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2018
10.29

横浜って人生初かも

 2018年10月25-27日は横浜で てんかん学会学術集会 がありました。前日入りしてかつ帰りは名古屋でひとつ講演をし、ものすごく疲れました…。今日も朝動けなくて、芍薬甘草湯と補中益気湯を飲んで奮い立たせ外来に向かいましたよ…。やっぱり若くはないんですね。ホテルで寝るとどうにも疲れも取れにくいし。

 今回から横浜のお話が少しあります。できれば学会で聞いたレクチャーも去年みたくアップできれば。でも疲れていて何ともやる気が…。

 10月24日に新幹線で新横浜に向かいました。

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 この地に降りたのは初めてではないだろうか。会場近くのホテルが横浜なので、とりあえずJRで横浜駅に行きます。横浜駅って本当にどこもかしこも工事中ですね。さすが日本のサグラダファミリアと呼ばれているだけあるなぁ。

 何となく立派なところ。これが何だかもうよく分からないけれども。

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 夜も遅いからお夕飯を駅で食べようかと思ってうろうろしていたら、見つけた。

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 実は、自分の中で崎陽軒って評価がとても低いのです。あの "シウマイ" のどこが美味しいのだ…? と。コンビニの冷凍シュウマイの方が格上なのではないかとちらりと思っています。というか、そもそも "きようけん" じゃなくてずっと "さきようけん" って読んでました。

 しかし、それもひょっとしたら出来たてなら違うのではないか、という気持ちもあり、今日はここでお夕飯!

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 八宝菜のセット! これで1500円! 高い!

 食べてみたら、これがまた普通の味で。"シウマイ" もやっぱり美味しいもんでもない。うーん、"シウマイ" の味も確定したことだし、二度と行かないな、これは。

 さて、ホテルは開場のパシフィコ横浜から歩いて10分弱の "ホテルビスタプレミオ横浜みなとみらい" です。お部屋はツインルーム。

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 ま、泊まるのはひとりなのですが。きれいで広くて良いんじゃないでしょうか。そして洗面所。

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 お風呂も清潔。

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 お部屋にはネスプレッソ的な。最近増えてますね、これを設置しているホテル。

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 窓から眺めた夜景。観覧車と横浜グランドインターコンチネンタルホテルが目立ちます。さすがに高級すぎて泊まれなかった。

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 次回の記事は朝ごはんからスタートです。


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2018
10.24

露わになったものを覆うという治療

Category: ★精神科生活
 色々と難しい精神病理学の中で、笠原嘉先生は分かりやすい説明を心がけてくれます。"精神病理学嫌い" になりそうだった精神科医をおそらく多数引き止めてくれていたのではないだろうか、と想像しておりますが、いかがでしょう。当時の先生方の中ではめずらしく(?)、薬剤やDSMを毛嫌いしないおかたで、特にうつ病に関して精力的な研究をし、みすず書房さんから出ている『うつ病臨床のエッセンス』は、昔の論文が多いながらも現代でもまったくもって色あせない知見だらけ。

 そんな笠原先生のお考えで、自分が最も「面白いなー」と思っていて、実臨床でも意識しているのが "葛藤の二次的露呈" というもの。

 人間のこころはダムのようなもので、こころのエネルギーがダムの水位であります。こころが疲れてエネルギーが減ってくると、この水位は下がってくる。そして回復すると水位は上がってくる。これはジャネの理論を笠原先生が応用したものですね(たぶん)。

 そして、ダムの底には色々なものが沈んでいます。ダムの水位がたっぷりあればそれは見えてきません。でも、水位が下がるとその色々なものが露わになります。こころも同じで、ゆとりがなくなってくると、昔あったイヤなことが思い出されて許せなくなる、ずっと内に閉まっていたものが出てきて苦しむ、なんてことがあります (葛藤の二次的露呈)。でもそこを何とか抱えていって水位が上がるのをしっかりと待ち、実際に上がるとまた見えなくなってくる。その葛藤はまた姿を消します。

