2014
07.31

日本漢方の”実証””虚証”はアテにならない(とひそかに思っている)

 ということで、あまり声を大にして言えませんが、表題のとおりです。

 日本漢方は”実証”と”虚証”というのを重要な概念として扱っています。何を以て実証なのか虚証なのか、それは多くが”体格や体力”を目安としてます。


がっしりしてたら実証、痩せていたら虚証


 なんて分類で、漢方薬もそれに応じて使います。例えば大柴胡湯は実証向き、補中益気湯は虚証向きなど。ただ、はっきり言ってこういう分け方は漢方薬の可能性を随分狭めてしまう、そう思います。異論は多いでしょうが…。

 自分は主に精神科分野で漢方薬を使いますが、精神疾患や多くの慢性疾患は”雑病”と考えられます。傷寒論とは異なり、より身体の中で起こることを重視します。そこで、”病邪”と”正気”という概念を掴んでおきましょう。

 傷寒論では正気を免疫力、病邪を”外邪”として現代のウイルスや細菌などを想定します。そして、正気の実と虚、外邪の実と虚、それぞれを考慮して陽病から陰病を配置します。正気の実と病邪の実とがぶつかりあったら激しい反応が起き、それが陽病。正気が虚して来て病邪の実に押し込まれてくると陰病になってきます。敗血症がひどくなってくると患者さんが静かになってきて体温も下がり免疫反応もままならなくなる…。そんな移行を傷寒論はとらえていたんだなと思います。もともと正気が虚していると最初から陰病になることもありますよ。正気の虚と病邪の虚というのは、今の世で言う日和見感染ですね。MRSAや緑膿菌による感染が代表的。

 では精神科分野ではどうでしょう。正気というのは、こころの柔軟性やしなやかさ(レジリエンス)を指すと考えて良いかと思います。病邪は免疫異常や精神的負荷による恒常性の乱れと言えるでしょう。それが気・血・水の滞りなどを産みます。

 ”病邪”と”正気”のそれぞれに”実”と”虚”が存在します。日本漢方が言う”実証”や”虚証”というのは正気の面をとらえてはいますが、病邪の方をあまり考慮していない印象を持ちます。

 実証と虚証というのではなく、正気と病邪の2つがあると考える。そして、治療の大前提は“扶正祛邪(ふせいきょじゃ)”です。弱っている正気を助けて、病邪に対しては追い出すという2つの方法を考えます。

 弱った正気には”補う”ことをして、やっかいな病邪には”瀉する”ことをします。前者には補気や補血や生津などが含まれ、後者には理気や駆瘀血や利水などの”通す”治療や温める・冷ますという治療などが含まれます。

 ただ”瀉”は”正気を損なう”とされ、瀉ばかりしていると患者さんは弱ってしまうことがあります。瀉をする前に、それに足るだけの正気があるかどうか、なければ補うべきか、ということを考えましょう。

 よって、見た目が華奢な患者さんに大柴胡湯を使うことだってあります。病邪の実があり、それに大柴胡湯が適していると判断すれば、体格など考慮せずに使います。正気が少し弱いように感じたら、補中益気湯などの補気剤で補いながら大柴胡湯を用いると言う方法もあります。日本漢方の症例報告とか見ていても「実証と思っていたが効かないので虚証と考えなおして処方した」なんていうフレーズがありますし、なんじゃそりゃと思ってしまうのでした。

 扶正祛邪という観点に立てば、何が何でも1つの方剤でやらねばならないというのはちょっと違和感を覚えまして、臨機応変さが求められるように考えています。とは言っても漢方の考え方って実に様々なんですよね。そこら辺をうまく整理していって、漢方が”術”ではなくて”学”になるようにしないとなかなか発展は難しくて「うさんくさいなー」と思われたままのような気がしてなりません。

 ちなみに、ここ最近は記事をアップする回数が多いのでございます(1日おき!)。なぜなら、8/3から1週間は怪しげな研修会があるため、ちょっとパソコンから離れるのでした。持ち歩き用のものは持ってないし、タブレットもないしスマホもないし…。研修会中は缶詰めになるからパソコン触らないだろうし…。ということで、今のうちにアップしております。
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2014
07.29

土用丑の日記念:ピアノとうなぎ

 自分は車を持っておらず、運転も免許を取って以来まったくしていません。必然的にゴールド免許。なので、知人の車で出かけるとなったらちょっと不思議な感覚(もちろん自分は運転しませんが)。旅行はあまり好きではなく家でゴロゴロしている方が性に合ってますが、好きなところが1つあります。それはですね



