2014
02.25

覚書その9~役割から見えてくる”転移/逆転移”

Category: ★精神科生活
 今回は、精神分析で良く出てくる”転移/逆転移”について、自分の理解をお話ししたいと思います。若手の診療に活かすための認識の仕方。

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 ここまで、こころについて考えて、症状がどんな役割をしているかを見てきて、精神病理学的知識や精神分析的知識をほんの少しだけ眺めてきました。その知識の最後に、治療者と患者さんの役割について考えて、そこから治療に重要な“転移/逆転移”についてお話をします。難しく聞こえるかもしれませんが、ちょっと我慢して読み進めてみてください。

 第一に言えるのは、治療者患者関係は“職業的な”役割関係だ、っていうこと。私たちは家族や友人の様に愛や友情を提供する立場じゃなくて、専門家として知識と技術を提供し、患者さんを“自立/自律”に導く立場にあるんです。その役割が“わたし-あなた”の様な生身の人間関係となってしまいそれに浸ることは決して治療的じゃありません。診療の場はあくまでも診療の場。現在の患者さんが日常で佇む“あいだ”とは異なることは銘記しておきましょう。これ大事。

 治療者と患者さんの役割とはどういうものか詳しく探ってみたいのですが、成田善弘先生が綺麗に整理して下さっていますので、手っ取り早くそれを見てみましょう。

治療者の役割
①患者の依頼に応えうる知識と技術をもつ(と想定される)専門家として患者の依頼を受け入れる。
②治療構造を設定し維持する。
③患者に傾聴し理解する。
④理解したところを患者に言葉で伝達する。それによって患者の問題(不安や葛藤)をいま一度患者の中に差し戻す。
⑤面接のなかでの治療者の役割を少しずつ小さくするように努める。つまり治療者でなくなるように努める。


患者の役割
①自分の問題の解決を求めて専門家に助力を依頼する(依頼者になる)。
②治療構造を守る
③自分の内界を包み隠しなく言葉にする。
④治療者の介入を受け入れて自分の言動の意味を理解できるように努める。それによって自分の問題(不安や葛藤)をいま一度自分のなかに引き受ける。
⑤自分の問題に自分で対処できるようになる。つまり患者(依頼者)でなくなるように努める。


 治療者の役割の④と患者さんの役割の③と④は、分析的精神療法の色合いが強いですね。支持的精神療法では、安心の保証の下ゆっくりと動かせるところから動かすという姿勢ですので、これらが常に前面に出てくるとは言えないかもしれんです。

 治療者の役割のなかの“治療構造”と言うのは精神科医が特に意識することですが、治療の物理的条件のことを指します。入院/外来や面接の時間/頻度/場所など。面接の環境は一定にして、枠としておくことが勧められます。この様な枠が定まらないと患者さんにも影響してくることだってあるんですよ。先に述べたように、治療者の態度と同様に環境も大きくぶれないことが、治療者と患者さんの関係を維持するためにも重要になってきます。他科の先生は、例えば大量服薬などで患者さんが救急外来に来た場合「精神科に電話してみっか」と思って電話した際、こんな経験はあるでしょうか?

救急当直「あ、どーも先生。精神科の患者さんが大量服薬して救急外来にきまして」
精神科当直「身体的にはどうですか?」
救急当直「意識もはっきりしてるし、大丈夫ですよ」
精神科当直「身体的に問題なければ帰して下さい」ブツッ
救急当直「あ、でも患者さんが診てもらいたいって、あれ?先生?せんせー…、…切れてる。。。なんなんだよ精神科は! 患者さん来ても全然救急外来に降りてこねぇぞ! さぼってんじゃねーよ!」

 どうでしょう。精神科の評価はダダ下がりですな…。それ以外にも精神科の腰は重いなぁと感じたことはあるんじゃないかなと思います。でも精神科が来ないのはきちんと理由があって、それが上記の“枠(わく)”なんです。大量服薬やリストカットなどの“行動化”を起こして救急外来に患者さんが来た場合、すぐに精神科がホイホイっと行くと、患者さんは無意識的に「あ、こうすれば先生が来てくれる」と思ってしまうことでしょう。それがひいては予約外の受診や頻回の行動化で救急外来にかえって何度も来ることにもつながり、退行を来たします。それを危惧して、治療のために精神科医はあえて顔を出さない様にしているんですよ(と、言い訳をしてみる)。

 さて、成田先生の書かれた“患者の役割”を眺めてみると、実際はこうも行かないことは周知のとおりでございます。治療者の介入を拒否することもあるでしょうし、約束された面接時間に遅刻することもあるでしょう。心の中のことを言葉にせず、もしくはできず、行動として表してしまうことも実に実に多いのです(先述の行動化ですね)。そして、治療者が困ってしまうのは往々にしてこの逸脱なんです。

 逸脱は何も患者さんだけではありません。翻って治療者側の役割逸脱を考えてみましょう。ともすると治療構造を崩しがちになったり、傾聴せずにこっちの理解を一方的に話したり、患者さんと妙に親しげに話したり、と言ったことが思い浮かびます。また、入院環境では他の医療従事者(看護師さんなど)からの話に耳を貸さない、医療従事者同士で口論になる、ということがあり得ます。これを具体的に言うと、患者さんをひいきしすぎた場合、深い治療からは一歩距離をとって常識的な意見を持つ看護師さんの言葉が患者さんを攻撃しているように感じるでしょう。また、患者さん側が看護師さんと治療者を喧嘩させようとしていることもあり、患者さんに操作される、なんて言います。だから患者さんのことで看護師さんと言い合っている治療者を見ると「あー操作されてるわ」とか「患者さんに巻き込まれちゃってるねぇ」と別の治療者は思います。岡目八目的な。

 さてでは、この役割からの逸脱をどうとらえましょう。これを繰り返す患者さんを“失格”として治療拒否するのでしょうか。枠にはまらなければすべてお断り? でも上述のように治療者にもこの役割から逸脱したいと思う時はあるでしょうし、実際にそうしてしまうこともあります、もちろん。そこから捻り出されるのは“逸脱=問題患者さん=治療適応ではない”とするのではなく、こんな転回です。


それじゃあ、逆にそれを治療に使ってやろうじゃないか


 開き直りというか眼から鱗というか。そして、それこそ精神科診療、中でも精神分析や精神分析的精神療法、支持的精神療法の特筆すべき点でもあるんです。よって、患者さんや治療者の逸脱または逸脱欲求を「お、これって転移/逆転移かも?」と考えることが重要となり、支持的精神療法においてもこの考え方は治療が進展しなくなった際などに考慮することで新たな視点をもたらしてくれます。枠を作ることはその逸脱に着目することでもあり、その逸脱を“転移/逆転移”かもしれないと考えてみるという方向性につながってきますね。枠という負荷をかけることにより“転移/逆転移”が浮き上がりやすくなると言えましょう。

 さてこの“転移”ですが、概念が治療者によってズレがあるものの、浅く“患者さんが治療者に職業的ではない人間的な関わりを期待する感情のこと”と理解しておきます。患者さんはお母さんやお父さんなどの重要人物や、自身の姿を無意識的に治療者に重ねてしまいます。ただし、患者さんの言動や行動が過去の体験のそのまま繰り返しというのではなく、過去に影響された新しい体験が転移である、ととらえる必要があります。相対する治療者の現実的特徴と過去の人物像の諸側面とのアマルガムであり、古い関係と新しい関係との結合なんです。

