2013
06.29

今あるものを大切に

Category: ★本のお話
大人の発達障害ってそういうことだったのか大人の発達障害ってそういうことだったのか
(2013/05/17)
宮岡 等、内山 登紀夫 他

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 大人の発達障害の診断は難しい。いい加減な精神科医だと”治らなければ発達障害”ともしかねません。それは困るのですが、明確で理解しやすい診断の手ほどきがないというのも実情。

 そんなこんなで、上述の本を読みました。

 大人の発達障害については世の中色んなことが言われて玉石混交の洪水状態ですが、この本では基本に立ち返って、診断の基本は”社会性とコミュニケーションとイマジネーションの障害(いわゆる三つ組)と感覚過敏”だとしています。例えば、同年代の友人と上手く付き合えているか、異性との付き合い(独りよがりではなくお互いに満足している?)など。”独我的ではなくて相手の立場に立てるかどうか”ということになりますね。他には、受け答え、口調、表情などにも私たちはいつも以上に注目する必要があります。

 様々な疾患との鑑別についても述べられています。幻聴も、コミュニケーションの障害と聴覚過敏、そして過去を思い出して聞こえているように錯覚するということで”幻聴”と受け取られてしまわれがち。また、本人の興味や関心と密接に関係している傾向にあると解説されています。妄想については、発達障害ではファンタジー的なものが多いようです。妄想の内容もしっかりと聞くことが必要。

 上っ面の症状そのものだけではどうしても無理があります。子供の頃から”三つ組の障害+感覚過敏”があったかどうか。発病前の適応はどうかというのがやはり重要になってきます。

 ただし、成人だと親御さんの記憶が曖昧だったり親御さんが既にいなかったり。幼稚園や保育園時代の担任のお手紙や小学校なら通信簿の担任の言葉などの物的証拠があれば有力ではあるんですが、それも見つからなかったり。。。生育歴や発達歴ばかりが強調されると、大人の発達障害の診断はなかなか手詰まりになってしまいます。

 そこで「なるほどなぁ」と思ったのは、宮岡先生の

発達障害をきちんと診断するコツは、発達障害以外の疾患の精神症状をきちんと聴取できることなのかもしれないですね

 という発言。逆転の発想的で唸ってしまいました。今の精神科医はDSM的なチェックリスト形式に慣れてしまって、症状そのものをしっかりと探るということはあんまりしないですね。そこをしっかりと攻めて、できるだけ患者さんの、西田幾多郎に倣って言うならば”純粋経験”に触れていきたいと言う気持ちを持って問うか。そして、これまで精神病理学が培ってきた症候学と照らし合わせる。統合失調症との鑑別なら、典型的な統合失調症の症状と”ちょっと違う”というのをつかむことが大切になってきます。

 自分は宮岡先生のその言葉を読んで、シュナイダー先生を思い出しました。

統合失調症っていう診断は、一級症状が揃って、かつ他の疾患が除外されて初めて”控えめに”つけなさい

 これですよね。シュナイダー先生のこの言葉は、症状の織り成す綾をしっかりと見ていくことの重要性をびしっと教えてくれます。”一級症状それすなわち統合失調症”では決してありません。

 他にも、この本ではうつ病や双極性障害との鑑別にも触れていて、そこもしっかりと症状を踏み込んで理解していく姿勢が必要だと繰り返し説かれています。ごもっともだなぁと納得。

 対談ですから読みやすくて、良い本だと思います。ちょっと頭がすっきりしてきますよ。
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2013
06.25

おとしあな

 少し前のことですが。。。

 自分はスーパーで買い物をする時、値引きがなされているものを見てお夕飯を考えることが多いです。最初からメニューを決めて買いに行くことをせず、何となく漠然と。

 いつも近くのイオンで買います。値引きのシールは目立ちますね。こんな感じ。

PA0_0615.jpg

 ただ、このうなぎの蒲焼きさん。値引き率がハンパじゃありません。


「なんだなんだ、30%offくらいあるのか?」


 いえいえ、そんなモンじゃありません。


「お、じゃあ最大下げ幅の50%offかっ!?」


 はっはっは。そんなアナタ、笑ってしまいますわ。


 お見せしましょう。




PA0_0616.jpg




0.63% off!



な、なんだってー!


 1580円が何と10円引きの1570円!安い!



