2013
04.25

レントゲン戦記

Category: ★精神科生活
 ある高齢の入院患者さん。

 当直で夜の回診をしていたら、看護師さんから


Ns「○○さん、痰が最近多いんですよ」


 内服薬の中には免疫抑制剤が入っていました。痰以外に症状はなし、呼吸数や心拍数も正常範囲内、一応聴診を(久々に)してみるも特に異常な音は聞こえず。


うーん。。。


 免疫抑制剤ってのがなぁ。しかもお年寄りだから症状は非典型でもおかしくないし…。肺炎だったらイヤだよね。どうしようかな。。。



よし!レントゲン撮りましょう!(夜だけど)



 レントゲンで分からない肺炎もあるけど撮るに越したことはないし、ここで撮っておけば後日撮った時の比較にも使えますし。

 看護当直さんにその旨を伝えると


Ns当「あ、先生。技師さん水曜日しか来ないですよ。しかも夜間はいつもいないです」


は?


 あれ、じゃあ撮れないじゃないか。ちなみに4月から自分が勤務している病院にはCTもMRIもありません。検査といえば心電図と脳波とレントゲンのみ。血液検査も病院の中では解析できず、全部外の機関にやってもらってます。

 撮れないなら仕方ないかなと思っていたら…


Ns当「先生、そういう時は自分でちょちょいと」



なんと!?



 まさかそんな時が来ようとは。。。大学病院で研修していたもんですから、自分でレントゲンの機械をいじって撮るということをしたことがなくてですね。


自分「え、私がやるんですか?他の先生ってやってます?」

Ns当「いや、してないですね。でも確か今日の事務当直のHさんがやり方を知ってるらしいですよ」

自分「なんと、それは奇遇ですな。て、なんで知ってるんですかね」

Ns当「技師さんがやってるのをじーっと見てたみたいです」

自分「ほー・・・」


 ということで、自分と看護当直さんと事務当直さんの3人で、胸のレントゲンを撮ろうという作戦を決行することに。

 レントゲンのお部屋に患者さんを案内して、そこからは3人とも説明書とにらめっこ。そして主電源を探し当てるのに5分かかりました。。。でもさすがに事務当直さんは頭1つ出ていました。

 何だかんだで準備が出来て、映す機械(素人的発言)を患者さんの良い具合の位置に決めて。。。


自分「こんな感じですかね」

事当「あ、良いんじゃないですか」

Ns当「それらしくなってきましたね」


 そして遂に…。


Ns当・事当「では、先生」

自分「うむ」


 スイッチを手渡される自分。何となく技師さんっぽく


自分「○○さーん、大きく息吸ってー。はい止めて!」



 そしてスイッチをやや長押しすると


ピッ


 お!撮れたんじゃない?音がしましたよ。

 カセッテというらしい板を現像機みたいなのにかけると、パソコンの画面上に…。



キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!



3人「おー!」



事当「出来ましたね先生!」

自分「これで技師さんになれますよ!」

Ns当「もうじゃあ先生24時間常駐しちゃいましょうよ!」

自分「外来やめてレントゲン室にこもりましょうかね!」





 もう夜です…。




 大の大人が3人揃って歓声をあげてしまいました。。。

 ま、でも無事に撮れて写真に変な影もなかったし、ひと安心。

 すごく新鮮な体験をして、また1つ新しいスキルを身に付けたのでした。もーレントゲンばんばん撮っちゃうよ。
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2013
04.21

生薬から学ぶ漢方

Category: ★本のお話
 胡散臭いと言われ続けている漢方薬。自分は結構使う方でして、本当に劇的に効く患者さんもいることから、大したもんだなと思っています。

 ただ、浅い勉強は絶対にいかんですね。例えば、

インフルエンザに麻黄湯

 というのは最近よく「効きますよー」なんて言われています。でもそれだけ覚えて処方したら、痛い目に会うこと確実。インフルエンザで高熱が出て、汗のどんどん出ている患者さん。こういう人に麻黄湯は禁忌と言って良いでしょう。麻黄湯はガタガタ震えて寒気もして高熱もあって、でも汗が出ていない患者さん用です。麻黄と桂皮の力で汗を出して寒邪を吹っ飛ばすというために作られたもの。汗の出ている患者さんに飲ませたら余計に汗をかいて体力を持っていかれてヘロヘロになります。更に言うなら、飲んで汗が出たらそこで内服をストップさせるのがポイント。

