2014
10.31

食べごたえ十分。

 よく利用しているコメダ珈琲。ここは長い時間お店にいることを前提としているので、気兼ねなしに本を読めたりぼーっとできたり。

 ボリューミィなお食事でも有名なお店ですが、今回は名古屋らしく”みそカツサンド”(780円)を注文。

 どん、とやってきました。普段は3つに切ってくれるんですが、今回は4つ切りにしてもらいました。

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 断面。ちょっと付け合せのパセリが普段よりも巨大だったため、パンがどれだけの大きさか分かりにくいかもしれません。

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 ということで、手に持ってみる。タテヨコ4つに切ってこの迫力。スマホ?

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 大口開けて食べる。お味噌が甘くて美味しい! 780円という値段を考えるとコスパ的にはバンズ系(420円)の方が良いかもしれませんが、それを抜きにするとこちらも良いですね。

 ごちそうさまでした。向かって左はアイスコーヒー(420円)でございます。

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2014
10.29

ころころつるり

 便秘は多くの患者さんが悩むもの。医者が出す下剤といえば、腸管を刺激して便意を催させるセンノシド(プルゼニド®)やピコスルファート(ラキソベロン®)、便を軟らかくする酸化マグネシウム(マグラックス®/マグミット®)、腸管運動を促進するらしいパンテチン(パントシン®)などが有名どころでしょうか。機序がこれらとまったく異なるルビプロストン(アミティーザ®)という下剤も出ましたね。ちょっと薬価が高く、嘔気が出やすいのが難点ですが…。8μgのカプセルが出たら良いなぁと思っています。ちなみに酸化マグネシウムの下剤は腎機能障害のある患者さんにはちょっと注意。漫然と出しているとたまーに血清Mg値が上がって高Mg血症になっていることがあります。

 そんな便秘は精神科につきものでございます。精神科で使う薬剤には腸の動きを落としてしまうものがあり、便秘になりやすくなってしまいます。また精神疾患と便秘は関連があるようで、出すようにしてあげると精神症状も良くなるなんてのは経験します。すっきり出ると気持ちもすっきり。便はしっかりと出してあげるのが精神衛生上も良くてですね、配慮は是非しましょう。漢方的には、下すくらい駆瘀血剤で便を出させることが大事だなんて言われます。

 入院患者さんも便秘なことが多く、高齢化も相まってその割合が増しておりますね。特にお年寄りはコロコロっとした便で、下剤を使ってもちょっと難しいことも。そんな時には、漢方薬の出番。“お年寄り+コロコロうんち”なら、麻子仁丸(ましにんがん)か潤腸湯(じゅんちょうとう)がバッチリ合うことが多いです。麻子仁や杏仁が生薬として含まれますが、これらは油で、要するに便が滑りやすくなるんです。飲むグリセリン浣腸みたいな? 潤腸湯には当帰や地黄という腸を潤す成分が入っているので、全体的にカサカサ乾いてそうな患者さんに使います。腸が運動しなくて出すような力のない高齢者には、これらに補中益気湯を合わせて。筋肉を引き締めてくれます。

 ここで実際に出した例を。70代の患者さん。便秘がひどくて、他院で上記のプルゼニドとマグラックスとパントシンが出されていたものの出ず、訪問看護に来る看護師さんに摘便をしてもらってました。

自分「何とか出る時はウサギの糞みたいにコロコロッとしたのが出てくるんですか?」
患者さん「そうだね。ポロポロっと硬いのが出るね」

 なるほどなるほど。カサカサした感じはないため、麻子仁丸を選択して3包/dayでお出ししました。すると1週間後

患者さん「飲んで3日くらいから、普通に出るようになったよ。看護師さんも喜んでた」
自分「おー、効果てきめんじゃないっすか」

 他の下剤もちょろちょろと減らすことが出来て、飲む負担が軽くなりましたよ。しかもちょっと下痢になったので、2包/dayに落としました。

 ということで非常に役に立ちます、これらの下剤。滑りを良くするという視点は面白いもので、是非使ってほしいと思います。頓服として、出ない時に2包を使うなんてやり方でもO.K.です。桃核承気湯は滑りを良くしてかつ腸の動きも刺激するタイプで、日本漢方では実証向きと言われています。自分は実証とか虚証は考えないので、麻子仁丸でもなかなか出ない時はこの桃核承気湯を補気剤や補血剤と合わせてみることもあります。

 漢方の下剤はかなり種類があり、いろいろ対処できるんじゃないだろうか、と思ってます。ただ、色んな漢方の下剤を使っても出てこなくて、アミティーザを出したらあっという間に良くなったという患者さんが1人いました。これは何とも漢方屋としては残念(?)。自分が漢方を学び始めてから時間が経っていない頃だったので、今なら上手く行くかも?と、負け惜しみ。
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2014
10.27

血圧下げるは何のため?

 カンデサルタン(ブロプレス®)やオルメサルタン(オルメテック®)などのARBは良く処方されている降圧薬で、レニン‐アンジオテンシン系を攻めるタイプ。レニンとアンジオテンシンの関係は、以下の様になっています。

 アンジオテンシノゲンがレニンによってアンジオテンシンIになり、そのアンジオテンシンIがACEによってアンジオテンシンIIになります。このアンジオテンシンIIが多くなりすぎて余分に受容体へペタペタくっつくと、血圧が上がったり様々な臓器に障害が起きたりする、と言われます。懐かしい生理学ですね…。”アンジオテンシノゲン”なんて単語、久々にパソコンで打ちましたよ。

 さ、そのARBは、アンジオテンシンIIが受容体にくっつくのを邪魔することで降圧効果と臓器保護効果を産む、とされています。同じ系に作用するタイプとして、ACE阻害薬というお薬があります。ARBよりも先につくられた古参で、ACEを邪魔することでアンジオテンシンIがアンジオテンシンIIになるのを防ぎます。ACE阻害薬にはエナラプリル(レニベース®)やカプトプリル(カプトリル®)などがあります。

 ということは「おや、両方似たようなもんじゃないか。なら、ARBとACE阻害薬のどちらが良いの?」という疑問も出てきましょう。

 降圧そのものについては、ACE阻害薬はなぜか日本の添付文書では用量が低く抑えられており、通常量では十分な降圧が出来ない患者さんが確かにいます。対してARBは添付文書の用量が欧米と同じ。そうなると、添付文書に記載されている量を使うとARBの方が血圧が下がり、医者は「やっぱACE阻害薬は降圧効果弱いなぁ」と判断してしまいます。初期設定でパワーを50%しか出せないようにされたお薬と100%最初から出せるお薬とを比較したら、そりゃ結果は異なりますよ。ちょっと日本の添付文書はおかしい。だから自分はACE阻害薬を出す時は添付文書に設定された通常量を上回って出すこともあります。

 いわゆる臓器保護効果についてですが、これは心筋梗塞や脳卒中を防ぐことなどが挙げられます。ARBはそれらを防ぐんだと一時期言われましたが、これは有名になってしまったバルサルタン(ディオバン®)のKYOTO Heart StudyやJikei Heart Studyによるもの。これらの論文は不正があったため撤回されたのは記憶に新しいですね。この臓器保護効果については様々なメタアナリシスが行なわれ、ほぼACE阻害薬が勝るということで白黒ついております。