 それに対して逆転移は“治療者が生身の人間として行動してしまいたくなる時に芽生える感情のこと”と考えましょうかね。治療者も自らの生活史を無意識に治療の場へ持ってきていて、それに影響されます。逆転移とは、人間としての治療者のすべてが合わさって創り出された反応。治療者は自身の過去を治療の2者関係に持ち込み、一方で患者さんもまた治療者に様々な感情を引き起こすんです。例としては予約時間外に会う、どうしようもない怒りや無力感を覚える、いつまでも頼りにされたいと思う、などなど。

 患者さんも治療者も、個々の生活史を持ち、かつ今を生きる存在です。その2人が治療の場で出会うということは、必然的にそれぞれの歴史が影響するでしょうし、それが逸脱に向くこともあるでしょう。ここで注意を促したいのは、2人とも過去をそのまま治療の場に持ってくるわけじゃないってこと。過去に影響を受けた、今ここの存在として出会うんです。そして、2人が影響しあうということも忘れちゃいけません。患者さんの状態は治療者に影響し、また治療者から跳ね返ってくるものに患者さんが反応するという相互作用が働いています。患者さんを理解しようとしすぎると、患者さん側の要素ばかりを考え、自らが患者さんと共にある治療関係、治療者と患者さんの“あいだ”と言っても良いでしょうけど、それを忘れがちになってしまいます。“転移/逆転移”は、人間同士の響き合いと考えても良いかもしれませんね。

 こんな仰々しい名前が付いてはいますが、“転移/逆転移”というのは見方を変えると日常生活にもちょろちょろ出ています。友人と話す時とか、他愛のない日常のやりとりだって人間同士の響き合い。ただ、そこに枠はありません。だからこそ日常での人間臭さは日常のもので、取り立てて“転移/逆転移”と定義する必要はありません。お母さんの口癖がイラッとしてしまう人にとって、友人が同じようなことを言ったらやっぱりイラッとしますでしょう。普段の何げないやりとりに、人生と言うのは見え隠れしてますな。よって“感情やそれに伴う行動は記憶である”とも表現できるかもしれませんね。日常生活はそれがあって日常生活なので、別に変じゃありません。それに対して診察室では、治療の場という枠、治療者と患者さんと言う役割があるからこそ“転移/逆転移”は“転移/逆転移”として名づけられています。ちょっと図にしてみましょう。上図が日常生活でのやりとり、下図が診察室内での”転移/逆転移”です。

日常やりとり


転移やりとり

 過去の重要人物との関係や現在その人が置かれている状況、そして今の相手との関係。それらが様々に影響しあっています。2つの人生が診療の場で出会っている、そこでの人間的な出来事が“転移/逆転移”なんです。そして、なぜ今この場でそれが起こったのかについて思いを巡らせることが、治療にも役立ってきます。この思いを巡らすってのは随分と疲れそうですね。実際、シロートながら自分もこのタイプの診察(もどき)をしているとかなりヘトヘトになります。次の患者さんまでにひと息入れないと大変(でも病院変わってからは外来が分刻みなので、転移/逆転移をしっかり見る診察というのを全くしなくなりました…)。

 臨床の現場ではこの逸脱に遭遇することが非常に多いですね。じゃあ逸脱を感じた場合、どうするのか? 精神分析的に診ているのなら“解釈”というものをします。なぜ今この場で逸脱が生じたのか、これまでの患者さんの人生をたどりながら考えて、それを伝えます。ここで注意が必要なのは、私たちはまだ若手であり、それは換言すれば精神分析的な経験が非常に乏しいという点。だからこそ精神分析のテキストで得た知識をそのまま患者にあてはめようとしてしまうとも言えちゃいます。学んだものをすぐ使いたくなる、という誘惑はいつも付いて回りますね。でも例えば、治療者に対する愛情を感じたら「幼いころにお母さんに向けることのできなかった愛情を今わたしに向けているのでしょう」と判で押したように伝えるのは、一般常識的に考えて多くの場合で患者の自尊心を著しく傷つけることになるのは明明白白でございます。過去に焦点を当てて現在の言動が過去からそのまま持ちこされたものと考えて教科書的なモデルを言うのが転移解釈、ってことじゃないんですよ。良く言われるように、教科書で得た知識は解釈のための下準備みたいなもんで、実際の患者さんと相対して人生を分かろうとする姿勢があって初めて、生きた解釈が出てくるんでしょうね。

 実際「若手に正しい解釈ができるんかしら?」という不安は常に付きまといます。患者さんや治療者の逸脱を“転移/逆転移”かもしれないと考えるところまでは私たちにも可能かも。そこから先をどうするか。性急に精神科医っぽく解釈したくなる気持ちになることもあるかもしれませんが、それは治療者が持つ嫌な気持ちを患者さんの方へ押し込みたいというのを指していることだってあります。解釈が、治療者が攻撃者であること示すものになってしまうという可能性もあります(言葉は時として鋭い刃物になります!)。治療者の理論を押し付けて、患者さんから考える機会を奪うことにもなりかねません。

 さ、どうしましょ。「解釈するのは良いけど外したら…。自信ないんだよね…」というのは誰しも思いますよね。そこで、治療者の基本的な役割としての“容器(コンテイナー)”を思い出しましょう。「“転移/逆転移”かもしれない!」と思った際には、それの容器として抱えておき、持ちこたえてみるんです。患者さんが以前には耐え難いと考えていた感情を治療者が持ちこたえているのを目にすると、それが患者さんに変化をもたらすきっかけとなるかもしれません。私たちにできることは、変わらない治療者として抱えることにより、解釈を遅らせてみることなんじゃないかしら。これにより本来は“転移/逆転移”ではなかったものを間違えてそれととらえて性急に解釈してしまうことを避けられますし、実際に解釈を行う際も時間を置くことが治療者にとって柔らかい様々な考えを産むきっかけになる可能性もあります。

鉄は冷めてから打て

 こんな格言が精神分析にはあります。これを心に留め置きましょう。例えばただ純粋に寝坊して電車に乗り遅れて診察に遅れたのを「ははぁ、これは診察への拒否としての気持ちの表れだな。ちょっくら解釈するか」と思って伝えたら患者さんにとって失礼そのもの。また、治療者の言葉が乱暴なら、それだけで患者さんを怒らせるでしょう。その怒りを“転移”として扱ったらそれは見当違い。

 “転移/逆転移”なのか、純粋になるべくしてなった事柄なのか、それを判断するのは実は難しく、若手ならなおさら。だからこそ解釈を“遅らせる”という手段が有効だと思います。それに、繰り返しになりますが、解釈せずにただ耐えることだって意味はありますよ。患者さんが「あ、私の周りの人と違ってこの先生は攻撃してこない」と思って、その耐える機能が患者さんに良い影響を及ぼすことも多いです。これが現実的には最も使えそうな気がします、個人的には。伝えるツールとして、言葉は大事なものです。それは発することにも言えますし、“発さないこと”にも当てはまるでしょう。言葉を発さずに“転移/逆転移”ということを理解した上で、患者さんの心境を察している“あいだ”にしていく。うまく余白や行間をつくっていくような診察の場が良いんじゃないかなと思ってます。