高速道路のサービスエリア



 あそこはホントに異世界。車から出た解放感も手伝ってますが、色んなお土産あるし、フードコートあるし、サービスエリア独自の食べ物なんかがあったりして、カオスな感じがとても気に入ってます。

 他人にはあまり気づかれませんが、サービスエリアに寄ると聞くと車内で血沸き肉躍る思いであります(心の中でガッツポーズ的な)。

 で、本日7月29日は土用丑の日。ということで、結構前に静岡に車で行った時のことを思い出しました。記事の下書きだけしてアップするのをずっと忘れていたんです…。平賀源内先生に感謝しないと。

 とある日のサービスエリアNEOPASA浜松上りでの出来事でございます。

NEOPASA浜松1

 さすがに静岡、YAMAHAということだけあってピアノの鍵盤ですね。

NEOPASA浜松2

 中の床も!

NEOPASA浜松3

 踏んで音は、、、、出ません。

 おや、こんなところに…???

NEOPASA浜松4

 サンエトワール浜松SA店の上り線限定品、うなぎのぼりエクレアでございます!!!

NEOPASA浜松5

 何かがうなぎのぼりに上昇しそうな、そんな予感(受験生に良いかも!)。

 実物はこんな感じ。眼が離れていたり近かったり、微妙に表情が皆さん異なってらっしゃる。

NEOPASA浜松6

 ちょっと買う時間がなくて見るだけになっちゃったんですよねー。最近はうなぎさんも高いので、このエクレアでうなぎを食べたことにするのもまた一興でございましょうか。

 というか、そんな記事をつくっていたなと今日やっと思い出すという体たらく。すんません、エクレアさん。

 あ、ちなみに今回のように小さい画像は携帯電話のカメラで撮ってます。前回や前々回のようなちょっと大きめの画像はデジカメで撮ってまして、クリックすると少し拡大されます。自分の携帯電話は8年モノでして、画素数も200万画素足らず…。スマホは使ったことがなくて、完全に時流に乗り遅れておる。デジカメも実は同じく8年モノで、最近のスマホよりも画素数はよろしくないです(支障は全くありませんが)。
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2014
07.27

一宮市の七夕まつり

 7月24-27日の4日間は、愛知県一宮市の七夕まつりでした。日本三大七夕といえば、仙台と平塚が不動の1,2位でして、3位を安城市とこの一宮市とで争っているようです。一宮市の七夕まつりは4日間で100万人くらい来るらしいですよ。

 ということで、27日の日曜日に一宮市まで行ってきました。JR名古屋駅から10分で着いてしまいます。最近ちょっと活動的だと思いませんか? 珍しいことに(実は6月に定光寺というお寺に行っています。記事のアップが前後しますが…)。

 電車から降りてキョロキョロすると、何やら七夕飾りを思わせるモノが早速見えてまいりました。

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 駅から出ると、早速晴れ渡った空の下、吹き流しがお迎えをしてくれます。

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 風に吹かれて、サラサラと心地いい音が聞こえてきます。

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 ちょっと歩いて振り返る。駅はこのようにお化粧をしています。

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 さ、進んでいきましょう。やはりおまつりにつきものの屋台でございます。

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 たこ焼き!

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 懐かしいですね、りんご飴。子どもの頃はこの飴の部分の赤い色が「身体に悪いからダメ!」と親に言われたものです。ま、赤はともかく青色のりんご飴はさすがにちょっとですな…。

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 チョコバナナも最近はこんなのがあるんですねぇ。クチバシ付き。

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 お、金魚すくいじゃありませんか!

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 金魚すくいと子どもというのは、それだけで微笑ましい。ほんわかします。

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 商店街に入ると、七夕まつりらしくなってきました。

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 吹き流し先生、出番です。

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 風に踊り、こころも踊る。

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 踊ったところで”たません(たまごせんべい)”登場。名古屋名物でございます。えびせんべい(もしくはたこせんべい)の上にソースとたまごを乗せたもの。

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 ひとつお買い上げ。焼きそば入りにしました。

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 たまごを焼いております。

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 焼きそばとたまごをおせんべいに乗せて…。

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 はい、出来上がり。サンドされて出てきます。

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 食べるとこんな感じ。ちょっと味が濃いですね。

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 真清田神社に着きました。『十六夜日記』にもちらっと出てきているそうです。

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 神社も七夕仕様ですね。鳥居をくぐりますよ。混雑しているため、左側通行になっております。

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 まぶしくゆらめく。

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 楼門。どっしりとしたつくりです。

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 扁額。

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 ん? オカヤドカリすくい????