 例えばこの論文(Cheng J, et al. Effect of angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin II receptor blockers on all-cause mortality, cardiovascular deaths, and cardiovascular events in patients with diabetes mellitus: a meta-analysis. JAMA Intern Med. 2014 May;174(5):773-85.)。これは糖尿病患者さんにおいて、全原因死亡、心血管死亡、心血管リスクなどでACE阻害薬とARBのどちらが優れているかというのを見たもの。結果、ACE阻害薬は全原因死亡率、心血管死亡率、心血管リスクいずれも減少させました。対してARBはそのような効果はなく、心不全のリスクを30%ほど低下させた程度。脳卒中単独の発症リスクはどちらも低下させなかったとしています。

 そしてこちら(Savarese G, et al. A meta-analysis reporting effects of angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers in patients without heart failure. J Am Coll Cardiol. 2013 Jan 15;61(2):131-42.)。心不全をまだ合併していない患者さんでの比較。そこでは、ARBは心血管死亡、心筋梗塞、全原因死亡、心不全発症を減少させませんでした。ACE阻害薬はこれらを減少させましたが、心血管死亡では有意差が付かなかったとのこと。

 こういったことを見ると、ARBがACE阻害薬に完全に勝っているということはなく、むしろ劣っている。患者さんの病態を鑑みても、同等になるのは限られた状況になるんじゃないかなと思います。臨床試験結果が多く出されているにもかかわらずARBばかり日本の医者が出しているのは、製薬会社のマーケティングが成功してしまって、かつ自ら処方する根拠を探し求めない態度にあるのかもしれません。学会があまり正常に機能してこなかったというのもあるでしょう。確かにACE阻害薬は空咳の副作用は多く、稀ですが血管浮腫というのも生じます。ですが、心臓や脳を守る、ひいては患者さんをより良い生活に導きやすいという、降圧+αを考慮するならば、どちらをまず使うかは明らかなはず。ARBはACE阻害薬が使えないという際の次善の策とも言えますね。今回は他の降圧薬はちょっと置いておいてACE阻害薬とARBの比較でしたが、もちろん血圧がめちゃくちゃ高い場合は、まず降圧そのものが臓器の保護につながるという観点から切れ味のいいCa拮抗薬を最初に使うこともあるでしょう。

 お薬というのは、処方の延長線上に”患者さんが長く健康で幸せに暮らせる”ということをイメージして使われるべきです。糖尿病についても同じで、HbA1cを下げるだけならアカンのです。日本の糖尿病治療は+αの部分をしっかりもっているメトホルミンを使わずにSU薬ばかり処方してきた経緯があります(SU薬の方が薬価が高くて製薬会社が儲かる)。そして、今度はDPP-IV阻害薬が出たらすぐそれを最初から使う(DPP-IV阻害薬もお高いですよ)。そんな治療は乱暴です。患者さんの生活/人生を考えた治療を行なわなければいけません。

 あ、ちなみにARBとACE阻害薬の併用はダメダメです。有害事象ばっかり増えて良いことありません(Nikolaidou B, et al. Combined angiotensin inhibition in diabetic nephropathy. N Engl J Med. 2014 Feb 20;370(8):778-9.   Makani H, et al. Efficacy and safety of dual blockade of the renin-angiotensin system: meta-analysis of randomised trials. BMJ. 2013 Jan 28;346:f360.など)。添付文書にも記載されるようになりましたしね。
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2014
10.25

県立多治見病院の売店にて

 ちょっと用事があって県立多治見病院に行ってきました。自分は見知らぬ病院に行くといつも売店や食堂を覗くんですが、今回はご当地モノを買ってきましたよ。

 焼きドーナツです。

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 県立多治見病院売店オリジナル、と書かれてありますね。裏を見ると…

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 ”焼きドーナツ”なのか”焼ドーナツ”なのか? パッと開けてみる。

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 いい感じの色合いではございませんか。美味しそうですねぇ。

 ではいただきます。

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 しっとり系の出来。欲を言えばバターを使ってほしかったなぁ。でも地方の病院の売店は個性があって面白いですよね。とはいえオリジナルのお菓子は少なくともうちの病院にはないですし、以前に勤めていた病院も売店はコンビニ(ローソン)なのでオリジナル感は見られないです。なので今回は良い体験。
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2014
10.23

初診の初心、忘るべからず

Category: ★本のお話
 北里大学の教授である、宮岡等先生の心得本。

こころを診る技術 精神科面接と初診時対応の基本こころを診る技術 精神科面接と初診時対応の基本
(2014/06/30)
宮岡 等

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 若手の精神科医にはとても良い本だと思います。1つの流派にこだわることなく、薬剤においてはベンゾジアゼピン系への注意喚起もなされており、すべてにおいて冷静な眼を持っている、という印象。でも患者さんを思う気持ちの強さもしっかり出ています。もう少し掘り下げても面白かったんじゃないかとも感じてしまいますが、”ぱっと読んでみる”というページ数を考えるとこれが限界なのかもしれません。精神科医1年目や精神科を目指す研修医の先生に向いている本でしょう。

 以下、ちょっと気になる点を。

 まず、早く診断をつけるべしというところ。状態像でとどめておいて診断は後でしっかりという立場では無いようで、現在与えられた状況で鑑別疾患を挙げて診断を早くつけようとすることが大事と述べておられます。これは宮岡先生くらい熟練した精神科医なら良いかもしれません。若手が急いで診断をつけると、そのラベリングを剥がす勇気を後で持てるかどうか? 宮岡先生は焦って診断することを言っているわけではなく、最大限の情報を集めてその上で冷静に診断を付けるようにということを示したいんだと思いますが、本をペラペラっと表面だけ読むと若手が間違って”拙速”的に診断をしてしまいそうな気もします。一度思い込むと、患者さんの話す症状を無意識に自分に有利なように変換してしまうこともありますから。よって、自分は早めに診断をつけることを否定は全くしませんが、片足はしっかりと退いておくのが大事だと思います。攻める姿勢と守りの姿勢、この両方を持っておくみたいな。だから若手のうちはちょっと留保しておいた方が大きな失敗をしない様にも感じます。これは個人的な意見ですが。

 あと、宮岡先生は本の中でSDM(Shared Decision Making)を薦めていますね。患者さんと一緒にチームを組んで治療するんだという意識の中で生まれたこの考えですが、パターナリズムの反動ではあります。でも、SDMによって統合失調症の入院患者さんがお薬を選んだ時の満足度は高かったものの、退院時にはそうではなかったということも言われていますし、変なことに治療者の満足度は高かったとのこと(Hamann J, et al. Shared decision making for in-patients with schizophrenia. Acta Psychiatr Scand. 2006 Oct;114(4):265-73.)。嫌な言い方をすると自己満足的な結果になりかねません。SDM幻想とも言えてしまうかも。古いかもしれませんが、やはり医者という立場の者が知識とそして責任を持つというスタンスもやっぱり捨てちゃいけない部分だと思っています。「僕が思ってたのと違ったけど患者さんが選んだ治療だし、SDMって言うし、僕の責任じゃないもんね」とか「SDMやってるオレってカッコイイ」という風になってしまってはいけない。SDMというのがひとり歩きしてしまうと、治療がうまく行かなかった時の免罪符になる危険すらある、とも思います。