 若手にとって、解釈を先延ばしにすることは、決して逃げることじゃありません。患者さんの生活史などに軽々しく結びつけて発言するというような迫害者にはならないよという、治療者の意思表明でもあります。まずは患者さんについていわゆる“知らないことnot-knowing”の姿勢を持ち、不確かさを受け入れ、関係性の中で患者さんを理解したいなと思うことが肝要。

 患者さんと治療者、それぞれの生活史を持った2人が今この治療の場で出会う。その2人の“あいだ”で現在生じることに思いを馳せることが精神科として大事。私たちは今を生きる存在ですから、やっぱり今を重視すべきだと思います。過去に目線を向けてすぐにその過去の出来事とのみ結びつけることは、患者さんの今、そして今の治療関係を見ていないことになるんじゃないかしらね。“転移/逆転移”というのは、お互いの感情の揺れ動きを見ていくために有用なもの。解釈を用いなくても、“転移/逆転移”を意識することで(察することで)患者さんの苦しい“あいだ”や診察室内の“あいだ”をしっかり見ようと言う動機づけにもなりましょう。そして、言葉にして解釈するんだったら、それは患者さんの今にも伝わってくるものであるべきなのでしょう。すぐに解釈するのではなく、今の関係について少し時間をかけて考えてみる。その結果、治療者の解釈が今の関係性にもしっくりと来るのであれば、その解釈は有用なのかもしれません。その時に初めて、あなたなりの解釈をそっと伝えてみましょう。


過去の関係と今の関係との両方に同じ程度あてはまるようなコトバ


 神田橋先生は、これが治療的だとお話しされます。患者さんの過去にも今にも眼の届いた、まさに治療的なもの。精神療法っていうのは、患者さんの失われた時間をつなぐ役目をするのかもしれませんね。

解釈
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2014
02.21

精神疾患にもたらされる慢性炎症の視点

Category: ★精神科生活
 今回は”炎症”という点から精神科を眺めてみたいと思います。結構ホットな話題、というか自分の趣味で気になっている話題です。

 肥満から糖尿病、心不全、そしてがんといった慢性疾患に“炎症”が関与していると言われています。炎症というと怪我とか感染症とかでCRPがスパーンと上がって熱が出て、という“急性炎症”を想像しがちですが、慢性疾患に関わる炎症は“慢性炎症”というもので、プロセスはかなり複雑なもの。言葉だけ見ると急性炎症が遷延化して慢性炎症になる、と思われがちですが、決してそうは言えないのです。もちろんその場合もあるんですが、急性炎症を示さずにくすぶるような感じでだらだらと続く場合もあって、やっぱり急性炎症とは質的に違うんじゃない?と言われております。

●サイトカイン登場
 急性炎症は治まるべき時にサイトカインが大人しく退いてくれるんですが、慢性炎症ではストライキのようにサイトカインが居座ってしまうような。その結果、組織リモデリングという、血管新生やら免疫細胞の浸潤やら組織の線維化やら臓器の機能障害などの経時変化が起こってしまいます。サイトカインがそうやって居座っちゃう原因は不明なんですが、炎症を促進する系統が反乱を起こしているのか、制御性T細胞のような炎症を抑制する系統がサボってしまうのか、何か炎症をおこすようなストレスが消えないのか、炎症で新しくストレスが出てきてずっと続くのか…。はてはて。

 そんな慢性炎症ですが、何と精神疾患もこれが大きく関与しているのではないか!?とされています。言うなれば“脳の慢性炎症”でして、中でもうつ病が良く研究されております。C型肝炎に対するインターフェロン治療の副作用に抑うつがあるのは有名。更には慢性炎症の代表であるがん患者さんでは、うつ病の併存が3割近くで認められます(これは心理的な色合いも強いと思いますが)。また純粋なうつ病の患者さんの血液を調べてみると、IL-6やTNF-αといった炎症性サイトカインが、一部の患者さんで上昇していることがあるんです! こういった炎症を示すファクターが、症状の重症度(睡眠障害、認知機能低下、疲労など)と相関しているという研究も出てきて、炎症が強いと治療抵抗性を示すんじゃないかとも示唆されています。話はドンドン広がって、幼少期に虐待を経験しているとうつ病になった際の炎症度合いが強くなるかもしれないという疫学データも。

 主な慢性炎症の因子としては、心理社会的なストレスや人生初期でのストレスがまず挙げられますが、食事や肥満もありまして、食事ではω3脂肪酸の摂取を高くすることが大事かもしれません。肥満だと脂肪細胞がMCP-1を産生してマクロファージを呼び寄せ、炎症性サイトカインなどが出てきてしまいます。医食同源ですね。IFN-αによる肝硬変治療ではうつ病誘発が副作用としてありますが、ω3脂肪酸(EPA)の投与がそれを予防できたとする論文も出ました(Kuan-Pin Su, et al. Omega-3 fatty acids in the prevention of interferon-alpha-induced depression Results from a randomized, controlled trial. Biol Psychiatry. 2014 Available online Jan 24)。

肥満と慢性炎症
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他にはT細胞の機能不全が挙げられます。制御性T細胞やTh17といったエフェクターT細胞などが注目されています。制御性T細胞は抗炎症性サイトカインであるIL-10とTGF-βを産生します。この2つのサイトカインは炎症を鎮める重要な役目を果たすんですが、うつ病ではこれらの働きが弱まっていることが示唆されています。IL-17を産生するTh17は、炎症性疾患において基礎となる病態生理学的役割を持つとされています。IL-6やIL-23やIL-1βが、ナイーブT細胞にIL-17を発現させます。制御性T細胞の働きが弱まりTh17の働きが強くなることが、慢性炎症の中心的な役割であるかもしれません。

Treg.jpg
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 腸内細菌叢も考えられています。制御性T細胞とTh17の働きに一定の影響を持つようで、2013年のNatureにもそういう論文が出ていましたね(Atarashi K, et al. Treg induction by a rationally selected mixture of Clostridia strains from the human microbiota. Nature. 2013 Jul 10.)また腸管からのbacterial translocationも慢性炎症に寄与している可能性がありますよ。だからプロバイオティクスも何だか期待しちゃうんですよね、個人的に。2013年のCellには、自閉症スペクトラム障害と腸内細菌叢との関連性を示唆した論文がありましたし(Hsiao EY et al. Microbiota modulate behavioral and physiological abnormalities associated with neurodevelopmental disorders. Cell. 2013 Dec 19;155(7):1451-63.)。ちなみに自分はミヤBM®が好きです。

 これらをまとめると、以下の図になります。

慢性炎症ファクター
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 そんなサイトカインは、脳にどのような効果をもたらすんでしょう? サイトカインは結構大きな蛋白でして、それ自体では容易に血液脳関門を突破出来ません。様々な経路が想定されていまして、例えば脈絡叢や脳室周囲器官(CVOs)といった血液脳関門の緩いところから入ってくる経路、迷走神経などの上行性ニューロンを刺激して、シグナルを孤束核(NTS)や最後野に伝える経路、TNF-αが脳内のミクログリアを活性化させ、そのミクログリアがMCP-1を産生し、単球を脳内に連れてくる経路、などなど。