 こういうことを知らないと、漢方薬は薬になりません。効果が出ないどころか害になりますね。特に麻黄なんてのはエフェドリンですから、怖いなぁと思う部分もあります。

 漢方薬は患者さん受けが良いですし、なぜか”安全”というイメージを持たれているのでほいほい出す医者もいますが、やっぱりきちんと勉強して正しいものを出す努力をしなければなりません。

関節痛に越婢加朮湯

 とだけ覚えていたら、おそらく大失敗するでしょう。いわゆる炎症なんかではなくて、変形性関節症で特に冷えると痛むような患者さんにこれ出したら有害無益。

 最低限の知識は知っておきたいところです。妙なクリニックでは「漢方薬は自然のもので副作用もなく安心して飲めますぅ」とかいうフザケタ言い方をしているところもあります。そういうのを堂々と言ってしまうのもどうなんでしょう。漢方薬の怖さを知って初めて使える、と考えています、自分は。「安全だから~」と言ってポンポン出すのはいかがなものか。

 あんまり攻撃するのも品がないのでやめておきますが、漢方薬は薬です。ということは毒にもなります。これを知って、きちんと勉強してから使いましょう。

 よーし、これから漢方使っちゃうよ、という先生は、最初は口訣的な使い方で良いと思います。

汗をかかなくて頚が凝っている様な初期の風邪には葛根湯

 とかそうですね。

不定愁訴に加味逍遥散

 というのも確かに。

ヒステリー球(喉や胸に何か引っかかったような感じ、詰まっている感じ)に半夏厚朴湯

 もまさにその通り。

 そんなキーワードから使ってみるのが分かりやすくて入門にはピッタリ。自分もそれから入りました。使いやすい本としては、新興医学出版社から出ている新見先生の

フローチャート漢方薬治療 (本当に明日から使える漢方薬シリーズ)フローチャート漢方薬治療 (本当に明日から使える漢方薬シリーズ)
(2011/04/24)
新見正則

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 が書名の通りフローチャート式で分かりやすいです。打率の高い順から攻めるという合理的な思考ですね。

 最初は典型的なところをしっかりとやって、効果を実感してみるのが大事。そして漢方を使って効いた患者さんがちらほら出てくると、人間、欲が出てきます。もっと効かせるにはどうしよう?次に何をすれば良いのか?換言すれば打率を上げるにはどうすれば?やっぱりきちんと考えて漢方を処方するには



生薬の勉強



 が欠かせないのではないでしょうか。この漢方薬にはこれこれの生薬が入っていて、この生薬はこういう作用があるからこういった状態に効く。そういうのを勉強すると、広がりが見えてきます。

 その勉強をしたうえでなら、良くやり玉に挙げられる”病名漢方”っていうのも悪くないと思います。「個々の症例を見て漢方を処方するので、漢方医学にエビデンスはなじまない」なんて言っていると、置いてけぼりをくらってしまうんじゃないかしら。漢方もしっかりとエビデンスの土俵に上がって「ほーら効果あるじゃないか」と示すことが、胡散臭さを払拭するためには大事。もちろんサブ解析も付けなきゃいけないでしょうが。『EBM漢方』なんて本もありますが、あの本のエビデンスはちょっと弱いですね。。。エビデンスと言って良いのかどうか。

 もちろん一例を大事にしないとか、症例報告をないがしろにしてるとか、そんなことはありません。漢方の症例報告は面白いですし、参考にしています。でも、それだけだとやっぱり他の医者からは”胡散臭い”と思われても仕方ありません。正当な発言権を得るためにも、大規模な二重盲検試験でエビデンスというのを示す必要があると思っています。

 さて、漢方薬の構成成分である生薬を勉強するには、この本がオススメです。

身につく漢方処方―基本30生薬と重要13処方身につく漢方処方―基本30生薬と重要13処方
(2013/04)
入江 祥史

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 2013年の4月に中外医学社から出た入江先生の本。最初っからこの本を読むと混沌とするかもしれないので、ある程度は口訣的に処方している医者がもうワンランクを願っている時に読むと良いかなと思います。

 この本はずーっと会話調で続くので、そこが中盤から疲れてくるものの、日本の中医学の第一人者である入江先生が分かりやすく解説してくれています。”13処方”と書いてはいますがそれらの派生処方も説明してくれているので、結局は100をゆうに超える処方が掲載されています。