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 あら、中に小さなヤドカリさん。神社の中にこういうのがあるのは何ともシュールな。。。

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 手水舎。吐水龍というんですって。口に生えている苔がおひげみたいですな。

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 お酒が奉納されています。

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 拝殿。ここも吹き流しで彩りが添えられています。ちょっと不思議な感じ。。。

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 神馬像も屋台に囲まれてしまっておる。

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 子どもたちが太鼓を叩いております。

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 厳島社。他にも多くの境内社殿がありました。

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 一周して楼門から出ると、ミス七夕の撮影会なるものが。自分は何やら撮る対象を間違えたような…? 画像には含まれておりませんが、向かって右にミス七夕がいらっしゃるとご想像ください。。。

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 たこ焼きを買いました(既に一個食べてます)。

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 アップ。

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 人が多いですね。でも4日間で100万人は届くでしょうか…。ちょっと心配。

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 妖怪ウォッチはどこでも人気。ポケモンじゃないんですねぇ、今は。

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 踊りも。

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 おまつりを堪能して駅に戻って、ちょっと二階に寄ってみました。すると?

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 お、なんだなんだ。東海三県しか認めないみたいな空気ですよこれは。

 二階から外を眺めてみる。おや、一宮市のゆるキャラ”いちみん”の花壇。お腹の”138”は”いちのみや”から来ているそうです。

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 来し方を上から眺め行く末を思うのもまた一興。

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 駅入口もこのようになっています。おー、綺麗ですね。

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 夜を照らす街灯さんを近景に晴れ渡る空を。

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 七夕まつりは眼にも耳にも楽しくさせてくれるものでした。安城市には行く時間がないですが(体力も…)、一宮市で満足満足。
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2014
07.25

澄空と蓮華

 日頃お世話になっている鶴舞公園。お出かけと言ったらここくらいしか普段は行かないのでございました。

 7月上旬は蓮の花が綺麗に咲いてくれます。花が開いているのは午前中で、お昼を過ぎると閉じてしまいます。ということで、休日の朝10時ころにお散歩。

 お、見えてきた見えてきた。結構咲いてますね。

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 こちらはつぼみ。

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 いい感じに咲いているのがちらほら。

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 白い蓮も。

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 白は数本にとどまっていました。多くはピンク色。

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 太陽の光を浴びて、灯火のようにも見えますね。

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 つぼみにトンボが止まっています。

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 ちょうど近くに綺麗な花を咲かせている蓮が! 早起きは三文の得でございます。

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 うーん、美しい。

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 花托もしっかりと見えます。

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 横顔もまた良し。

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 本日のベストショット? 晴れた空と透き通るような花弁、そして葉の緑。影もまた色合いの一部をなしており、落ち着かせてくれます。

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 あ、鯉も泳いでました。

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 ということで、蓮の花はやっぱり良いですね。泥水の中から生まれ、美しいくて清らかな花を咲かせるのが蓮。そこからお釈迦様の教えに通じています。色んな悲しみや苦難を経験してこそ、澄み切った悟りが得られる、ということなのでしょうね。
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2014
07.24

リリカ®を安易に使わないで!

 プレガバリン(リリカ®)というお薬があります。自分があまり好きでない(?)製薬会社のファイザーさんがつくって売り出しております。

 何のお薬か? 端的にいうと”痛み”に効くお薬。専門的には、神経細胞のCa2+チャネルにα2δリガンドとして結合し、神経細胞内にCa2+が流入するのを抑え、グルタミン酸などの神経伝達物質の放出を妨げます。これによって痛みに関与する神経細胞が余分に興奮することを鎮めて、疼痛を抑制すると言われています。更に、機序は不明ですが脳内のGABA濃度を上昇させるようです。以前にもこのブログで、疼痛への向精神薬として記事にしておりますね(→コチラ)。

