして。訳者のセンスの無さからいかにも『訳しました!』っていうコテコテ感が溢れ出ている本が結構あります。”ロビンス基礎病理学”や”カラー生化学”、”聞く技術”などは、日本語を読んでてストレスが溜まります。「~ということをこれらの事実は証明するだろう」とかいう、不自然な日本語が多い。。。かといって、原書が訳書よりも絶対的に素晴らしいかと言えばそうでもありません。ワシントンマニュアルサバイバルガイドの”小児科”など、見事なまでの訳注が付けられているものもあるため、そこは読み比べ。訳注も多すぎたら原著の邪魔をしてしまいますが。。。

 次に欠点を。

☆欠点
1. 読むのに時間がかかる
2. 洋書読むってだけで「頭が良い」と思われがち
3. 頑張って読んだのに少し経ったら和訳されたのが出版される
4. たまに和訳の方が安い時がある
5. 疫学、治療法などが日本と異なる

 まず1.について。これはもはや宿命としか言いようの無いこと。自分は最初に買った洋書が”Basic Histology”という組織学の本だったのですが、今パラパラめくると「こんな単語もいちいち調べてたのか…」と恥ずかしくなります…/// 最初は分からない単語だらけなので、どうしても調べるのに時間がかかってしまうんですよね。ガマンしかないです、こればっかりは。

 2.は大変です。こちとら好きな科目以外はボディがら空きでリバーブロー何発も喰らうくらいの知識の無さなのですが…。だから妙な体裁のため試験で落とすわけには行かなくなります。良いプレッシャーにはなったのかも。。。

 3.は無情の一言。見つけた時の茫然自失はもう味わいたくありません。

 4.ですが、これは今でも不明。何故なんでしょう???

 5.は臨床の本でのことですが、当然と言えば当然。所変われば品変わると言いますし。特に感染症の分野では耐性菌事情、抗菌薬の選択などかなり異なりますね。

 これら利点欠点を踏まえた上で、洋書入門のための読み方を自分なりに呈示してみます。

1. 日本語でまずその科目を勉強しよう!
→これによって、おおまかな枠組みが頭の中にできます。前提知識があるのと無いのとでは、読むスピードが段違い。
2. 読むなら薄めで、かつ評価の高い洋書にしよう!
→厚い本は挫折しがち…。薄い本でも「洋書を通読した!」っていう気分になれば誰でも嬉しい。また、洋書だからといって全てが良い本ではありません。中には和書の方が優れているものもありますし。洋書礼賛主義のヒトがたまにいますが、それはどうかと。
3. 何でもかんでも洋書、はダメ!
→はっきり言ってそんな時間はありません。まずは好きな科目の洋書を1冊買って読んでみることにしましょう。好きな分野なら途中で投げ出す可能性が低くなります。そして科目が違えば出てくる医学英語もガラッと変わります。それをまた覚えなければいけないので、消耗します。
4. 和訳を参考にしよう!
→図書館に和訳した方を入れてもらいましょう。原書を読んで分からなければ、訳書を図書館から借りて読む。

 以上のように勉強していけば、洋書も怖くない、はず。。。文法は受験時代のモノよりも簡単なので心配する必要はありません。

 先生方は「洋書読め!」と言いますが、やはりこちらとしては楽をしたい・要領良くこなしたいと言うのも事実。良い訳書があったら無理して原書に当たる必要はないと思います(これはかの夏目漱石先生も仰っていましたね)。医学英語を覚えるメリットより、手が回らなくなって試験に落ちる恐怖の方が学生として大きいのも事実ですから。

 ということで参考までに基礎医学でオススメできる入門用の洋書は…

How the Immune System Works
 これは150ページほどの薄さで、入門にはうってつけです。日本語で軽く学んでいれば理解できる内容。

“Lippincott's Illustrated Reviews”シリーズ
 ちょっと厚め。生化学薬理学免疫学微生物学が出ており、この中では前2者の人気が高いようです。自分は生化学を読みましたが、分かりやすいですし英語も難しくなくオススメ。薬理学は、詳しさと言う点では和書の”NEW薬理学”の方が圧倒的な優位に立っています。ですからご自身の大学での薬理学の難易度に依るかもしれません。このシリーズは今出ている全てが和訳されています。ちなみに、2009年の4月に生理学が加わることが判明。

Clinical Microbiology Made Ridiculously Simple
 言わずと知れた” Made Ridiculously Simple”シリーズの微生物学。下手でバカバカしいイラストが特徴的で、文章表現もまさにこのタイトルに相違ないものとなっています。イラストが売りなのですが、自分はこのヘッタクソな絵を見てると「直したい…」という欲求に駆られてしまいます。ということで生理的に受け付けませんでした。合う人と合わない人がいるようですね…。これも訳書が出ていますが、原書で学んだ方が表現を楽しめると思います。