 ふざけてんな。
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2013
06.21

位置、を考える

Category: ★研修医生活
 研修医の後輩に昔はたまに言っていたんですが、救急外来では患者さんが横になるベッドに実際寝てみることをオススメします。

 ホントにぐーぐー寝るということではなく、また実際に疾患で運ばれて寝るということでもなく、救急外来でちょろっと時間が空いた時に、寝てみてください、ということ。

 なぜかというと、患者さんからの視点を持ってもらうためなんです。

 患者さんが横になっている。医者はそばに立って問診する。これは医療者側にとってはありふれた風景ではあります。でも患者さん側からすると…?

 訳のわからないことが自分に起こってこうして救急外来のベッドに横になっている。採血や点滴も行われる。白衣を着た人が複数いる(しかも研修医だから若い→不安)。これからどうなるんだろう?そんな先行きの見えない感じがありますでしょう。

 その上、医者から覗きこまれるように問診されると言うのは、結構「おっ」となります。なので、一度は同期と一緒になって、ベッドに寝て同期に問診をされてみてください。上から聞かれるっていうのは、圧迫感があるんですよ。勝手知った場所でかつ同期ですらちょっとそんな感じがあるのに、いわんや馴染みのない病院かつ知らない医者をや。

 外来をやっていると、患者さんの椅子に座ってみるとこれまた視点が変わります。同期の外来で患者さんがいなくなった時を見計らって、ちょろっと患者さんの椅子に座ってみましょう。ちょっと新鮮で緊張。

 そういう経験を早めにしておくと、少し対応を変えることが出来ます。救急外来ではこっちも座って目線を下げて話をする、待合でも座ってる患者さんにはしゃがんで話す、もしくは腰をかがめて話す、外来では自分の椅子の高さも調節する、小さなことですが大事なこと。

 今回は、医者としてのテクニック以前のお話。1人の人間と相対する時の心構えみたいなものでしょうか。そんなのも大事にしていきましょう。
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2013
06.18

アスピリンでうつ病予防?

Category: ★精神科生活
 研修医向けの輸液レクチャーでもお話ししましたが、血管内皮細胞を守るというのは炎症を考える上で欠かせない概念です。この内皮細胞が障害されることで炎症性サイトカインがどんどこ産生されて、炎症が炎症を呼んでしまいます。この炎症というのは、厄介なものです。

 そして、炎症は精神疾患にも関わってきます。特にうつ病は急性炎症とは異なる脳の”慢性炎症”によるタイプがあるのではないかと言われていまして、C型肝炎に対するインターフェロンによる治療でうつ病になる患者さんもいます。実際、うつ病の患者さんでは、炎症性サイトカインの血中濃度が上昇しているというデータも。

 炎症を防ごう、という観点での治療選択肢として、例えばω-3脂肪酸(エパデール®)の増強があります。スタチン系はうつ病の予防に働く可能性が示唆されており、それは血管内皮細胞の保護をしてくれるためではないかとも考えられています。個人的には血管内皮細胞を守るというのは、炎症を和らげるという意味である群のうつ病に対しては予防や治療にも働くのではないかと考えています。サルポグレラート(アンプラーグ®)とかベラプロスト(ドルナー®/プロサイリン®)の増強なんかやってみると面白いんじゃなかろうか。比較試験を行なってみたいですね。統合失調症は、昔からその患者さんはリウマチになりにくいと言われており、免疫異常が大きな役割を果たしていると考えられています。脳という一部分の免疫異常が、身体全体の免疫異常を防いでいるのかもしれません。

 そしてちょっと前ですが、アスピリンがうつ病の予防になるのではないかという論文が出ました。

Almeida OP et al. Aspirin decreases the risk of depression in older men with high plasma homocysteine. Transl Psychiatry 2012 Aug 14; 2:e151.

