2013
10.26

覚書その6~防衛機制って何なんだ?

Category: ★精神科生活
 前章はブラックジャックになってしまいました。。。前にちょろっと防衛機制のことをお話しましたが、それは抑圧を基礎とした高次の防衛機制と分裂を基礎とした低次の防衛機制とに大きく分かれますよ、というものでした。今回はこれを少し詳しく見て行きましょう。この覚書では、精神分析の知識について発達理論、防衛機制、人格構造、転移/逆転移を主に取り上げています。これらは相まって患者さんを理解するための知識となりますから、堅苦しいでしょうがお勉強。精神科やるなら臨床に役立つものとしてこれくらいは知っておきたい、というものをピックアップしています。

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 防衛機制は“あいだ”がほどよくない時、抱えられないものに対する意識的/無意識的なコーピングととらえることが出来るでしょう。その抱えられないものをどう処理するか?というのが防衛機制によって異なります。ここではそれぞれの防衛機制の説明はしませんが、基礎となる分裂抑圧の説明をしましょう。

防衛機制

 前者は、悪いところも良いところも含めて1つの関係性なんですよ、というのを認識できなくなること。そのため、“良い”“悪い”という2つにパキッと分裂させて物事を判断しちゃいます。この説明は前にも見たことがあると思いますが、この分裂を基本とする“低次”というのは、早期の乳幼児の発達段階で働いている防衛機制であることを意味し“原始的”とも表現されます。投影同一視、原始的理想化、脱価値、攻撃化などなど。ということは“高次”というのは発達が進んだ防衛機制ということですね。後者の抑圧は、嫌なものを無意識の中によいしょと押しこむ防衛機制で、これは理解しやすい。

 低次のものは概して行動や言葉でも稚拙なものに現れます。上手く伝えられず、行動や稚拙な言葉として嫌なものを追い出すということ。子どもはそもそも追い出しをする存在。その追い出しにお母さんが試行錯誤してverbalとvocalで返してあげる事で、追い出しはコミュニケーションになります。でもお母さんがそれを出来なかったり子ども側で受け取れなかったりすると、追い出しは追い出しのまま。嫌なものを出す手段として、“低次”の防衛機制として残ってしまいます。特に“投影同一視”という防衛機制は重要視されています。これは嫌なものを相手に押し込めて、相手にその嫌なものがあるような感情を抱かせることを指します。自身の嫌な“あいだ”に相手を引きずり込んでしまう感じですね。実際の精神科臨床を理解するために大切な概念。

 高次なら良いのかって言われると、そうでもないのが困っちゃうところ。防衛機制は高次のものを上手に使いこなせば良いんですが、低次のものを連発するとか高次のものでも1つだけをどんな時にも使っちゃうなど柔軟性に欠けて硬直しているとかだと、一時的には患者を守るものの長期的には厳しいものになってしまうことが多いです。ひずみが生じ、コーピングとして用いているはずがいつの間にか不適応となってしまうんです。でも患者さんはそれに頼らざるを得ず、悲しい努力の表れでもありますね。。。

 防衛機制の種類や分類は様々ありますが、ここではヴァイラント先生の分類を覗いてみましょう。彼は防衛機制を4つのレベルに分けています。細かい説明はしません。低次から高次に進んでいくんだなと漠然と思っておきましょう。

 レベル1が精神病的防衛。最も原始的で5歳くらいまでの子どもなら普通に用いるもの。分裂はもちろんのこと、否認や歪曲や投影(投影同一視)や原始的理想化などなど。

 レベル2が未熟的防衛。3-15歳くらいの子どもが良く用いるもの。心気症、行動化、解離、退行、取り入れ、理想化などなど。

 レベル3が神経症的防衛。成人でも使われます。抑圧をベースとして置き換え、反動形成、知性化、合理化、身体化などなど。

 レベル4を持ってきたのがヴァイラント先生の特色だと思っています。このレベル4は成熟的防衛と言われ、健常人、多くは12歳以降に見られます。この防衛は“意識して”行われるもので“社会の中での自身”を見据えていくために重要なものであります。またレベル1-3を制御する役目も果たします。これを上手く使いこなしていくことが、心身ともに健康に過ごすためのキーとなりましょう。抱えられない辛い出来事がある時、意識してこのレベル4を使わないとレベル1-3に下がってしまって、コーピングが非適応に転じてしまいます。私たちの現実的な目標としては、このレベル4を使えるようになるということと言っても良いかもしれません。

 このレベル4には抑制、利他主義、ユーモア、予想(感情を伴ったリハーサル)、昇華、禁欲、友好、自己洞察、自己表現、補償、同定と取り込み、気分転換があります。少し説明すると、抑制というのは我慢のこと。「おもちゃ欲しい、でも我慢我慢」と、意識に上った状態で自ら抑えること。無意識に行われる抑圧とは異なります。予想(感情を伴ったリハーサル)はイメージトレーニングの様なものと考えておきましょう。禁欲は性的なものに限ったことではなくて、諦めるべき時に諦めるというもの。補償は自身の足りない部分を認識して、他の部分を伸ばしてカバーすること。同定と取り込みは「良いな、素晴らしい」と思ったものを見習うこと。これらも1つだけではなくて、色んなものを上手く使いこなすことが重要です。

 繰り返しですが、防衛機制は抱えられないものに対するコーピング。低次のものが悪いというわけではなく、私たちもそれを使います。ただ、溺れてはいないということ。低次のものばっかり使うのは、後に述べる精神病的人格構造や境界的人格構造の持ち主です。また、高次のものを使っていてもバラエティに富んでいないのなら神経症的であり、いずれ破綻するでしょう。苦しくてもそれに頼らざるをえない様な状況になってしまいます。現実的な目標として、レベル4のものを組み合わせて使えるように練習することが最も大事ということになります。

ヴァイラント

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2013
10.22

教授、来たる

 とあるものをいただきました。

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フードプロセッサー!


 いやはや、めっちゃ捗りますね。何でも刻めちゃうし潰すことだってできちゃうし。レンコンをすりおろすのが従来は結構大変だったんですが、これが来てからは超速です。

 これは、山本電気の”MICHIBA KITCHEN PRODUCT マスターカット”というフードプロセッサー。お掃除も楽だし使い方も簡単。

 ただ、受取には時間がかかってしまって…。平日は家を不在にすることが多く、宅配便のおっちゃんからの不在票が郵便受けに何枚か入っていました。前住んでいたところは宅配ボックスがあったんですが、今いるところは無し。でも宅配ボックスもみんな放っておくことが多いのか、すぐ満杯になっててあんまり機能してませんでした。

 そんな不在票ですが、おっちゃんの商品名記載が秀逸。

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教授来たよ教授!


 プロフェッサーとはまた偉い人が送られてきましたな…。
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2013
10.17

ベンゾジアゼピン系をやめるには?

