2008
10.03

寝耳に天然水

 命に関わる不整脈(VFやVT)を治すため、植込み型除細動器(ICD)があります。体の中に入れたICDが不整脈を感知して自動的に電気ショックを与え、リスクのある患者さんは大助かり、のはずだったのですが。。。


 1ヶ月前のNEJMにこのような論文が。

Prognostic importance of defibrillator shocks in patients with heart failure.

 ICDを入れた心不全の患者さんの予後はどうなのか?という内容。結論から先に言いますと、「電気ショックを受けた患者さんの死亡リスクって、受けなかった患者さんよりも大幅に高くなるんだよ」とのこと。


え゛…


 まさかこのような。。。

 良いよー良いよーって言われてきたものが否定されましたね…。MADIT-II(the second Multicenter Automatic Defibrillator Trial)では良好な結果が出ていたのですが。。。

 方法としては、811人の患者さんにICDを植込んで45週間に渡り追跡調査をしたというもの。この患者さんたちは「心不全による突然死に関する試験(SCD-HeFT)」に参加した方々から選ばれています。

 で、ICD作動による電気ショックのうち、VT or VF後の電気ショックは「適切」と判断し、その他のICD作動による電気ショックは「不適切」としています。

 調査期間中、適切な電気ショックだけを受けた(適切ショック群)のは128人、不適切な電気ショックだけを受けた(不適切ショック群)のは87人、両方の電気ショックを受けた(両ショック群)のは54人。合計269人(33.2%)が、最低でも1回はICDの電気ショックを受けたことになります。

 適切ショック群では、この群以外の患者と比べて全死因死亡リスク上昇との有意な関連が認められています(ハザード比:5.68、95%信頼区間:3.97-8.12、P<0.001)。

 不適切ショック群も同じような結果(ハザード比:1.98、95%信頼区間:1.29-3.05、P = 0.002)。

 適切ショック群で24時間以上生存した患者さんも、それ以後の死亡リスクは上昇したままだったそうです(ハザード比:2.99、95%信頼区間:2.04-4.37、P<0.001)。

 そして電気ショックを受けた患者さんのうち、最も多かった死因は進行性心不全とのこと。


 うぅむ。。。ICDも考えものです、これの結果からすると。

 VFやVTを発症した心臓だと予後が良くないのは分かりますが、不適切ショックはそれ以外の不整脈ということですよね。。。ショックそのものが悪いのか、植込みそのものが負担なのか、、、。

 確かに最近はICDを疑問視する論文が出ているのも事実。2004年ですらNEJMの論文で「心筋梗塞の患者さんにICD入れても死亡率低下せず」って出ていました。ちなみにそこでは「ICDは不整脈による死亡率を低下させたが,一方で不整脈以外による死亡率を増加させた」となっていました。

 安易にICDを使用するのは危険で、患者さんを慎重に選ぶ必要性があるということでしょう。


 そーいえば、9月25日のNEJMで「脳梗塞でのt-PAの使用は4時間半以内でも大丈夫!」っていうのがありました。


Thrombolysis with alteplase 3 to 4.5 hours after acute ischemic stroke.


 ECASS-IIIの結果なのですが、ウィーンの世界脳卒中会議でも発表があり、これを受けてガイドラインが修正されるようです。今まで3時間でしたからね…。ただその分ちんたらやってて良いかという訳ではなく、速いに越したことはありません。
トラックバックURL
http://m03a076d.blog.fc2.com/tb.php/1133-00d9c96f
トラックバック
コメント
β-agonistが「やせ馬に鞭打つ」ため実は慢性心不全の予後を悪化させていたように、「やせ馬に電気ショック」のICDもあんまりよくないのかもしれませんね。
小児科勉強中dot 2008.10.04 22:16 | 編集
確かにそーかもしれません。
良かれと思ってやっていたことが実は患者さんのためにならない…っていうのは気持ちの良いものではないですね。
CAST study然り、SWORD study然り。。。
ひょっとしたらこの先、また「えっ!」と思うようなものが出てくるのかもしれません。怖い怖い…。
m03a076ddot 2008.10.05 19:06 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top