 これは血管内皮細胞が障害された時のマーカーとして考えられている血漿中総ホモシステイン(tHcy)に着目しています。tHcyの高値は、心血管疾患や脳卒中、そしてうつ病のリスクと関係があるのではないか?と言われておりまして、今回の論文は高齢男性に対してアスピリンとビタミンBの使用、うつ病、tHcy値との横断的な関係性を調べています。

 結果、tHcy高値はうつ病のリスク上昇でした(OR 1.60)。ただ、tHcyが高くてもアスピリンを服用していた人ではうつ病のリスクが低かったとのことです(OR 0.57)。ビタミンBは意味がなかったようです。

 ”tHcyが高くてもアスピリンを服用していた人ではうつ病のリスクが低かった”というのが解釈として難しいところです。tHcyが本当に血管内皮細胞の障害を直接的に見ているのか、という疑問もあるでしょう。また、tHcyが高くてもアスピリンが何らかの作用でその下流をブロックすれば、血管内皮細胞は守れます。後は、血管内皮細胞が障害されても、そこからの炎症に歯止めをかけているとも考えられるでしょうか。

 NSAIDsは色んな報告があります。効くと言うのもあれば効かないというのも。アスピリンはNSAIDsとは異なり、体内で分解されたサリチル酸が転写因子のNF-κBを抑制すると言われているんです。なんと。他にもICAM-1の発現や平滑筋細胞の増殖を抑制し、T細胞の内皮細胞への接着、そしてT細胞上のL-セレクチン発現も抑制しちゃいます。また、血管内皮細胞に発現される受容体LOX-1は、血管内皮細胞の障害や炎症、血栓の形成を押し進めます。アスピリンは驚いたことにLOX-1 mRNAとLOX-1の蛋白レベルを抑制しちゃいます。何このアスピリン無双。やっぱこれかしらね。このブラックボックスな感じが興味をそそります。

 アスピリンは抗血小板作用に加えて血管内皮細胞保護、ひいては広汎な抗炎症作用で効いてくるんじゃないか、と邪推しております。

 アスピリンは昔々の薬で、知られていない作用がまだ沢山あるのではないでしょうか。COXに依存しない作用でがんの抑制にも効果があるというのが最近話題になりましたし(Borthwick GM, et al. Therapeutic levels of aspirin and salicylate directly inhibit a model of angiogenesis through a Cox-independent mechanism. FASEB J. 2006 Oct;20(12):2009-16.など)、うつ病を慢性炎症という視点で捉えるならば、アスピリンを始めとする炎症をマイルドにする薬剤は今後治療において何らかのキーとなってくれるのでは、そう思っています。昔の薬、という点では三環系抗うつ薬も同じといえるかもしれません。最近のSSRIとは異なる不可思議な作用により、三環系は今でも治療抵抗性うつ病の治療には使われます。その作用の1つにはサイトカインを抑制するメカニズムも知られているんですよ。

 精神疾患治療の時代は慢性炎症の抑制!と考えています。統合失調症は免疫異常と思っていますが、その連鎖の先にはアストロサイトやミクログリアの異常が示唆されており、脳内で慢性炎症があると考えられています。抗精神病薬にCOX-2阻害薬の増強をかけるというのもありましたね。ミノサイクリンの増強も神経保護や抗炎症作用という点から行われます。精神疾患の原因の1つとして炎症をきちんと意識したい、と考えています。
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2013
06.16

ロールプレイ

 昨日今日の2日間で、緩和ケア研修会に行って来ました。昨日は14:00~21:00で、今日は9:00-17:00でございます。

 自分は去年この研修会に出て修了していたので、今回はファシリテーターとして参加(裏方みたいな)。去年とはちょっと違った角度から眺めることが出来ました。

 とは言ったものの、この中にある”ロールプレイ”はやっぱりイヤですね…。医者役とか患者さん役とかにわかれてがん告知や麻薬導入の練習などをするんですが、そんな模擬練習が大嫌いでして。同じロールプレイでもドラクエなんかのロールプレイングゲームは好きです。

 参加者の皆さんが行なっているのを眺めて、去年の思い出が蘇って来ました。イヤだったなぁ、アレは。必要なことだというのは分かっております。でもやっぱりね…。

 色んな科の先生方が参加されているので、話し方や伝え方がそれぞれ味がありました。そういった意味では新鮮。 
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2013
06.13

NSAIDsを再分類??

 自分が研修医なりたての頃は、NSAIDsの一般認識として



COX-2阻害薬は心血管リスクを高める!