 この考えは非常に大切で、特にうつ病治療において役立ちます。葛藤が露わになると、患者さんはそのことで相手のことを許せなくなったり、モヤモヤの矛先が医療者に向かったりします。その時、「これは二次的露呈だ。しっかりと治療して診察室の中でゆとりを味わってもらえれば、いずれ姿を消すものなのだ」と思えることが重要なのです。なぜなら、露呈したものは見方によってはとてもとてもパーソナリティ障害、特に境界性パーソナリティ障害 (BPD) に感じられてしまうのです…!!!! そこで「あぁ、こんなに行動化して、やっぱりBPDだったんだ。こりゃ治らんわ」と考えてしまうと、本当に治るものも治らない。医療者がしっかりと見定める必要性があるでしょう。そして、そういう葛藤部分が大好きな医療者であれば、そこに突撃し、事態を複雑にしてしまいます。そうなると、医原性のBPDが出来上がってしまいます。このことは神田橋條治先生もご指摘しているところですね。恐ろしいのは、一度 "パーソナリティ障害" という診断が付いてしまうと、他の医療者も「あぁ、面倒な患者さんか」と思い、それは実際の対応にもなります。そうなると、不思議な事ですが患者さんはパーソナリティ障害 "らしく" なってしまうのです! パーソナリティ障害と診断したくなったら、必ず踏みとどまって考え直すべきです (ここ重要!)。私たち医療者の陰性感情によって恣意的になされてはいないか? 個人的には、統計に出るよりももっとパーソナリティ障害って少ないのではないかと感じていますが (あくまで個人の見解です)。

 あえてそこに触れない、というのも大切。ある産後うつ病の患者さんは、「私が小さい頃、母親に面倒を見てもらえなかった」と言って怒りを診察室内で表現し、実際に母親に対して暴言や眼の前でリストカットをして「苦しみを味わえ!」と言ったこともありました。でも、うつ病の治療をしそこから抜け出したらそのような行動化はなくなり、「母親も苦しい中で私のことを何とか育てようとしてくれていたのが分かりました」と話すように。これはうつ病によって葛藤が露呈したものの、治療によって水位が上がりその葛藤が再び姿を隠したと言えます。

 水位が上がって見えなくなるのを期待する。これは覆いをつくること、でもあるでしょう。

 覆いをつくるというのも、葛藤部分に触れずに待つという待機的なものもあれば、覆ってその上でごにょごにょといじって変形するというものもあるでしょう。ビオンの "もの想い" というのは後者にあたるでしょうか。私たちが日常臨床で行なっているのは前者のことが圧倒的に多いように思いますし、精神分析に十分な知識を持たない一般的な精神科医はそうあるべきでしょう。露わになった葛藤部分を中途半端に取り上げるのは、不十分な麻酔で手術をするようなものです。

 特に精神分析が好きな若手精神科医は、覆いをあえて剥がしてしまう/葛藤の二次的露呈を突っつく傾向にあるように思います。精神分析の理論を日常臨床で活かすのであれば、きちんとスーパービジョンを受けながらすべきでしょう。そうでなければ、理論 (それも自分勝手につまみ食いしたもの) が暴走してしまい、それに患者さんが "巻き込まれて" しまうかもしれません。

 地味かもしれませんが、ダムの水位が上がるのを待つ、覆いをしっかりとつくるということ。これこそが臨床で強調されるべきでしょうし、精神科の教育でも同様なのでしょう。
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2018
10.18

トンボ返り!