 他に言うこととしては、プラセボと抗うつ薬の部分。本には

「~薬効のないプラセボでもある程度よくなっています。抗うつ薬を飲んでみますか」が適切な説明であるといえることを示している

 という風に述べられていますが、これってどうでしょう? ご批判を受けるかもしれませんが、「これは薬効のない小麦粉です」と前もって言ってしまうと、それはもうプラセボではなくなるんじゃないかなぁと思っちゃいまして。ただ、片頭痛では「これプラセボよ」って言って渡しても患者さんに良い効果を示したようです(Kam-Hansen S, et al. Altered placebo and drug labeling changes the outcome of episodic migraine attacks. Sci Transl Med. 2014 Jan 8;6(218):218ra5.)。なかなか一筋縄ではいかんですな。。。

 精神科を特殊とするわけではありませんが、患者さんに「これは精神科の医者が私の症状が良くなる手助けとして出してくれたお薬だ。副作用についても話してくれたし、養生もして診察を受けていこう」と思ってもらうこと自体が治療になり、いわゆるプラセボ効果をも産みます。臨床試験においてプラセボが実薬の強敵であるのは、このことと臨床試験ならではの密な診察(一般の診察よりも臨床試験では聞くことが多くなり、診察の間隔も短くなります)ということが事実として外せません。なので、”プラセボvs.抗うつ薬”ではなく”明らかな小麦粉vs.抗うつ薬”で、かつ一般的な診察の枠組みではまったくもって治療効果は異なるんじゃないかなと空想しています。あくまで空想。

 医者が「小麦粉でも良くなるんだけど、抗うつ薬飲む?」と聞いたら治療関係も何だかなぁという感じ。それを聞いた患者さんが「よーし、じゃあ小麦粉飲んで治すぞ」とも思えないでしょうし。あ、でも中には「要は気持ちの持って行き方なのね」と考えて楽になる患者さんも中にはいらっしゃるかもしれんですね。そういう患者さんは病態が浅いのだとは思いますが。とはいえ、本に書かれた表現ではちょろっと誤解があるように思います。もうちょっと詳しめに書かれたほうが良かったのでは。

 上記のように気になる点はありますが、総じて若手が初診や初期診療の際に読むに優れている本です。短時間で読み終えることが出来ますし、ちょっと時間が空いた時に読み返してみるのも良いのではないでしょうか。
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2014
10.21

いつもの場所で

 10/19に訪れた鶴舞公園の胡蝶ヶ池。秋になりきっていない、夏の余韻を残した風景です。

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 少し葉を赤らめています。

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 スズメは水遊び。

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 水面には紅や緑のゆらめき。

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 青空に影の強い紅葉。

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 桜の葉も紅色に染まりつつあります。

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 桜は春の間しかみんなに注目されないのがちょっと可哀相な気もします。葉も控えめながら秋にお化粧をしてくれますよ。

 秋のしるし、でしょうか。子どもの頃は良く集めておりました。たまに虫がにゅっと出て母親が慄いていた記憶あり。

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 帰りはコメダ珈琲店でアイスコーヒーをば。

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 そんな一日でございました。
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2014
10.19

再取り込みを防ぐのか、促すのか

Category: ★精神科生活
 抗うつ薬と言えば、モノアミンの再取り込み阻害というのが有名です。この作用機序は多くの抗うつ薬が示すもので、セロトニン(5-HT)やノルアドレナリン(NA)の再取り込みを阻害することで抗うつ効果をもたらす、と言われています。SSRIやSNRIや三環系抗うつ薬などがその代表格。上記のモノアミンがうつ病では減っているという“仮説”があるので、それを増やしてあげましょうという目論見でつくられました。あくまでも“仮説”ですが…。

 うつ病は未だに原因が分かっていません。先ほどのモノアミン仮説(うつ病では脳内モノアミンが減っているという説)はちょっと信憑性に欠けるのではないかと言われ、他にはBDNFという神経の栄養因子が減っている説やグルココルチコイド受容体の機能異常があるという説も存在します。自分の興味は慢性炎症によるグリア細胞の活性化にあります。DSMの“うつ病”も“抑うつ症候群”と言って良いくらいの様々な疾患の集まりではないかと思いますし、そうなると色んな原因が言われて当然かもしれませんね。

 そんな中で、既存の抗うつ薬、特にSSRI以降の新規抗うつ薬の働きは細かい部分では様々な効果が言われているものの、基本的にはモノアミンを増やしてシナプス後部の受容体を刺激し続けるというのが根本的なところでしょうか。そして、結果的に一部の働きとしてBDNFを増やしてあげるということもしています。BDNFがアップすることで神経可塑性が増して症状改善につながります、たぶん。モノアミンそのものを増やすことが重要なのではなくて、受容体を刺激し続けること、そして一部にはBDNFを増やすというのがポイントになっている薬剤が抗うつ薬なのだと考えると良いのではないでしょうか。

抗うつ薬作用機序

 面白い抗うつ薬に、フランス産のtianeptine(チアネプチン)というものがあります。これは

セロトニン再取り込み”促進”薬

 です。「え? 再取り込みを促進しちゃうの?」と思うかもしれません。これまでの抗うつ薬とは全く反対のことをしているわけですから。しかし、「じゃあ今までの抗うつ薬は何だったんだ!」と考えるのはまだ早く、モノアミンを増やすというのではなく、受容体を刺激し続けるという思考を持つと、そんなに不思議ではありません。セロトニンは受容体にくっついて離れて分解される運命にありますが、再取り込みが促進されると、分解される前にシナプス前部に収納されます。そしてまた放出の準備に。

いうなれば、hit and away戦法

 SSRIなどの再取り込み阻害薬が常に前に出て重厚なパンチを繰り出し続けるタイプとすれば、再取り込み促進薬は打っては離れ打っては離れという華麗なモハメド・アリのようなファイトスタイル。

 もちろん他にも知られていない作用を持っているのかもしれませんが、セロトニン再取り込みの”阻害”も”促進”も、狙いは受容体に刺激をいかに乗せて行くかということなのだと思いますし、こういう理解が大事かなと考えております。

 ついでに三環系抗うつ薬についても。現在の治療主流ではありませんが、重症患者さんへの抗うつ効果という点ではやはり三環系。SSRIでは何か最後の最後でスッキリしないところが多く患者さん自身も不全感をもつこともある一方、三環系だと割とまとまってくれる印象を持ちます。