 というものがありました。古典的なNSAIDsはCOX-1もCOX-2も阻害しますが、COX-2阻害薬はCOX-2を選択的に阻害して胃腸障害を起きにくくした進化版として市場に出たのであります。ただ、自分が学生の時にアメリカでロフェコキシブの自主回収事件が起き(2004年)、COX-2阻害薬は心血管リスクを高めるんだね、新しいものは怖いね、という認識でした。COX-2阻害薬は”コキシブ系”と言われ、日本ではセレコキシブ(セレコックス®)が販売されています。ただ、最近は非選択的阻害の古典的なNSAIDs、すなわちジクロフェナク(ボルタレン®)やイブプロフェン(ブルフェン®)などもそれなりに心血管リスクがあるじゃないか!?とも言われているようです。2013年のLancetから。

Coxib and traditional NSAID Trialists' (CNT) Collaboration. Vascular and upper gastrointestinal effects of non-steroidal anti-inflammatory drugs: meta-analyses of individual participant data from randomised trials. Lancet. 2013 May 29. pii: S0140-6736(13)60900-9.

 重大な冠動脈イベントでは、COX-2阻害薬もジクロフェナクもイブプロフェンも増加。脳卒中なども含めた重大血管イベントでは、COX-2阻害薬とジクロフェナクが増加。イブプロフェンはぎりぎりセーフ(RR 1.44, 95%CI 0.89—2.33)。ナプロキセン(ナイキサン®)はどちらも増加させませんでした。

 消化管の有害事象は、COX-2阻害薬も古典的なNSAIDsも増加。ナプロキセンが断トツで、イブプロフェン、ジクロフェナクと続いて、最後にCOX-2阻害薬。



 ふーむ、これはどうしたものか。古典的なNSAIDsも意外と多いんですね、心血管イベント。でもその中でも薬剤によって異なる。考えてみると

COX-2阻害薬と古典的NSAIDsという分類

 これそのものがあまり通用しないんじゃないでしょうか!←大胆

 と思っていたらですね、重大なヒントになる論文が既に2007年に出ていました。

Antman EM, et al. Use of nonsteroidal antiinflammatory drugs: an update for clinicians: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 2007 Mar 27;115(12):1634-42.

 そこでは、COX-2阻害がこのような感じになると図で説明されています。

cox-2阻害
(クリックでちょっと拡大)

 血小板はCOX-1しか含みません。このCOX-1がアラキドン酸をTXA2という凝固や血管収縮の作用を持つエイコサノイドに変換します。このTXA2は血小板のCOXでつくられる主なもの。アスピリン®はここを攻めるので、抗血小板作用を持ちますね。しかし、COX-2を選択的に阻害すると、内皮細胞によるプロスタサイクリンの産生を相対的に減らしてしまいます。血小板の方は元気いっぱい。このアンバランスが心血管イベントのリスクをもたらすのではないか、ということ。

 こういったことと、上述の試験結果を考えると、以下の図が導かれます。

cox-1, -2
(クリックでちょっと拡大)

 COX-2阻害薬も古典的NSAIDsも一列に並べて、COX-1とCOX-2の阻害度合いで考えてみよう、というもの。こう考えると、非常に納得出来ますね。これこれ、これが言いたかったんです。

 COX-2阻害が強いと心血管リスク、COX-1阻害が強いと消化管リスク。ナプロキセンはほぼCOX-1阻害ですね。COX-1阻害薬と言っても良いくらい。ジクロフェナクはCOX-2も結構阻害しますね。COX-2阻害薬のセレコキシブと同じくらいでしょうか。

 以前、セレコキシブを売っている製薬会社(アステ○ス)の説明会で、ジクロフェナクを比較に出してMRさんが「NSAIDsよりも心血管リスクが高いなんてことはありません!胃腸障害も少なくて良いんですよ!」ということを言ってましたが、これはジクロフェナクの特性を理解した巧妙なセールスと言えましょう。要するに”ジクロフェナク=NSAIDs”という一般的なイメージが医者にはあります。しかしその実、ジクロフェナクはNSAIDsの中でも心血管リスクを起こしやすい部類。その起こしやすいものとセレコキシブを比較したに過ぎないんですよね。うまいもんだ。しかもジクロフェナクの使用用量がかなり多かったような気が…?なので、その説明会では「NSAIDs全般ではなくて、あくまでジクロフェナクとの比較ですよね」と意地悪く聞いたらMRさんは「はい…」と答えてました。