この記事へのコメントは上限数に達しました。コメント用の記事を用意したので、もしご質問があればそちらにお願いします。
コチラ




☆最初にお読みください!!☆
 多くの方々からベンゾジアゼピン系の減量や中止についてご質問を頂いていますが、記事とコメント欄を参照していただければほとんどの疑問に対する糸口になっています。

 かつ、お薬を減らす量や期間、どの種類を先に減らすか、いま服用しているお薬が多いのか少ないのかなどの個人的なご相談については、患者さんによって千差万別なのでお答えできません! 人によって、また同じ人でも状況によって違いが大きいことをご承知おきください。唯一の正解はないのです。「どうすれば良いですか?」という質問にも「こうすれば良い」とはお返事できないので、ご理解ください。自分はあくまでも例を示すだけであり、その例も記事とこれまでのコメントに記載されています。答えを求めるのではなく、ご自分でご自分なりの答えを探して取り組んでください。

 そして、ご自身で減量中止するのは、孤独な作業なのです。ネットには様々な情報が溢れており、不安を煽るものが多く、孤独も相まって焦りを強めます。そうなると、些細な体調変化も離脱症状ととらえてしまい、暗中模索・疑心暗鬼になってしまい、泥沼に陥ります。自分自身で冷静に”考える”ことを常に意識してください。試行錯誤に耐える考える力が、長い減量中止の過程において求められるのです。その意思を持つことが、減量中止の大前提とお考えください。長期的な視野で、自分自身で用量を修正しながら、じっくり腰を据えて取り組むこと。これこそが求められる姿勢です。

 また、決まり文句で申し訳ありませんが、このような記事やコメントという立場上、減量や中止による不都合(離脱症状など)については責任を負いかねますので、そこはご了承ください。


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 ベンゾジアゼピン系のお薬は慢性的に使用していた場合、「やめよう」と思って飲まくなると離脱症状というのが出てくることがあります。もちろん抗うつ薬や他のお薬もその傾向がありますが、日常的に処方されて日常的に離脱症状を診るのがベンゾであります。今回はその離脱をうまく図ろうではないか、というのが本懐です。あ、ちなみにゾルピデムやゾピクロンなどは”非ベンゾジアゼピン系”と言われていますが、結局は同じ受容体に結合するのでこの記事ではひっくるめてベンゾジアゼピン系にしてます。

●ベンゾを使う時
 どう言う時にこのベンゾを使うのかと言うと、不安が高まった時や、眠れない時、イライラッとした時。これはまさにお酒の作用。くっつく受容体もほとんど同じですしね。だから神田橋條治先生は「慢性酔っ払いになる」なんて表現をされてます。ベンゾでイヤなところは“脱抑制”と言って、抑制のタガが外れて大暴れしちゃうことが稀にあります。思い出すのは、まさにお酒を飲んで暴力的になる人。”酒癖の悪い”人は”ベンゾ癖も悪い”と言えましょう。ハイリスクなのは、同時にお酒を飲んでいたり、大量投与だったり、変性疾患を持っていたり、衝動性がもともと抑えられない傾向だったり、そんな患者さんたち(Jones KA, et al. Benzodiazepines - Their role in aggression and why GPs should prescribe with caution. Aust Fam Physician. 2011 Nov;40(11):862-5.)。

●日本人とベンゾ
 さてさて、日本人はベンゾ大好き国民でして、これはゆゆしき問題です。処方する医者、精神科医もそうですが内科などの開業医さんが結構出してます。で、患者さん側も抵抗なく飲んでまた欲しがることがあります。医者も患者さんもお互い手を取り合って依存をつくっている様な状況で、善良な医者が「依存作るから出さないよ!」と言っても他のクリニックに行って出してもらうなんてのも。依存患者さんの中では、「このクリニックはすぐ出してくれる」という情報が交換されているんだとか…。医者も患者さんも両方がしっかりとお薬に対して知識を持たねばなりませんね。ベンゾは出す人飲む人によって、良いお薬にもなれば悪いお薬にもなります(これはどのお薬にも言えますが)。短期的にもしくは頓用として使うならば、そして”必ず去っていくお薬である”と患者さんに伝えるならば、ベンゾは良い役割を果たしてくれます。ただし、薬剤を使用するということは、開始すべき状況と減量中止すべき状況を知って初めて成り立つものです。それを理解せずに処方するのは御法度だと自分は思っています。

●相手を知る
 そんなベンゾはGABA-A受容体に結合します。GABA-A受容体は19のサブユニット(α1–6, β1–3, γ1–3, δ, ε, π, θ, ρ1-3)から構成されているようで、いわゆるω1受容体はα1サブユニットを含んだGABA-A受容体に対応し、ω2受容体はα2、α3、α5サブユニットを含んだGABA-A受容体に対応すると考えられています。α1サブユニットを含んだ受容体が大脳皮質、脳幹、小脳に広く分布し、α2,3,5サブユニットを含んだ受容体は大脳辺縁系と脊髄に主に分布しています。サブユニットによってその作用は異なるようで、以下に示します。

GABA受容体

 これで見ると、α1サブユニット活性を持つ(いわゆるω1受容体に結合する)と依存性が高まるということが分かります。他には、健忘、抗けいれん、鎮静の作用。α2,3,5サブユニット活性を持つ(いわゆるω2受容体に結合する)と、健忘、筋弛緩、抗不安の作用が出ます。

●分類と半減期 
 ベンゾは抗不安薬睡眠薬として用いられますが、それぞれで半減期の違いで主に分けます。半減期が短いと言うのは作用が残りにくいということでもありますが、ついつい連用してしまってやめづらいということをも意味します。筋弛緩作用についても注意が必要で、その作用があると筋緊張がほぐれてリラックスされるものの転びやすくなります。また、ベンゾはものすごくお薬の種類が多く、どれを使えば良いんだ?と思っちゃいますね。

 抗不安として用いるのはクロチアゼパム(リーゼ®)、エチゾラム(デパス®)、ロラゼパム(ワイパックス®)、アルプラゾラム(ソラナックス®/コンスタン®)、ブロマゼパム(レキソタン®)、ジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)、クロナゼパム(リボトリール®/ランドセン®)、クロキサゾラム(セパゾン®)、ロフラゼパム(メイラックス®)などなど。多いなー。抗不安薬としてのベンゾは大体1-3時間くらいで血中濃度が最高に到達します。半減期で短時間作用型、中時間作用型、長時間作用型、超長時間作用型に分類。

短時間作用型
 クロチアゼパム(リーゼ®)、エチゾラム(デパス®)
中時間作用型
 ロラゼパム(ワイパックス®)、アルプラゾラム(ソラナックス®/コンスタン®)、ブロマゼパム(レキソタン®)
長時間作用型
 ジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)、クロナゼパム(リボトリール®/ランドセン®)、クロキサゾラム(セパゾン®)、クロバザム(マイスタン®)、クロルジアゼポキシド(コントール®/バランス®)
超長時間作用型
 ロフラゼプ(メイラックス®)