 10月14日は、東京に行ってきました。2時間ほど話し合いをして、そしてすぐ名古屋に帰るという行程。年のせいか、何だかとっても疲れてしまった…。今もまだ何となく抜けないんですよね…。疲れやすくなったし風邪も引きやすくなったし、年はとりたくないですなぁ…。

 さて、当日は朝早くに家を出たので、朝ごはんは新幹線の中で。

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 天むす! 名古屋駅で買いました。
 
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 うむ、んまい。きゃらぶきと一緒に食べるとさらに美味しい。

 2時間弱で東京駅に。いつもならご飯は "ほんのり屋" でおむすびなのですが、急いでいたので新幹線の中で済ませたのです。

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 話し合いのため本郷三丁目で東京メトロを降り、ちょっと歩いて建物の中に。約2時間のお話。ちょっと自分が風邪気味だったので、何となく発言にも覇気がなかった。最終的には一定の方向性が決まったので何よりです。

 そして、帰るため本郷三丁目の駅に行く途中のセブンイレブンでお昼ご飯を買う。

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 揚げ鶏は美味しいなぁ。。。

 東京駅では、リラックマストアを見学。ぐでたま先生のところもチラッと見ました。

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 帰りの新幹線。"天のや" というところの "タマゴサンド" を購入。

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 出汁巻き玉子と辛子マヨネーズがサンドされています。

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 どれ。

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 うん、美味しい。けど、このサイズのが6切れで700円って、ちょっと高いかな…。でも概してタマゴサンド (玉子焼きのサンド) って、ちょっとお値段高めだしね。玉子焼きが厚すぎないというのはポイント高いと思います。やたら厚いのってありますよね。フォトジェニックではあるかもしれませんが、バランスという点ではちょっと。"サンド" なんですからね。もちろん、色んな厚みのものがあるから差異が生まれて面白いのではあります。

 自宅には、煮穴子の握りを買っていきました。穴子って美味しい。

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 キュウリも、ちょっと口をさっぱりさせてまた良いアクセント。

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 10月の残りは、てんかん学会のため横浜に行ってきます。11月は何もないからちょっと身体を休めよう…。12月は9日に河合臨床哲学シンポジウムがあるので、それを聞きにまた東京に行ってきます。今年は何だか東京ばっかりだなぁ。


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2018
10.13

変わらないからこそ変われる

Category: ★精神科生活
 変わり続けることをやめない、だとか、変わることをやめた時に腐る、なんて言葉が巷にはあります。

 その多くは成功者の言葉であったり、熱血漢の言葉であったり。病気から回復した人の中からもそのような声が聞こえることもあるでしょう。確かに「まぁそうだなぁ」と思うことも事実。現状から何か変化をしなければ、その先に良い未来はないのかも、と考えてしまいます。

 しかし、病の中にいる人にとって、上記の言葉はちょっと侵襲的になることがあります。自己啓発本を読んで「よし! 死ぬこと以外かすり傷だ!」と思うことはまったく悪くありません。ただし、それを他の人たちにも熱く語るのは、その人たちの置かれた状況を考えていないことにもつながりかねません。

 彼らには、変わらなくてもいいことを保証する時期が必要です。

 そりゃあ、生命を持つ身体は刻一刻と変わるので「変わらないことは原理的にありえない」「変わらないのは時間が停止していることでしか達成されない」と言われてしまえばごもっともとしか言いようがないのですが、そういう話ではなく、考え方や行動など、その人としての意識。

 精神科に勤めていると、渦潮のような、刻一刻と変化する環境の中で、疲弊していく人たちがたくさんいます。そこで足を止めて休んでいる人に「変わらないと腐るぞ」と指摘するのは酷なこと。つらい時にわざわざ変わろうと思わなくて良い、羽根を休めて、その時間に憩うことも必要なのです。

 止まってからもう一度動くには、相応のエネルギーが必要です。それは、静摩擦と動摩擦を考えても一目瞭然。そのエネルギーを蓄えるために、まずは変わらなくても良いと保証します。そのゆとり、たるみ、が変化の基盤になるのです。特に医療者は、その診察の中で、変わらないことへの耐性が求められます。焦って変えようとしては、患者さんがこれまで経験した環境と同じになり、再演となるでしょう。変わらないことを繰り返すのは、医療者にとって苦痛ではあります。「この治療は正しいのだろうか」「ちょっとでも次回診察までには意欲が出ていてほしい」と思い、何かしらの変化がほしくなります。その焦りや欲求は、強引な薬剤増量や変更という形になるかもしれません。でも、この変わらないところを何とか持ちこたえるその過程が、とても重要でしょう。そのままで良いと言えること、それが大事。