 他に生薬の解説では、自分も常々参考にさせて頂いている山本巌先生の本が素晴らしい。メディカルユーコンから出ている

漢方治療44の鉄則―山本巌先生に学ぶ病態と薬物の対応漢方治療44の鉄則―山本巌先生に学ぶ病態と薬物の対応
(2006/06/17)
坂東 正造

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 が良いと思います。”○○の症状には、これこれの生薬を中心にして加減しなさい”という感じに書かれています。山本先生の教えは『山本巌の臨床漢方』という2分冊の厚い本(21000円!)に結集されていますが、それが自分の漢方処方の源になってくれています。

 ちなみに自分は精神科なので、使う漢方もそっち寄りのが多いです。当期芍薬散、桂枝茯苓丸、抑肝散加陳皮半夏、四逆散、桂枝加竜骨牡蛎湯、補中益気湯、半夏厚朴湯、香蘇散、竹筎温胆湯などなど。頻用する漢方はあんまり多種ではないと思いますが。そして、奇を衒ったような漢方薬はあんまり処方しません。基本に忠実。

 漢方だけでどうこうしようと考えだすと難しい面もあるでしょうが、困っている患者さんに何かしらの努力の具現化という意味でも、漢方は勉強しても損はないような気がします。
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2013
04.17

私はどこから来ているの?

 お薬で大事なのは、効果もさることながら、やはり顔にもなる




名前




 ではないでしょうか。この薬はどうしてこんな名前なんだろう??と由来を探ってみるのも医学の楽しみであります。製薬会社が祈りを込めて付けるものですよね。

 とはいうものの、ジェネリックはどこかぶっ飛んだ感じの名前が多いです。睡眠薬では”グッドミン®”とか”ミンザイン®”とか。。。直球勝負なのが逆に新鮮。先発でもアセトアミノフェン(カロナール®)なんかは容易に想像がつきますね。

 ここからは色々と調べてみましょう。薬剤師の先生に教えてもらったんですが、薬剤の名前の由来は”インタビューフォーム”というのに載っています。Google先生で”(知りたい薬剤の名称) インタビューフォーム”と入れてもらえれば大体の薬剤は出てきますよ。


 自分が不安や強迫に用いる薬剤の1つであるプレガバリンは、その販売名がリリカ®と言います。英語ではLyricaであり、この”y”がおしゃれ。ちなみに、3月まで勤めていた某病院の薬剤師の先生(上述)。なんと彼の娘さん、名前がリリカちゃんです(漢字教えてもらったけど忘れちゃいました)。もはや職業病ですな。。。第二子はトピナちゃんなんてのはいかがでしょうと言ったら苦笑してましたが。。。”跳飛奈”という漢字で案を出してみたら「飛びそうですね」とコメントをいただきました。すごくビッグになりそうな予感がしますでしょ。

 さてそんなリリカですが、この名前の由来は


QOL改善のイメージが可能であり、読み、聞き、書いた場合に印象が良い言葉「Lyric:叙情詩(Music)」、「Lyrical:叙情的な」を由来とする。


 となっています。ふーん、考えてるんですね。

 では、これまた頻用するクエチアピン(セロクエル®)はどうでしょう?


serotoninの「セロ」及びquetiapine(一般名)の「クエ」に由来している。


 あー、言われてみれば確かに。

 ならば、うつや強迫の増強としても威力を発揮する大塚製薬のアリピプラゾール(エビリファイ®)は?


Abilify(~することができるようにする)
Ability(~することができる) + fy(~にする)



 ほー。患者さんが回復することを願った感じですね。

 ちょっと他の抗精神病薬の影に隠れていますが、自分はたまに使うペロスピロン(ルーラン®)はと言いますと…。


「lull」赤ん坊をあやしたりなだめる、波・暴風雨などを和らげる


 あら、何か良いじゃない。”赤ん坊をあやしたりなだめる”なんて実に精神科的。ビオン先生が喜びそうな由来ですよね。母親のコンテイナー機能を想像した様な名称。これを聞いたらルーランを処方したくなる、かも?

 原点回帰ということで、クロルプロマジン(コントミン®/ウインタミン®)行ってみましょう。まずは吉富薬品の作るコントミンから。


コンコンと眠る
TOMIN→ヨシトミのアミン



え???