 こんな感じですね。もっとありますけど有名どこということで。

 次に催眠鎮静として用いるものを。これらはゾルピデム(マイスリー®)、ゾピクロン(アモバン®)、トリアゾラム(ハルシオン®)、ブロチゾラム(レンドルミン®)、リルマザホン(リスミー®)、ロルメタゼパム(エバミール®/ロラメット®)、ニトラゼパム(ベンザリン®/ネルボン®)、エスタゾラム(ユーロジン®)、フルニトラゼパム(ロヒプノール®/サイレース®)、クアゼパム(ドラール®)などなど、たくさん種類がありますね。半減期でこのように分けられます。

超短時間型
 ゾルピデム(マイスリー®)、ゾピクロン(アモバン®)、トリアゾラム(ハルシオン®)
短時間型
 ブロチゾラム(レンドルミン®)、リルマザホン(リスミー®)、ロルメタゼパム(エバミール®/ロラメット®)
中間型
 ニトラゼパム(ベンザリン®/ネルボン®)、エスタゾラム(ユーロジン®)、フルニトラゼパム(ロヒプノール®/サイレース®)
長時間型
 クアゼパム(ドラール®)、フルラゼパム(ダルメート®/ベノジール®)

 最近はゾピクロンの光学異性体であるエスゾピクロン(ルネスタ®)が新たに上梓されております。この中ではマイスリー®が色んな科で使われますが、以前にも記事にしたように、誤嚥性肺炎や睡眠中の奇異行動や転倒などの報告が最近相次いでいます。”安全な薬”という印象が強いのですが、決してそうではないことが明らかになっています。α1サブユニットにのみくっつくことの弊害が叫ばれています。ということで、自分はマイスリー®をあんまり出さなくなりました。ルネスタ®もちょっと商業主義的な印象があり、費用対効果を考えると好きになれません。

 こういったベンゾを半減期で分類するというのが、離脱を図る上で大事になってきます。

●長く飲むとどうなるの? いつから依存になるの?(この項目は2014年11月に新しく編集してみました)
 ベンゾは筋弛緩作用もあることから転倒や骨折、誤嚥性肺炎のリスクになります。また、長期に服用することで認知機能低下の恐れがあるとされています(Billioti de Gage S, Moride Y, Ducruet T, et al. Benzodiazepine use and risk of Alzheimer's disease: case-control study. BMJ. 2014 Sep 9;349:g5205.)。やっぱり頓服として短期間、というのがベンゾ服用の条件だと思います。この使い方であれば、作用時間の短めな短時間~中時間型でかつ筋弛緩作用の軽いものが適切。連日の服用になってしまったら、長時間型が好ましいでしょう。


c.f. 追記(2015年8月15日)
 ベンゾジアゼピン系の使用は認知症リスクにならないという報告も出ています(Imfeld P, et al. Benzodiazepine Use and Risk of Developing Alzheimer's Disease or Vascular Dementia: A Case-Control Analysis. Drug Saf. 2015 Oct;38(10):909-19.)。なかなかこの分野は決着が付きにくいところですね。


c.f. 追々記(2016年2月8日)
 同じく、認知症との関連性は支持されないという報告がもう1つ出ました(Gray SL, et al. Benzodiazepine use and risk of incident dementia or cognitive decline: prospective population based study. BMJ. 2016 Feb 2;352:i90.)。ベンゾの種類にもよるのかどうか。抗コリン作用の強いものであればどうなのか? ただ、いたずらに「ベンゾは認知症になる!」と声高に叫ぶのはどうやら違うのかもしれません。



 依存については、最初は”不安だから飲んでいた”はずのベンゾジアゼピン系が、いつの間にか”飲まないと不安になる”となってしまっていること多く、それは本末転倒です。依存は毎日服用していれば1カ月ほどで形成されることもあり、8ヶ月では半数近くにも上るとされます(Rickels K, Case WG, Downing RW, et al. Long-term diazepam therapy and clinical outcome. JAMA. 1983 Aug 12;250(6):767-71.)。当然、減量や中断で離脱症状を経験してしまい、それは発熱や頭痛や幻覚や焦燥や聴覚過敏や発汗などなど、まさに“何でもあり”です。減量もしくは中止で精神状態が割りと早めに悪化するようなら、それは離脱症状ととらえておくべきでしょう。窮極的には原疾患の悪化と区別がつかないので、「飲んでいると調子が良いけど減らしたりやめたりしたら悪くなった」と言う時は、離脱症状が含まれていると考えます。

 この記事ではベンゾを扱っていますが、抗うつ薬や抗精神病薬においても、長期使用から一気に減量中止すると”リバウンド(中断症状)”が起こることが知られています。これも記事にしたので参考にしてみてください(→コチラ)。

●離脱をする際の注意
 さ、ここからが本番。離脱の際に重要なのは、”ゆっくり”です。1日の中でもゆっくり、長いスパンで見てもゆっくり。これを心がけましょう。

 また、離脱をする時は”状態が安定している”というのが前提です。苦しい時にトライをして離脱症状が出てしまっては、事態はよりつらくなるでしょう。そこをお間違えなく。そして離脱の際に参考として用いるのが”ジアゼパム換算”です。

ジアゼパム換算

 各ベンゾをジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)に置き換えた場合、どれくらいの量になるか?という1つのモノサシ。『モーズレイ処方ガイドライン』では、この換算を頼りに以下の方法を示しています(この減らし方はかなり速いと思います、個人的に)。

・ジアゼパム換算50mg/dayまでは、1-2週間ごとに10mg/dayのペースで減量
・ジアゼパム換算30mg/dayまでは、1-2週間ごとに5mg/dayのペースで減量
・ジアゼパム換算20mg/dayまでは、1-2週間ごとに2mg/dayのペースで減量
・中止まで、1-2週間ごとに1mg/dayのペースで減量


 換算量によって減量ペースがやや異なっておりますね。最後の方ほど慎重に。それに加えて、使用しているベンゾの半減期を考えながらちょこちょこ減らしましょう。1回減らすのも少し、減らす間隔もゆっくり。繰り返しですが、特に終盤が大事です。「もうすぐでおしまいだ!」と思って焦って減量スピードを速めるのは得策ではなく、終わりにかけて減らす量やスピードをゆっくりゆっくりにしていくのが大事なポイントだと思います。

 ただ、この換算で行なっても離脱症状が出ることは往々にしてあります。人体は画一ではないという証拠でしょうか。なので、そのようなかたはもう少し小刻みに、かつゆっくりと行うのが適切だと思います。1-2週間のペースでは速すぎる患者さんもやはりいらっしゃるのです。1カ月や2カ月というペースで減らすことも多く、ベンゾを全て中止するのは年単位でかかるかも、と思っておいた方が良い場合もなきにしもあらず。ジアゼパム換算は墨守するものではなくあくまで参考です。そこをお間違えなく。