Clinical Neuroanatomy Made Ridiculously Simple
 上のシリーズから神経解剖。100ページくらいしかないのでこれは洋書入門にうってつけですね。日本のアマゾンでは2007年の最新版を扱っていないのが不思議…。自分は2年の頃にコレを読んで、神経解剖って面白いねと感心したものです。でもこの本、訳書の方が安いという妙な事態(原書に付いているCD-ROMが無いということもあるでしょうが)。新しい版のモノが"たのしく読めて、すぐわかる 臨床神経解剖"として和訳されたのが出まして、この前買ってしまいました。内容は殆ど変わっていませんでしたが、やっぱり面白いですよ。後日レビューします。

 こんな感じでしょうか。特に”How the Immune System Works”と “Clinical Neuroanatomy Made Ridiculously Simple”は非常に薄いので良いかと思います。

 でも洋書を読むには日本語での前提知識を付けておくのと、後は医学辞典(ステッドマンなど)が必須です。


 確かに洋書は非効率的。だからこそ、その欠点を理解して少しづつ分かりやすい本から切り崩していくのが良い戦術かと思います。

 つまり、使い方を間違えなければプラスになる!ということでしょうか。

 ちなみに今自分が洋書で主に読んでいるのは…

Tierney先生の”THE PATIENT HISTORY ”
McGee先生の”Evidence Based Physical Diagnosis 2nd edition”

 この2冊。病歴と身体所見はやっぱり大事。でも画像が苦手なのは相変わらずですね…。

 ”THE PATIENT HISTORY ”は和訳が”聞く技術”として出ていますが、訳がイマイチすっきりしていないので原書をオススメします。”Evidence Based Physical Diagnosis”は、初版が和訳されています。こういうエビデンス集は新しい方が良いので、もし買うのであれば2版を。

 どちらも表紙が青いですが、これは偶然?でも医学書って青っぽいのが多いかな。。。








註:リンクは2009年3月5日時点での、Amazon.co.jpでの最新情報です(自分が調べた範囲で)。このページをご覧になる時期によっては、既に新しい版が出てしまっていてリンク先の本の版が最新ではない可能性もあります。ご注意下さい。
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コメント
こんにちは!ちょっと暖かくなってきましたね。
やはり先生方は洋書を薦められるんですね。洋書で読めたらいいな~…英語大事ですね。それにしても専門書って高いですよね。アマゾンでは中古もたくさんありますけど、改訂版があるなら新しいのが欲しいな、とかおもっちゃいますね。
医学部って、在学中に論文を書くようなこともあるんでしょうか?
あおdot 2009.03.05 16:24 | 編集
最近はマフラーもいらなくなってきましたし、春の到来を感じます。
医学書はホントに高いですよね。。。でも慣れると逆に「お!文庫本安い!」と一般書が妙に安く感じられて、医学書の4000-5000円が普通に思えてきます。
アマゾンのマーケットプレイスでは新しいものも安く売っている事もありますし、タイミングでしょうか。それにはクレジットカードが必要ですが。
論文ですが、在学中に書くということはほとんどありません。勉強して、部活して、バイトして。。。普通の大学生と同じですよ(勉強の配分が医学生は大きいですが…)。
新大では2年の解剖実習でたまに雑誌に投稿するようなものを書くことがあります。自分は、他のグループがそれを作る時にそのお手伝いをしました。後は、4年の後期にある「基礎配属」というものでちょっと本格的なものを書くことがあるかもしれません。臨床に出る前に、今一度基礎を学ぼう!と基礎の教室に配属されて研究のお手伝いをする、というものです。
機会はその2度ほどでしょうか。論文は、卒業してから書き方を学んで四苦八苦して書く、というのが一般的のようです。
m03a076ddot 2009.03.05 21:09 | 編集
そうなんですか。説明して下さってありがとうございます!
他学部と違って、勉強する目的が明瞭なのがいいなぁ、って思います!
受験勉強なんかじゃなくて専門の勉強をしたいですが…もう一年受験生の可能性も十分にあるかな…と思います。
他学部より忙しそうですがバイトも部活もするのですね。先輩は卓球部でしたね!
新大行きたいです(>_<)
あおdot 2009.03.06 00:43 | 編集
医学部は先輩・後輩とのつながりがかなり強いものになっています。ですから、部活に入ってそういうタテのつながりをしっかり意識した方が良いかなと考えています(各種試験対策のプリントなんかも貰ったりしますし)。バイトは1年生の時にする人が多いですね。五十嵐キャンパスで教養なので、時間の融通が利きます。さすがに4-5年あたりからはバイトする人も殆どいなくなりますが。
あおさんのように、キチンと「医者になりたい!」っていう意思のある人に新大に来てくれたらな、と思います。その信念が強ければ、多少時間がかかったとしても決して恥ずかしくはないと考えています。他の学部を卒業してから来る人も多いですし、社会人を経て入ってくる人も。ちょっとこの学部は特殊ですね。多少自分を弁護している感もありますが…。
m03a076ddot 2009.03.06 05:49 | 編集
実は私、再受験なんです。社会人は経験していないのですが歳は高校生や他の浪人生よりは既に上なんですが、確かに、試験会場には私より明らかに年上だな、という人が何人かいました。多浪・再受験、多いみたいですね。そんなこともあって受験にかける時間は惜しいのですが、ダメだったらまた来年受けようと思っています!
あおdot 2009.03.06 07:11 | 編集
そーなんですか。卓球部にも何人か再受験生がいますし、全く珍しいことではないですよ。かくいう自分は多浪組ですが…。
再受験の人々は本当に医者への思いが強く、より医者になってほしいと思っています。
願いはその意思の強さで叶えるもの。かかる時間は人それぞれですが、あおさんにはきっと良い事が待っていると思います。
m03a076ddot 2009.03.06 16:05 | 編集
ありがとうございます。やはり難関ですしね。多浪や再受験に厳しい大学がある中、新大はそういう差別みたいなのはなさそうだから、本当にちゃんと点を取ればいいんですよね。
結果を待つのは落ち着かないです…
卓球部にも再受験の方がいらっしゃったんですね。そういうお話は心強く感じます!
あおdot 2009.03.06 20:00 | 編集
そーですね。新大は誰でもウェルカムな感じがあります。
ただ、これからは学士に対してはちょっと厳しくなるかも知れません。筑波は明らかに線引きをしていますね。。。