なにそれ。。。じゃ、じゃあウインタミンは…。


winter(冬)+ amine:人工冬眠にちなんで命名された。


 あ、そっか。もともとは麻酔の前投薬で使われてましたもんね。だからコントミンも眠る系の名前なんですね。びっくりしました。

 精神科領域ばっかりじゃ面白くないですね。とは言っても他にあまり思いつかず。じゃあドンペリドン(ナウゼリン®)行きましょう。


強い制吐作用も有することからnausea(吐き気)と関連づけて命名


 …。これなら吐き気をもよおす薬みたいですが。。。

 うーん。ならよく使う降圧薬のシルニジピン(アテレック®)は?


Arteriosclerosis(動脈硬化)の音からの造語


 …だからそれだと動脈硬化起こしそうじゃないっすか。。。

 しっかりと効果効能を込めた名前としては、カスポファンギン(カンサイダス®)があります。それは


Candida(カンジダ)、cidal(殺菌的)、Aspergillus(アスペルギルス)のからCANCIDAS®と命名した。


 これでもう効果を忘れませんね!関西とは関係ありませんでした。

 下剤であるセンナエキスのヨーデル®はもう狙い撃ちという感じですが


スイスのヨーデルの爽やかな感じをイメージさせるため。


 これだけ?絶対に”便が良く出る→よぅ出る→よーでる→ヨーデル”という部分もあるでしょ。。。インタビューフォームに全てが記載されていない気がして、下剤なのにスッキリせずに消化不良みたいな。とうかスイスもいい迷惑でしょうね、まさか下剤の名称にヨーデルが使われるなんて。

 こんな風にインタビューフォームを調べると面白いものです。アモバン®とかラシックス®は「特になし」となっており、逆に謎が深まっていくのも。。。だってゾピクロンとアモバンなんて全然被らんやないか。フロセミドもどうやったらラシックスになるんでしょ。そんなのを無視して「特になし」と言われても、ねぇ。。。

 みなさんも出している薬、もしくは飲んでいる薬の名前がどこから来ているのか、ちょっと調べてみると意外な発見があるかもしれません。
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2013
04.14

押し寿司おいしい

 柿の葉寿司を買いました。奈良・和歌山・石川の名物だそうです。奈良としか知りませんでした。。。今回買ったのは中谷本舗さんのもの(奈良のお店)。柿の葉寿司は他にもヤマトさん、たなかさん、平宗さんなどなど、様々なところが作っているようで。やっぱり味はそれぞれ異なるんでしょうね。



 押し寿司は庶民的な値段なため、買うことがままあります。子供の頃は良く親に”バッテラ”を買ってもらっていました。ぴょろっと乗っかっている昆布がまた美味しかった記憶。函館の丸井今井って言うデパートに入っていたお店でした。懐かしいですな。

 バッテラって何でそんな名前なの?と思って調べてみたら、もともとはポルトガル語なんですって。”小舟”を意味しているそうな。天ぷらも語源がポルトガル語じゃないかって言われていますね(予備校で習った知識)。

 さて、そんなこんなで柿の葉寿司。今回は8個入り。値段は忘れました。1000円くらいだったかしら…。

PA0_0536.jpg

 以上のように、柿の葉に包まれています。抗菌作用もあるし、香りも良いし、何よりも風流。

 開きましょう。こちらが鮭。良い色。
 
PA0_0535.jpg

 こっちが鯖。妖しく光ります。

PA0_0534.jpg

 食べやすいサイズですね。お味はやはり



んまい



 酸味が効いているので好き嫌いはあるのかもしれませんが、自分はこういうの大好きです。
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2013
04.09

キャラクターシリーズ:女子から切り崩せ!

Category: ★精神科生活
 エスゾピクロン(ルネスタ®)は、ゾピクロン(アモバン®)から光学異性体のS体のみを取り出したものです。だからエス-ゾピクロン。商品名のルネスタは、”ルネ”と”スタ”で月と星から来ています。アモバンよりも作用時間がちょっと長め。

 セチリジンとレボセチリジン、シタロプラムとエスシタロプラム、オメプラゾールとエソメプラゾールなど、光学異性体ブーム(?)が起こっていますね。一から新薬作るよりも楽だからでしょうか。