 痛みを軽減する効果に加えて、患者さんの不安症状も軽くする作用も併せ持ちます。精神科医はこの不安軽減という作用を狙って処方することもままあります。特に統合失調症患者さんの得も言われぬ不安体験にも効果を示すため、大事な戦略だと自分は思っています。この抗不安効果がベンゾ離脱症状の軽減にも用いられることがありますが、ちょっと薬価が高いのであまりコスト的には優れていないかもしれません(75mgカプセルで130円弱)。しかもリリカ自体に乱用のリスクがあるともされています。

 そんなリリカですが、最近よく処方されています。コマーシャルで武田鉄矢が神経障害性疼痛の啓発をしており、またファイザーが整形外科や内科に売り込みをかけていることが大きな要因かと。これで痛みが軽くなれば患者さんもハッピーなのかもしれませんし、自分も使う時があります。

 ただし、精神科医として処方する医者に注意して欲しいのは



出すなら副作用を知って出してくれ!



 ということ。

 多いのが認知機能低下。いわゆる”リリカぼけ”というやつで。。。認知機能が落ちてきて認知症じゃないか? と言われている患者さんの処方を見ると、たまーにこのリリカが入っています。300mgとか600mgとか…。言うに及ばずこれを抜くと一気にシャキッとしましてですね。。。

 怖いのは転倒です。整形外科の先生は荒々しいのか(偏見)、高齢者にもいきなり150mg/dayからどーん! と開始してしまって、その結果患者さんはすっ転ぶわけです。しまいにゃ「精神科で出してる薬が悪いんじゃないか」とあらぬ疑いをかけられるなんて話も聞きます。自分は幸いにしてそういうことは経験してませんが。

 他にも複視(物が二重に見える)や浮腫、はたまた心不全なんてのもあります。Ca2+チャネルに作用するからでしょうか。それに対して無知であるというのは、患者さんの不利益です。何か患者さんが症状を訴えたら、まずは「今飲んでるお薬のせいじゃないか…?」と疑ってみることが何においても重要でしょう。リリカ飲んで心不全になって、そのせいだと気づかずに利尿薬やらβ遮断薬やら果てはサムスカ®なんて出しちゃうのは愚の骨頂と言えましょう。めちゃくちゃ高価です、サムスカ(何と15mg1錠で2000円以上もします!)。標準治療と比べて心不全改善率が全く変わらないとも言われています…(Izumi Y, et al. Therapeutic potential of vasopressin-receptor antagonists in heart failure. J Pharmacol Sci. 2014;124(1):1-6.)。患者さんを選んで使うべきなのでしょうね。

 痛みを訴えるのは、身体機能も衰えてきた高齢患者さんに多く見られます。もちろんリリカも実に良いお薬ですが、出し方を間違えると痛いしっぺ返しが待っています。特に高齢者であれば、効かないんじゃないか? というくらいの少ない量から出すというのが安全のためには欠かせません。12.5-25mg/dayから、若年でも25-50mg/dayから始めるべきだと思います。

 作用と副作用を知って使うこと。お薬というのは必ずと言っていいほど副作用があります。当然ですが、それについて知るということが大事。知らないことは余計な医療を招き、患者さんを不幸にしてしまいます。

 強調しておきますが、「リリカを使うな」というわけでは決してありません。それによって疼痛が楽になって生活が変わったと言う患者さんも実際に多いですし、自分だって必要だと思う時は使います。どんなお薬もそうですが、ベネフィットとリスクを鑑みることがとても重要であり、だからこそ”しっかり考えて”から処方するものです。”安易に”と但し書きを付けたのはそのためであって、絶対に使わないということではありませんので、お間違えなきよう。

→肝機能障害の出現があり、更には稀に劇症肝炎に発展することがあるようです。2014年9月に厚労省から製造元のファイザーに、副作用に加えるよう指示がありました。(2014年9月18日追記)
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2014
07.18

微分の力

Category: ★精神科生活
 日々の外来をしていると、どうしても調子の良い日や悪い日、イライラしている日や落ち込んでいる日などもあります。特に疲労感はどうしてもにじみ出てしまいます。自分は体力の都合上、疲れやすくてですね。。。休める時間があれば横になっていることが多いです。

 出来るだけそういうのは気づかれないようにと思っているのですが、統合失調症を持っている患者さんの中には凄く鋭いかたがいらっしゃいます。うつ病やいわゆる神経症を持っている患者さんの中にも鋭いかたはちらほら見えますが、統合失調症の鋭さはハンパないです。普段は淡々とした外来で同じようなことを繰り返している感じなんですが、ちょっとした時に「おっ」と思わせることを言ってきてくれます。