●どうやって減らすのか:純粋に減らす
 ここからは、自分の経験例を交えながらお話しを進めて行きます(例は臨床情報に問題の無い範囲で改変しています)。2つの例を出しますが、1つ目の例はかなりスムーズに行った患者さん。ほとんどの患者さんはこの例よりもかなりゆっくりにした方が良いです。

 半減期の短いエチゾラム(デパス®)1mgを1日3回、計3mg/day(ジアゼパム換算10mg)飲んでいた患者さんがおりました。エチゾラムは結構やめづらいお薬。飲むと”効いた”感じがあって、かつ半減期が短いので、ついつい連用してしまう。その患者さんもそういうクチで、でも「やめたい」と思ってくれたので離脱することにしました。ゆっくりで長丁場とお伝えして、後は離脱症状についても説明。

 半減期の短いベンゾは、血中濃度がひゅっと落ちると離脱症状が出やすい、と考えます。なので、全体的に少しずつ下げていきます。モーズレイ的にはジアゼパム換算1mg/dayのペース、つまりはエチゾラム0.3mg/dayずつですね。この量ですが、どこか1回をドン!とカラッポにするのではなく、朝も昼も夕も少しずつ減らす。例えば夕のエチゾラムを最初になくしてしまうと、朝昼の後は血中濃度が下がったまま。夜に補給されないので大変。よって、最初にお昼を0.25mg減らしてみて、大丈夫なら2週間くらい経った後に朝か夕を0.25mg減らす、そしてその次に残った一方を0.25mg減らす。こんな感じで繰り返していきます。粉でも良いなら、3回それぞれを0.1mgずつ、計0.3mg減らすのも選択肢でしょう(朝昼夕の内服量をそれぞれ0.9mg→0.8mg→…)。血中濃度の乱高下を出来るだけ避けるイメージを持ち、1日の中でもバランスよく、そして長期的にもゆっくりと下げていくのが離脱を上手く図るコツ。

 この患者さんの場合は、お昼を0.25mg減らすことにしました。いちおうお守りとして頓用のエチゾラム0.25mgを少しお渡しして、離脱症状が出て耐えられなかった時に飲むようにお伝え。その後も順調に朝を0.25mg減らす、夕を0.25mg減らす、そして1周したためお昼をまた0.25mg減らす…という風にしました。結局、かなりスムーズに行きその繰り返しで上手く離脱完了(これは上手く行きすぎなくらいです)。自分は離脱症状を経験してないので分かりませんが、これは本当に苦しい。つらい思いをしている患者さんを見ていたら、これは繊細にやらないといかんな…と実感します。でもどんなにゆっくりやっても出ちゃう患者さんはいるんですよね…。何ともかんとも。もし減らして離脱症状が出た場合、我慢できないようであればいったんその1つ前に戻しましょう。そこから仕切りなおして、また減らす時に少なめにしてみること。それを繰り返しながらやっていくのです。例えばエチゾラム0.5→0.25mgで離脱症状が出てちょっと我慢できなければ、0.5mgに戻して落ち着いた後で0.5→0.375mgなど、もうちょっと階段の段差を緩やかにする感じ。

 上記はめちゃくちゃスムーズに行った患者さんですが、今度はもう少し減量幅を小さくした患者さんにご登場願いましょう。ロラゼパム(ワイパックス®)0.5mgを1日2回、計1mg/day(ジアゼパム換算約4.2mg)を飲んでいた患者さん。まずは夕食後のロラゼパムを減らしてみることにしました。朝は0.5mgのまま、夕を0.25mgに減量。「何か調子がおかしいなと思ったら、それは離脱症状だと思います。1週間位で軽くはなると思いますけど、ちょっと我慢ならんなぁと思ったら電話して来てください」とお伝えしておきます。するとその2日後あたりから何となく落ち着かなくなってきて、5日後に予約外受診。ふーむ、と思い、いったん量を元に戻し、その後に朝0.5mg、夕0.4mg(粉末化)としました。そうしたら問題なし。ちょっとこの患者さんはこまめにやった方が良いなと思い直し、朝0.5mg、夕0.4mgを1ヶ月続け、その後に朝0.4mg、夕0.4mgへ減量。それも問題なし。結局1ヶ月に0.1mgずつ減らすことになり、1年ほどで終了。

●どうやって減らすのか:他のベンゾに置換する
 純粋に減らす以外だと、ジアゼパム換算の表を参考にしてジアゼパムやロフラゼプに置き換えます。そして、置き換えたジアゼパムやロフラゼプをゆっくり退いていく。この2つは半減期が長いので極端な離脱症状は出にくいとされますし、自分の経験上もそれは言えると思います。ただ、一度に全部を置き換えるのはちょっと外来だと怖い(自分はしたことありません…)。患者さんも、ずっと飲んでいるパターンを手放すのは怖いものです。“1日3回飲んでいるのが一気に1日1-2回になる”ということに強い抵抗を示す患者さんも少なくありません。なのでこの置き換えは、少し減らしても離脱症状が出てしまう患者さんのために、減らそうと思う量のロフラゼプやジアゼパムを使うとか、後は短時間型のベンゾ離脱の最後の最後でちょっとやめづらくなっている時とかに出番が出てくるものと思っています。

 ブロマゼパム2mgをどうしても減らせない患者さんがおりました。1mgに減らしても「どうにもザワザワしちゃう」ということでダメ。なので、置換法を試みることに。ロフラゼプ1mgをいったん上乗せして1週間後にブロマゼパムを退いてみました。すると、「大丈夫です。何も起きません」と。よしよし、とほくそ笑みながら、今度はロフラゼプを0.5mgに減量し、その2週間後にoffとしました。その際は離脱症状出現せず。

 あと、ちょっと前(2014年5月くらい)からですが、抗不安薬を減らす際にはジアゼパムに置換、睡眠薬を減らす際にはニトラゼパム(ベンザリン®)を主に使うようになりました。まずまずmg数が大きいのと、ニトラゼパムは2mg錠と5mg錠があり、どちらも割線が付いているからというのもあります。これが実に良くて、この2種の剤形を用意すれば、ニトラゼパムで1mgずつの減量が可能です。例えば、フルニトラゼパム2mgをニトラゼパムに置き換えると10mgでして、これから減らす時は、5mg錠1錠と2mg錠2錠を使えば9mgになり、今度は5mg錠1錠と2mg錠を1.5錠にすると8mgに。こんな感じで1mgずつ減らして行けますよ。半減期もまずまず長いので、結構使えるお薬だと思っています。他の剤形で細粒もありますし、それを使えばもっと細かく調節が可能。ロフラゼプをあまり使わなくなったのは、やはりmg数が小さくて微妙な加減がしづらかったということがあります。