 ということで、今回はCOX-2阻害薬も含めたNSAIDsの再分類を紹介しました。スッキリ。



 オマケですが、ナプロキセンはちょっと不思議なNSAIDsでして、腫瘍熱(悪性腫瘍による発熱)の判定に”ナイキサン®テスト”として用いられることもあります。他のNSAIDsではあんまり下がらないような熱で、ナプロキセンを使ってスッと下がったら、それは腫瘍熱の確率が高い!というもの。けっこう昔にその有用性が指摘されています(Chang JC, et al. Utility of naproxen in the differential diagnosis of fever of undetermined origin in patients with cancer. Am J Med. 1984 Apr;76(4):597-603.)。その理由としては、他のNSAIDsと異なる分子生物学的な特徴があるからのようです(Motawi TM, et al. Evaluation of naproxen and cromolyn activities against cancer cells viability, proliferation, apoptosis, p53 and gene expression of survivin and caspase-3. J Enzyme Inhib Med Chem. 2013 Jan 31.)。
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2013
06.11

正しいセッティングと診察方法を勉強しましょう

Category: ★研修医生活
 今日は月に1回行われる研修医の朝の勉強会がありました。どんな因果か自分は研修医が終わってからも参加していて、色々と意見をいう役ではあるんですが、勉強にもなりますね。

 さて、その中で研修医が頭痛患者さんに行ったJolt accentuationという診察。髄膜炎の除外に用いられる有名なものであります。

 Uchihara先生らによって最初に報告されていますが、これは



救急外来にwalk inでやってきた発熱&頭痛の患者さんに用いるもの



 ということを忘れちゃいけません。このセッティングを忘れると、期待される感度と特異度(感度97.1%、特異度60%)は出せません。上述の報告ではnが34と少ないのが問題。追試は行われているみたいで、そこではn=190とまずまず。しかし意識障害などの患者さんも含めており、本来のセッティングではありません。ちなみにそこでは感度6.06%、特異度98.9%という全く逆の結果。あらあら…。ちょっと解釈に困りますね。

 どんな患者さんに行うものか、というのは診察や検査を行う際はしっかりと意識しましょう。診察前確率や検査前確率というのを考えないと、せっかく行なっても有用性が薄れてしまいます。

 あとは、方法!

 その研修医に「どうやってやるか、方法分かる?」と聞いたら、返ってきた答えが



できるだけ速く頭をブンブン振る




 これじゃいかんですよ!




 全く正しくありません。そんなんなら頭痛のある患者さん全員が陽性になってしまって、診察の意味がなくなっちゃいます。自分も頭痛持ちですが、頭が痛い時に思いっきり振ったら痛みが強くなるに決まってますよ…。常識を持ってくれ。1年次だったから静かに指摘しましたけど、2年次がそういう回答をしたら怒ってましたよ、あたしゃ。

 正しい方法は”1秒間に2-3回くらいの速さでイヤイヤをするように振る”です。そんなに速くないので、これを間違うとダメダメ。

 結構多いんですよ、jolt accentuationの方法を知らない研修医(上級医でも…)。これまで返ってきた答えは上述のものや、ただ「頚を適当に横に振る」とか「あ、知りません…」でした。そんないい加減なもんじゃいかんって。

 これに限らず、いつも行なっている診察や検査のエビデンスについては

・どういう時に行われているのか
・どうやって行われているのか
・どこで行われているのか
・なんのために行われているのか
・誰が誰に行なっているのか

 というところまで理解しましょう(5W1H的な)。さもないと特性が生かされません。エビデンスの数字だけが一人歩きしてしまっては、意味が無いんですよ。

 ということで、今日は真面目なお話。研修医の先生方は勉強してくれているので、もうちょっと詰めてやると更に良いですよ。




☆参考文献
Uchihara T, et al. Jolt accentuation of headache: the most sensitive sign of CSF pleocytosis. Headache. 1991 Mar;31(3):167-71.
Waghdhare S, et al. Accuracy of physical signs for detecting meningitis: a hospital-based diagnostic accuracy study. Clin Neurol Neurosurg. 2010 Nov;112(9):752-7.
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2013
06.10

やらかした

Category: ★精神科生活
 医局で秘書さんと雑談。

自分「なかなか最近は身体の調子が悪くてですね」

秘書さん「先生いっつも疲れた疲れた言ってますよね」

自分「なんかだるいんですよねー。患者さんの調子も悪くなってるんじゃないかって思っちゃいますよ」

秘書さん「あんまり良くないんですか?」

自分「そうなんですよ。この前の患者さんもなかなか良くならんくて」

秘書さん「女性ですか?」

自分「そうですよ」

秘書さん「若いんですか?」

自分「いや、若くはないですよ。40近かったと思いますけど」




秘書さん「そーなんですよね。40近いってもう若くないんですよね(怒)」




あ、やっちまった…




註:その秘書さんはギリ30代です。

自分「いやーはっは(汗)。年齢なんてホラ、社会的なものと違いますし、一概に若いとか若くないとかはその時代の要請によってうん、違いますからね、だからなんて言うのか、さっき言ったのは精神科的に若い患者さんというと10代とか20代前半とか」