 この効果の違いは何なのか? 以前にも出したことがありますが、ちょっとこの表を見てもらいましょう。

三環系の奥行き

 抗うつ薬は各種痛みへの効果もあり、この表はそれに対する抗うつ薬のメカニズムを示していますが、これを見ても三環系は色んなところにくっつきますね。これこそが、三環系の強みなんです。NMDA受容体阻害作用やTNFα産生を抑制する作用なんかは、グルタミン酸や慢性炎症とグリア細胞との関連などから見てもヨダレがたれてしまうくらいに注目です。こういった部分こそが、三環系の効果の強さを示すものでもあったのであります。

 ただ、副作用としては口渇や心毒性や大量服薬で死んでしまうなど、新規抗うつ薬よりも重度のものは多くなっています。雑味があると効果に深みが出る一方、この様なちょっと重い副作用も出てきてしまう。難しいものです。

 現在は抗うつ薬に抗精神病薬を付加する増強療法というのがありますが、これはトランスポーター以外の様々な受容体をもカバーすることになると言えます。となると、三環系抗うつ薬に近づけることでもありますね。大量服薬されても死なずに、かつ忍容性の高い三環系のイメージを持ってそれに近づけるというのが増強療法なのだと思います。しかし”デュロキセチン+オランザピン+ラモトリギン”などの増強療法でも何ともならなかった患者さんが三環系1つに切り替えて着実に回復していく様を何度も見ている身としては、古いお薬(かつ安い)はとても魅力的に映ります。
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2014
10.17

スボレキサント(ベルソムラ®)は安全なのか

 スボレキサント(ベルソムラ®)という新しい睡眠薬が2014年の11月下旬くらい(もっと遅い?)に発売されます。これはオレキシン受容体拮抗薬でして、全く新しい機序。オレキシンは覚醒と睡眠を調節する神経ペプチドで、ざっくりと言うとオレキシンが多いと目が覚めて少ないと眠くなるという感じ。ナルコレプシーという疾患はオレキシンが不足することで発症します。

 このお薬ですが、名前の由来がbelle(フランス語で美人や美しいという意味)とsom(睡眠)で”美しい睡眠”や”良い睡眠”を意味することから来ています。効果のほどは非力な部類で、寝るまでの時間がプラセボと比較して6分くらい短縮したという程度のようです(Citrome L. Suvorexant for insomnia: a systematic review of the efficacy and safety profile for this newly approved hypnotic - what is the number needed to treat, number needed to harm and likelihood to be helped or harmed? Int J Clin Pract. 2014 Sep 18. doi: 10.1111/ijcp.12568. [Epub ahead of print])。うーん…。

 安全性については懸念が残り、FDAがちょっと気をつけるようにと言っています(ここ重要)。

 高用量では安全ではなく、日本で販売されるものは15mg錠と20mg錠ですが、15mgは安全に使用できる投与量とは言い難いとのこと。Phase 2でのデータでは、10mgで有効な可能性があり、10mg以下では研究が行われていないがおそらくは有効だろうとしています。

 安全ではないというと具体的にはどんなことがあるのでしょう。副作用を挙げてみます。

・日中の眠気(それも突然にやってくることがある)
・運転への支障
・睡眠時行動異常(寝ながら動きまわったりご飯食べたり)
・希死念慮
・他のナルコレプシー関連事象(睡眠麻痺、入眠時幻覚、軽度の情動脱力発作)

 おぉ、結構怖いですな…。深刻な副作用は用量依存性になっています。併存疾患のある場合や他の薬剤を服用している患者さんでのデータは乏しいようです。

 30mgや40mgは安全ではない可能性が高く、20mgでは運転に支障をきたします。肥満の女性やCYP3A4を阻害する薬剤を服用している場合は、15mgであっても30mgと同等の作用/副作用をもたらしてしまうかもしれません。肥満の男性、やや肥満がちな女性、他に薬剤を服用している場合などでは15mgは多いかも、と。

 FDAは「基本的には10mgじゃないの?」と言っています。しかもこのお薬、珍しいことに日本が世界で最も早く発売になるんです。日本では通常投与量が20mg(高齢者には15mg)になっており、ちょっと多いような気もします。添付文書には、CYP3A4を強く阻害する薬剤との併用は禁忌と記載あり。

 CYP3A4を強く阻害するものとして有名なのが、よくクリニックの先生があまり考えもしないで”風邪薬”として出してしまっているクラリスロマイシン(クラリス®/クラリシッド®)です。患者さんは複数のクリニックに通うこともあるでしょうし、クラリス®とベルソムラ®が別々のところで出るなんてこともありえます。そうなると禁忌の組み合わせ。危ないですよねぇ。こういう組み合わせって、お薬手帳があってもスルーしちゃうことが多くて多くて。このクラリスロマイシンが他のクリニックで出されてしまい、それによって向精神薬の作用が強く出てどれだけこっちが迷惑しているか…。抗菌薬をぽいぽい出すのって、ホントやめて欲しい(いわゆる”風邪”に抗菌薬は効きませんよ)。他にもCYP3A4を強くはなくとも阻害する薬剤はゴマンとあるため、polypharmacyになりやすい日本の医療では危険な香りがします。

 うーん、使う気起きないですなぁ。。。CYPのことを抜きにしてもちょっとねぇ。新薬って予期せぬ副作用の報告が出てくるので、概して市場に出てからしばらくは使わない方が無難です。もちろんこれがないとQOLや予後に著しく影響を与えると言うのなら話は別ですが…。SGLT2阻害薬もそれ見たことかっていう感じでしたし、あんまりホイホイ飛びつかないのが懸命でしょう。

 ベンゾとは異なり依存性も離脱症状もないというのをメーカーは売りにしてくるんでしょうけど、自分は一歩ひいておきます。概して臨床試験っていうのはリアルワールドとは異なる部分も大きく、例えば基礎疾患によっては除外になったり、他にお薬を飲んでいると除外になったり。そんなこんなで試験で用いる薬剤にとって不利な面を極力除こうとする傾向がありますから、市場に出た後の状況とかなり違います。よって、自分はしばらく静観しておこうと思っています。
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2014
10.14

定光寺~帰途

 さて帰ろうと思い、来た道とは違う道でせっかくだから帰ることに。

 何か門があるからここが出口かな?と思ってくぐってみる。すると来た時とは異なり階段がしっかりとあります。



あれ、なんかこっちが入り口っぽい…。



 何でだ? どっかで間違えた? と思いながら下ります。

 ちなみにこれがその門(振り向いてパシャリ)。めっちゃ入り口を主張している感じ。

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 あれ? と思いながらも階段を降りていきます。その途中でポッカリと穴の空いた朽木が登場。

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 なんとそこに根を下ろしている木があります。

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 しばらく降りて行くと、完全に参道入り口の風貌をしたところに出ました(これも振り向いて撮影)。完全に逆を行っていたと確信。。。

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 ちなみに参道の両脇には蓮。行ったのが6月だったのでまだまだ咲いておりません。7月ですね、綺麗な華が見られるのは。

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 さてさて、なぜこのように参道から定光寺に到達できなかったのか? 不思議に思いながら歩くと、見覚えのある看板が視界に入りました。

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 なるほど…。何となく分かりましたよ。たぶんこんな感じで通っちゃったのね。