●どうやって減らすのか:ベンゾ以外
 ベンゾの置換をベンゾ以外で行われることがあります。以前にも紹介したトラゾドン(レスリン®/デジレル®)ですね。睡眠薬系のベンゾの置換に主に用いられます。睡眠作用と若干の抗不安作用を期待して行われます。自分が前に勤めていた病院ではこの方法も用いていました。

 ちょっといい加減なんですけど、自分のやり方を。種類問わずベンゾを2錠以上飲んでいるのなら、1錠(つくられている最小規格の錠剤:例えばベンザリン®なら2mg)とトラゾドン25mg錠を交換。これで寝られるかどうかをトライ。補助として頓用のトラゾドン25mg錠を少し余分に渡しておきます。寝られなかったら、翌日はベンゾ1錠を減らしたままで、トラゾドンを1錠増やしてもらいます(計50mg/day)。ベンゾを減らすペースはやはり1-2週間が多く、最後の1錠になったら、減らすベンゾはワンクッションとして半錠にしてもらいます(もちろんペースには個人差があります)。そんなのを繰り返していくと何とか上手くいく。トラゾドンは200mg/dayまで使うこともありますけど、患者さんはベンゾを飲んでた時よりも頭がハッキリすると言ってくれます。そこからトラゾドンもだんだん少なくしていきます。ただ、長時間型のクアゼパムなんかだとやはり難しい事が多いですね。そういう時はトラゾドンではなくミルタザピン7.5-30mg/dayを使います。これは半減期の兼ね合い。

 ここで経験例を。トリアゾラム0.25mg、ブロチゾラム0.25mg、ニトラゼパム2mgを飲んでいた患者さん。よーしやめようか、ということになりました。複数のベンゾが入っていた場合、半減期の短いものからやめて行きます。血中濃度のなめらかな動きを考えると、中長時間からやめてしまうと最後がちょっと大変になることがあります。ということで、トリアゾラム(ハルシオン®)をまずターゲットに。0.125mg錠を1錠抜いて、トラゾドンの25mg錠をお渡し。「これで寝られんかったら翌日もう1錠追加で」とお伝えして2週間後。25mg錠1錠で大丈夫だったとのこと。次、トラゾドンを2錠にして、トリアゾラムを中止にすることにしました。「2錠で眠れなかったら3錠ね、2錠で眠りすぎるようなら1錠に戻してね」とお伝え。2週間後、2錠でちょっと眠りが残ったようで、トラゾドン25mgでトリアゾラム中止が終了。次に手を打つのはブロチゾラム。これはニトラゼパムがまだ残っていることも考えて、えいっとなくしてみました。以前に渡しておいたトラゾドンのことをお話しして「1錠で寝られなかったら2錠ね」と念押し。結局、少し寝つきが悪かったようで、トラゾドンが2錠の50mgでブロチゾラムの離脱完了。最後にニトラゼパムです。いきなりなくすのではなく、ニトラゼパムを1mgにしてトラゾドンの調節を患者さんに「やってみてね」とお任せ(主体性を意識させるポイント)。次回の外来では、トラゾドン75mg、つまりは3錠になっていました。最後にニトラゼパムを中止にして、トラゾドンの量もお任せ。すると、トラゾドン75mgのままでニトラゼパムを中止することが出来ました。最もすんなり行った患者さんでしょうか。

 こんな感じでトラゾドン置換を行っています。こうして見るとやっぱりいい加減かしらね…。明確に「このベンゾなら何mgでトラゾドン何mgに対応する」というのが無いので、ちょっと手探り。少し余分にトラゾドンを渡して患者さん自身でしっかりコントロールというのが現実的だと思います。そうすると、患者さん自身が問題に取り組む感じが出てきて、医者からのトップダウンではなく参加型になって良いと思ってます。

 他の薬剤だと作用機序からバルプロ酸(デパケン®/セレニカ®)も候補。2014年の後半あたりから少し使ってみてるんですが、血中濃度を保つような量ではなく200mg/dayや400mg/dayでもそわそわ感やイライラ感が軽減しました。文献上は、ガバペンチン(ガバペン®)やプレガバリン(リリカ®)もベンゾにかぎらず依存症の治療に用いられて成功しています。ただ、この2つは薬物依存の既往歴のある患者さんに用いるとそれ自体がまた依存になることもあります。でも抜く時はガバペンチンやプレガバリンの方が楽な印象。ちょっとプレガバリンはお高いですが。プレガバリンの副作用についてはこちらの記事をお読みください(→コチラ)。

 コクランでは、カルバマゼピン(テグレトール®)の有用性が報告されており、離脱症状の改善に効果的だったとのこと(Denis C, et al. Pharmacological interventions for benzodiazepine mono-dependence management in outpatient settings. Cochrane Database Syst Rev. 2006 Jul 19;(3):CD005194.)。ただ、自分はこの目的での使用経験がありません。酵素誘導もあり、ベンゾ以外にもお薬を服用している場合は少し面倒かなとも思ってしまいますが。

 トピラマート(トピナ®)も依存症の治療で用いられますよ。自分も成功したことがありまして。アルコールとベンゾの依存があった患者さん。トラゾドン100mgとトピラマート50mgで渇望する感じがマイルドになってくれました。ただ、トピラマートは精神症状がどちらに転ぶか分からない部分もあり(改善することもあれば悪化することも)、またふらつきとぼーっとする感じが出てきます。特に高齢者に使うとプレガバリンと同様に転びやすくなったりやや認知機能が下がったり。

 不安症状がメインであれば、あくまでも私見ですがペロスピロン(ルーラン®)の少量(せいぜい4mg/dayまで)を当てておくとずいぶん楽になる患者さんもちょろちょろと。外すことも多いですが…。いちおう、5-HT1A受容体パーシャルアゴニスト作用と5-HT2A受容体阻害作用を考慮しての処方。タンドスピロン(セディール®)なんかよりもよっぽど速やかに効果発現してくれます。

 ラメルテオン(ロゼレム®)もたまーにいい働きをしてくれます。バチッと合う患者さんだとがしがしベンゾを削っていけるんですが、全然効かない患者さんには白旗。ちょっと掴みどころが難しいですし、ラメルテオンではないですがメラトニン徐放製剤を使って統合失調症患者さんと双極性障害の患者さんのベンゾをやめられるかという試験では、残念ながら効果を認められませんでした(Baandrup L, et al. Prolonged-release melatonin versus placebo for benzodiazepine discontinuation in patients with schizophrenia or bipolar disorder: A randomised, placebo-controlled, blinded trial. World J Biol Psychiatry. 2015 Jun 18:1-11. [Epub ahead of print])。新しく発売になったスボレキサント(ベルソムラ®)はどうなんでしょうね??? まだ使用経験ありません(当分は様子見を)。