 S体を取り出したから良いかって言えばそういう訳でもなく、このルネスタはアモバンとの直接比較を行っていません!!!それなのにアモバンよりもさも優れているかのようにコマーシャルするのは製薬会社の罪としか言いようがありませんです。それだけでいかがわしい薬、こいつは。

 ちなみに、アメリカでは以前はゾルピデム(マイスリー®)が圧倒的なシェアでアモバンは付け入る隙がありませんでした。ところがルネスタを新規投入してめっちゃ売れています。ま、アモバンないからですけどね。マイスリーは最近よく転ぶとか肺炎のリスクになるとかが分かってきており、自分も敬遠し始めました。ベンゾ近縁の薬剤ではアモバンかリスミーを使ってます。もちろんあんまり出さないですけどね。やっぱりベンゾは不必要にだらだら出すもんではありません。ヨーロッパでは、欧州医薬品庁(EMA)が



ルネスタ?そんなのアモバンと変わんねぇよ



 と一蹴しまして、新規薬品としての認可が降りませんでした。素晴らしい判断。

 Eszopiclone is not marketed in the European Union following a 2009 decision by the EMA denying it new active substance status, in which it ruled that eszopiclone was too similar to zopiclone to be considered a new patentable product. となっています。

 残念ながら、アモバンとルネスタの2種類が販売されているのは世界広しといえども日本のみ。ここに日本のアホさ加減が見えます。2mgが標準的な量とされますが、薬価は78.7円。アモバンの10mg錠が29.3円ですから、ちょっとどうかな…と思います。

 繰り返しましょう。


ルネスタはアモバンとの直接比較を行っていません!!!


 それなのに苦味が軽くなってるとか、何を言ってるんだエーザイ(販売会社)は。しかも苦味が無いかのような言い回しをすることもあり、辟易しています。国内でもマイスリーとの比較しか行っていないし。値段のことも薬剤説明会で言わなかったですし、ヨーロッパの件も言わなかったしね。

 正々堂々とアモバンと比較してほしいものです。それで苦味が劇的なまでに軽くなっているのかどうか、そして価格のつり上げに見合うだけのメリットがあるかどうか。それがハッキリするまで使う気は全く起こりません。ちょっとだけ苦味がマシだとか、そんなんじゃ許さん。粛々と酸棗仁湯のパルス療法をしますよ、あたしゃ(疲れていても眠れない場合)。
 
 そんな薬のイメージキャラクターなんてどうでも良いわ。まぁ出たってんなら見てやるよ。

PA0_0561.jpg



可愛いじゃねーかクソッ!←敗北。



 み、見た目なんかじゃ信用しないんだからねっ!!



 …。月と星を用いたツキノワグマのキャラクターさん。反則なまでの可愛らしさ。女医の女子心をくすぐってそこからシェアを広げるつもりだな!汚いなさすがエーザイきたない。

PA0_0560.jpg

 こんなペンもらった日には処方したくなっちまうじゃねーかッ!←しません。

 これからムコさる君の様にぬいぐるみとかファイルとかカレンダーとか何か色々展開するつもりでしょうか。ルネスタそのものに自信がないからキャラ頼み?

 というかね、クマを選択した時点で負けておるのだよ、ルネスタ君。眼の下に”クマ”が出来ちゃうかも知らんでしょ。ということは不眠なのだよ。


(沈黙)


 とはいえ、ただ罵るだけじゃこちらも品がないので、自ら人体実験をしてみました。

 感想としては、確かに苦味そのものはアモバンよりマシと言えばマシ。そこは評価しましょう。ただ劇的に少なくなったわけではなく、ニガニガとしています。眠りはアモバンよりも少し浅い印象があり、ちょっと残りますね、翌朝。。。値段を考えるとやっぱり使う気にはなれない。苦味ゼロなら考えても良かったですけどね。

 ということで、商業的な印象がぬぐえないルネスタを自分は進んで使うことはありません。少なくとも、きちんとアモバンとの直接比較をばしっと行ってください。その結果次第では態度も軟化するかもしれません。あとは価格でしょうかね。せいぜいアモバンの1.5倍くらいにとどめておきませんか?
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2013
04.06