通った道

 参道到達前に看板があったのでそこから攻めてしまったんです。意図せずサイドアタックに…。ま、そのおかげで良い景色に巡り会えたんですが。最初の画像にある門は”山門”と言って、定光寺の入り口だそうです。やっぱりそうかー。

 何となくスッキリしたような残念なような、そんな気分になって帰ります。

 駅が見えてきました。相変わらず断崖絶壁に構えてらっしゃる。

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 行きの時にも渡った橋。

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 隣に廃墟とかしたホテル…。ちと怖い。

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 眼を落とすと、マツバギクに小さなチョウチョが。可愛いもんです。もうこれが本日のベストショットで良いかも。

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 帰りの駅から川を眺める。

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 いつか落石でもありそうですな…。すごい駅です。

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 ちなみに無人駅なのでtoicaはこれで認証。

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 とうことで、3時間くらいで家に到着(13~16時)。名古屋駅からでもJRにておそらく30分くらいで着いてしまう定光寺。自然は意外と近いものでした。もし行かれるなら、春や秋が素敵なようですのでその時にでも。
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2014
10.12

定光寺~お邪魔します

 さて、前回は定光寺までの道のりでしたが、今回は入り込みました。淡々と見て行きましょう。

 まず出会ったのが経蔵です。

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 ここは一切経を収めているところ。また、輪蔵という回転する書棚があるそうです。なんとこれを一回転させれば一切経をすべて読んだ功徳が得られるとのこと。え、そんなんで良いの…??? 楽をしたい気持ちから派生したような気がしますが…。

 あ、蜂の巣を発見。

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 刺されたくないのでちょっと近づけない…。

 観音堂。

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 手水舎。

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 鐘楼。大晦日に大活躍。

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 本堂。どん、としたつくりですね。やっぱり存在感あります。秋には紅葉がお化粧をしてくれるそうですよ。

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 客殿。法要などを行なうそうです。

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 さて、ここからは拝観料を払います。とは言っても100円でして、随分と良心的ですね。源敬公廟の入口でございます。 

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 源敬公は徳川義直の諡号だそうです。入って階段を登って行きましょう。しかし他に誰もいませんな。。。

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 お、この門は。。。

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 獅子の門、という門です。

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 くぐって先に進むと、更に門が登場。

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 これは龍の門と言います。

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 そしてこちらが源敬公廟。 門に刻まれた葵の御紋が印象的。

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 おぉっ、ひれ伏してしまうそうですな。

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 その門の奥には源敬公の石塔が立ちます。

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 向かって右には、殉死者のお墓。 

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 このように並んでいます。

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 すっごく大きな松かさを発見!

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 源敬公廟にそびえ立つ、立派な佇まいの松の樹です。

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 このような流れで定光寺を見てきました。次回が定光寺シリーズ(?)の最後ですが、駅に戻るところを。
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2014
10.10

定光寺~駅から到着まで

 夏になりきっていなかった6月のとある日、ふと思い立って定光寺(じょうこうじ)に行ってきました。今さら6月の時の出来事を記事にするのも季節外れですが、タイミングを逸し続けてこんな時期に。

 この定光寺、尾張徳川家の菩提寺でございます。もともとは1336年に臨済宗のお寺として建てられたみたいなんですが、徳川義直の没後に源敬公廟(徳川義直廟墓)がつくられ、尾張徳川家の菩提寺となった、とのこと。ほー。

 定光寺駅という、まんまな駅があります。ここは名古屋駅からJRで30分くらい。自分の通勤先は全行程含めて1時間なので、この30分はそんなに遠くないイメージ。「じゃあ行ってみようかな」ということでお出かけしてみました。ちょっと画像が多くなってしまったので、3回に分けてみます(行き、定光寺そのもの、帰り)。

 ということで、定光寺駅です。いきなり緑があふれんばかりの勢い。30分くらいしか経ってないのに、すごく遠くにきてしまった感覚。

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 振り返ると岩肌が…。なんじゃここは。

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 ちょっと顔を駅から出すと、めっちゃ川が流れてます。渓谷感ありありですねー。庄内川だそうです。なんか聞いたことありますな、庄内川って。

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 階段を降りて駅を見上げる。

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 橋が見えました。城嶺橋(しろがねばし)とのこと。 

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 橋から庄内川を見下ろす。おー、すごい。ゴツゴツとしてます。

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 さー、あとは登っていくだけ。微妙に上り坂なのがちょっとこたえます。。。

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 下を覗くと、木々が朽ちて倒れています。

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 道中に”滝カフェ”というカフェがありました。場所的に面白いせいかお客さんは結構入っている様子。「お、良いな」とも思いましたが、残念ながら復数の地点で他のカフェの店員さんが客引きをしていて、それで興ざめ。滝カフェの目の前でも客引きをしていたので、何だか入りづらくなってしまいました。ちなみに”客引き禁止”という張り紙が駅にあったので、更にいかんですな。後で別のお店と分かったのですが、ずっと滝カフェ自体が客引きをしているかと間違っていました。。。反省。カフェはそんなことしない方が良いと思うんですけどね。

 頑張って歩いていたら、看板発見。

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 よし、こっちですな。矢印に従って曲がります。

 ちょっとうっそうとしてまいりました。

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 ん? ”怨霊の祟り恐るべし ゆめ軽んず可からず” 怖いな…。というかこんなところにペットを捨ててしまう人がいるんでしょうか。ペットを捨てる行為自体も許されざるべきものですが、ここに捨てるのもちょっと。。。バチが当たりそうです。

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 道にはドクダミが多く咲いていました。

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 まだ着かないのかなぁ…と思っていたら、何かある! 読めないけど着いた感じ! ”なんたら山定光寺”って読もうと思えば読める!

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 左手には霊園。看板に”定光寺霊園”ってありましたね、そういえば。

 綺麗なお花も。名前は分かりませんが、。

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 そして、定光寺そのものに行く前に展望台に寄り道。結構登りましたからね、展望には最適なはず。

 おぉ、なんという澄み渡った景色!!!!

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 ほー、これは素敵です。苦労して歩いた甲斐があったというもの。

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 小さく見えるビルは名古屋駅辺りでしょうか。随分遠くに来たもんです。

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 お、これまた不思議な花が。 

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 あら、可憐なこと。

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 6月なのに1本だけ紅葉。

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 紺碧を透過する紅の美しさ。

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 次回は道に戻って定光寺を覗いてみます。
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2014
10.08

教授と北欧

Category: ★学生生活
 大学生の時、あだ名が”教授”という同期がいました。

 勉強熱心でガチガチの真面目くん、というわけではなく、ざっくばらんで気合で何とかするような、あまり焦らずどこか余裕のあるような感じ。とてもおもしろい人です。

 じゃあ何でそんな大層なあだ名なのかというと、実験の際にピペットというスポイトの親戚のようなものを使うのがうまくて、”ピペット教授”という名称となり、いつしかピペットが抜けて”教授”になったという経緯。

 そんな教授は大学のある県に残って研修をし、自分は県を離れたので、以来どうなったのかはほとんど知りませんでした。教授のことだから元気にやっておるだろう、と思ってはおりましたが。

 で、今日ですね、腎臓のことをネットで調べていたら、偶然に教授の名前が出てきました。何とスウェーデンに留学しているとのこと!