 あと、漢方も上手くいくことがたまにあり、自分も結構色々やってみています。トリアゾラム0.5mg/dayという結構な量を飲んでいた患者さん。トリアゾラムは高い力価と超短い半減期のため反跳性不眠というのを来たすことがあります。健忘も起きやすい。その患者さんは疲れてても眠れない時があるということだったので、酸棗仁湯6包を渡してトリアゾラムを1錠(0.125mg)ずつ減らしていきました。抗不安としてのベンゾ離脱の際や一般的な離脱症状による不安焦燥にも、柴胡加竜骨牡蛎湯や桂枝加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯(特に柴胡桂枝乾姜湯は冷えがあり潤いのない患者さんに)など軽い鎮静作用のある漢方薬を当てて凌ぐことがあります。生薬で見ると柴胡と芍薬は神経の緊張に効いてくれますし、竜骨や牡蛎というのは安神作用といって不安感や動悸に効果を持ちます。こういったものを含む方剤を使います。ここで注意点ですが、睡眠薬をいじるのは、勤めている患者さんなら次の日が休みという時に行うのが最も無難。寝すぎて遅刻とか、寝られなくて仕事の効率が下がるというのはマイナスです。ちょっと細かいですけど、そういった配慮もした方が良いですよ。


c.f. 追記(2016年5月4日)
 緊張感が強くなってしまった患者さんには、クロニジン(カタプレス®)を使うことがあります(今勤めている病院には採用がありませんが…)。37.5-75μg/dayから始めて、150-450μg/day辺りまで増量します。元々は高血圧用の薬剤なので、使用するにあたって低血圧や徐脈には注意を。合う人にはスパっと効いてくれる感じであり、いかにも「交感神経がずいぶんと強いなぁ」というイメージのある時に使ってみると良いかと思います。



●やる気が一番
 依存の治療は、予測される離脱症状とその期間をお伝えしておくのはもちろんのこと、患者さんのやる気を消さないのが一番大事だと思います。「減らそうと思ったんですけど、ダメでした…」という言葉に対しても「ダメだったけど、減らそうと思えたんですね」と、順序を入れ替えて肯定的な雰囲気を残してお伝え。後は、「言い方は悪いかもしれませんが、これは実験です。実験には失敗はありません。どういう結果になるかっていうデータがとれることにつながります。そのデータを参考にして、また調整していきましょう」というような言い方をしてみることも。失敗したという感情とそれによる自己卑下を出来るだけ軽くして“やろうと思うことがまず前進”という気持ちで取り組むのが一番だと思います。実験精神をしっかり持ち、離脱症状が出てもそれは患者さん自身の唯一無二の貴重なデータです。それを活かしながらゆっくりじっくり腰据えて。


c.f. 追記(2015年6月30日)
 ジアゼパム換算と聞くと、全てをジアゼパムに換算するとイメージを持たれるかたがおられるようですが、そうではありません(記事内容やコメントを御覧ください)。ジアゼパムは抗不安作用の方が強いため、睡眠薬の置換には力不足なことがあります。その時は睡眠薬に分類されているベンゾ(この記事ではニトラゼパムが例)に置き換えます。
 また、抗不安薬と睡眠薬の2つを服用していた場合、どちらから減量すれば良いかという点ですが、原則では、不眠がメインなら抗不安薬を先に減量し、不安やそわそわがメインなら睡眠薬を先に減量します。ただ、これは患者さんによって異なるので絶対ではありません。
 頻繁にご相談を受けるのは「減らしたら離脱症状が出たけどどうしたら良いか」というものですが、離脱症状が我慢出来て日常生活の幅を狭めないのであればそのままキープ、耐えられないようであれば戻す、という2点になります。”戻す”についても、どのくらい戻すかは患者さんのさじ加減です。減量中止の過程で、自分自身で試行錯誤するところが絶対に必要になってきます。
 減らす量も、本当に人それぞれで一概にお答えはできません。個人的にはジアゼパム換算での減らす量とスピードは多すぎ/速過ぎという印象があるため、そこのところは少し差し引いてみてください。

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2013
10.12

何と言えばいいのやら

 健康診断のバイトなんぞをすることがあります。「そういや、健診と検診の違いって何なんだ?」と今さらながら疑問に思ったので調べたら


検診:病気の有無を確認するために行うもの。早期発見早期治療を目的にする。公衆衛生で言う二次予防的。

健診:健康であるかどうかを確かめるもの。病気のリスクを見つけることを目的にする。公衆衛生で言う一次予防。


 へー。全く知らなんだ。。。学生の時に公衆衛生学で勉強したはずなんですよね、たぶん…。

 検診は”がん検診”とかありますもんね。そんなこんなで、本日は検診について。

 がん検診は、コスト面なんかで本当に必要かどうかがよく議論されます。がんの種類とか、または家族歴が濃厚といった部分で強弱を付けて行う必要があると欧米各国で盛んに言われております(日本はそうでもないですが)。がんの中でも、転移もせず死につながらないおとなしいがんも実はいて、そういったがんを早期に見つけて治療するというのはマイナスに傾きます。悪さをしないものを、患者さんの身体に侵襲を加えて取り出すわけですから。

 下記の論文は、がんの種類によって検診がどれだけ意味があるのかしらを調べてます(もちろんデータはアメリカのものですが)。こういったことはどんどんしておかなあかんですね。下部消化管がんと子宮頚がんは検診のベネフィットが大きいので、これには力を入れるべき。


・がん検診
Esserman LJ, et al. Overdiagnosis and overtreatment in cancer: an opportunity for improvement. JAMA. 2013 Aug 28;310(8):797-8.


 ピンクリボンキャンペーンを行っている乳がんは、検診により早期発見がめちゃくちゃ増えましたが、進行期となった状態の乳がん診断数は、実は減少しておりません。下の論文では、新しく乳がんと診断された31%が過剰で、腫瘍そのものが致死的なのかどうかもはっきりしませんという結論。むやみやたらに乳がん検診を推奨するのはちょっと「??」が付きます。


・乳がん検診
Bleyer A, et al. Effect of three decades of screening mammography on breast-cancer incidence. N Engl J Med. 2012 Nov 22;367(21):1998-2005.


 前立腺がんのPSA検診も同じく。臨床的に影響を及ぼさない前立腺がんはかなり多くて、一生おとなしくしているタイプが結構います。下の論文では「前立腺がんを減らすには、PSA検査をやめるか基準値上限を上げなさい」という、ちょっと皮肉の入った報告になってます。


・前立腺がん
Wilt TJ, et al. Prostate cancer screening and the management of clinically localized disease. BMJ. 2013 Jan 29;346:f325.