 すなわち、変わらないことが変わることへの布石になっていきます。言ってしまえば、変わらないことの中にもう変化はあり、そうなるように医療者は診察を組んでいきます。

 "死ぬこと以外かすり傷" は、成功者や病を抜けた人が後から振り返って思うこと。現在かすり傷をたくさん抱えている人は、とても痛いでしょう。身体を動かすと、さらに痛いでしょう。ある程度軽くなるまでじっとしておくことも必要です。また、"生きているがゆえの苦しみ" もあるでしょう。死ねないけれども生きているのもつらい、生きているからこそつらい。そんな状況、いくらでもあります。そんな人たちに「死ぬこと以外かすり傷だよ」と言えるでしょうか。それこそ、たくさんのかすり傷を与えてはいないでしょうか。

 苦しい時は足を休めましょう。それはいつかまた歩き出すための大いなる力になるのです。
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2018
10.07

便秘に使う薬剤

 10月はちょっと忙しい。打ち合わせで東京に行ったり、勉強会があったり、学会で横浜に行ったり、講演会があったり…。

 その講演会では便秘の漢方治療という複数名によるお話があり、その中で薬剤性便秘についての治療を自分が担当します。漢方についてはよく分からん!という先生方が対象なので、限られた方剤を、詳しく解説することなく紹介するというスタイル。

 まず、便秘と言えば2017年に『慢性便秘症診療ガイドライン』が発刊されました。しかしながら、これはエビデンスと言うには程遠い出来になっておりまして、"はじめに" には

・暫定的に本ガイドラインを作成
・迅速な作成を目指したため、Mindsの推奨するガイドラインの作成方法に準じたが、厳密に基づくものではない
・主に本領域に造詣が深い専門医の意見を基盤として作成されている

 ということが明記されています…。そんな急いで作らなくてもね…。しかも暫定的って。そして、"発刊によせて" というところで、このガイドラインの定めた慢性便秘の定義について以下のような苦言が述べられています。

・“十分量”の定義が曖昧
・“快適”の判断も主観的
・慢性便秘の病悩期間も明示されていない
・本書の「慢性便秘症」が、国際的な便秘症の診断と齟齬を生じる可能性がある

 まさかこのようなことが書かれているとは…。何やら裏で大変そう。そして、治療薬に関して自分が思うところは

・ルビプロストンの推奨度が高すぎる
・ほぼ酸化Mgとルビプロストンの本
・費用対効果を考えていない

 に尽きるのではないでしょうか。

 すなわち、このガイドラインは

・急いで暫定的に作成
・エキスパートオピニオンが基盤
・そもそもの定義が主観的で期間も不明確
・ルビプロストンを推しすぎる

 というもの。これで3000円は高いなぁ…。しかしながら、弁護の余地はあります。

・日本ではポリエチレングリコール (PEG) がまだ販売されていない (2018年10月現在)
・便秘の治療薬そのものがエビデンスとして弱いものが多い

 こういった事情は加味しなければならないでしょう。漢方薬がガイドラインに載ったのも、ある意味エキスパートオピニオンが基盤だったからとも言えます。よって、今後は費用対効果を考慮した、よりブラッシュアップしたものが発刊されることを期待するのであります。

 さて、本題の薬剤による便秘に行きましょう。便秘を引き起こす薬剤は非常に多く、例えば鉄剤、制酸剤、Ca拮抗薬、オピオイド、鎮咳薬、利尿薬、抗がん剤、抗コリン薬、向精神薬などなど…。特に向精神薬はほとんどが便秘をもたらしてしまいます (例外はChE阻害薬や抗うつ薬のサートラリンなど)。精神科と便秘は切っても切れない関係で、長年入院している患者さんのほとんどには下剤が投与されています。