秘書さん「そうですよね、若いって言うとやっぱりその辺りですよね」

自分「…(やべぇ)」

 誘導尋問ですか。。。

 ということで、やっぱり女性と話す時は細心の注意を払いましょう…。
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2013
06.07

イヤなものはイヤ

Category: ★精神科生活
 本日、講演をして来ました!



 と言っても、前座ですけどね。



 病診連携のお偉いさんのお話があったので、ついで的な?でも一応は特別講演扱いにしてくれました。

 前座はある意味楽で、突っ込みどころがあっても、聴いてくれるみなさんも気を利かせてか温かい目で見てくれます。

 そんな環境下、自分は統合失調症の急性期治療について、精神病理学と薬理学とエビデンスとを結びつけるという無謀(?)な試みをしました。中井久夫先生を引用して、かつWFSBPや急性期で薬剤を使用した文献などを眺めました(Hatta K, et al. Olanzapine orally disintegrating tablet vs. risperidone oral solution in the treatment of acutely agitated psychotic patients. Gen Hosp Psychiatry. 2008 Jul-Aug;30(4):367-71.など)。上手く行ったかどうかは不明ですが。。。

 内容としては以下の様な感じ。

 統合失調症親和的な人々は、持ち前の微分回路的認知で生きています。でも、その能力が社会の要請と上手くかみ合わなかったために、現実認識の失調をきたします。ごく僅かな変化を先取りしてしまい、それ故にちょっとしたノイズにも大きく振り回されてしまいます。そうなると体験から“偶然”が消えていき、何らかの危険な“意味”を持って迫って来ます。それぞれの物事がそれぞれの危険な意味を持ち、それが頭のなかでざわめきます。すると、意味にふりまわされ、また別の意味にふりまわされるという状況に。

 これは傍から見ると支離滅裂な振る舞いとなり、錯乱状態となります。その中にいる患者さんはいかに恐怖に満ち満ちていることでしょう。私たちの統合された世界の認識・意味が音を立てて崩れていきます。

 我々が目にする幻聴や妄想などは、その中で患者さんが現状を何とかしようと奮闘した産物なんです。どこかでざわめきを安定させなければ、なんとか収拾を付けなければ、そのような努力の果てに創りだした対処。外から聞こえる声になってくれれば、頭の中の恐ろしいざわめきではなく、外部の世界からのものとして意味付けできます。自分を保つためには、内部にある未曾有の恐怖を外に位置づけねばなりません。

 ということは、陽性症状(幻覚・妄想)は患者さんが紡ぐヴェールです。何の配慮もなくヴェールを払うことは、患者さんを恐怖に直面させることになります。陽性症状そのものに深く切り込むよりも、陽性症状を柔らかく解きほぐしつつ、かつより生理的な鎮静(静穏)を施すことこそ重要なんだと思います。恐怖を緩和することが、結果的に安心して陽性症状を緩める準備のできる状態をつくると考えられます。

 そういう基礎知識的なところと、急性期に用いられる薬剤のエビデンス、そして”静穏”を目標にした薬剤治療を組み合わせてお話ししました。

 でも講演というのは何回やっても慣れないもんですね。もともと多くの人を前にするのが苦手なので、ドッキドキでございます。自分も静穏が必要ですわ。

 で、今帰ってきておそうめん(揖保乃糸!)でも茹でて食べようかしらと思っています。今日は当直開けでしてね、サスガに疲れました。
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2013
06.05

炎症とRDW

 RDW(red cell distribution width)は赤血球の大きさや形のバラつきを表す指標で、標準偏差の様なものです。この値が大きいと赤血球の大きさや形に均一性がなくて、大小いろいろとありますよというしるし。救急外来的には、正球性貧血でかつMCV正常で、更にRDWが正常範囲であれば「あ、やばいかも…」と思ってしまいます。つまりは急性出血でHbが下がっている!という推測をします。正球かつMCV正常でもRDWが大きければ「鉄欠乏…?」と何となく思います。臨床症状によりますが。