サイトカイン侵入
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 ひとたびサイトカインのシグナルが脳内に入り込むと、豊かなサイトカインネットワークがそこにはあります。ニューロンもそうですが、膠成分として昔は注目されていなかったグリア(アストロサイトやミクログリア)もサイトカインを産生して、サイトカインの受容体を発現します。特に、脳内で最もサイトカインを産生する細胞がミクログリアでして、現在の精神医学はこいつに注目してるんです。実際、気分障害や統合失調症で自殺した患者さんの脳内では、ミクログリアの密度が上昇している部位があるなんて言われてます。

●キヌレニン経路って?
 サイトカインが行動に影響を与える機序で最も研究されているのは、神経伝達物質の代謝についてです。モノアミンから見てみますが、キヌレニン経路を示しましょう。

キヌレニン
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 モノアミンの代謝には、indoleamine-2,3-dioxygenase(IDO)という酵素が大きな役割を持っています。IDOは数多くの細胞にありまして、IFN-γ、TNF-α、IL-1、IL-6などのサイトカイン、そしてSTAT-1やMAPKやNF-κBなどの因子を介して活性化されます。トリプトファンはセロトニンの材料ですが、他にもIDOの存在下でキヌレニンとなり、それが脳内ではミクログリアやアストロサイトによって更に変換されます。

グリアによる代謝
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 中枢神経系では、キヌレニンはキヌレン酸(kynurenic acid: KYNA)とキノリン酸(quinolinic acid: QUIN)と3-ヒドロキシ-L-キヌレニン(3-hydroxy-L-kynurenine: 3-HK)へと代謝されます。QUINと3-HKは主にミクログリアと浸潤したマクロファージで産生され、前者はNMDA受容体に直接結合し、グルタミン酸放出から興奮毒性、神経変性につながります。また、脂質過酸化反応に関係し、酸化ストレスをもたらします。3-HKはNMDA受容体依存的ではなく、フリーラジカル産生によって神経変性をもたらします。

 QUINとは異なり、KYNAはアストロサイトで産生されます。こっちはNMDA受容体、カイニン酸受容体、AMPA受容体を阻害。更にはニコチン性アセチルコリン受容体α7サブユニット(α7nAChR)を阻害し、グルタミン酸の放出を抑制します。これによって神経保護的に働くと言われます。KYNAは認知機能に関わり、過剰産生がグルタミン酸やドパミンやコリンのバランスを乱してしまい、認知機能障害を産みます。中脳ドパミン神経の発火にも関与し、それが線条体や側坐核や前頭前野といった下流への投射に影響を与えます。また、α7nAChRはサイトカインの転写と翻訳の両方を調節する機能も持ってます。

 精神疾患や神経疾患では、QUINとKYNAの比が重要なんだと言われます。QUINが多すぎてKYNAが少なすぎると、神経毒性が強まってしまいハンチントン舞踏病やアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患に結びつきます。KYNAが多すぎるとNMDA受容体の活性が落ちて統合失調症の病態に寄与するのではないかと言われ、統合失調症患者さんの死後脳でもKYNAが上昇しています。上述のα7nAChR阻害も統合失調症の病態に関与しているとされます。KYNAの上昇は統合失調症の認知機能障害に特に大きく影響するようでございます。

キヌレニンのバランス
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 うつ病については、やはり様々な炎症性サイトカインがIDOを活性化することが中心的な役割を果たしてるんじゃないの?とされてます。うつ病患者さんの死後脳ではミクログリアの活性化とアストロサイトの減少が示されており、QUIN上昇によりNMDA受容体の過活性が見られるのではないかと言われます。NMDA受容体阻害薬であるケタミンによる速やかな抑うつ改善は、これの傍証となるかもしれませんね。ただ、IFN-αを投与された患者さんのCSFではQUINとKYNAの両者が同等に上昇しているみたいで、これは事態が更に複雑であることを示唆しています。よって、うつ病におけるキヌレニン経路の変化というのは、脳の部位特異的かもしれんです。マウスのモデルでは、QUINの前駆体である3-HKが皮質では減少しており線条体や扁桃体では上昇していることが認められています。

●キヌレニン以外のものたち
 モノアミン代謝に影響を及ぼすもう1つの経路は、サイトカインのシグナルによるMAPKの経路です。この経路が刺激されると、セロトニントランスポーターの発現と機能が高まり、更にドパミントランスポーターにも影響が出ます。よって、この経路がサイトカインにより強まることで、セロトニンもドパミンも再取り込みが促進されるという状況になります。他には、テトラヒドロビオプテリン(BH4)っていうものがあります。これは、セロトニンやドパミン、ノルアドレナリンを合成する際の律速酵素であるトリプトファンヒドロキシラーゼとチロシンヒドロキシラーゼの補酵素。また、アルギニンから一酸化窒素(NO)を合成する際に必要なNOSの補酵素でもあります。BH4は非常にもろく、炎症や酸化ストレスでXPH2に変性します。サイトカインがNOや酸化ストレスを通してBH4に影響を与えることで、モノアミンが上手く使えなくなってしまうとされます。

 モノアミン以外では、サイトカインが神経新生や神経内分泌や神経回路に与える影響というのが研究されてます。神経新生ですと、ストレスによって炎症が強まると、IL-1などのサイトカインが放出され、NF-κB活性化などを介して神経新生を阻害すると示唆されています。神経内分泌ですと、うつ病ではHPA-axisが研究されていて、サイトカインが海馬でのグルココルチコイド受容体(GR)の発現や機能を損ねることで、GRを介したフィードバック機能の低下が視床下部のCRH系機能の亢進を生じ、グルココルチコイド抵抗性がもたらされるという研究があります。神経回路では大脳基底核と背側前部帯状回(dACC)が影響を受けるとも言われます。

●まとめ
 うつ病や統合失調症を代表とする精神疾患はサイトカインの影響を強く受けます。特にこの2つの疾患はミクログリアとアストロサイトによるKYNAやQUINの産生が病態に強く結びついていると考えられます。自閉症スペクトラム障害においても脳の多くの部位でミクログリアが活性化していたという報告もあり(Suzuki K, et al. Microglial activation in young adults with autism spectrum disorder. JAMA Psychiatry. 2013 Jan;70(1):49-58.)、これから脳の炎症というのは大きなテーマになってくる、と自分は勝手に考えています。

 抗炎症を考えた際の薬剤はエビデンスがまだまだ弱いながらも、自閉症、統合失調症、双極性障害、うつ病など多くの精神疾患への治療として研究が行われてます。精神疾患は症候群的な色合いが強く、うつ病でも炎症が強く関与しているうつ病もあるでしょうし、あまり関与していなうつ病もあると思います。炎症が関与していると考えられる精神疾患であれば、何らかの効果は期待できる(というか、期待したい)かも。