 薬剤性便秘の対処は、何といっても、まずは処方薬の見直し! 減らせるものは減らし、中止できればそれが最も良いのです。しかしオピオイドはそうもいかないですし、向精神薬も減らせない時期はあります。処方薬の見直し以外であれば、他の便秘と同様に、エビデンスとしては弱いものの、運動と水分と食物線維の3点セットが第一に来ます。線維については、普段の生活に取り入れるなら "オールブラン" や "フルーツグラノーラ" などのシリアル系が良いかもしれません。特に女性は鉄分も不足しがちであり、こういうシリアルは鉄が添加されていますしね。線維も摂り過ぎるとお腹が張って苦しくなるので、適量が推奨となりますが。

 そこまでやってから、便秘薬をしっかり使うことを考慮します。ただし、万能薬は存在しません。今回は、複数のガイドラインやレビューを参考にしてみます (Dis Colon Rectum. 2016 Jun;59(6):479-92. PMID: 27145304 Gastroenterology. 2013 Jan;144(1):211-7. PMID: 23261064 Visc Med. 2018 Apr;34(2):123-127. PMID: 29888241)。

 使用する順番としては、以下。

1. Bulk-forming laxatives (膨張性)

2. Osmotic laxatives (浸透圧性)

3. Stimulant laxatives (刺激性)

4. Other

 まずは1番の膨張性から。

●ポリカルボフィルCa (コロネルⓇ, ポリフルⓇ)
 1.5-3.0 g/day (or 1.0-2.0 g/day)
 1錠 (0.5 g) が15.3円! 安い! (3.0 g使うとちょっと高い?)
 適応病名は過敏性腸症候群
 多めの水で服用しよう!

●カルメロースNa (バルコーゼⓇ顆粒)
 バルコーゼ2.0-8.0 g/day (カルメロースNaとして1.5-6.0 g)
 1 gが6.2円! 激安!
 多めの水で服用しよう!

 次に2番の浸透圧性。

●酸化Mg (マグミットⓇ, マグラックスⓇ)
 これは激安! 500 mg錠で5.6円
 1.5 g/day前後で使用
 基本的には安心安全
 高齢者・腎機能低下では注意!
 とは言え、過剰に恐れてはならない

 この酸化Mgと高齢者の腎機能に関しては、探してみたら英語論文があるんですね (Geriatr Gerontol Int. 2016 May;16(5):600-5. PMID: 26081346 )。かなりnが少ないので参考程度でしょうけれども。以下の図の数字は中央値 (IQR) です。

腎機能とMgO

 eGFR<30ではやっぱり怖い。この文献では問題ありませんでしたが、eGFR<45でも何となく嫌な予感はします、個人的に。そういう点に気を付けて使用すれば決して悪い薬剤ではないので、適切に怖がって使うというのが大事。

●ソルビトール (原末, 経口液)
 これも激安! 原末1 gで1.34円!
 原末換算20-30 g/dayで使用 (1日1回)
 安すぎて査定されないことがほとんど
 個人的にはオススメ

●ラクツロース (モニラックⓇ, 原末とシロップ)
 十分量使用するとやや高価 原末1 gで6.4円
 10-20 g隔日投与で開始、20-40 g/dayまで
 主な適応は高アンモニア血症、産婦人科手術後の便秘
 乳糖不耐症には全く合わない
 ソルビトールと同じ効果 (実際にはややラクツロースが上) なのでソルビトールが安価でお得

●ポリエチレングリコール (モビコールⓇ)
 日本ではまだ販売されておらず、便秘治療がガラパゴス化している要因のひとつ (そろそろ発売?)
 EAファーマと持田製薬が承認取得
 これが販売されれば、日本の便秘治療が変わっていく、はず
 酸化Mgや刺激性緩下剤の使用がこれで減る?
 個人的に期待大!
 あとは薬価が気になるところ (まさかPEGに強気の値段設定はしませんよね…?)