患者さん「あれ、先生ちょっと痩せた?」
自分「あら、そう?」
患者さん「うん。何となく小さくなった」
-----
患者さん「先生、今日は忙しいみたいだね」
自分「お、バレましたか…」
患者さん「そんな感じがした」
-----
患者さん「先生、最近寝てる?」
自分「ん? 寝てないように見えます?」
患者さん「疲れてるでしょ。寝なきゃダメだよ」
自分「○○さんはいつも鋭いですねぇ(感服)」

 など。こういう指摘は統合失調症を持っている患者さんが最も多くしてくれます。彼らは、ちょっとした変化に鋭敏で、先読みの力が非常に優れていると言えましょう。それが上記の様なエピソードにもなりますし、また症状としても現れます。患者さんの調子が悪い時は、こちらの身ぶりや表情の変化を「何かしてくるんじゃないか」と思ってしまうことがあります。パソコンのマウスを少し動かした時に「先生、何で動かしたの?」と聞いてくることも。普段なら気にも留めない様々なことが”意味”を持つようになり、それが患者さんにとって悪い方に解釈されます。だから患者さんが”自閉”と言って自分の世界に入るのも、予想外の出来事が出来るだけ起きないようにする防衛策の1つであります。

 よって、統合失調症を持っている患者さんにはこちらもあまり変化を付けずに淡々といつもと同じように接するのが悪さをしないんじゃないかなと思っています。そういう意味でも体調管理っていうのは大事ですよね。身体が付いていかない時もありますが…。
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2014
07.15

かんでる!

Category: ★本のお話
 『カンデル神経科学』という本があります。原題は『Priciples of Neural Science』というもの。主著者がカンデル先生というお方で、2000年に神経系の情報伝達に関する発見の功績からノーベル生理学・医学賞を受賞しております。

 神経内科や精神科の中では超有名な本でございまして、熱心な学生さんも知っていることが多いです。その『Priciples of Neural Science』が何と2014年の4月に和訳されました。何ともいい時代になったものです。しかもお値段は原著とほとんど変わりません。

 和訳本って原著よりかなり高いのが当たり前で、和訳もちょっとひどいものも多いです。でもこの『カンデル』はそういったところを払拭。素晴らしい。

 で、こちらがカンデル。

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 あれ? 随分と小さいような…? 裏返してみますと

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 お、ガムですね…。しかもロッテのキシリトールガム。

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 もう察しがついたかと思いますが




カンデル⇒噛んでる




 ということでガムなんでございました。良いコラボですよねー。2粒入ってます。

 自分はこれで満足してしまい、本の『カンデル』を結局買いませんでした(え?)。
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2014
07.12

いにしえに原点あり

 お休みの日に、名古屋大学医学部図書館に行って”千年の医書 - 平安時代から江戸時代までの古医書の世界 -”というミニ展示会を見てきました。昔々の書物を展示してくれています。

 入り口付近にちょろっとある、実にこじんまりした感じのものです。

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 日本に現存する最古の医学書である『医心方』の復刻版もありました。

 こちらは貝原益軒の『養生訓』。1713年のもの。身体とこころの健康をどうやって維持していくか、というのを説いております。

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 これは『傷寒論』です。漢方を使う人間にとっては古典中の古典ですね。張仲景が編集しております。今回のは1816年に写されたもの。

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 吉益東洞の『古方便覧』。吉益東洞は梅毒に対して水銀を使って強烈な治療をしたことで有名です。病気が治るか水銀中毒で患者さんが死ぬかというような壮絶な治療だったそうですよ。万病一毒説なんていうのを唱えました。展示されていたのは1850年に版を重ねたもの。

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 最後は歴史でみんな学んだ、杉田玄白の『解体新書』。ドイツで出版された『Anatomische Tabellen』のオランダ語訳である『ターヘルアナトミア』をさらに日本語訳したものです。翻訳に臨んだ杉田玄白たちはあんまりオランダ語が分からず、暗号を解読するような気合だったとのこと。 

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 図を見ると、肉眼的な解剖というのは随分と昔にほぼ完成されていたのだなと感じます。ヴェサリウス先生の『ファブリカ』なんてもう芸術品。