 使用量として、アスピリンは1000mg/day、セレコキシブは400mg/day、ミノサイクリンは200mg/day、EPAは1-2g/day、N-アセチルシステインは1-3g/day、エストロゲンは0.625mg/dayというのが多いでしょうか。予防的な役割や従来の薬剤では十分な反応が得られない場合の増強としての役割などを有します。困った時の一手として、頭に浮かべてみても悪くはない、かもしれません。改善するって言う保証はなかなかできませんが…。統合失調症についてはアスピリンとエストロゲンとNACが効果ありというのが新しい報告でしょうか(Sommer IE, et al. Efficacy of Anti-inflammatory Agents to Improve Symptoms in Patients With Schizophrenia: An Update. Schizophr Bull. 2014 Jan;40(1):181-91.)。
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2014
02.18

虫垂炎はなんともはや

 今日は救急の勉強会でした。虫垂炎の患者さんについての話し合い。

 虫垂炎(一般的には”盲腸”と呼ばれます)は侮れない疾患です。コモンなのになかなかうまく診断できないという不思議さがあります。勉強会では以前にまとめた虫垂炎資料をベースにして話をしましたが、ここでも挙げてみます。

 虫垂炎は10-30歳代に多く、食欲不振は症状として良く見られます。嘔気も見られ、多くは痛み→嘔気嘔吐の順にやってきます。ただ、軽度の”気持ち悪さ”を嘔気と捉える患者さんだと、はっきりと痛み→嘔気の順には来ない可能性もあります。常々言われる上腹部→右下腹部への痛みの移動ですが、実は半数ほどの患者さんにしか見られず、LR+3.2、LR-0.5となっています。発症後24時間以内の悪寒は少なく、熱は24時間以内に微熱程度が出てきて、破裂すると高熱になると言われています。虫垂炎は症状のバラエティが豊か。これは、虫垂の場所が人によってバラバラなことが原因(下図)。ひょろっと長くて直腸なんかに接していたら、虫垂炎でも下痢という症状が出てきますし、尿管とか膀胱に触れていたら、無菌性膿尿などがあることも。こういう、医者を惑わす症状形成が診断率の低さに結びついているんだと思います。

虫垂位置
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 あと、虫垂炎にかぎらず穿孔するといったん痛みが軽くなることもあります。内圧が上がって消化管壁の虚血や炎症が高まるんですが、穴が空くとふっとその圧が弱まります。脳出血の脳室穿破なんてのもそうです。脳室に血液が抜け出ることで、頭蓋内圧が下がるんです。そういったので痛みが軽快するということが起こりまして、「痛みが軽くなったから軽症だ」ということには必ずしもなりません。これ注意。

 診察については、特に初期の虫垂炎は診察で除外が出来ません。虫垂炎含め骨盤内病変を疑ったら、診察では感度は低いもののobturator signとpsoas signの2つを行うべきです。また、患者さんがベッドに寝た際に右足を少し屈曲していることがあります。これは足を伸展させたら痛いためであり、psoas signに近いものと知っておきましょう。McGee先生はこの2つのsignは有用性が低いと言っておりますが、他の文献では有用としているのもあります。お腹の深い位置の病変はなかなか診察でつかまらないんです。そういう時は上記の診察事項を加えるのは必須と考えておきましょう。

 右下腹部圧痛はLR+7.3、LR-0.1なので、大事ですね。ただこの所見がないことだって少数ですがあり得ます。McBurney点とするよりは右下腹部と広く構えた方が感度は良いようです(当然ですね)。RigidityはLR+3.76、LR-0.82で、あれば少し有用、GuardingはLR+1.65-1.78、LR-0-0.54なので幅は見られるものの、なければ少し有用くらいに考えておきましょう。Heel drop testは、つま先立ちから踵を落として腹痛が出現した時を陽性とします。最近の論文では虫垂炎に対する感度85.4%、特異度30%とされており、LR+1.2、LR-0.5ほど(The Importance of Heel Drop Physical Examination Sign in Diagnosis of Acute Appendicitis; Eur J Surg Sci 2010;1(3):77-82)。除外の参考程度にはなるかもしれませんし、腹膜炎にまで波及しているかを知るためであれば、感度はかなり上昇すると思われます。Cope先生も腹膜炎の患者さんにおけるこの検査の有用性を述べています(急性腹症の早期診断; MEDSi (2004/05))。また、患者さんが腰を曲げてそろそろ歩いて診察室に来たら、この所見をとらずとも陽性だろうという察しがつきます。すでにベッドに寝ている患者さんでは、脚を持って足の裏をドンドン叩きましょう。それで痛くなれば陽性と判定します。

 虫垂炎に限らず腹膜炎を疑った際になされる診察で有名なものにはcough testがあり、患者さんに咳をしてもらって腹痛が惹起されれば陽性とします。感度78%、特異度79%、LR+3.7、LR-0.3ですので、参考程度にはなるかと思います(Use of coughing test to diagnose peritonitis; BMJ. 1994 May 21;308(6940):1336.)。きちんとした追試をした方が良いと言われてますが、簡単なのでやっても損はないかと。ただ、筋肉痛でもこの診察は陽性になるので(触診しかりtappingしかり)、痛みの原因が腹壁か腹腔内かを鑑別するための診察にCarnett signというものがあります。患者さんに仰臥位になってもらって、両腕を胸にクロスさせて置いてもらいます。患者さんの腹部の圧痛点を検者の手で押さえた状態で患者さんに頭部と両肩を少し挙上してもらうと、腹部の筋肉が緊張します。圧痛減弱なら陰性で、腹腔内由来の疼痛を示唆。圧痛不変なら陽性で腹壁性の疼痛を示唆、圧痛増強なら強陽性として腹壁性の疼痛を強く示唆する、と言われています。文献として感度と特異度が明らかになっているのが慢性腹痛の患者さんで、それぞれ78%、88%(LR+6.5、LR-0.25)です(Chronic abdominal wall pain: a frequently overlooked problem. Practical approach to diagnosis and management; Am J Gastroenterol. 2002 Apr;97(4):824-30.)。セッティングが救急外来にやってくる患者さんとは異なりますので、この数字を鵜呑みにせず参考として扱うのが良いと思います。

 虫垂炎に戻りますが、検査値では、好中球優位のWBC上昇と左方移動は多いようです。CRPは上昇までタイムラグがWBCより大きいので、そこを頭に入れて使うのならある程度役に立つと思います。

 そういった検査項目を含めた予測のスコアリングとしては有名なAlvarado scoreがあります。

・右下腹部に移動する腹痛:1 point
・食欲不振:1 point
・嘔気:1 point
・右下腹部の圧痛:2 points
・反跳痛の存在:1 point
・37.3度以上の発熱:1 point
・WBC>10000:2 points
・好中球75%以上の左方移動:1 point

 これは4点以下なら恐らく白、5-7点は灰色、8-10点なら黒にかなり近いというもの。子どもと女性では特異度が下がってしまうようです。5-7点の患者さんにはCTを行っておくべきとする報告が、対象が子どもですがあります(Decreased use of computed tomography with a modified clinical scoring system in diagnosis of pediatric acute appendicitis; Arch Surg. 2011 Jan;146(1):64-7.)。