 あらー、あの教授がスウェーデンですか…。

 もうなんかびっくりして、当直のレジデントに「大学の同期がスウェーデンに留学しておったよ」といきなり言ってしまいました。何言ってんだこいつ的な反応でしたが、唐突に言われればそりゃそうだ。でもそれくらいにびっくりしたのです。

 ひょっとしたら将来は本当にどこかの大学の教授になるかも? なんて思っています。みんながんばってるなぁ。 
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2014
10.07

うつ病・躁うつ病の入門に

Category: ★本のお話
 今回はうつ病と躁うつ病について、患者さんやご家族用の本を紹介してみます。

 ”うつ病”は概念が実に広がってきており、どこからどこまでうつ病なのかが良く分からないとも言えてしまいます。ただ、実際にうつ病の患者さんを診ていると、お薬だけではなかなか上手く行かず、いわゆる”養生”が必要であることは言うにあらずだなぁと感じます。しかも色んな情報があふれていて、患者さんやご家族も「どうすればいいんだろう?」と思い悩み、また抗うつ薬の悪い側面のみを強調するような発言もちらほら見ます。

 なので、まずはしっかりとした理解というのがやっぱり重要だと思います。「よし、じゃあ本でも読んで勉強しよう」と思って本屋さんに行ったりAmazonで検索してみると、うつ病に関する本は乱立という言葉では足りないくらいたくさんあります。選ぶのも一苦労。そんな中で自分の感覚としては、患者さんやご家族にとって読みやすさを考慮するとこちらが良いでしょうか。

入門 うつ病のことがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)入門 うつ病のことがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)
(2010/07/10)
野村 総一郎

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 説明もしつこすぎず、広く浅くですが見ることが出来ます。

 物事の考え方に注目したものですと、新書のこちらを。

「うつ」を治す (PHP新書)「うつ」を治す (PHP新書)
(2000/04)
大野 裕

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 認知行動療法を日本に導入した大野裕先生の本。お薬のことにも触れられていて、バランスがとれています。

 患者さんのご家族の体験記である本も実に有用です。

ツレがうつになりまして。ツレがうつになりまして。
(2006/03)
細川 貂々

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 有名なマンガで続編も出ていますね。やはり患者さんやご家族の声というのは、医者のものとは違って説得力があります。

 また、これまでの記事でもお話ししていましたが、自分は



うつ病は”抑うつ症候群”である



 と考えています。抗うつ薬がスッと効くうつ病もあれば、以前記事にしたような慢性炎症がメインのうつ病も、そしてグルタミン酸過剰状態が主だった機序のうつ病もあるでしょう。そして、栄養がポイントになるうつ病も存在すると考えています。どれか1つだけでなくこういったのが混ざり合ってるんでしょうけど、どの色合いが最も強いかという違いはあると思ってます。

 栄養については胡散臭く感じる人もいるかもしれませんが、精神疾患とは切っても切れないくらいに大事だと考えています。例えば亜鉛。処方するお薬ではポラプレジンク(プロマック®)という胃薬があり、それだと確か1錠に17mg入ってます。亜鉛はNMDA受容体を阻害するなんて言われていますが、他にも作用するところがある様子。血清Zn値の低さと抑うつ症状が関連しているというメタアナリシスもあり(Swardfager W, et al. Zinc in Depression: A Meta-Analysis. Biol Psychiatry. 2013 Jun 24. pii: S0006-3223(13)00451-4.)、馬鹿にはできません。

 ω3脂肪酸もちょろっと言われております。これは抗炎症的な視点ですが、個人的にはっきり効いたような感じは今のところ持てていません。しかし、IFN-αによるC型肝炎治療にはうつ病の副作用がありますが、この予防にω3脂肪酸が効くかもしれないと言われています(Su KP, et al. Omega-3 Fatty acids in the prevention of interferon-alpha-induced depression: results from a randomized, controlled trial. Biol Psychiatry. 2014 Oct 1;76(7):559-66.)。

 ビタミンさんもきちんと報告もあり、葉酸を800μg/dayとビタミンB12を1mg/dayとを併せて投与したら、うつが良くなったよ!という報告だってあります(Coppen A, et al. Treatment of depression: time to consider folic acid and vitamin B12. J Psychopharmacol. 2005 Jan;19(1):59-65.)。他にもラクナ梗塞後の患者さんを対象として、ビタミンB12欠乏と疲労感/抑うつとが相関しておりビタミンB12投与で改善したなんてのも(Huijts M, et al. Association of vitamin B12 deficiency with fatigue and depression after lacunar stroke. PLoS One. 2012;7(1):e30519.)。面白いのは、ビタミンB12の血中濃度が正常範囲でもやや低め(190-300)であれば、ビタミンB12を抗うつ薬に加えると抗うつ効果が増強されるというもの(Syed EU, et al. Vitamin B12 supplementation in treating major depressive disorder: a randomized controlled trial. Open Neurol J. 2013;7:44-8.)。

 糖質はしっかりとしたエビデンスはないものの、やっぱりうつや不安に悪影響だと考えています。そういった意味では、軽めの糖質制限食はうつ病の患者さんや不安の強い患者さんには良いんじゃないかなと思って勧めています。

 そういったうつ病への栄養療法については、この2冊なんかいかがでしょう。

今ある「うつ」が消えていく食事 (うつ病の人に足りない栄養素がわかった! )今ある「うつ」が消えていく食事 (うつ病の人に足りない栄養素がわかった! )
(2014/02/01)
功刀 浩

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図解でわかる最新栄養医学 「うつ」は食べ物が原因だった!図解でわかる最新栄養医学 「うつ」は食べ物が原因だった!
(2011/09/30)
溝口 徹

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 ただ、注意したいのは、往々にして「うつの原因は食事だ!」と言いきってしまう極論。これは注意しましょう。本というのは、売れるためには極論を持ちだす傾向があります。読む方もスパッと言ってもらった方が分かりやすいので、なおさら断言しちゃう方が売れます。もちろん食事改善が絶大なる効果を持つうつ病もあるでしょう。でも、そっちが本態ではなくて抗うつ薬を中心とした精神科治療が効果のある患者さんもいます。”両極端ではなく、柔軟な思考”が大事。盲信はいけません。医療者としては、抗うつ薬による治療でもうひと押し欲しい時に亜鉛やビタミンを測ってみる(自分は初診で抑うつのある患者さん全員で測ってます)とか、糖質の摂り過ぎ状態があればそれを是正してみるとか。そういう視点も大切。

 また、こういう本を読んで患者さんやご家族が自ら実践するという主体性そのものが治療的に働く要素も大きいと思います。これは精神科的な考え方ですが、結構重要なんじゃないかなと。自分で取り組むという姿勢が改善につながる一歩でございます。でもゆっくりと地道にね。3歩進んで2歩下がったって良いんです。