 でもって刺激性。
 
●ビサコジル (内服薬はOTCのコーラックⓇのみ)
●ピコスルファートNa (ヨーピスⓇ, ラキソベロンⓇ)
●センノシド (プルゼニドⓇ)
 これらも非常に安い
 手順を踏んで正しく適切に使用すること
 慢性投与で低K血症、蛋白漏出性腸症などのリスク? (Ann Intern Med. 1968 Apr;68(4):839-52. PMID: 5642966)

 この刺激性緩下剤は色々注意がなされているものの、腸管の構造的/機能的な障害を来たすことは確認されておらず、発がん性があるという信頼できるデータはありません (J Clin Gastroenterol. 2003 May-Jun;36(5):386-9. PMID: 12702977)。耐性が起こることはコモンでなく、間違った使用はあるものの、依存性は確認されていないのです (Am J Gastroenterol. 2005 Jan;100(1):232-42. PMID: 15654804)。悪さが独り歩きしているような印象なので…。ただ、他の対策もせずにずーっと何年も処方しっぱなしというのは褒められたものではありません。言いたいのは、線維を適量摂取して、膨張性のものや浸透圧性のものを使って、それでも排便がなされないのなら、刺激性緩下剤は合理的な方法なんじゃないの?ということ。ただ、ここは意見が割れるでしょう。

 次はその他の緩下剤。新規に販売されたものですが、以下。

●ルビプロストン (アミティーザⓇ)
●リナクロチド (リンゼスⓇ)
●エロビキシバット (グーフィスⓇ)
 刺激性緩下剤でも良好にコントロールされない場合にこれらを使用する
 長期の安全性、嘔気の副作用、薬価という問題のため

 これら、といっても日本の慢性便秘症ガイドラインでは発刊時期の都合でルビプロストンのみですが、推奨度が高すぎると思うのです。ちなみにUpToDateを覗いてみると

It is best reserved for patients with severe constipation in whom other approaches have been unsuccessful.

 と述べられています。PEGがまだ販売されていないという事情はあるにせよ、新機序の下剤をほぼ第一選択のように処方すべきではありません。薬価の高さは無視できず、標準用量を用いればこれだけで1日200円前後にもなります。

・ルビプロストンは1カプセル (24 μg) で123円!
・リナクロチドは1錠(0.25 mg) で89.9円!
・エロビキシバットは1錠 (0.5mg) で105.8円!

 日々使う下剤にこの支出は、国としても困ります (標準用量は1日2カプセル or 2錠)。

 しかも、これらの効果が優れているわけでなく、ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバット、ピコスルファートNa、ビサコジルなど (他は本邦未承認) をネットワークメタ解析した文献では、ビサコジル内服 (OTCのコーラックⓇ)がやや優れており、他は同等の効果でした (Gut. 2017 Sep;66(9):1611-1622. PMID: 27287486)。あらら。個人的な使用経験では、ルビプロストンよりもリナクロチドの方が強い感じですね (個人の感想です)。エロビキシバットはまだ使ったことなし。

 ここで、変化球的な緩下剤を1つ紹介 (適応外)。

●ミソプロストール (サイトテックⓇ)
 安い! 100 μg錠で18.8円!
 PGE1/2アナログ 小腸でcAMP産生を促す
 本来はNSAIDs長期投与時の胃潰瘍/十二指腸潰瘍を予防するためのもの
 200 μg/dayもしくは200μg隔日投与から開始し増量 (Aliment Pharmacol Ther. 1997 Dec;11(6):1059-66. PMID: 9663830)
 (添付文書の通常用量は800 μg/day)
 妊娠では禁忌