産後の悪露尽きず、と言いまして

Category: ★精神科生活
 産褥期は、出産後に母体の生理的変化が非妊娠時の状態に回復するまでの期間でして、6-8週間の長さと言われます。

 女性はうつ病発症率が男性の2倍と言われ、女性ホルモンのバランス変化が一因として挙げられます。産後は身体的にも精神的にも非常に揺れ動くものでして、精神科が介入を要することもしばしば。産褥期精神障害はこの時期に発症するもので、いわゆるマタニティ・ブルーズ、産褥期うつ病(産後うつ)、不安障害、産褥期精神病などがあります。また、治っていたはずの精神疾患が再発する時期でもあります。身体疾患も産後は結構出てきます。気管支喘息やら蕁麻疹やら。なんちゃって漢方医の自分としては、漢方的に治療するならこういった病態にはやはり瘀血(おけつ)とか気血両虚が絡んでいると考えられるため、駆瘀血薬とか補気剤・補血剤なんか(代表的なものは芎帰調血飲など)を使うことが必要と思っています。後は病態に合わせて合方を。ただ、産褥期精神病はやはり抗精神病薬をしっかりと。産褥期うつ病も症状が強ければきちんと向精神薬を使います。漢方でゴリ押しは危険。

 マタニティ・ブルーズの発症頻度は日本で15-35%ほどのようです。分娩後3-10日で発症し短期間に改善。抑うつ気分や情動の不安定さなどが出ますが、ほとんどが自然軽快します。産褥期うつ病との関連性は不明ですが、移行することもあるようで経過には注意が必要です。

 産褥期うつ病の発症頻度は10%くらい。産後数週間から数カ月以内で発症します。大体は半年以内で軽快するんですが、なかには長引く人も。未治療というのは決して良くなく、子供にも影響しますし、最悪な事態には”母子心中”があります。また、産褥期うつ病はGhaemiの提唱するBipolar Spectrum Disorder診断基準のD基準の1つに入っていることから分かるように、双極性障害のはじまりとなっている可能性も示唆されます(でも双極性障害の過剰診断には気をつけましょう)。

 産褥期精神病は比較的少なく、頻度は0.1-0.2%くらい。出産後数週間した後に突如として発症します。子供に対する妄想や不安が出てきて、興奮・錯乱となることも。殺児念慮を持つこともあるので、しっかりと治療。

 原因ですが、分析を主体として取り組む先生方は患者さんの母親や配偶者、義理の母との関係性を取り上げる傾向にあります。生物学的には上述のように、特に気分障害においては内分泌系の調節異常が関与しているだろうと言われております。エストロゲン・プロゲステロンの急激な減少がモノアミン系やHPA系に異常をもたらすことが分かっています。他には、細胞膜内の神経伝達物質受容体を調節したりMAP2への作用を介して微小管のダイナミクスを変化させたりするという神経活性ステロイドの関与も示唆されます。この神経活性ステロイドはエストロゲンやプロゲステロンのレベルによって変動して感情変化をもたらし、またGABA A受容体のアロステリックモジュレーターとして機能し、その抑制作用を増強して神経細胞の興奮性を弱めます。こういったことから、性ホルモンの影響を受ける神経活性ステロイドの平衡障害はうつ病の病態生理にかかわるのではないかと言われます。オキシトシン、アルギニンバソプレシン、甲状腺ホルモン、DHAなども関与があるかも?とされます。

 遺伝子的な部分では、産褥期うつ病の患者さんは遺伝子の転写が低下していることが分かっています。これまで盛んに研究されてきたSNVやCNVに加えて、エピジェネティックな変化が注目されており、グルココルチコイド受容体のプロモーター領域のメチル化頻度が妊産婦の感じる将来への不安と関連性があることも示されています。

 産褥期うつ病は、うつ病全体の中でも発症のきっかけが妊娠・出産・育児という共通点があり、昨今入り乱れている”うつ病”の中では均一性が高いと考えられます。そもそも”うつ病”や”統合失調症”なんていうのは症候群と言っても良いくらいのものですから、遺伝子やバイオマーカーを調べようとしても色々なのが出てきて確定的なものが見つかりません。これには現在診断に用いられているDSMが症状レベルで疾患をラベリングしていることも一因かと思います。その中で”産褥期うつ病”は割と定義しやすく均一性の高い疾患ですから、研究対象とするには他の精神疾患よりもマシでしょう。しかも病前から発症まで比較的短期間でデータ収集が可能で、継続的に検討することもできます。これで生物学的な因子を同定できれば、心理社会的な因子と併せることで産後うつの診断がしやすくなりますし、それからうつ病一般に広げていくことも可能かもしれません。
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