 エコーについて少し。先述のように、虫垂は人によって長さも走行も随分とバラエティに富んでいるため、それが症状の非典型例の多さと診断の難しさにつながります。エコーもその煽りを受けて、なかなか難しい(CT and US in the diagnosis of appendicitis: an argument for CT; Radiology. 2010 Apr;255(1):3-7.)。特に研修医であれば感度はだだ下がりと意識しておくべし。エコーの診かたを図で示しておきます。

虫垂炎エコー
(クリックで拡大)

 CTは感度特異度共にほぼ90%を超えるようですし、単純CTでもその値を出せるようです(CT and US in the diagnosis of appendicitis: an argument for CT; Radiology. 2010 Apr;255(1):3-7.)。十分な読影技術があれば…だと思いますが。自信がなかったり発症早期であったりという条件なら造影のドアを叩くことに抵抗はあまり感じないかもしれません。でも所見は読めるようにしておきましょう。

 虫垂炎は、実は自分も大学6年の時に発症しまして。根性で治そうと思ってたんですがあまりの痛みに耐え切れず、入院しました…。手術で無事に治りましたよ。不思議なことに術前も術後も全くCRPが上がらなくて、担当の先生はカルテで「謎だ」というようなことを書いてました。ちなみに自分の虫垂炎の原因は


都こんぶ


 でした。。。(恥)

 ちょうど虫垂のところに詰まっちゃったみたいで。それ以来、怖くて都こんぶを食べてません…。

 虫垂炎になった頃は卒試のシーズンで、病棟から神経内科の卒試を受けに教室に点滴棒をガラガラ引っ張りながら行ったのが良い?思い出になってます。
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2014
02.15

キャラクターシリーズ:おさるの仲間

 久々のノベルティグッズ。大塚製薬さんはムコスタ®のキャラクターとして”ムコさる君”(全部カタカナの”ムコサル君”かもしれません)を展開しており、エビリファイ®にはなんとサンリオのシナモロールにお出ましいただいております。

 ちなみにムコさる君の尻尾は☆マークになっていますが、これはムコスタというお薬の名前に由来してます。ムコstarっていう発想らしいですよ。

 さて、そんなムコさる君にはお仲間がおりまして、名称不詳ですがひよこちゃん。

ひよこ1

 ムコさる君に良いように遊ばれている気もしないではないですが…。コロコロっとね。

ひよこ2

 そんな感じで、医者はボールペンに困りません(無くすことも多い)。でも自分はシャープペンシルを良く使いまして。本を読んでる時とかは「おっ」と思ったところに線を引くんですが、それはいつもシャープペンシル。ボールペンって実はあんまり好きじゃなくてですね。原則として消せないっていうのが何か緊張感をもたらし、ゆったり出来ません。修正液あるじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、アレは修正と言えるのかどうか。。。真っ白になってしまってそれも目立つような気がしてなりませぬ。

 ちなみに、ストラテラ®のボールペンは4色+シャープペンシル機能も付いており、これは重宝してます。ほぼシャープペンシルとして使っている実情。個人的には、ボールペンはお腹いっぱいなのでシャープペンシルが欲しいです。もらってる身分で何を贅沢な…と言われそうですが。。。
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2014
02.13

主婦手湿疹の治療

 以前にも主婦手湿疹の記事を挙げたことがありますが、今回はそれにちょろっとプラスしております。

 手荒れは女性の大敵。主婦手湿疹は洗い物をする主婦の皆さんの職業病かもしれません。洗剤なんかで手の脂が落ちてしまって、ガサガサになってしまいます。脂分は毛嫌いされますがとても大事なものでして、皮膚の防御の役割をしっかりと果たしてくれますよ。手を洗いすぎたりとか洗顔しすぎると逆に良くない。多くの皮疹は脂分を落とし過ぎることも悪化の要因です。名前は”主婦”手湿疹ですが何も主婦の方々に限ったことではなく、美容師さんなど手を良く洗って皮脂を落とすことが多い方々の手はその傾向が強いです。

 自分の外来に、うつ病で来ている女性がいました。他の先生からの引き継ぎだったんですが、寛解状態を保っておりお薬をゆっくりと減らしていきましょうか、という感じの状態。引き継いで2-3回目の外来の時、患者さんの手がガッサガサになっていることに気付きました。

自分「あれ、この前は気づきませんでしたけど、手、どうしたんですか?」
患者さん「あ、洗剤に弱くて。皮膚科通ってるんですけどあんまり良くならないんです」
自分「何かお薬飲んだり塗ったり?」
患者さん「皮膚科でアンテベート(very strongのステロイド)をもらって塗ってるんですけど…。他にクリームを塗っても良くならないんです」

 なるほど。そうでしたか。主婦手湿疹はワセリンで湿潤を保つのが治療のメインでございまして、ステロイドはそんなに出番がないような気もします。皮膚科の先生には申し訳ないですが…

自分「これは乾燥が一番悪くてですね」
患者さん「はい」
自分「ワセリンってありますでしょ。アレをしっかり塗るのが大事なんですよ」
患者さん「ワセリンですか?」
自分「口に入れても目に入れても大丈夫なものですから安全。手が乾燥しない様に、1日に3回くらい塗りこむと良いですよ。安いし」
患者さん「はい」
自分「あと、寝る前もしっかり塗りましょう。お布団とかがベタベタになるので、綿の手袋をしてカバーします。これで結構良くなってくるはず」
患者さん「分かりました」

 ということで、ワセリンも処方。あと1つ、重要な質問をします。

自分「ちょっと思い出してもらいたいんですが、生理の前とか痒くなったり悪化したりしませんか?」
患者さん「生理ですか?あ、そういえばそうですね。痒くなってイライラしてそれで掻いちゃいます…」

 にやり。

 この質問は女性の手湿疹には大事なもの。「そんなことないと思います」というお返事でも「次の生理が来る前に、ちょっと注意してみて下さい」とお伝えしておきます。

 この患者さんは返答が「Yes」だったので、加味逍遥散を2包処方しました。これはすぐ効くことはないんですけど、数か月気長に飲んでもらうと段々と良くなってきます。しかもその患者さんは月経前にイライラするとのことで、加味逍遥散は合いますね(柴胡と山梔子の作用)。

 そして更に

自分「手のガサガサには亜鉛が良いんですよ。サプリでもありますでしょ」
患者さん「はい」
自分「気が向いたら飲んでも良いと思いますよ」

 ということで、亜鉛のサプリメントもオススメ。医者が処方箋切って出すものではポラプレジンク(プロマック®)という胃粘膜保護剤。1錠に17mgの亜鉛が含まれているんです。

 次の外来は2週間後としました。結果は…?