 さて、薬剤性便秘の中で特殊なのがオピオイド誘発性便秘 (OIC) です。オピオイド使用者の40-90%が便秘でして、薬剤性便秘の中で最も手強いのです (フェンタニル貼付剤がいくぶんマシ?)。しかもなかなか減量できません。これまでの手順を踏むことに変わりはないのですが、結構苦労します。そのOICを狙った緩下剤は長らく日本に存在しなかったのですが (メチルナルトレキソン, ナロキセゴール, 経口ナロキソン)、やっと承認されたものがあるのです。

●ナルデメジン (スインプロイクⓇ)
 0.2 mg錠で272.1円! 高い!
 オピオイド受容体アンタゴニスト

 では、OICに対して、このオピオイド受容体アンタゴニストとルビプロストンやリナクロチドの効果はどちらが強いのか。これは、オピオイド受容体アンタゴニストのほうが効果は強いようです (Clin Gastroenterol Hepatol. 2018 Oct;16(10):1569-1584.e2. PMID: 29374616)。OICは非常に不快なものなので、効果のあるものをしっかりと使って排便を促したいですね。

 で、ようやっと漢方の話。漢方は、未知のもの含めて種々の作用が混在している薬剤。新規薬剤と比較して廉価なものが多く、費用対効果も優れていると思います。少なくとも最初からルビプロストンを使うよりはよっぽど。使い勝手も良く個人的に頻用しています。使用するタイミングは、PEGが販売されるようになりその薬価も大したことなければ、浸透圧性の次の一手、となるでしょうか。

 便秘に使える漢方は適応外も含めればかなり多いのです。大黄を含むかどうかで分けてみると良いでしょうか。大黄がどうしても合わない、下痢をしてしまうという患者さんも多いので。

大黄を含む:大黄甘草湯、調胃承気湯、大承気湯、桃核承気湯、通導散、大柴胡湯、桂枝加芍薬大黄湯、三黄瀉心湯、麻子仁丸、潤腸湯などなど
大黄を含まない:加味逍遙散、大建中湯、桂枝加芍薬湯、小建中湯、補中益気湯などなど

 まだありますが、キリがないので。

 繰り返しになりますが、大黄を含むものは、どうしても合わない患者さんもいます。その時は大黄を含まないものを選択してみると良いでしょう。今回の講演で紹介するのは、大建中湯、加味逍遙散、麻子仁丸、潤腸湯、桃核承気湯。ちなみに、あえて防風通聖散は載せていませんが、これを“やせ薬”や“下剤”としてむやみに使ってはいけません! 多くの生薬からなり、肝機能障害などの副作用も多いのです。OTCでも販売されているので、やめてほしいなぁと思っています。構成生薬を見るととても複雑で、フィットする患者さんを探し出すのはとても大変。自分はほとんど処方しません。一貫堂の臓毒証体質に適すると言われてはいますが。

 では、以下に紹介していきましょう。

●麻子仁丸 (ましにんがん)
●潤腸湯 (じゅんちょうとう)
 下剤漢方の第一選択と言っても良い
 比較的安く、どちらも就寝前に1-2包/dayから開始
 麻子仁丸は1包16.75円 潤腸湯は1包21.75円
 油成分を多く含み、グリセリンのような働きもする
 これらはClチャネルを活性化する (J Pharmacol Exp Ther. 2017 Jul;362(1):78-84. PMID: 28465373 J Nat Med. 2018 Jun;72(3):694-705. PMID: 29569221)

 この2剤は、どちらも穏やかに効いてくれます。基本的には麻子仁丸を使用して、それで下痢をする時に潤腸湯としますが、麻子仁丸の量を減らせばそれで対応可能です。しかも麻子仁丸は甘草を含まない利点があるのです。