 なかなか難しいもんです。検診でがんが見つかって本当に”命拾い”した人も中にはいるでしょうし、発見したがんが実は大人しいタイプで、早期発見早期治療がかえって身体的にきつかった(結果的に不必要な医療介入だった)という人もいるでしょうし。うーん。理想的には、がんの種類によって攻め方を変えるべきだと思います。自分の父方の家系は直腸がんが多発してますんで(しかも同じ部位!)、また直腸がん検診は検診のメリットが大きいとされている数少ない(?)検診ということもあり、自分は直腸がんの検診だけはしておきたいですね…。他はいいや、しなくても。

 がんに限らず、CKD(慢性腎臓病)検診や糖尿病検診なんかも「意味無いよ!」という論文もかなり多い。下記参照。


・CKD検診
Moynihan R, et al. Chronic kidney disease controversy: how expanding definitions are unnecessarily labelling many people as diseased. BMJ. 2013 Jul 29;347:f4298.

・糖尿病検診
Simmons RK, et al. Screening for type 2 diabetes and population mortality over 10 years (ADDITION-Cambridge): a cluster-randomised controlled trial. Lancet. 2012 Nov 17;380(9855):1741-8.


 高齢者の骨粗鬆症検診(骨密度測定)も残念ながら意義が薄いのではと言われております。なんとなんと。


・骨粗鬆症検診
Sarah D. Berry, et. al. Repeat Bone Mineral Density Screening and Prediction of Hip and Major Osteoporotic Fracture. JAMA. 2013;310(12):1256-1262.


 過剰診断は不必要な治療/介入につながり、例えばお薬の副作用や生活習慣の見直しによるストレスや患者さんの不安惹起などにつながります。こうやって振り返ると、検診って不必要なものが多いんじゃ…。多くの医者はそう思っていますが、いかんせん行政の方が「やれば良いんや!」みたいな感じになっておりまして、またマスコミが検診大好きですよね…。あれだけ医者嫌いなマスコミが健康番組でわんさか検診を推奨垂れ流し。不思議なもんです。

 ということで、今回挙げた論文は学生や研修医のみなさんは、ぜひ読んでみてください。
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2013
10.08

モノトーンは良くない

Category: ★研修医生活
 1年次研修医の救急勉強会に出てきました。

 身体診察の項目をほぼルーチン化してそれ以外の診察項目をあんまりしないって研修医がいますが、毎回思うんですけどそれは考えて行うことになっておりません。

 主訴や年齢や既往歴などなどの要素があって、そして病歴。これらによっていくつか鑑別診断が湧いてきますから、それに応じた身体診察をすべき(検査もそうですけど)。そこがまだ何ともかんともな研修医がおりますね。

 「あーこういうもんなんだ」と一回分かると後は楽ですが、何度言っても通じないことがあります。

 極端な場合だと、喉が痛くて唾を飲み込むと更に痛くなるというような患者さんに対しても腹部所見や四肢の所見なんかを診る。

自分「何でお腹とか脚とか診たの?」
研修医「ルーチンでやってるんで」
自分「あ、そう…」

 時間に余裕があれば診て悪いことはないですけどね。。。

自分「じゃあ開口制限は?」
研修医「あ、診てません…」
自分「は?(怒)」

 ルーチン以外のこともしましょう。。。それが考える事。

 「みんな弱いなー」と思うのが”強弱をつける”ことだと実感してます。診察が作業になっちゃいかんのですよ。病像の輪郭をハッキリさせるために、意識して行うことが必要です。ぼーっと診察してたら絶対に所見を逃します。”診察はルーチンになった時点で見逃しが増える”と思いましょう。ルーチン以外の特徴的な診察もそうですが、変な話、「所見がある!」と思って診察しないとなかなかキャッチできません。

 心不全の患者さん。

自分「III音は?」
研修医「あ、聴いてません…」
自分「頸静脈怒張はあった?」
研修医「あ、診てません」
自分「…」

 患者さんには失礼ですが、せっかく勉強させてもらえる良い機会なので、ルーチン診察だけじゃなくて重要な診察項目をしっかりと診るクセを付けないと。

 野球でも同じことでしょう。このバッターはスライダーに弱いとか、内角高めの速球は必ずバットが出るとか、そうやって投げる。全てのバッターに対して同じ様な組み立てはしませんよね。バッターに合わせてこっちも変える。

 とある症状から鑑別疾患がA,B,Cと出てくるとします。Aにはαという診察所見があり、Bにはβという診察所見があり、Cにはγという診察所見があることが典型的。更にAにはイという診察所見がなく、Bにはロという診察所見がなく、Cにはハという診察所見がないことが典型的。であるならば、ルーチンの診察も大事かもしれませんが、α,β,γとイ,ロ,ハという診察項目も加える必要があります。こうやって各鑑別疾患での違いを明確にしていかないと(陽性尤度比や陰性尤度比もしっかり覚えましょう)。

 後は診察の方法ですよね。Jolt accentuationのお話を以前しましたが、他の診察も同様。”どんなセッティングでどんな方法で行うか”を知っていないと、診察したことになりませんよ。

 さっきのIII音のお話。

自分「じゃあ、III音ってどうやって聴くか分かる?」
研修医「いや、ちょっと…」
自分「…(もう10月だよ!てかOSCEでやったでしょ!)」

 III音は、心尖部に聴診器を当てますが、膜型ではなくベル型。しかも、そっと軽く当てるように。ベル型を「よいしょ!」と強く当てると、それは膜型になってしまいます。更に、III音はぼーっと聴いていたら聴き逃がすくらいの音なので、「ある!」と思って聴くことが大事。何ていうか、鼓膜に触れてくる感じ?

 鑑別の考え方の基本の枠組みをまずは勉強しないといけません。地味ですけど、やっぱりそれをベースとして理解しておかないとダメでございます。

 1つ、古いですが示唆に富む文献を紹介。

Stiell IG, et al. Variation in ED use of computed tomography for patients with minor head injury. Ann Emerg Med. 1997 Jul;30(1):14-22.

 検査のお話ですが、軽症の頭部外傷患者さんたちに対して、たくさん頭部CTを(ルーチンの様に)撮る病院と狙いを定めて怪しいと思った患者さんに対してのみCTを撮る病院とを比較したもの。なんと、CTのオーダーが最も少ない病院では見逃し例が全くなかったんです!更に、CTをたくさん撮る病院では見逃しが多かったことも記載されています。

 これは、ルーチン化の弊害が如実に現れていると思います。しっかりと強弱をつけて「所見がある!」と気合を入れて読影することで、異常を発見する力が出てきますね。「はい来たー、はい撮ったー、はい読んだー、はい異常なーしご帰宅!」だと、やはり所見を見落としてしまう。診察も同じことでございましょう。

 考える診察、強弱をつけた診察というものがとても大事。そんなお話でした。
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2013
10.04

患者さんに知ってもらう努力を、患者さんも知る努力を

Formoso G, et al. Feasibility and effectiveness of a low cost campaign on antibiotic prescribing in Italy: community level, controlled, non-randomised trial. BMJ. 2013 Sep 12;347:f5391.