患者さん「随分と良くなりました」
自分「おー、良いですね。この前は結構白くなってましたもんね」

 好感触でございます。今度は1ヶ月後。

自分「あれ?少し悪化してますか?」
患者さん「ワセリンを塗るのをちょっとさぼっちゃって」
自分「良くなってくるとちょっと忘れちゃいますよね」

 ということで、しっかり塗ることが大事。更に、加味逍遥散に四物湯(血虚用の漢方薬。女性の内分泌機能を整えます)を2包プラスしました。

 2週間後。

自分「あ、良いですね」
患者さん「はい。だいぶ良いです」
自分「塗ってますか?」
患者さん「はい」
自分「忘れずに塗ると手に優しいですよ。漢方薬も飲めてますか?」
患者さん「はい。大丈夫です」

 ということで、以降もそれを続けて手湿疹は改善したわけでございます。

 まとめとしては、主婦手湿疹の治療はワセリンによる湿潤環境を保つことが最も大事です。そして、月経の関与がありイライラもしてるなと思ったら加味逍遥散は時間がかかるものの有効なことが多いです(イライラなしなら逍遥散でしょうか)。亜鉛も良いですよ。

 さて、それ以外の漢方薬では、ガサガサ系なら十味敗毒湯が結構効きます。自分はちょっと多めに出しますが(4包を朝夕食後あたりに)。ただ、十味敗毒湯は少し痒みを抑える力が弱いので、痒みが強かったりガサガサの中にも少しジュクジュクしている部分があるなら、少し消風散を足します。赤くなって痒い!というのなら黄連解毒湯、むくみが強くてなお赤いのなら、越婢加朮湯を足します。漢方薬を2剤以上使うことを否定する先生もいますが、自分は生薬の組合せを考えて必要があれば併せます(考え方の違いですね)。

 この辺りの武器で勝負。なかなかひどい全身の湿疹とかアトピーとかは苦手で治療成績は芳しくないんですが…。どうも自分は皮膚科関連の漢方治療は他のに比べてまだまだ甘い。
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2014
02.10

失言失言

Category: ★精神科生活
 外来ではご家族が診察に付き添う場面に遭遇します。初めて会うご家族だと関係性が分からないこともあります、もちろん。

自分「えーと、お父さん、ですかね…?」
ご家族「はい」

 そんな感じ。しかし、手痛い失敗も多いものです。

自分「んー、えーと、お母さん、でよろしかったかしら…?」



ご家族「いえ、姉です」



 やべっ…。

 一瞬の沈黙がまた重い。何とか挽回しようとして

自分「あ、いや、ほら。大人びて落ち着いてらっしゃったのでつい(汗)」

 という取り繕いもあまり意味をなしません。

 そんなこんなで、判断に迷った時は魔法の言葉。


自分「お姉さんですか?」


 仮に相手がお母さんでも”若く見られる”ということは日本においてマイナスになりません。妹さんでも”お姉さんっぽく見える”というのは明らかなマイナスにはならないと考えています(どうでしょうか)。

 という、日常的なヒトコマでございました。
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2014
02.06

認知症を理解するための本

Category: ★本のお話
 高齢社会ということもあり、認知症患者さんはこれからもどんどん増えてくると思います。今の日本は、認知症の半分がアルツハイマー型、20%くらいがレビー小体型、同じく20%ほどが脳血管性、残りの10%を他の認知症(前頭側頭型など)が占めると言われています。ただ、前頭側頭型認知症は20代での発症もあり、その時点では統合失調症や双極性障害や境界性パーソナリティ障害などと誤診されることも多いようで、それを考えるともうちょっと多いのかもしれません。

 そんな認知症は「ボケれば何も分からなくなるから良い」と誤解されることもあります。酷い言葉を浴びせたり、排泄の介助もしなかったり、虐待じゃないかと思ってしまうようなことをされる患者さんも残念ながらいます。でも、患者さんがたは”何も分からない”なんてことは決してありません。確かに、具体的な「いつ誰と何をしたか」という認識の概念は崩れていくことが多いのですが、感情的な部分はしっかり残ります。

 娘さんと旅行に行ったことを忘れても、こころのレベルでは何かが残ります。人と人の間にただよう空気と言うか雰囲気と言うか、それは彼らの中にも生きています。それを理解しながら認知症のかたとお付き合いしていくのが重要です。

 同じく、いわゆる周辺症状も”単なる問題行動”ではなく、彼らの”やむにやまれぬコーピング(対処行動)”という視点を持つことがとても大事になってきます。彼らがどう生きてきたか、そして今どう生きているか、それを含めたその人固有名詞のコーピングです。現実の彼らの能力と「こうしたいんだ」という理想との間には、大きな隔たりがあるでしょう。その隔たりを埋めようとあがく仕草が周辺行動として現れます。でも悲しいことに、その対処はなかなか対処になってくれず、周りから”問題”と認識されます。

 更に、介護するご家族はかなり疲弊しています。介護は決してきれいごとではなく、周辺症状をコーピングと理解してもそれで重しがすべてなくなるわけではありません。でもほんの少し、少しでも「そういう事情があるのだろうか」と思えたら、これまた少し目線が変わってくるかもしれません。その少しがひょっとしたら患者さんを取り巻く”人と人との間”を柔らかにしてくれるかもしれません。

 医者を含め医療従事者はそれを”技術”として身につける必要があります。周辺行動を必要以上のお薬で抑え込むことは彼らのあがきを挫き、生きる意欲まで収縮させてしまうかもしれません(お薬自体を否定しているわけではありません。大量に使うことを否定しています)。

 彼らの生きてきた道や現在の状況をとらえ、今の行動の由来を考える。この様な見方がスタッフには求められましょう。ということで、その道の先駆者であった小澤勲先生の本は、認知症に携わる医療者なら必ず読んでおくべきものと思っています。画像なんかの本も大事だけれど、私たちが診るのは認知症を抱えた、固有名詞としての患者さんです。「痴呆老人からみた世界はどのようなものなのだろうか。彼らは何を見、何を思い、どう感じているのだろうか。そして、彼らはどのような不自由を生きているのだろうか」ということをトコトン考えた先生。

 読みやすいものとして岩波新書の『痴呆を生きるということ』があります。来し方を見ながら患者さんのケアに当たる姿は一読に値します。その続編が『物語としての痴呆ケア』でして、この2冊は是非。医療者は必読。文系的な医者なら『痴呆老人からみた世界』をしっかりと読みましょう(これらは痴呆→認知症の用語改正がなされる前の本なので”痴呆”という言葉になっています)。

 また、実は当事者用の本も編集されていて『認知症と診断されたあなたへ』というのもあります。患者さんへの説明としても非常に優れているため、医者はこれも読んで”伝え方”を知っておくことをお勧めします。黒川由紀子先生が寄せた最終章は、じんと来てしまいます。他にも2冊出版されていますが、どれも読みやすいので全部読んじゃうのもアリ。

 そのような態度は大前提として、薬剤についても正しい使い方が求められます。高齢者はかなり少量の抗精神病薬でも副作用が出ますし、抗認知症薬の怖さも知って使わないと大損害をもたらします。エビデンス的にはコリンエステラーゼ阻害薬はどれも似たり寄ったりとされていますが、臨床経験的にドネペジル(アリセプト®)は非常にクセのある薬剤です。患者さんを興奮させますし、錐体外路症状も出やすいし。これを知らないと副作用を副作用と思わずに症状像悪と考えてしまいます。ドネペジルで興奮して、それを症状が悪くなったと思ってリスペリドン(リスパダール®)で抑え込もうとしたら副作用で転んで大腿骨折ったり飲み込みが悪くなって誤嚥性肺炎になったり…。そこまで行かずともリスペリドンの副作用を軽くしようと今度はビペリデン(アキネトン®)を使って認知機能低下に拍車がかかることも。ドネペジル使ってビペリデンも使うとか、もう何をしたいのか分からないヘンテコ処方です。