 そして、麻子仁丸を4包/dayまで投与しても改善がなければどうするか? 自分の次の一手は以下

・麻子仁丸 2包+桃核承気湯 2-4包
・麻子仁丸 2包+大建中湯 4包
・麻子仁丸 2包+加味逍遙散 2-4包

 それぞれの方剤を見てみましょう。

●桃核承気湯 (とうかくじょうきとう)
 これも安い 1包で21.25円
 鎮静作用を持ち、イライラで眠れない便秘の人に使うことがある (熱証)
 “○○承気湯”を嘔気嘔吐のある時は用いないこと
 最初からこれを使うなら1包/day (就寝前) から開始
 甘草を1包あたり0.5 g含む

●大建中湯 (だいけんちゅうとう)
 これもまぁまぁ安い 1包で22.5円
 大黄を含まないので嫌な痛みが来ない
 お腹が冷えて張って痛むというのが使用の前提 (寒証)
 TRPV1チャネル、5-HT3受容体、ムスカリン受容体などに作用する (Tohoku J Exp Med. 2013 Aug;230(4):197-204. PMID: 23892797)
 イレウスに本当に効果があるかは不明 (Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 5;4:CD012271. PMID: 29619778 Ann Surg Treat Res. 2018 Jul;95(1):7-15. PMID: 29963534)

 大建中湯は盛んに使用されていますが、使われ過ぎじゃないか…?と思わなくもない。「甘草も含まず、構成生薬は食べ物みたいなものばかりだから安全」とは言えません。身体を温める作用が強いので、漫然と使用していると ”熱証” となってしまいます (日本東洋医学雑誌. 2017;68(2):123-126)。汎用されているので注意を!

●加味逍遙散 (かみしょうようさん)
 これはやや高い 1包で41.25円
 大黄を含まないので嫌な痛みが来ない
 イライラやのぼせが使用の前提 (熱証、といっても虚熱)
 長期の服用 (ほとんど4年以上) で腸間膜静脈硬化症をもたらす (World J Gastroenterol. 2014 May 14;20(18):5561-6. PMID: 24833888)

 加味逍遙散も良く使われますが、長期間の使用でまれに腸間膜静脈硬化症を来たします。こういう加味方を何年もずっとというのはちょっとどうなんだと自分は思いますが。熱を冷ますための "加味" なので、その熱が冷めたら方剤変更すべきでしょう。それを漫然と投与しているからこういうことになるんだと思います。ただ、逍遥散は医療用エキス製剤にないので、四逆散と当帰芍薬散を合わせて代用します。

 加味逍遙散は「ホントに?」と思うような記載があります。津田玄仙の『療治経験筆記』の中の

「大便の秘結して朝夕快く通ぜぬと云うもの、何れの病気にかぎらず、只此の方を用ゆべし。その中に大便能く通じて諸病も治すること多し。此れ逍遥散を用ゆる大事の秘事なりと云う医者あり」

 というもの。「便秘してたらこれ使え」というちょっと乱暴な…。津田玄仙はこの後「そんなこと言ってるけどねぇ。でもそういう患者さんがいてその言葉を思い出して使ったら良くなってびっくりした」と記載しています。

 そんなこんなで、今回の漢方まとめ。何だかあんまり考えていないようなフローチャートでお叱りを受けるかもしれませんが…。
 
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 今回挙げた漢方の中で、妊娠と授乳に使用しない方が良いのは、大黄を含むもの。そして、授乳は許容できるけれども妊娠に使用しない方が良いのは、牡丹皮を含む加味逍遙散。その他は許容範囲内でしょうか。でも実際に催奇形性を確かめたわけではないので、確証はありません。一応、長年の経験で、という感じ。

 ということで、最後のまとめ

・便秘は薬剤性含めて非常にコモン
・薬剤性なら原因薬剤の減量中止を
・治療では医療経済を勘案すべし
・新薬が優れているとは限らない
・漢方の中には比較的安価なものが多い
・とりあえず麻子仁丸!

 でした。こんな内容の話を、症例を交えながら20分で話すのです。間に合うの…?

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