 さて、躁うつ病(双極性障害)はこれもスペクトラムと言われて診断のラインが難しいんですが、明らかな躁うつ病はうつ病とは経過や治療が異なります。その点を患者さんとご家族には分かっていてほしいので、この本を自分はお勧めしています。

「双極性障害」ってどんな病気?  「躁うつ病」への正しい理解と治療法 (心のお医者さんに聞いてみよう)「双極性障害」ってどんな病気? 「躁うつ病」への正しい理解と治療法 (心のお医者さんに聞いてみよう)
(2012/09/15)
加藤忠史

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 そして、名古屋大学医学部附属病院の尾崎教授が編集された患者さんとご家族用のパンフレットもあるので、プリントアウトしてお渡し(PDFのリンク→コチラ)。

 うつ病と異なり躁うつ病ではなかなか栄養療法はエビデンスとして出てこないです(Sarris J, et al. Adjunctive nutraceuticals with standard pharmacotherapies in bipolar disorder: a systematic review of clinical trials. Bipolar Disord. 2011; 13(5-6): 454-65. Rakofsky JJ, et al. Rakofsky JJ, et al. Review of nutritional supplements for the treatment of bipolar depression. Depress Anxiety. 2014 May;31(5):379-90. など)。ただし、治療に当たってはそういった栄養療法の価値から目を逸らさずにいることも大事ではありますが。

 ちなみにですが、統合失調症も単一の疾患ではなく症候群的な色合いを持ちます。治療抵抗性統合失調症の一部は、糸川昌成先生の提唱された”カルボニルストレス性統合失調症”であり、抗精神病薬ではなく活性型ビタミンB6(ピリドキサミン)が有効ではないかと言われています。また、ナイアシンなど他のビタミンも効果があるかもしれません(Hoffer LJ. Vitamin therapy in schizophrenia. Isr J Psychiatry Relat Sci. 2008;45(1):3-10.)。ビタミンB12と葉酸の合わせ技が陰性症状に効く患者さんもいるようですが、これはゲノムの問題が絡んでいると言われます(Roffman JL, et al. Randomized multicenter investigation of folate plus vitamin B12 supplementation in schizophrenia. JAMA Psychiatry. 2013 May;70(5):481-9.)。大事なのは、繰り返しになりますが、全ての統合失調症がビタミンなどの栄養素で解決するわけではないということ。最後のJAMAの文献がそれを示しているように、効く患者さんもいれば効かない患者さんもいます。極端な考えには注意してもしすぎることはないかと思います。治療に難渋すると患者さんやご家族はアヤシゲな理論や治療法に惹かれてしまいます。確かに現状を打破したい・何とかしてあげたいという気持ちは無理もありませんが、そういう方々を付け狙う悪徳な輩も実に多いのです。

 ということで、精神疾患というのは”うつ病”であれ”躁うつ病”であれ”統合失調症”であれ、症候群的な色合いを持つというのは理解しておくべきだと思います。決してそれぞれが単一の疾患ではありません。例えば、うつ病の治療で抗うつ薬が効きにくかったら次の一手としてリチウムや甲状腺ホルモンを噛ませるか、慢性炎症という視点でアスピリンなどを噛ませるか、グルタミン酸調節異常の視点でラモトリギンなどを噛ませるか、ビタミンB12がちょっと低かったらそれを補うか、糖質を摂り過ぎならそれを制限してもらうか。どの影響が最も強いかを考えてみることも悪くはないんじゃないかなと考えています。
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2014
10.05

待機中。。。

Category: ★精神科生活
 愛知県は今日(10/5)の深夜から明日午前中にかけて、台風が通ります。

 となると、JRは恐らく止まる、もしくは遅延が発生しそうです。かつ明日は午前中に外来、午後はカンファレンスが複数ありちょっと忙しい。

 ということで、本日のお昼に院長から発令されたのが



前泊セヨ



 ですよねー。

 ホテルに泊っても良いよと言われましたが、ホテルから病院まで通う時間帯は恐らく大雨なので、現在病院の医局でこの記事を打っています。ソファで転がって明日の朝を迎えようという算段でございました。

 うーん、社畜ですな。というか外来患者さんは無事に来られるのか!?
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2014
10.03

同じだけどちょっと違う

Category: ★精神科生活
 今さら感のある記事ですが、ジェネリックが(後発品)わさわさと登場しておりますね。

 ジェネリックの特徴は価格が安いこともそうなんですが、名前が先発品とは異なることも挙げられます。一般名でうしろにつくっている会社の名前をくっ付けた感じのもの、例えばタケプロン®という胃薬は一般名ランソプラゾールですが、ジェネリックだとランソプラゾールOD錠15mg「タイヨー」とか、ランソプラゾールOD錠15mg「サワイ」とかだと分かりやすい。しかし、ケミファという製薬会社がつくるタケプロン®の後発品は


スタンゾームOD錠15mg


 こうなるとこれがタケプロン®と同一のものか分かりません。「え? なんだこのスタンゾームって??」となり、いちいち調べないといけないこともあり、面倒っちゃ面倒です(スタンゾームという名前は不評だったためか、一般名のランソプラゾール錠に変更になりました)。

 名前もやっつけ感たっぷりというか安直なものもあり、レンドルミン®という睡眠薬のジェネリックには、田辺三菱製薬がつくる


グッドミン錠0.25mg


 という、小林製薬的な香り漂う、なんつーネーミングだと思うものも。良く眠れそうではありますが。。。最初見た時は何のジェネリックか思い浮かばず、後ろの0.25mgというところから「レンドルミン®か、いやハルシオン®か…」と推測してました。調べればすぐ分かりますが。ちなみにハルシオン®のジェネリックには”ミンザイン”という超投げやりな伝説クラスの名称ものもありました(2013年に名称が一般名のトリアゾラムに変更)。

 それはそうと、ジェネリックにしてからいまいち何とも今までのような効果を感じないという患者さんもチラホラいます。有名なのがリスペリドン。先発品はリスパダール®ですが、ジェネリックの中には先発品よりも効果が低くて副作用が若干多いものもあるようです。クエチアピンも、セロクエル®からジェネリックにしたら寝られなくなったという患者さんがいました。不思議ですけど何か違うんでしょうね。他には、血中濃度がとても重要な薬剤は先発品が好まれるような印象。

 さて、ジェネリックではなく先発品同士でも、販売する会社が複数あると名前が異なります。ミルタザピンがリフレックス®(MeijiSeikaファルマ)とレメロン®(シェリングプラウ)で販売されていたり、フルボキサミンがデプロメール®(MeijiSeikaファルマ)とルボックス®(アッヴィ)だったり。自分はミルタザピンならリフレックス®の方が好きです。なんかこう「リフレーッックス!!」みたいな。レメロン®は「れめろーん、れめれめろーん」としていて、抗うつって感じがしません(何だそれ)。フルボキサミンについては、自分は使わないのでどっちの名前でも別に良いや、といういい加減さ。