 薬剤の適切な使用は肝に銘じなければいけません。脳に作用する薬剤を使う訳ですから、中途半端な知識では弊害を生みだしてしまいます。暴れてどうしようもないからという理由で精神科病院に送られる認知症患者さんもいますが、自分がまず行うのは薬剤の中止です。特にドネペジルが入っていたら優先的に切ります。それで改善することも実に多い。

 そういったお薬の専門的な使い方は小澤先生の本に書かれていませんが(認知症の本を書かれたのが1998-2006年なので。小澤先生は2008年に亡くなられています)、ケアの本質を貫いた姿を見ることができますし、それこそ医療の原点なのだろうと感じます。

 繰り返しですが、認知症診療に携わる医療従事者なら必ず読むべき本と考えています。学生さんも是非! 若いうちからケアの温かさに触れておくことは、今後の医者人生に豊かさをもたらしてくれるでしょう。

痴呆を生きるということ (岩波新書)痴呆を生きるということ (岩波新書)
(2003/07/19)
小澤 勲

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物語としての痴呆ケア物語としての痴呆ケア
(2004/09)
小澤 勲、土本 亜理子 他

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認知症と診断されたあなたへ認知症と診断されたあなたへ
(2006/01)
小澤 勲、黒川 由紀子 他

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2014
02.04

がぶっとえほう

 昨日は節分でした。もともと大阪ではこの日に”丸かぶり寿司”を食べるという行事がありましたが、ここ10年くらい(?)で一気に全国に広まったような記憶があります。自分が南下してきたのも一因かもしれませんが。要因の大部を占めるのはコンビニとかスーパーとかが消費活性化のためにイベントにしたということなのでしょうが、太巻きは好きなので良しとしましょう。”恵方巻き”という名称はセブンイレブンが広めたそうです。

 最近はロールケーキとかお菓子業界もそれにあやかっておりますね。去年は病棟の看護師さんのご機嫌伺いとして、ワッフル専門店であるR.L(エール・エル)の恵方巻きワッフル(福くるくる)を献上いたしました。結構好評でしたよ。ちなみに、こういう袖の下的なモノ(甘いものの差し入れ)が病棟の雰囲気を悪くしない方法の1つかも知れません(←邪道)。

 で、昨日は成城石井に寄って、ちょっと高かったんですが買ってみました。”本ずわいがに恵方巻き”でございます。

えほう1

 ずわいがにが入っているとのこと。プラスチックトレイの大きさに比べて恵方巻きそのものが小さいように見えますな。あ、お値段は990円!でした。成城石井は全体的に価格が張りますね。雰囲気が高くしているというかなんというか。チーズケーキはコンクな味でたまに買ってますが、高いなーと思っちゃいます。

 さ、そんな恵方巻きさんですが、”丸かぶり”の趣旨から外れるものの、切って中を見てみましょう。

えほう2

 矢印部がずわいがにさん。バラバラに解体して確認するのは見た目が汚くなるのでやめておきます。

 で、がぶっと食べてみたんですが…。



普通だ…



 もっとこう、かにさんの味わいが広がってくるかと思ったんですが…。他の具材の甘さが強くて、かにが入っているのかすらも良く分からないものでした。風味を消すような味付けはよろしくないですな。もったいない。

 コンビニとかで海鮮恵方巻き買ったほうが良かったかなーと思った一日でございました。
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2014
02.02

弛緩型の神経因性膀胱には…

Category: ★精神科生活
 入院してきた80歳代の女性。「お腹が張って苦しい」とのこと。以前にイレウスになったことがあったので、今回もそれかしら…?と思っていたら、看護師さんから「先生、尿閉じゃないですか? 前にも同じような患者さんがいて、総合病院に行ったら膀胱ぱんぱんでしたよ」と。

 なるほど。そうかもしれない。患者さんを診ないで医者が物事を言っちゃいけませんな…。ということでベッドサイドに行くと、確かにお臍よりも下がぽっこりと膨れています。Sapira先生の診断学の本にそういえばそんなのが…。

 ということで導尿をしてみましょう(エコーないんですよ、勤めてる病院)。すると、出るも出たり2L! こんなに膀胱って膨らむんですね…。おむつは少し濡れてたんですが、これは溢流性の尿失禁だったのか。

 その患者さん、尿意が全くないようで。神経経路の問題で、尿意を感じずかつ膀胱が収縮することなくずっと拡がって尿が溜まってしまうこの状態を、弛緩型の神経因性膀胱と言います。治療はなかなか厄介でして…。

 まずは薬剤性を疑って全部切ってみたんですが全くの空振り。これはホンマもんや! 弛緩型の神経因性膀胱の代表的な治療薬としては、ジスチグミン(ウブレチド®)やウラピジル(エブランチル®)などがあり、これらを使ってみましたが、全然…。困ってしまって、とある総合病院の泌尿器科の先生に紹介状を書きました。受診の結果、器質的な原因は見つからず、かつ残念ながら治療も無理だろうと。

 あれ…。看護師さんにはずっと導尿を毎日してもらっていて、何か泌尿器科受診で解決策があれば良いねーって話をしてたんですが、残念な結果(バルーン留置は細菌感染が怖いので行わないです)。

 ぬぬ、仕方ない。望み薄だが漢方を使ってみようか。自信ねぇなおい。

 弛緩型の神経因性膀胱は、膀胱の筋肉がたるんたるんになっているという点、そして神経反射が低下している点の2つがあります。ということで、筋肉の引き締めを狙う黄耆・升麻・柴胡、神経反射を改善する地黄・牡丹皮・山茱萸・山薬を使います。かつ、この患者さんは陽陰両虚っぽい。

 ということで、補中益気湯と八味地黄丸の合方! まずは1日2包ずつで開始。

 使ってみて、2週間。


全く変化なし


 あれ…。

 しかし翌週。


尿意復活!


 でもまだ出ない。

 更に2週間後。


出た!


 少しずつですが出ました! 導尿を挟みながらですが、確実に少しずつ出てきましたよ。

 それからは自分でトイレに行く頻度が増えて、改善改善。良かった。これ外したら次何使うかは全くノーアイディアだったので、助かりましたよ(せいぜい増量するくらい?)。しかしながら完全復活ではなく、2-3日に1度は導尿も必要でございました。

 その後は施設に行かれたので経過は分かりませんが、やはり排尿があった時は嬉しかったですね。でも最大の功労者はずっと長いこと毎日導尿をしてくれた看護師さん。お疲れさまでございます。

 今回使った補中益気湯と八味地黄丸の合方ですが、これは八味地黄丸の地黄が胃に障って飲みづらい、という患者さんにも有用です。補中益気湯が地黄の作用をマイルドにしてくれますので。単剤処方にこだわる先生もいらっしゃいますが、自分は生薬レベルで考えるタイプなので複数の方剤を同時に使うことに抵抗はありません。ただ、エキス製剤なら出来あいなので余計なものが加わるという欠点は存在します。例えば、エキス製剤の抑肝散に芍薬を加えたいけど、芍薬だけなんてのは不可能なので、桂枝加芍薬湯を合方せざるをえない、など。その余分なものには十分な配慮が必要でしょう。
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