 ちなみに最初に紹介した『養生訓』には、こんなことが書かれています。

「病を早く治せんとして、いそげば、かへつて、あやまりて病をます。保養はおこたりなくつとめて、いゆる亊は、いそがず、その自然にまかすべし。万の亊、あまりよくせんとすれば、返つてあしくなる」
「薬をのまずして、おのずからいゆる病多し。是をしらで、みだりに薬をも用て、薬にあてられて病をまし、食をさまたげ、久しくゑずして、死にいたるも亦多し。薬を用ることつつしむべし」

 300年ほど前の書物ですが、現代の患者さんにも医者にも通用する事実ですね。治そう治そうとして焦れば焦るほど、調子は崩れてしまいます。お薬も使いすぎには注意。頼るのではなく、支えてもらうというスタンスがベストでございます。

 こうやって昔の書物を目にして思うことは、先人たちの作ってきた道の上に私たちはいるんだなぁということ。それを積み重ねて次代に続いていくのでしょうね。そんな歴史のリレーを感じました。
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2014
07.08

菖蒲池と紫陽花

 名古屋の6月はハナショウブの季節。近くの公園(おなじみ鶴舞公園)に、例によって例のごとく見に行きました(6月中旬)。いつもお世話になっております。

 名は体を表す”菖蒲池”でございます。

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 一面がハナショウブ。

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 近くで目線を落として見てみましょう。 

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 薄紫、藍色、そして黄色。

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 派手さはないですが、美しさは他の花に負けちゃいない。

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 菖蒲茶会なんてのも。風流でございますね。

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 そしてこの時期は、ハナショウブの他にアジサイの季節でもあるんです。

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 もうたっくさん。

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 澄んだ色合いですね。

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 こちらは紫。

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 ちょっと白っぽい。

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 青!

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 随分と眼の保養になりました。やはり季節を感じさせる花々というのは良いものですね。

 帰りにはユリに出会いました。

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 ピンク色。上品な感じですね。

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 そしてビワ。

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 ビワは鮮度が生命でして、とってすぐ食べるのとスーパーで買って食べるのとではまったく味が違うそうです。

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 となるとそこにあるビワを食べたくなりますが、さすがに公共の場ではなく私有地ですので、そんなことは出来ない。

 後ろ髪引かれつつ帰宅。その途中には、アサガオに顔を突っ込んでいるチョウチョがおりました。がっつきすぎですな。

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 鶴舞公園の6月はハナショウブとアジサイ。7月はハスが綺麗に咲いてくれます。
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2014
07.04

糖尿病治療に思うこと

 最近どんどん発売されている糖尿病のお薬、SGLT2阻害薬。イプラグリフロジン(スーグラ®)、ダパグリフロジン(フォシーガ®)、ルセオグリフロジン(ルセフィ®)、トホグリフロジン(アプルウェイ®、デベルザ®)といったものが節操無いくらいに出てきます。このSGLT2阻害薬とは何なのか。

 血液は腎臓で濾されて、不要なものが尿になります(尿は血液からつくられるんですよ)。その時に、身体に必要な糖分と塩分はその濾過を通り抜けてしまうので、腎臓は再吸収と言う手段を用意してます。糖分については、腎臓にあるSGLT2というものがもう一度血液の中に引っ張り込む役目を果たします。SGLT2阻害薬はそれをブロックすることで、糖分が血液に戻らずに尿として出すようにする、というもの。ということは


糖分が身体の中に入らないようにするんですね


 同じようなお薬がありまして、それはαグルコシダーゼ阻害薬。アカルボース(グルコバイ®)、ボグリボース(ベイスン®)、ミグリトール(セイブル®)といったものがそうです。これらは腎臓ではなくて、消化管から糖分が吸収されるのを抑える役目を果たします。ということは、ほうほう