 本日は抗菌薬の処方について、上記の論文を紹介したいと思います。

 抗菌薬は本当に必要な場合はもちろん使いますが、いらない時は出さないのが鉄則。でも外来では患者さんが


「風邪なのになんで抗生物質出してくれないんですか!?」


 とか、説明しても果てには


「風邪って言い切れるんですか!? 先生の言うバイキンが悪さする病気だったらどう責任とってくれるんですか!?」


 みたいなことを言うのが決して珍しいものではなく…。自分はそこまで食い下がる患者さんに会ったことはないですが、救急外来などでは良く耳にする出来事です。でも悪いのは患者さんだけではありません。医者側も勉強しない人もそりゃおりまして、細菌感染かどうかを調べることもなくぽいっと簡単に第三世代のセフェム(メイアクト®とかフロモックス®とか…)を出したり、ひどいのになると経口キノロン(クラビット®やジェニナック®)や経口カルバペネム(オラペネム®)を出したりなんかしてます。開業医さんに多いですね…。

 経口の第三世代セフェムはバイオアベイラビリティが異様に低く(大体20%前後)、添付文書の常用量では全く意味を成さないんじゃないかと思います。経口のキノロンが出番になるなんてことは、フツーないですよ。緑膿菌いるの?結核否定できる?経口のカルバペネムに至ってはもう何でこんなのつくっちゃったのとしか言いようがない…。無駄に出すことは耐性菌を産み、更には腸内細菌叢も崩します。もちろんこれらは風邪の原因であるウィルスに効きません。

 仮に細菌感染でも、原因菌を調べる努力もせずに広域を出してしまうというのはもう何と言って良いのか…。もし出してる先生がいたら、しっかりと感染症の勉強をしましょう。昔(と言っては失礼ですが)は感染症について教わる機会が非常に乏しかったようですから、おじいちゃん先生だとしょうがないのかなーとも思ってしまいますが、だからこそ若手がばしっと勉強してこれからの感染症治療を盛り上げていかないとダメですね。幸い良い教科書がたっくさんありますし、現代日本には。若手が頑張ると、中堅の医者もおちおちできません。意見すると「生意気だ」と言う上級医もいるかもしれませんが、ここは絶対に譲れない。それくらいの知識を身に付けて、下っ端から頑張りましょう。

 患者さんへの周知不足、医者の勉強不足、そして製薬会社のゴリ押し宣伝。これらが相まって悪い結果を産みます。製薬会社のMRさんの話なんて信じたらいかんですよ。大規模臨床試験だって製薬会社の資金提供がありますから、まさに批判的に見ないとダメ。世の中には色んな馬鹿馬鹿しい試験があります。

 ちなみにですが、糖尿病の治療薬もおかしいことだらけ。日本ではメトホルミンがあんまり使われてこなかったし、DPP-IV阻害薬が今ものすごく売れてしまってますが、これは不必要なことも多いです。この売上が多いというのが、糖尿病治療がいかに製薬会社に乗っ取られているかを示す好例でしょうね…。2013年9月のNEJMにて、サキサグリプチン(オングリザ®)はプラセボと比べて血糖値は下げますが心血管イベントを予防できず、全体の死亡率は上昇傾向になってしまい、更に心不全での入院は有意に増加。同じDPP-IV阻害薬のアログリプチン(ネシーナ®)も、心血管イベントの発生率はプラセボと同等。前者はSAVOR-TIMI 53 Clinical Trialsという試験で、後者はEXAMINE Clinical Trialsという試験(Scirica BM, et al. Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus. N Engl J Med. 2013 Sep 2. White WB, et al. Alogliptin after Acute Coronary Syndrome in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2013 Sep 2.)。こんなのが売れてるっておかしいでしょ。新薬だからって飛びつかない!製薬会社の提供するデータを信じない!

 さて、そんな前置きをしたうえで今回紹介する論文。これはイタリアで行われた試験です。住民440万人を対象にしたもので、医者と薬剤師さん向けのニュースレターに加えて一般市民の皆様にポスターやら小冊子やら広告やらで「抗菌薬を正しく使おう」と訴えたキャンペーン。イタリアってヨーロッパだから抗菌薬正しく使ってるんじゃない?と思ったら大間違い。ラテンのノリかどうかは知りませんが、結構惨憺たるもんです。同じくアメリカもひどいですよ。”欧米”という幻想は捨てましょう。オランダやドイツはさすがの一流国で、しっかりしてます。

 そんな介入したところ、外来患者さんへの抗菌薬処方率が減少したとの結果(-4.3%)。ただ、住民の抗菌薬適正使用に関する知識は増えなかったようです(なんだそれ)。 とはいえ、処方が減ったのは良いこと。

 ということで、日本ももっと医者側や国側から国民の皆様に向けてドンドン知らせるべき。そして、処方される側の皆さんもきちんと調べる。そういう建設的なお勉強が、良い結果を産むんだと思います。ただ世の中には反医学的な本やサイトもあり、これは混乱を招いてしまいますね…。調べる側も大変だと思います。日本人は国民性かどうかは知りませんが、こういう極論じみたことに無批判にホイホイ乗ってしまう傾向があります。自らしっかりと批判的に色々調べることがとても重要。

 特に反精神医学の本とかサイトとかは、極論を一般論としてとうとうと述べてしまいますね。これを見てると「あらら…」と思っちゃいますし、またそういう本が売れるんですよね。でも火のないところに煙は立たないと言われますから、精神科医も「なぜ反精神医学が跳梁跋扈しているか」を真摯に受け止めねばいかんでしょう。

 それはそうと、適切な判断のもと、抗菌薬を出さないというのはもっともっと評価されるべきこと。人間、勉強しなくなったら衰退は速いですよ。勉強ってのは、他人に騙されないためにするもんです。
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2013
10.02

附録的な何か

 そんなこんなで伊勢→鳥羽の旅行は終わったのですが、いくつか気付いたことを。

 移動は近鉄を使ったんですが、この普通車両の連結部が怖い!見慣れていない方々は「どゆ意味?」と思うでしょうが、写真だとなるほど納得。まずは特急。

PA0_0710.jpg

 ま、普通でございます。お次が問題の普通車両。

PA0_0637_201309171118291db.jpg

 ギザギザこわっ!

 「うがー」みたいな感じで、噛まれそうですよね…。

 で、次、と言ってもこれが最後ですが、鳥羽駅にて。

PA0_0634_20130917111748004.jpg


どこでもチェア~(ドラえもん風に)


 フツーの車いす、ですよね…?

 ということで、以上でございました。





追:どこでもチェアは、無料の貸し出し車いすのことだそうです。
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