 自分は研修医の時、救急外来をメインにしていました。RDWについては他の活用というのをあまりせず、貧血の原因を追及する時に役立つものだな、という認識くらいでした。

 しかし最近、このいRDWが色んな疾患における予後不良因子になり得ることが分かってきたのです!なんとなんと。

 特に鉄欠乏やビタミン欠乏や葉酸欠乏などがない状態での高値というのが危険。どんな疾患かと言うと、例えばそれは心不全の患者さん、IPF(特発性肺線維症)の患者さん、がん患者さん、グラム陰性桿菌菌血症の患者さん、腎機能障害の患者さん。。。実に多くの疾患において予後を見るためのマーカーとして有用だと言われ始めました。

 さらに、病気をしていない一般の人を対象にした研究でも、RDWが高いことと心血管イベントとの関連性が指摘されています。

 何で赤血球の大きさや形のバラつきがそんなに強力な予後因子になるのか?ということですが、端的に言うと、RDWの高値は


”じりじりとした炎症状態があり、それが赤血球の成熟を阻害してしまう”


 ということを示す様です。先ほど例として出したグラム陰性桿菌菌血症では、死亡の独立した予測因子で、特に72時間時点で計測されたRDWは全死亡を予測するかもしれない、といわれています。ということは、ベースラインでの慢性炎症のみならず急性炎症でもその効力を発揮するのでしょうね。

 いわゆるchronic diseaseには、その根底に”慢性炎症”の関与が指摘されています。それはうつ病の一部でも言われています。うつ病の治療で、フルオキセチンにアスピリンを噛ませたらすごく良くなったよ!という報告もあるくらい。ω-3脂肪酸やスタチンもそうですよね。ひょっとしたらRDWもうつ病の例えば治療抵抗性のマーカーに使えるかも…?ヒマがあったら研究してみたいですね。

 なにはともあれ、慢性炎症というのは現代の疾患を理解するには欠かせないコンセプトです。急性炎症が大事なのは言うまでもありませんが。漢方ではいわゆる”体質改善”という言い方をして気長に飲んでもらうタイプのものがあります。八味地黄丸、温清飲系や防風通聖散(一貫堂処方)、補中益気湯などなど。こういうのは慢性炎症を抑える作用が指摘されていて、昔の体質改善はここをポイントにしていたのかと思っています。

 RDWというのはルーチンで検査室が測ってくれることも多いですが、貧血以外はあんまり見向きされなかったもの。これからはしっかりと見つめて、炎症の度合いを推し量る指標として役に立つかもしれません。

 こういう研究こそ、臨床に直結するものですよね。実行しやすいこと、そして安いこと、さらに昔からあるもの。そこにスポットライトを当てるというのは素晴らしい。新しいマーカーとかはお金もかかるし設備なんか大変なことも多いです。マッシー池田先生(池田正行先生)の意識障害患者さんにおける血圧と脳血管障害との関連性もそうですし、EBV感染症のリンパ球数と総白血球数の比もそうですし、行き渡ったもので予測するというのがとても格好良い。地味に思う人もいるかもしれませんが、これこそ大事にしたいセンスだと感じています。

 

☆参考文献
Nathan SD, et al. The Red Cell Distribution Width as a Prognostic Indicator in IPF. Chest. 2012 Dec 13.
Ku NS, et al. Red blood cell distribution width is an independent predictor of mortality in patients with gram-negative bacteremia. Shock. 2012 Aug; 38(2): 123-7.
Demirkol S, et al. Red cell distribution width: A novel infl ammatory marker in clinical practice. Cardiol J. 2013;20(2):209.
Ujszaszi A,et al. Renal function is independently associated with red cell distribution width in kidney transplant recipients: a potential new auxiliary parameter for the clinical evaluation of patients with chronic kidney disease. Br J Haematol. 2013 Mar 27.
Seretis C, et al. Is red cell distribution width a novel biomarker of breast cancer activity? Data from a pilot study. J Clin Med Res. 2013 Apr;5(2):121-6.
Chen PC, et al. Red blood cell distribution width and risk of cardiovascular events and mortality in a community cohort in Taiwan. Am J Epidemiol. 2010 Jan 15;171(2):214-20.
Ikeda M, et al. Using vital signs to diagnose impaired consciousness: cross sectional observational study. BMJ. 2002 Oct 12;325(7368):800.
Wolf DM, et al. Lymphocyte-white blood cell count ratio: a quickly available screening tool to differentiate acute purulent tonsillitis from glandular fever. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2007 Jan;133(1):61-4.
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2013
06.02