諦めずに挑戦する、その気持ちがある限り大丈夫だと思いますよ!
m03a076ddot 2009.03.08 03:44 | 編集
こんにちは。
先ほど新台のホームページで合皮の結果を確認しました。
やはり…という気持ちもあるのですが、結果は不合格でした。すみません、本当に私事なんですが、色々アドバイスしていただいたので報告させていただこうと思って書き込みさせて頂きました。
応援してくれた周囲にも申し訳ないし色々と凹んでいますが、仕方がないですね。
学士は厳しくなるという傾向が新大でもあるんですか?
自分のことばかり書いてすみません、不適切だったら削除してくださいね。
あおdot 2009.03.08 11:30 | 編集
そして漢字を間違えすぎました。すみませんっ…
新台→新大
合皮→合否
でした。失礼しました…
あおdot 2009.03.08 11:34 | 編集
そうでしたか。それは、残念です…。
あおさんの強い思いは伝わってきますし、今回は不本意な結果でしたが、その努力の継続は道を拓かせるものと信じていますよ。
あと、わざわざ結果を書き込んでくれて安心しました。あまり人に知られたくなかった内容かもしれません。でも言葉として伝える、感情を吐露するということは、心に受け入れ態勢が出来ていることを表してくれます。
また、それを伝える人がいるというのは、その人があおさんを気にかけていた証拠でもあると思います。何事もそうですが、決して一人で立ち向かっているのではなく、振り返れば一緒になって戦ってくれる人がいることに気付きます。
本当にお疲れ様でした。今は、受験から逃げずに頑張ってきたご自分を労って下さい。そして、支えていてくれた人々、一緒になって頑張っていた人々に、口に出さなくても良いですから、ありがとうと頭の中で呟いてみてください。ちょっと心が柔らかくなれます。そしてそれは、あおさんの新しい力となってくれると思います。


学士はまだ大丈夫でしょうが、上の先生方が難色を示しているのも事実。。。ですが学士≠再受験ですし、再受験にまですぐに及ぶというのは非現実的かと思われます。
m03a076ddot 2009.03.08 18:48 | 編集
温かい言葉に少しうるっときてしまいました(*^_^*)さっきも友達が心配して電話をくれたりして、周りの人には本当に感謝です。ブログにお邪魔してただけなのにお気遣いいただいた先輩にも感謝です!
今年受けてみて、合格はできなかったけど手が届かないわけではないな、と感じたので、一年は長いですが、再挑戦したいと思います。
先輩はいよいよ研修ですよね。引っ越しや準備、ご多忙だと思いますが、きっとどんどん腕を磨いてご活躍されることと思います。またときどきブログにお邪魔しますね。
あおdot 2009.03.08 19:22 | 編集
再び挑戦されるのですね!
今回は残念な結果となってしまいましたが、この経験は決して無駄ではないと思います。ご家族やお友達、皆が側にいてくれるはず。その側にいた人々は、あおさんの1年の頑張りを間近に見ていた存在でもあります。そういうことに気付ける人間が、きちんとした優しさ、そして強さを得るのではないでしょうか。
それを糧に、来年の受験まで走り抜いて欲しいと思います(でも頑張り続けると疲れるので、休む時は休んだ方が良いですよ)。

このブログは4月以降も続ける予定なので、自由にご利用下さい。軽い話が多いので、気分転換にも向いてるかな?と思ってマス。
m03a076ddot 2009.03.09 14:05 | 編集
ありがとうございます。まだまだ頑張れそうです。
では4月以降も更新楽しみにしていますね♪
あおdot 2009.03.10 10:29 | 編集
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