糖分が身体の中に入らないようにするんですね


 どっちも余分な糖分を吸収させずに身体から出す、という仕組みでございます。作用する部位が腎臓か消化管化の違い(効果はSGLT2阻害薬の方が高いです、たぶん)。

 さて、日本の糖尿病治療は残念ながら製薬メーカーに踊らされた歴史が長く、それはもっとも治療薬として優れているメトホルミン(メトグルコ®、グリコラン®)を第一線で使って来なかったことに現れます。このお薬はコストパフォーマンスが素晴らしく、糖尿病患者さんの心血管リスクを減少させてくれることが明らかになっています。そして価格がメトグルコ500mg錠でも1錠20円しませんし、最高用量でも100円で足ります。ちなみにSGLT2阻害薬は大体通常の1日量で200円です。糖尿病学会のお偉いさんはメトホルミンの危険性ばかりを煽って、薬価の高いSU薬をゴリ押ししてきた経緯があります。SU薬は治療薬として劣っていることは明白で、それを第一選択で使うとメトホルミンに比べて死亡率が60%も増加するという報告もあります(Morgan CL, et al. Association between first-line monotherapy with sulphonylurea versus metformin and risk of all-cause mortality and cardiovascular events: a retrospective, observational study. Diabetes Obes Metab. 2014 Apr 11.)。稀な副作用を誇大的に述べて安くて優秀なメトホルミンを使わせず、高いだけがとりえ(?)のSU薬を糖尿病学会のお偉いさんはずっと宣伝していたのです。だまされる医者も医者だと思いますが。。。調べればすぐに分かる、こんなの。メトホルミンは他の糖尿病治療のお薬と比べて危険性は変わらず、むしろインスリンの方が高リスクであるとされています(Ekström N, et al. Effectiveness and safety of metformin in 51 675 patients with type 2 diabetes and different levels of renal function: a cohort study from the Swedish National Diabetes Register. BMJ Open. 2012 Jul 13;2(4). pii: e001076.)。

 最近はメトホルミンを使うことも少しずつ増えてきていますが、特にクリニック(しかも糖尿病専門医)ではすぐに上記のSGLT2阻害薬に飛びついて乱発したり、DPP-4阻害薬(ジャヌビア®など)を何でもかんでも最初から使ったりなど、ちょっとどうかなぁと思うところが多々あります。もうちょっと考えてから処方してほしい。

 そして、このSGLT2阻害薬は上記のように、身体の中に糖分が入らないようにする、というもの。これでふと思うのは、糖質制限食です。最近盛んに議論されていますね。「これは良いよ!」と推進する論文も出てくれば「いやいや、危険だ」とする論文も。糖尿病学会はもちろん反対の立場にあります。

 自分は、タイトな糖質制限はまだどうなのか分かりませんが、ゆるーい感じでやっていく分には全くもって大賛成です。糖質は精神症状として抑うつや不安などを強めることが示唆されており、そういった意味でもゆるい糖質制限は良いんじゃないかなと思います。身体と心が少し楽になります。

 学会が反対している理由は何なんでしょうね。良質なエビデンスがないから? それならSU薬推進の歴史は何なんだ。儲からないからっていうのがあるかも? だって変ですよ、SGLT2阻害薬やαグルコシダーゼ阻害薬には反対じゃないんですよ、彼ら。糖分を吸収しないようにするお薬は使えと言っているのに、入れる糖分を抑えるのには何で抵抗するんだ。

 こう勘ぐってしまうんです。メトホルミンの危険性ばかりを煽っていた糖尿病学会ですから、自分はちょっと彼らの言うことには疑いを持ってしまっています。もちろん全員が変なわけではなく、熱意と科学的な目線を持って治療に当たられている先生方も多いです。ただ学会とお偉方がおかしいからついつい。

 更に「??」なことに、糖尿病学会のホームページの一番下には製薬会社のリンクがぺたぺた貼られています。他の学会はそんなことないですよ。こういうことやってるから「製薬会社がせっせと学会にお金を出してるから、薬剤は推進で糖質制限は反対なんじゃないの…?」とますます訝しがってしまうのでした。

 潔白で自分の勘ぐりかもしれませんが、やるならもっとうまいやり方があるんじゃなかろうか、そう思ってしまいます。
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2014
07.02

かみとせ

 3ヶ月くらい前ですが、自分が前に勤めていた病院にいる後輩とちょろちょろっと話す機会がありました。

自分「どうですかね、そっちの方は」
後輩「なんとかやってますよ」
自分「変わったことはありますかね」
後輩「あ、師長さんが今度替わるみたいです」
自分「へー、早いですな。どんな人?」
後輩「名前はまだ分からないんですけど、えーっと、背が低くてベリーショートで…」
自分「ほー、そんなに低いの?」
後輩「え?あ、でもそんなに」
自分「でもなんかベリーショートって」
後輩「え?」
自分「え?」

 その後、衝撃的な発言が。



後輩「先生、それ髪型です…」



 な ん と 。 。 。

自分「え、そんな髪型あるの?」
後輩「ありますよ」
自分「びっくりしたわ。いきなり英語でベリーショートなんて強調するから、めっちゃ背低いと思ったわ」
後輩「…」

 こ、これはまさに異文化コミュニケーションではないでしょうか。
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