滝川一廣先生

Category: ★精神科生活
 本日は、滝川一廣(たきがわ かずひろ)先生のご紹介。何でイキナリ!?と思うかもしれませんが、精神科医になりたての若手にとって、先生の本は実に助けになってくれるのであります。精神科の特色として精神病理とか精神分析とかありますが、若手が気軽に読める代物では残念ながらありません。それなりに基礎知識を付けてからじゃないと厳しい。。。自分も苦労しました…。でも滝川先生の本は若手でも読める!しかも患者さんへの愛情あふれる!こんな先生になりたいもんです。

 さて、先生は木村敏先生と中井久夫先生をお師匠さんとして持ちます(このお2人は日本を代表する精神科医)。人間学的精神医学の色合いがあり、おヒゲがダンディ。児童青年期がご専門です。精神科の重鎮の本というのは、予備知識があってもなくても読んでいて難しいなぁと感じ、読み終わったら「何か頭が良くなった気がしたけどこの本の中身は良く分からんぞ」ということが往々にしてあります。しかし、この先生の著作は全てが理解しやすいです。難しいことを分かりやすく言ってくれるので、混沌とした精神医学の中で灯台になってくれるような存在。「他の先生も勿体をつけずにこれくらい分かりやすくしてくれれば良いのに…」と愚痴ってしまうくらいに読みやすい。また、精神科の診断という行為について慎重であり、常に診断される側に立ち、その人への人間としての理解を忘れない先生です。

 近年何かと話題になる発達障害ですが、滝川先生は発達障害の本質を精神発達の歩みの遅れであるとし、図のように提示してくれています。

精神発達

 精神発達とは、関係(社会性)の発達と認識(知的理解)の発達の2つの軸が支えあってなされるものであり、私たちはZの矢印方向に沿った楕円の部分(大体は平均辺りに分布するので)にいます。そして、関係発達が平均水準かその近くにありながら、認識発達が平均に大きく達さないグループを“精神遅滞”、認識発達も関係発達も平均に大きく届かないグループを“自閉症”、認識発達は平均もしくは平均以上にあるも、関係発達が平均に届かないグループを“アスペルガー症候群”、“自閉症”と“アスペルガー症候群”の間に位置するものが“高機能自閉症”となっています(DSM-5でアスペルガー無くなりましたが)。ここで滝川先生が強調しているのが、正常発達を含めてすべては精神発達のスペクトラムにあって、 互いにつながりあい、線が引けるもんじゃないということ。“発達障害”という“診断”は人工的で 任意なものであるため、その範囲だっていくらでも広げられちゃいます。過剰診断が問題視されていますが、その線引きは社会的なところでなされてしまいます。現代社会は対人関係の能力が求められ、いわゆる職人気質は不適応とみなされがち。そういう人たちが発達障害というラベルをペタッと貼られてしまうと言うのが現況です。

 よって「発達障害とは社会の関数で、 私たちの社会のありようとその社会を生きる私たちの姿を映し出す鏡」(松本雅彦編集.発達障害という記号. 批評社: 2008) と先生はおっしゃいます。自閉症スペクトラムというのは決して自閉症圏の中でのスペクトラムではなく、正常発達との間でのスペクトラムなんです。ただし、そうは言っても幅があるので、その人がどんな世界を生きているかと言うのを理解して、そして援助を考える必要があるでしょう。

 滝川先生の本を読むと、診断と言うのは単なる分類だということに気づかされます。誰のためにするのか、何のためにするのかをしっかりと考えて、目の前の患者さんには何が必要なのか、そのためにその患者さんの人間としての有りようを理解すべきだと思います。精神科の原点ですよね。

 著作は分かりやすいものばかり。初学者なら『子どものそだちとその臨床』や新書で一般向けである『「こころ」の本質とは何か』から始めてみて、『新しい思春期像と精神療法』などに進んでいくと良いのではないでしょうか。イチオシの先生です。

 若手の皆さんはぜひ読んでみてください。精神科にめちゃくちゃ興味ある研修医の先生もどうぞ。

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