 ここまで書いておいて、今回はアルプラゾラムの話なのでした。これにはコンスタン®(武田薬品)とソラナックス®(ファイザー)が先発品としてあります。薬価はほとんど同じ。どちらも武田とファイザーという、とてもビッグな会社であり自分があまり好きでない会社がつくっております(ん?)。成分はアルプラゾラムで効果も同じなんですが、たまーに違いを陳述する患者さんもいます。

「なんかソラナックス®の方がスッキリします。コンスタン®は少し緩い感じ」

 へー。プラセボ的なもの? と最初は思っていたんですが、そんな風に述べるのが1人ではなく複数人。しかもみんなソラナックス®推し。

自分「やっぱり違います?」
患者さん「そうですねぇ。何となくですけど、何か違うような」
自分「スッキリ感?」
患者さん「そうなんですよ。クリアな感じって言うか」
自分「不思議ですねぇ」
患者さん「そうですよねぇ」
自分「やっぱり名前かしらね」
患者さん「え?」
自分「ほら、こう”ソラナーックス!”みたいな。コンスタンって響きはスッキリしてないと言うか丸い感じ」
患者さん「いやー、どうなんでしょう(失笑)」

 というようなことが起こるのでございます(リフレックスと同じノリ)。たぶんコーティング技術とか妙な細部の違いなんでしょうけど、なぜだか名前の効果にこだわってしまう。

 自分はソラナックス®の方が好きでして、何故かと言うとお薬に割線が付いてるんです。減量しやすいんですよね、患者さん自身で割りやすくて。コンスタン®はそれがなくてのぺっとしてます。

 は! ひょっとして割線が付いて表面積がアップしたことで薬剤の効果発現が速まって云々…そんなことはないです、たぶん。
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2014
10.01

知らないものは分からない、知ってしまうとそう見える

 多くの医者が行なう診断へのプロセスは以下のようになるでしょうか。

 患者さんの主訴は言うに及ばず、年齢や既往歴、現病歴などなど。そういったところからそれらとフィットする鑑別疾患(候補となる病気)をいくつか思い浮かばます。そうして、思い浮かべた病気の中で違いを見比べる。その違いが今までの情報では不明であれば、患者さんから更に必要なことを引き出して、違いを際立たせていって1つに絞ります。

 思い浮かべる中でも、病歴次第では新たに別の疾患が可能性として出てきたり、また別の疾患の可能性が下がっていったり。頭のなかはかなり忙しいのでございます。患者さんから聞く時も、漠然と聞くわけではなく「この疾患の可能性はないか?」と考えながら”引き出す”姿勢がとっても重要。だから個人的には”医療面接”という言葉よりも”問診”という【問う】アクセントを強めた言葉が好きです。

 さて、鑑別疾患から診断に至る中で大事なのは、このことになります。



思い浮かばないものは診断できない



 当然っちゃ当然ですが。もちろん思い浮かんだ疾患も典型的/非典型的な経過を知っていなければ、良い病歴は取れませんし診察も異なってきます。診断に至るプロセスは、総論的な流れを学び、それと平行して各論的な部分を積極的に調べなければいけません。

 医者は思い浮かんだ疾患の間で色々考えを巡らせます。だから、想定していない疾患は候補にないのです。例えば、下腹部痛でいくつかの疾患を想定して進めていっても閉鎖孔ヘルニアが全く思い浮かばなければ診断はできません。中にはキーフレーズというのがあって、漢方で言う口訣的なヒントによってポンっと思い浮かべることができることもあります。先の下腹部痛では”多産・高齢女性・痩せ型”が出てくれば「あ! 閉鎖孔ヘルニアかも!」と思い出せます。

 そういうわけで、その候補となる疾患は医者の勉強するタイミングでも変わってきます。大動脈解離の勉強をした後では、この疾患の多彩な症状から色んな主訴で鑑別の上位に挙がってくるでしょう。ACTH単独欠損の勉強をした後だと、倦怠感を訴える患者さんの鑑別疾患に絶えずそれが入ってきて、片っ端から早朝コルチゾールとACTHを測定するかもしれません。レビー小体型認知症を学んだら、認知機能低下を来す患者さんの多くがレビーっぽく見えてきてしまうかもしれません。そして更に、鑑別の順位って、医者個人の勉強以外に世間の注目でも変わります。

 ということで、今回のデング熱。今年(2014年)、昭和20年以来約70年ぶりの国内感染として注目され、いきなり診断が増えました。この疾患は高熱と全身の筋肉痛や関節痛、1週間前後経ってから発疹出現、となります。検査値では血小板が減少することが見られることもあります。

 しかし、これまでは大原則がありました。それは”渡航歴”です。東南アジアに行ってきた! というのなら「ひょっとしたらデングさんあるんじゃない?」と想起できて鑑別の候補として出てくるかもしれません。しかし、それが一切ない状態であれば、まず鑑別疾患として出てきません。典型的な経過であっても、医者がデング熱に詳しくなければ思い出せない。自分が救急外来で当直をやっていたら、100%見逃していたと思います。

 デングが出現した! という知らせ以前は、クリニックや救急外来で働く医者のほとんどは、”発熱と関節痛”という患者さんに遭遇してもデング熱を鑑別に挙げることはしていませんでした。発疹が出てきても「何かのウイルス感染の非特異的な所見だろう。ウイルス感染ならそれもアリじゃない?」とやや強引に理屈付けをしたり「この発疹は麻疹の拡がりに似てるなぁ。成人の麻疹かな?」と思ったり(ちなみに麻疹は他の先進諸国では超レア疾患です)。

 デング熱を今回はじめて診断した先生は、実際に外国で診たことのある先生だったそうです。「渡航歴がないということ以外は典型的なデング熱の所見だった」という旨のお話をされていましたね。この先生が診ていなかったら、ひょっとしたら「日本でデング熱が出た!」というニュースはまだ先のお話で、今も「日本ではデング熱の発生は昭和20年以来ない」となっていたかもしれません(つまりは見逃したまま)。

 そんなこんなで、デング熱を渡航歴のない日本人が発症したというのは、多くの医者にとって大きなインパクトをもたらしました。そうなると、”発熱と関節痛”という患者さんがやって来た時、鑑別の上位に”デング熱”がどーんと新規に据えられます。よって、診断の漏れが少なくなりましたし、ちょっと過剰診断にもなってしまっている可能性もあります。

 個人的には「デング熱ってひょっとしたら以前からちょいちょいあったんじゃなかろうか…?」と考えています(ホントかどうかは分からないですよ。あくまでも推測として)。多くの場合は致死的でなく対症療法で治癒してしまうことも幸いして、これまでは「何らかのウイルス感染だろうけど治ったから良しとしよう」ということで片付けられスルーされていたかもしれないと言えます。意地悪く言うと、最初に診断した先生が数年前にデング熱をひっかけていたら、日本でデング熱が多くの地域で診断されるのはもっと早まったかもしれません。
 
 今回はデング熱でしたが、これは診断推論一般にも言えましょう。知らないものは診断できないということを痛感させた事例であり、また疑い出すと過剰診断にもなりえてしまうという教訓にもなります。総論を学んだら各論もつかまえる、各論を学んだら総論にしっかり還元する、これの繰り返しが大切ですね。
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